「さきいかの恋」映像企画
ずいぶん前に書いた本なんだけど、
もっと映像を実現できるような本に、と
いま書きかえ中なのです。
役者を集めてね、ビデオで撮って、
ユーチューブで無料配信したいな、と。
問題は、役者。
それに舞台設定なんだよね。
完全自費制作だから、予算、ゼロだからね。
だから、みんなで考えてね、なんとか2019年には映像化したいと。
「なんで、そんなことやるの?」というと。
有力な観客を、つくりたいから。
小さな会場で、お金払って、この芝居を見たい、という人たちが集まってくれたら、
おれも、役者たちも、金もらえるようになるでしょ?
それが回転してくれたら、
また、新作つくれるし。
来年には、なんとか、とりあえず絵にしたい。
協力者、募集中です。
vol.4「さきいかの恋」台本※執筆中
そにへ、ミヤコ戻ってきた。
ミヤコ「すいません。どなたかライター、貸してくれませんかね?ん?あたしの顔、なんかついてますかね?」
工藤「あっ、さっき、おれのライター」
オムスビ「あれ?どこだろ?」
カズミ「あ、ありましたよ・・・ん?のーぱん焼肉・ぱいのぱいのぱい?」
ミヤコ「のーぱん焼肉?」
オムスビ「今度は焼肉なのか・・・」
マッキー「・・・やっぱり。へんたいなんだ」
工藤「あ、いや!ちがう、これは、ちがう!いやあ、ちがうちがう、ちがうんですよ、ミヤコさん!これはですね、あの、近所のサンちゃんがですね、あ、あの、サンちゃんは、コスゲの友達なんすけど、そのサンちゃんがですね、あんまり、おれが元気ないからって、あ、あの、み、店、つぶれちゃったから、だから、あんまり元気ないもんだからね、ほら、あの、元気づけてあげるからって、そう言って。ああ、それに、このお店は、新しくできたってのに、もう、行列ができるお店でして。もう、日曜日なんかは、もう、家族連れなんかが、こう、ずらーっ、と!」
マッキー「家族でゆくのか!」
オムスビ「うそをつけー!おまえってやつは、どこまで自分にウソをつけば気がすむんだあー!」
工藤「あっ!ちちちち、ちがうちがう!それは隣のお店でしたあー!そそそ、そのね、ととと、隣の行列ができるお店のお、その、隣の隣の、もうひとつ隣の角を曲がった路地の奥っちょに、ですね。おまえも、商売の参考にもなるし、ここは、ひとつ、勉強のため、ということもあるんだからな、と、サンちゃんが・・・」
オムスビ「で、いったんだろ」
工藤「えっ・・・ちょ、ちょっと・・・」
オムスビ「どんなサービスの焼肉屋なんだ、そこは?」
カズミ「のーぱん・・・焼肉?」
マッキー「やらしー・・・」
オムスビ「だから、だから、どんな内容のサービスなんだ!なんで、のーぱんで焼肉なんだあ!」
ミヤコ「楽しかったですか?」
工藤「いやいやいやいやいやいやいやいや、ぼくは、あんな、あーんなものは・・・」
マッキー「たのしかったんだな」
ミヤコ「きもちよかったんですか」
工藤「いやいやいやいやいやいや、ぼくは、やだって言ったんですよお、あんなこと!」
オムスビ「だから、いったい、なにをしたんだー!やきにくでえー!」
アナウンス「この電車は間もなく新大阪に停車いたします。This train soon will be arrive at the Shin-Oosaka station.」
カズミ「あー!ちょっと、ちょっと、見て見て!パトカーが並んでるわよ!」
マッキー「逮捕されたんだ」
オムスビ「おい!だから、いったい、どんなことしたんだ!焼肉屋で!」
着物バア「ねえ、そんな、悪いことするような人には見えなかったけどねえ」
マッキー「はあ?」
ミヤコ「そうですよね!」
オムスビ「気になるじゃないか!いったい、なにをしたんだ!」
カズミ「ですよねえ。どんな・・・」
着物ジイ「するどい殺気がみなぎっていたな。あれは尋常ではない」
オムスビ「だから、そーじゃなくて!」
アナウンス「新大阪、新大阪に到着いたしました。
Arrived at Shin-Oosaka」
工藤「あっ!あの人、捕まった。連行されてる」
カズミ「あ、忘れ物、忘れ物よおー、バック、バック、これ!」
ミヤコ「さようならー」
と、ここに、また何人かの乗客が登場。
外国人ふうな女が5~10人は、欲しいかな?
