第十五章 “悪夢”

七月の半ばくらいだろうか?
僕は悪夢を見た。

マリアが悪魔の様に暴れ、
死神の様に乱れて、
僕に対し、
『私は神に背いた!お前を愛したせいで、あの美貌も!あの幸せも!全部なくなったのだ!』
マリアは息継ぎする間もなく嘆いた。
『お前なんか愛さなきゃよかった。』
その言葉が僕の頭を呪った。

早く夢よ覚めて!
そう単純に思った。

『大丈夫?裕太さん!』
天使の様に優しいその声で、僕は目覚めた。
『よかった!悪い夢でも見たのね?』
『ああ。ちょっと疲れてて。』
『それより、今日は結婚式場の下見とウエディングドレスの試着よ?急いで準備して!』

そうか、もう7月半ば。後一ヶ月半で結婚式だ。

僕は簡単な着替えをして、マリアのお母さんとマリアと一緒に車に乗って、ウエディングドレスとスーツを選びに行った。

マリアのお母さんは白いスーツを見た。
『あ!これ!裕太君に似合うんじゃないかしら?』
マリアのお母さんは、白いドレスを手に取りまた口を開いた。
『マリアはこれ着てみて!』

僕とマリアの試着がおわった。
声をそろえて言った。
『どうですか?』
すると、マリアのお母さんは
『凄く似合ってる!それでいいわ』僕もマリアもホッとした。

でも、僕にはまだ心残りがある。
それは、あの悪夢の事だった。
第十四章 “学校”

問題は学校だ。
僕は“嫉妬事件”から特に何も変わってない。
マリアは競争率の高い僕と婚約したのだ。
そんなのを女子が許すのかが心配でしょうが無かった。

学校に行くとたちまち
『婚約したんだって』や
『九月に結婚するらしいよ。』
などの噂が広まった。


僕はそんな事を気にかけないで、
聞かれたならば、
『本当だけど?』と答えた。

僕が知らないうちにマリアは大変な事になっていた。
『お金持ちでちょっと可愛いからって生意気よ!』
『あんたみたいな女を裕太君が本気で好きになるわけないでしょ?』
『そうよ!なんかの罰ゲームよ!』

女子からくる批判の声に悩んでいたみたいだ。

昼、マリアは泣いていた。
髪は乱れ、制服も汚れていた。
『マリア、どうしたの!?』
そう問いかけると、
『私、裕太さんには似合わないのかしら?みんなが私を否定するの。』
そういって泣いた。
僕はそんなマリアを抱いた。
『こうすればちょっとは落ち着くでしょ?大丈夫。僕の婚約者、妻にふさわしいのはマリアだけだよ。』
そう言うと、落ち着いたみたいで、昼休みが終わる頃、泣き止んだ。

あれからは、マリアは泣かなかった。
第十三章 “僕の物”

マリアと僕は、二人で顔を合わせた。

しばらく経って、マリアは口を開いた。
『どうして私達はこんなに愛し合っているのに、年齢のせいで付き合う事以上できないのかしら。』
マリアが悲しそうな顔をして言うので、
『婚約すればいいんじゃない』
と答えた。

すると、マリアは笑顔になって。
『裕太様すごい!私、思いつかなかったわ。確かに、アリアも錬様と婚約してるもの!』
『でも、婚約は親の承諾がないと…』
『大丈夫!納得してもらえるまで言い続けるわ。』

『分かった。マリアさんは一直線だね。』
『有難う!』


マリアは部屋に戻って手紙を書いていた。だいたい、B5用紙3枚分くらいの長文だ。

それから、三週間位たった頃。
マリアと僕は呼び出された。

マリアのお母さんは手紙を出して言った
『婚約の事について、健一さんと話しあったの。それで、裕太君何歳?』
『あと3ヵ月で18歳です。』

マリアのお母さんは少し考えて言った。
『あなた達、3ヶ月後に籍を入れて、4ヶ月に結婚式をあげるわ。』

『えっ良いんですか?お母さん』
マリアがびっくりして言った。
『ええ。裕太君マリアをよろしくね。』
『はっはい!』
僕達はその3ヶ月間を婚約者として過ごす事になった。
そして、
マリアは僕を『様』じゃなく『さん』で
僕はマリアを『さん』じゃなくそのままでよんでもよくなった。
『8月が待ち遠しいね。』
『まだ5月よ?』
『3ヶ月が千年に思えるね。』
『そうね。』

僕は3ヶ月が待ち遠しくてしょうがなかった。
だって、マリアが僕の物になるのだから。