本『少年と犬』:馳 星周

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今日は昼から出掛けるので、早めに投稿します。

昨夜、馳星周さんの小説『少年と犬』を読み終えました。

最近、映画館で流れる予告編に来月3/20から公開される作品『少年と犬』があり、観ようかなと思っています。

この映画の原作が本書なのです。

なので、文庫本はWカバーになっていて従来のものに、映画のポスターがデザインされたものが被さっています。

*カバーの画像はネットからお借りしました

 

全7章の連作短編集になっていて、初出は「オール読物」で各章毎に、第一章「男と犬」2018年1月号、第2章「泥棒と犬」2018年4月号、第3章「夫婦と犬」2018年7月号、第4章「少女と犬」2021年9・10月号、第5章「娼婦と犬」2019年1月号、第6章「老人と犬」2020年1月号、第7章「少年と犬」2017年10月号とのこと。

単行本は2020年5月に発刊され第163回直木賞を受賞、その後「少女と犬」が初収録され2023年4月に文庫本化されました。僕が読んだのは文庫本の第12刷で2025年2月刊行のものです。

初出された順番に章が並んでいませんが、繫がりを考慮して文庫本化の際は、加筆されているのかも知れません。
 

文藝春秋社BOOKというサイトで、この作品は単行本版・文庫本版とも紹介されていますが、単行本版のほうが詳しいいので、そちらを転載させて頂きます。

人という愚かな種のために神様が遣わした贈り物

 

傷つき、悩み、惑う人びとに寄り添っていたのは、一匹の犬だった――。

 

2011年秋、仙台。震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の「守り神」になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか……

 

犬を愛するすべての人に捧げる感涙作!

 

ちょっとだけ、ネタバレさせます。

上記の紹介文は第1章の「男と犬」の部分だけで、その後、多聞は5年間かけて、第2章~第7章に記載されている旅をします。中身の詳細には触れませんが、作家の北方謙三さんが巻末でそれらについて簡潔に記載されているので、こちらも以下に引用させて頂きます。

この作品は、七つのそれぞれにほとんど関係のない人生を描いた、出色の短篇集と見ることができる。同時に、多聞という犬を中心にした連作短篇集という、巧妙な二重構造を持っているのだ。
そして多聞という犬の生涯が、最後の一篇で繋がる。五年間の旅が、しかし読む者にとっては哀切で痛烈でさえある。多聞ではなく、多聞に関った人間たちの人生がである。人の物語を読んだのだ、という思いが私には強く残った。

 

読み終えた感想ですが、七つの短編はそれぞれに苦しくキツイ結末と思えるものも少なくありません。でも、読み進めるうちに、北方さんの解説の通り 「人の物語を読んだのだ」と感じるようにはなりました。そして、最終章で、映画のポスター画像にある「涙がとまらなくなる直木賞受賞作」というのも、文藝春秋社BOOKの「犬を愛するすべての人に捧げる感涙作!」というのも大袈裟と思えない感動に至りました。

 

一読の価値がある一冊。強くオススメします!

 
映画は観てみないとわかりませんが、本を読んで予告編をみると、連作短編集をひとつのストーリーにするために、あらすじを変えていると思われる節がありますが、ポイントはちゃんと抑えているのではと期待して、観に行くつもりです。映画の予告編動画のリンクを貼っておきます。

 
さて、午後からはこちら。
「砂の器」のシネマコンサート。ここでもまた泣いてしまいそうです。