ダンサーです。
で、こいつらをマネジメントしてるスーツ姿のおっさん1人。
なんだか、ワイワイ、がやがやと入ってくる。
スーツ「ああ、みんな、静かにしなさいよー。まいったなあ、もう、観光気分なんだもんなあ。あ、どうも、すいません、静かにさせますから」
マッキー「あんたは、なんか勉強してんでしょ?向こうで勉強してなさいよ」
オムスビ「勉強ではない!仕事なんだ!福岡のクライアントのプレゼン資料が、まったく出来上がってないんだー!しかも、それは、あと数時間後に、おれがやらなきゃいけないことなんだよおーーー!」
ミヤコ「もっと早くやっておけばよかったんじゃないんですか?」
オムスビ「おれだってなあ、毎日毎日忙しいんだ!クライアントの接待だってあるし、毎晩毎晩もう、大変なんだ!くそお、寝坊しちまったんだ今日」
マッキー「飛行機でいけばよかったじゃん。新幹線より速いんじゃない?」
オムスビ「このJR海南も、うちの大切なクライアントのひとつなんだ!国内の航空会社とは犬猿の間柄なんだぞ、そんな、このおれが飛行機なんかに乗っちまったことが、もしもバレたら、大変なことになってしまうんだあーー!」
カズミ「まあ、とにかく、仕事しててください」
オムスビ「だから、気になるじゃないか!いったい、なにが起こったんだよおー、焼肉屋で!こんな状態では、とてもセールス・プロモーションの企画書なんて、できゃしないよお!」
スーツ「ん?失礼、なんのSPですか?」
オムスビ「ん?ま、まあ・・・あんたにゃ、関係ないよ」
スーツ「ふーん・・・東京から新幹線に乗ってる広告屋さんかあ。どうせ、どっかの過疎の地方なんかの観光誘致とか、町おこしとか、地方納税だとか、そんなやつでしょ?」
オムスビ「えっ?」
スーツ「B to Cのビジネスは、うまくいっていない。リテールを理解できていないから。だから、いまも不況なんだって。でも自治体は、もっともっともっと理解していない。それが現状だね・・・ひょっとして通電さんですか?やめときなさいよ。地域名産のランディング・ページなんか作っちゃって、ヤプーに丸投げ5千万なんてことはね。ありゃ、詐欺だわ」
オムスビ「えっ!?あ、あなたは?」
スーツ「あたし、フリーですよ。コンサル。はい、どうぞ」
と、スーツ、名刺を渡す。
オムスビ「コンサル!」
スーツ「いやいやいやいや、おはずかしい話ですけど、お客様のため、ユーザのために、やっています。あたしのは、安いから。500万くらいで、やっちゃうから。おかげさまでね、ひっぱりだこですわ。そちらとはゼロいっこ違うから。あっはっはっ」
オムスビ「いっ、いったい、なにをやるんですか!」
スーツ「そうなんだよねえ。公共事業は、民間企業に競争力で劣るんだよね。民営化とは言っても結局、なんにも変わらない郵便局、だから、みんな便利な宅急便会社を使ってる。銀行とか国金がカネ貸してくれないから、みんなサラ金とかクレジット会社使う。学校が役立たずだから塾にゆく。国保じゃ安心できないからガン保険に入る、みたいな。就職、転職ならハローワークなんて使わないで、みんな人材派遣をみんな使ってるでしょ?将来、日本の社会から区役所がなくなりますよ。区役所だけじゃない。銀行もなくなる。郵便局もハローワークも、学校も託児所も、本屋もなくなってね、手数料取ってそれらの受付やら代行サービス、あるいは業務そのものを全部、24時間営業のコンビニがやるようになる。単純作業は、すべてAIがやる時代がくる、なんてホーキングは預言したけど、AIを導入する資金が、日本企業にはない。結局、AIはチェスと将棋に勝っただけで、弁当にエビを乗っけたり、ベルトコンベアーから流れてくる仕分けだったり、居酒屋やカラオケでジュースやビールを注いだり、そんな極めて単純な作業ですら、人がやっている。恋愛関係に絶望してしまった人たちの間でAIロボットと結婚する人は増えるけれど、単純労働は永久に人の手に委ねられる。みんな子どもつくらない、つくれない環境なんだから当然、日本人は激減する。外国人を大勢いれなきゃ国としての経済活動を死守できない。なので、外国人だらけの国になる。オフィスも居酒屋もコンビニも、外国人労働者たちであふれかえる。そんな社会の到来を見据えて、民間企業も公共事業も、今やらなければならないことを、やらなければならない。それをやっとかないと、近い将来、消滅するだけよ」
