「ハゲタカ」は真山仁さんの同名小説を原作とする経済ドラマです。
外資系投資ファンドの資金力でバブル後に衰退した企業を次々と買収し、解体して売却したり、企業の病根を断ち切り再生して収益力を回復させるなど、20世紀末から21世紀初頭の日本のありさまをそのまま忠実に映し出しています。
その内容もさることながらドラマに登場する企業が実在したのかいうことが気になるところです。
沢尻エリカが社長を演じている日光みやびホテルって実在するの?
日光東照宮近くに中心となる老舗ホテルがあり、中禅寺湖畔と鬼怒川に系列ホテルがある企業と云えば日光を訪れた誰もが知る金谷ホテルのほかにありません。
しかも、沢尻エリカさんが演じる松平貴子は実在する金谷ホテルの代表取締役社長・井上槙子さんです。
日光金谷ホテルは明治6年に日本に駐在していた外国人のための最初の長期滞在型リゾートホテルとして創業しました。
その後、大正天皇がその日光をこよなく愛したことから人気が高まり、また諸外国の外交官の社交の場としても有名で、当時の貴族や著名人なども宿泊するホテルとなって繁栄することとなります。
戦後も米国軍の駐留士官や政府要人がこのホテルを利用したことで人気を維持し日光随一の老舗ホテルとしての地位はゆるぎないものでした。
しかし、1992年に建設した中禅寺湖金谷ホテルの借入金と団体客を当て込んで開業した鬼怒川金谷ホテルのバブル崩壊後の赤字が経営の足を引っ張り、2001年当時金谷ホテルは倒産の危機を迎えていたのです。
そこで創業者一族の井上槇子さんは当時社長だった兄の金谷太郎氏に代わり社長となって立て直しを図りレストラン事業などで成果を得ますが、ホテル経営そのものは好転せずメインバンクの足利銀行の40億円の債務免除によって息をつく有様でした。
その後、銀行主導による系列ホテルの切り離しや地元事業による「金谷ファンド」の創設、社長をはじめとする役員人事の一新などで危機を脱した金谷ホテルはかつての繁栄を取り戻します。
そしてついに2016年、再び井上槇子さんを社長に据えて創業者一族の経営に復帰することになったのです。
ここで原作小説に登場する外資ホライズンキャピタルが日本政府の要請で投資した「ふるさとファンド」とは「金谷ファンド」を模していると推測されます。
「ハゲタカ」と揶揄された外資系ファンドが投資をするに当たり地元の抵抗を受けないために考案された「地元」を思い起こさせるメーミングだったのです。