今回の対戦相手であるツエーゲン金沢が得意とする戦い方はロングボールを使ったカウンター攻撃。
それは戦う前から分かっていたはずである。
自陣で5バックの守備ブロックを築いた金沢に対し、山雅は両サイドバックが高い位置を取りサイドから攻め上がる何時もの戦い方を貫いた。
安易にボールを失うと、その両サイドの上がったスペースを使われ、何度も相手のカウンター攻撃にさらされた。
26分に意思疎通を欠いた自陣でのパスミスからあっさり同点にされると、つまずきが焦りを増幅させたかのように、更に前がかりになり自滅した。
高い位置で簡単にボールを失い、カウンターを浴び、セットプレーで失点する悪循環に陥り、わずか前半の13分間で4点を奪われた。
そこからは攻撃的なプレスすら影を潜め、金沢のシュート15本に対して、山雅の放ったシュートはわずか4本だった。
かつて山雅を率いた反町監督は対戦相手を分析するのが得意であった。
長所短所を的確に分析し、相手のストロングポイントを消すだけでなく必ずウイークポイントをついてくる。
自分のチームのベースもしっかり作るが、それだけで押し切ろうとは考えていない。
バルセロナのように相手を圧倒して勝とうとは思っておらず、幾ら相手にボールを持たれようが、相手をほんの少しだけでも上回ることで僅差勝負を制しようというやり方だ。
かつての山雅は3バックでセンターを固める[3-4-2-1]を使っていた。
今回後半になって3バックの布陣を執ったようだが、時すでにおそしである。
サイドが高い位置取りをするのであれば、何度も言うが最初から3バックを採用すべきであり、もしくはボランチ一人が下がってスイーパーの役割で3バックの体制を築くことが必要となる。
今季の金沢は最初4バックで臨んだのであるが、大量失点を喫して途中から3バックに変更して守備の立て直しを図った。
J2やJ3では多くのチームが採用しているフォーメーションだ。
攻撃は長身頑健な1トップにロングポールを打ち込み、2シャドーがセカンドボールを拾って仕掛けていくのが主要なルートだ。
かつての山雅も、高崎寛之選手へのロングボールは重要な攻め手になっていた。
あるいは前田大然選手や、横山歩夢選手のようにスピードがあって裏抜けが得意な選手によるカウンター攻撃で得点を奪い、勝利を収めていた。
そのような戦い方は決して主導権を握った、美しい戦い方では無いかもしれないが、それでも勝利に直結した戦い方に他ならない。
サッカーでは常に相手との対戦である。
であるから相手チームの分析が必要で、常に理想のサッカーを貫くという事ではなく、現実的に落とし込んで、相手のストロングを消すような戦い方をしなければならない。
かつての反町サッカーは対戦相手の分析と対策を怠らなかった。
相手に合わせるタイプの監督であり、相手チームへの対応を裏返しにして、
自分たちのペースに持っていく手腕はプロの監督に相応しいものであった。
(つづく)
(山雅フォトギャラリーより)
サッカーにおける戦術は対戦相手によって
柔軟に戦い方を変えることができる、
いわゆる策士でなければならないのです。