オムスビ「そそそ、それで、ど、どんな、プロモーションが必要なのですか?!あなたは、どんなことを、やられていらっしゃるんですか、ぐ、具体的には?」
スーツ「あたしがやることはカンタンなことしかできませんよ。Webとアナログの融合と。それをツイッターなんかであおってね。ロングテールの線上にある小さなマーケットのみがターゲット。つまりオタクのグループのみ。ニッチな市場に魅力あるテーマを提供すること。ディープに、ダイレクトに、強烈なインパクトを!登山マニア、釣りマニア、競馬マニア、マンガ・オタク、ロリコンおじさんたち、とかね。どストライクですよ。こっちが投げた球は、確実にカキーンと跳ね返ってくるからね」
オムスビ「で!で、ぐ、具体的に、どどど、どんな!あっ、か、書いて、いいですか?書いても?」
スーツ「うん。いーですよ。書いて書いて」
と、オムスビ、猛然とパソコンに向かって打ち込む。
スーツ「WebとかITとかインターネットなんて言ったところでね、使ってんのは所詮、人間なんですよ。人間の原始の欲求は、そんなもので満たされることは決してないわけです。言葉のない時代から、人間たちは集まり、火をともし、踊っていたのです。わたしたちはマニアな小集団のなかに火を灯すのです。そう、実にカンタンなイベントです。お祭りです。でも、せっかく全国からラーメンマニアを集めても、イベントのまわりがスパゲティ屋しかないようじゃ、どーしよーもないでしょ?そんなんじゃ、みんなお金、おとしてくれない。なのでイベントだけじゃダメなんだ。小田原かどっかの山奥で等身大のエヴァつくったでしょ?あれ、あまりにも大量なファンが集まりすぎちゃって、まわせなくなっちゃって中止ですよ。つまり、そーいうイベントってのはね、駅から会場までの導線から、そう、まさしく町全体に渡っての大規模かつ大胆な企画が必要なんですよ。それも一回こっきりの企画、そして新しい続編を作り続けること。継続することで初めて町は再生のチカラを得られるから。そうしないと絶対に成功しない。クライアント・サティスファクションの徹底ディテール追求。絶対的に、がっかりはさせない!さあ、あれを見なさい。窓の外に見える、あの荒れ放題の貧相な丘を!あそこに町の人々が手作りの会場をつくる。紫のネオン・ライトで飾り付ける。オールナイト、椎名林檎のライヴ・コンサート!そんなこと、やってみな、何千人の客が集まると思っているんですか!三代目のオールナイト・コンサート、そんなんやってみなさい、全国つつうらうらから、もう若―い、うすっぺらなあほ女たちが、わんさか集まってくる!そあ、想像してみなさい。その光景を、その雰囲気を。たくさんの蛍が中空に舞い踊る夜に、その音楽のなかにいる自分自身を!」
販売員「ステキー!いくいくいくいく、ぜったい、いくーーーーーーーーー!」
スーツ「そして、さらに必須の実行、コンセプト!それはto be continuedですよ。つづく、ですよ!そんなことを500万円で企画提案しちゃうんだよー、安いでしょう!」
オムスビ「それは安い!安すぎる!」
スーツ「そう、最初に説明した通り。いかなるイベントも、歌と踊りは必須。さかなさかなさかなと歌えば、さかなが食べたくなる!やきとんとんやきとんとんと歌えば、やきとんが、食べたくなる!歌と踊りは、人間の原始の感情を刺激する!たとえば、こんなふうに!」
と、もう、女たちは着替えて登場。
若い駅員「乗車券を・・・」
ばっ、とポーズを決めて、オンナたち踊り出す。
観客席に飛び出して踊りまくろうべいべー!
※ うーん、ここは音響、音楽、照明が要るな。
※踊りの後、この場面のみ登場する、知り合いのロシア女性3名、いれようかな・・・。
2曲、うつくしいロシアの歌。
1曲、観客と踊る計3曲。
これは、いいなあ、ぜったい、みんな感動するよー。
若い駅員「うわあ・・・」
販売員「すてき・・・」
踊り子「ちょっと、ニーナちゃん、具合悪いみたいよ」
スーツ「だから、無理しなくていい、って言ったのに」
ニーナ「いや、病気じゃないから。みんな頑張ってるんだから、あたしも、みんなの手伝いしないと」
着物バア「あら、どうなさったの?」
ニーナ「妊娠してるんですよ。運転手の田部井のバカが、手出しやがって。安月給のくせに、国際結婚だって」
着物バア「あら、すてきじゃない」
カズミ「ねえ、いいじゃない。お金なんて」
スーツ「いやあ・・・国際結婚ですよ。家族で故郷に帰るんだって飛行機代、子ども育てるのも養育費、学費・・・金かかるもの。うちで運転手やってたって、いくらにもなんないもん」
ミヤコ「いや!愛があれば!それだけで、いいんです!」
販売員「そうです!・・・あれ、あたし。仕事しなきゃ」
と、急いで去る。
工藤「愛・・・か」
アナウンス「いつもご利用、ありがとうございます。この電車は、のぞみ10号、博多行きです。間もなく新神戸に到着いたします。
This train soon will be arrive at Shin-koube station.」
そうして青森弁スーツ男3人、乗ってくる。
1人は中年の課長、2人は若手。
課長「ぢゃぢゃぢゃあー!」
若手a「なんだい前の車両、おら、ぶったまげた」
若手b「おらもだあ。ウワサじゃ聞いてたけんどもよ、やぱり外国人は、みんな裸で歩いてるんだ」
若手a「さそってるんでねえか、おらたちを」
課長「ぢゃぢゃぢゃあー!」
若手a「おら、もいっぺん、いってみるだ!」
課長「あほ!おんな、めっけにきたわけでねえんだぞ、おらたちは」
と、席に着く。
周囲のみんなも我にかえったかのように、そうして、みんな座席につく。
踊り子たちは前の車両にいる、という設定なので、舞台上にはいない。
と、そこに若狭、再登場。
工藤たち、びっくり。
若狭、ぶるぶる震えながら、マッキーの斜め前に座る。
カズミ「なんで!?」
若狭「さむい」
工藤「えっ!?」
若狭「新幹線にしがみついて。逃げてきた・・・」
マッキー「えええーっ!とりあえず、あんた、こっち、奥に座んな。これ、かぶって」
と、そのへんに、かかってたコートかなんかを、若狭の頭から、かぶせる。
オムスビ「おい、ちょっと待て!警察から逃げてきたんだぞ!かくまうと、おれたちもまずいんじゃないのか!」
スーツ「警察から逃げてきたの?そいつ?まずいよ、それは。そいつは公務執行妨害だろ、事情を知ってる我々全員は犯人隠匿、逃亡幇助の罪に問われる」
工藤「そ、そんなこと、言われたって」
ミヤコ「そうですよ!ひとを見た目だけで判断してはいけません!このひとが、いったい、なにをしたって言うんです!」
若狭「警官、7人くらい、ぶんなぐってきた」
スーツ「あちゃあー!あうとですよ、あうと!暴行、傷害罪だよ、あんた!」
工藤「あいやあーーーーー」
vol.3「さきいかの恋」台本※執筆中
びびっちゃって、乗車券を確認できず、若い駅員、そのまま隣の老夫婦のところへ。
着物バア「お仕事、大変ですね」
と、乗車券を提示。
若い駅員「はあ、ありがとうございますう」
と、パチン、パチンと印をつける若い駅員。
カズミ「なんだか、やねえ」
と、工藤に囁く。
が、工藤はオムスビのほうを睨んでる。
カズミ「ああ、そのサキイカ。気になっちゃって、気になっちゃって。なんで、あかないかな?」
と、カズミ、サキイカ開封に再挑戦。
カズミ「これ、なんで、あかないかなあ。ねえ、誰か、ハサミ持ってない?」
ミヤコ「あたし、持ってない」
カズミ「ねえ、マッキー、ハサミ持ってない?」
マッキー「持ってない」
カズミ「つめ切りとか?」
マッキー「ないない」
着物バア「あ、ハサミなら、わたし、持っていますよ」
すると着物ジイ、突然、怒鳴る。
着物ジイ「まったく!けしからん!いまの若い女たちは、裁縫道具も持ち歩かんとは!一時が万事。身だしなみ、生活習慣の乱れ。そんなところから、日本の大切な伝統のひとつひとつが、失われてゆくんだ」
着物バア「また、はじまった」
着物ジイ「日本人の美徳、道徳観、美しさ。まるで、わかっていない!」
若狭「そのとおりだ!さっきから、むしずが走る!なんだい、あのオンナ!くっせえんだよ、その香水!あんな短けースカートはいてやがって!尻軽のくされオンナが!」
工藤、いきなり立ち上がってオムスビを指差して怒鳴る。
工藤「おい!そこの!おまえだよ、おまえ!オムスビみたいな顔しやがって!なんで、こんなに騒がしいのに、おまえ、文句言わないんだよ、えっ!おれたちみたいななあ、オンナたちとか、よわそうなやつにしか文句言えないのかよ!こーゆーなあ、強そうな人には文句言えないのかよ!そんなだったらなあ、最初から文句なんか言うなよ!この、オムスビ!」
工藤、猛然と右手に握ったサキイカの袋を振り回すかのようにして怒ってる。
マッキー「ざけんじゃねえーよ!」
マッキー、立ち上がって、ゆっくり通路へ。
そしてホッピーの横に仁王立ち。
マッキー「おい!誰が尻軽だってんだよ!こちとら5年前にカレシにフラレてからなあ、なーんもない人生なんだよおー!老人ホームで毎日毎日毎日毎日、働いててなあ!ジイさんしか寄り付きゃしないんだよお!もう、毎日毎日毎日毎日、ジイさんとバアさんのオムツ換えてんだよ!だから、アタシは、カレシから、おまえは年寄りのウンコくさい、ってなあ、フラレちまったんだよお!アタシは、香水もつけちゃいけねえのかよ!」
若狭「・・・・・。」
座席に着いたまま、呆然とした表情でマッキーを見詰めている。
若狭、ゆっくりと立ち上がる。
そして、マッキーの顔を間近に睨みつける。
思わず、オムスビも立ち上がった。
そうそう、ここで、ためを作るんだぞ。
うぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・・みたいな。
見得を切ったりして。
で、突然、若狭、その場でマッキーに土下座して叫ぶ。
若狭「こら、えろう、すんません!これは、もう、申し訳ございませんでした!なんも知らんと、勝手なことを!ほんまに、ほんまに、すんません!」
若狭、わなわな震えながら、ゆっくり立ち上がる。
若狭「くっ・・・くそったれが・・・あんなもん、ハサミなんかなくても、あけたりますわー!」
そうして若狭、呆然と立ち尽くす工藤の右手に握っていたサキイカの袋を掴む。
若狭「貸してみい!」
と、若狭、思い切り、サキイカの袋を両手で引きちぎる、はずだった。
が、しかし、なんとしても、サキイカの袋は、やぶれない。
切れない。開かない。
若狭「な、なんやこれ!そそそそ、そんな、あほな!うぬぬぬぬぬぬーーーー!そんな、あほな!ベンチで250キロあげちょる、わしのチカラが!あほ、ぬかせいや!魚おおおおおおおおおおおおーーーーー!」
通路のど真ん中で、ガニマタで、両手にチカラをこめて、思いっきり袋を左右に引っ張ってる若狭。
そして、ついに、若狭、ぶりぶりぶりーーーーーーーーっと、屁たれる。
全員「うわあーーーーー!」
マッキー「なに食ってんだあ!おめえー!」
オムスビ「目があ、目が、痛い!」
着物ジイ「息が、息が・・・できん・・・」
着物バア「あなた!あなた!しっかり!」
着物ジイ「はあはあ、窓が・・・窓が、あかない・・・」
工藤「いや、新幹線は、あかないから」
若狭「われながら、こらあ、あかん・・・いや、精つけな、あかん思うて、にんにく増し増し増しのてんこ盛り肉肉ホルモンらーめん食うてきたさかい・・・」
と、若狭自身も、立ちくらみ。
そこにカートを押した販売のおねえさん、入ってくる。
販売員「京都名物、なら漬け、な、な、おならづけ・・・・あ、ああああ・・・」
と、販売員のおねえさん、毒ガスで、よたよたと倒れこむ。
工藤、駆け寄り、抱き起こす。
工藤「しっかりしろ!」
オムスビはハンカチで口元を抑えながら、向こうのほうから叫ぶ。
オムスビ「気を、気をたしかにもつんだ!」
若狭「ええい!みんな、しっかりせい!人の屁で、人は死なん!だいじょうぶやん、屁で人は死なん!」
ミヤコ「いやあ、これは、わかんないですよお」
若狭「しっかりせい!問題は、これや!こいつを、あけなあかんのや!そうや、これは、これは、わしの人生、そのものなんや!」
工藤「ど、どういうこと?」
若狭「わしはなあ・・・今日、命懸けでのお、この電車に乗ってまんのや」
全員「えっ!?」
若狭「どういうわけなのか、このサキイカの袋が開かせんと、なんや、自分、ダメなりそうな、そんな気が・・・」
なぜか、うるうるしてる若狭。
工藤「あっ!おお、おれ、ライター、持ってます!ライター、これだ!これで燃やそう!」
若狭「そりゃあ、いい!今のわしの気分にぴったりや!わしは大阪なんやけどな、京都、いってきたんや!清水寺、いってきたんや!命懸けでな、今夜、飛びたつ気分や!燃えて、燃えて、燃えて、イノチ燃やして、人生の晴れ舞台、飛びたったるわ!」
若狭、片手に握る百円ライター。
オムスビ「あっ、待て!大阪府は今朝未明、ビニール袋不燃日を発表。不燃日は毎月第二月曜日と水曜日。ダイオキシン発生抑制のため、世界的環境保護団体イエロー・ピースと大阪主婦連合会が国際契約締結!」
工藤「な、なにい?」
オムスビ「いま、そこ、テロップで!」
若狭「い、いま、ここ、どこなんだ、大阪に入ったのか!」
カズミ「わかりません!田んぼ、ばっかりです!」
ミヤコ「ここはどこ!あたしは誰?」
若狭「ええい!くそっー!」
と、若狭、手にしてた百円ライターを床に叩きつける。
着物ジイ「この大バカモノどもめがあーーーー!゛物事の本質を、大きく逸脱しまくっている!問題は、ハサミじゃ!ハサミなんじゃよおーーーー!」
若い駅員「すすす、すんません。じょ、じょ、乗車券を拝見させて頂きますう」
と、びびりまくって若い駅員登場。
若狭「おお!あいつや、あいつがハサミを持っている!」
と、若狭、ショッピング・カートを押しのけ、猛然と若い駅員に襲いかかる。
販売員の女「あれええええーーー」と、気を取り戻して立ち上がりかけてたところを、突き飛ばされて、工藤と共に再び床へ倒れ込む。
カートに並べられていた商品が、ばあっ、と床に散乱。
が、若狭、そのまま、その先にいる若い駅員へ向かって突進。
若狭「か、貸せ!」
と、若い駅員が手に持つそれを奪い取り、サキイカの袋をはさむ。
若狭「あ、あれ?」
何度も何度も、パチンパチンとやっちゃみるが、そこには赤い印がつくばかり。
マッキー「それ、スタンプ!」
若狭「くくくっ、くっそおーーー!」
と、若狭、赤いスタンプたくさん付いてるサキイカの袋を齧る。
齧って、やぶってしまおう、という必死の形相。
が、しかし、サキイカの袋は、やぶれない。
若狭「ぶわあー!」
と、若狭の口元、スタンプの色がついて、真っ赤っ赤。
全員「うわあ!」
と、その若狭の形相に、ドン引き。
若狭「おんどれー!ハサミもっとらんのかあー、こらあ!」
と、若い駅員を追いかける。
若い駅員、必死こいて逃げる。
こーして、2人、舞台から去る。
工藤と販売員、よろめきながら立ち上がる。
販売員「あ、だ、だいじょうぶ」
通路に散乱した商品を工藤も拾い集め、彼女を手伝う。
そうして着物バアも、そしてマッキー、カズミ、ミヤコも、拾い集めはじめる。
販売員「あ、ありがとうございます」
カズミ「あ、あのお・・・さっきから気になってたんですけどお」
販売員「はい?」
カズミ「いい、お声、していますねえ。アナウンサーみたい。ほんと、いい声」
販売員「えっ、わかりますう!あたし、縦横大学のアナウンス部なんです。いつか大きな会場で、イベントなんかの大観衆のなかで、アナウンサーやりたい、って、そう思ってはいるんですけど。競争激しいんですよ、この業界。あたしなんかじゃ。それでも、あたし、この販売員のバイト、大好きなんです。だって、みんな、ニコニコ笑顔なんですよ。まあ、なかには、そうでないお客様もいらっしゃいますけど。でも、それでも、あたしの接客で笑顔になってくれたりして。すごいスピードで走ってる新幹線のなかで、窓の景色が、どんどん移り変わってゆくなかで、わたしが、みなさんを笑顔に導く、まさしく旅先案内人なんです」
マッキー「縦横大学?あたし、縦横大学社会福祉学部卒」
販売員「えっ!何年卒ですか!」
マッキー「5年前。卒業して、いまの施設に入社して、いきなりカレシにフラレたから。忘れないから」
販売員「せんぱーい!あたしもカレシいないんですうー!あたし年上が好きなんですけど、誰か紹介してくださいー!」
マッキー「いきなり?なんじゃ、それ?まあ・・・すっごい年上の男たちは、いっぱい知ってるよ。職場にごろごろしてる。文字通り、いちにち中、ごろごろしてるから」
販売員「うわーっ、いいなあー!」
マッキー「よくないわ!」
で、ここに鉄道公安員ガニマタがインカム片手にデブ駅員と共になだれ込んでくる。
公安、インカムに向かって叫ぶ。
公安「重大犯罪容疑の男、現在、9号車に向かって逃走中!新大阪駅にて応援要請!繰り返す、新大阪駅にて応援を要請!」
デブ駅員「ま、まさに、これは、正夢!」
公安「さあ、いくぞ!はなおかじった君!」
デブ駅員「だから、ちがいます!わたしの名前は、はなおかじった、です!」
公安「ああ、もう、いい!かじったくん、いくぞ!」
デブ駅員「あ!ぜんぜん、違う!」
と、2人、追いかけて行く、ということで舞台を去る。
工藤「あの男が、凶悪犯だったのか・・・」
オムスビ「おれは、そーだと思ってたんだ」
ミヤコ「ちがう!あのひとは、そんなことするひとじゃない!」
工藤・オムスビ「えっ!」
工藤「あの顔、ですよ」
ミヤコ「そうですよ、あんなにキリッと男らしいひとが、そんな悪いことなんて、ぜったい、できませんから!」
工藤「えっ!」
オムスビ「あんな原始のゴリラーマン」
ミヤコ、ぷい、っと、なぜか、怒りだして足早に。
ミヤコ「ちょっとタバコすってきます」
と、車両から立ち去る。
工藤「ミヤコさん・・・」
オムスビ「趣味、わりー・・・」
カズミ「そう。ミヤコ、昔っから」
マッキー「趣味わるいのよねえ。このまえも」
カズミ「フランケンシュタインみたいのと」
マッキー「しかも、全員、妻子もち」
カズミ「あたしが知ってるだけでも、三人」
マッキー「あ、あたし、五人、しってる」
工藤・オムスビ「えっ!」
カズミ「恋多き女なのよ」
マッキー「ねえ・・・」
着物バア「ああ、うちとおんなじ」
着物ジイ「こらっ!よけいなこと言うんじゃない!」
着物バア「あたしも、この人と駆け落ちして。で、娘も、そう」
全員「えっ!」
着物バア「もう、どろぬま、修羅場で、よーやく離婚成立。それなのに、うれしげに、結婚式やるんですって。で、これから2人して娘の結婚式に。博多にね、ゆくのです」
販売員「はあ・・・恋のどらまちっくトレイン」
工藤「はあ?」