からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜 -115ページ目

次、最終話

長くなってしまった物語も次の投稿が最終話。驚愕のエンディングを、君は見る。


君は見るって、語感いいね。プロトコル、的な。アクセントを、は、におく感じで。

朝、ニュースを観ていたら、公務員が漫才研修をしていたよ。無駄だ無駄じゃあないだとウダウダ行っておったが、おれは無駄だと思うだ。そして君はおれを見る。嫌だと言ってもおれを見ろ。オレオミロ。オレオとミロ。両者とも久しく口にしてない。こんな感じで今日もおれは生きてる。

小さじいっぱいのマボロシ(8)

「ねえ、なんであの人が探偵やってるか知ってる?あのね」

敏子の家及び、敏子と仲の良いご近所さんからの訊き込みを終え、イザマが事務所に戻ってきたのは正午過ぎだった。手にはコンビニのビニール袋に入ったカップラーメンをぶら下げている。帰ってきたイザマに、意気揚々と、高梨はイザマが帰ってきたら話そうとしていたことのきっかけを出したところで、イザマは続く言葉に気がつかなかったのか、高梨の言葉を素直に質問として受け止めたようで、

「あの人は、浮気を見つけて、浮気をした男の人生をグチャグチャにしたいんだよ。別れさせ屋みたいなもんだ」

と、なかば憎しみさえ込めたような、遠い目をして、ひどく淡々とした口調で返し、高梨を絶句させた。

「…あのね、あの、あの人も人の噂話が好きなんだよって話」

イザマははっとなり、それでも、能面のような顔に表情の起伏はみられないが、

「うん?ああ、なるほど」

と、取り繕った。

「何か、あった?」

高梨はいつもにまして物憂げなイザマに天使のささやきのような優しさと天使に怯える背徳者のような声で言った。

「いや、特になにも。お宅にうかがって、近所の人から話を聞いただけだ。ああ、高梨君。お勤めご苦労。最初はいじめていたがすぐに関わらなくなった、でいいんだな」

「そうだけど。…そっちは何かわかったの?」

「とても仲の良い親子だったってね。そのぐらいかな」

「だった?」

「ああ、まだ父親が生きていた頃の話だよ。もちろん、今も母子間は良い印象という話だったな。家庭菜園が趣味の優しいお母さんに、たまにいなくなるけど、普段は親の言うことをよく聞くお嬢さん。貧しいながらも慎ましやかに、貧して鈍することもなく明るい家庭だと」

「お父さん、病気だったっけ」

「白血病でな」

「白血病!?」

高梨は白血病という言葉の響きに驚きと興味を隠さなかった。

「骨髄のドナーが見つからず、お亡くなりになったそうだよ」

「なんか、悲惨な話だけど、白血病って聞くとがきんちょの考えたドラマみたいね」

「ふふん。まあ、事実は小説より奇なり、と云われるが、事実は三文小説通り奇なり、って話も良くある話で、現実に起こっているんだから仕方ない。犬が人を噛んでもニュースにはならないが人が犬を噛んだらニュースになる、とも云われるが、いずれにせよ、人はいつも自分の身に降りかかる災難なんて思いもしないものさ。あれ?なんの話をしていたっけ?」

椅子に腰掛け、いつも通りビルの壁を見るイザマに、高梨は安心した。

「そうだ。ねえ、あの人に、あんたが母親を疑ってる、って言ったら、理由もなしに疑ってないでそんな暇があるなら真面目に働けって言っとけって言ってたから言うね。真面目に働け」

「それはどうも。だが、3つの点を見ると人の顔だと認識してしまうように、人は何事にも理由を探してしまうもんだ。目の前に転がってるピースを安易に結びつけてな。物事の根拠を求めてしまう。そして、事実を自分の妄想に都合のいい方へとねじ曲げ、自分が納得する理由を見つけると、安心して思考停止に陥るものさ。ジグソーパズルを力づくで無理矢理当てはめ、歪なパズルを完成させ悦に浸るように。君は、そうだな、キリンを冷蔵庫に入れる3つの段階を知っているか?」

「キリンを?」

高梨は腕を組んで考え始め、そして、

「まず、長い首をナタでかっつんかっつん切り刻み」

と、物騒なことを話し始めたところでイザマに止められた。

「冷蔵庫の扉を開ける、キリンを中に入れる、冷蔵庫の扉を閉める。それが正解だ」

「はあ!?そんなの」

「とまあ、おれがしてることは、今、君がやったことなんだよ。投げかけられた問いには構築された自身の世界観の中で理解をしようとするもんだ。人ってのはそういうもんだろう?デブがカロリーゼロコーラを飲んでいれば、お前は普通の飲めよと言いたくなってしまう」

高梨は荻原が言った、浮気をしている男の行動のことを思い起こした。イザマは自嘲気味に、ふふん、と笑うと、

「それが、楽しみじゃないか」

と、言った。

「じゃあダメじゃん。あんたのパズルちゃんと完成しないじゃん」

高梨がそう言うと、

「初めから歪なパズルもあるんだよ」

と、イザマは言い、カップラーメンに湯を注いできてくれと高梨に頼んだ。

「いいけど、お金は?先にお金ちょうだい」

「金?ああ、いくら欲しいんだ?」

「うわあ、セクハラでしょそれ」

「セクハラといえば、お姉さんにはあまりその手の話はしないでくれないか。そういうことに過敏なんだよあの人は」

「ふん。いくらかですって?じゃあ100万。100円玉出して、はい100万円ってのはなしよ。100万欲しい」

高梨の要求に慌てる様子もなく、

「100万円で何をするつもりだ」

と応じた。

「家を買う。2人のね。あ、あんたとじゃないよ。お姉ちゃんと2人の」

「そうか。ふむ、場合によっては100万円で頭金を賄える可能性も否めん。しかし、それはあまりに法外だ。ではこうしよう。この世にはローンというものがある。今現在おれの財布の中に100万円は入っていない。ということで、100万円を望むなら、月々の給料に5000円上乗せして200回払いで払うことにしようじゃないか」

「そんなもん嫌に決まってるでしょ。一括よ一括。ちまちまじゃあ100万円の旨味がないでしょ。明日の100万より今日の100万よ」

「………なるほど。しかし、今、財布の中にあるのは3000円だ。今すぐ3000円をもらうか、将来積み上がる100万を選ぶか、君はどちらを選ぶ」

「めんどくさい奴。もういい」

高梨は3000円を受け取ると、カップラーメンを持って奥の部屋に消えた。

ずるずるとカップラーメンを食べ終えたイザマはすぐに出掛ける支度を始めた。

「どっか行くの?」

「おいおい、これでも家出人を捜している身だよ」

「私もついていっていい?暇でしょ私。目ぇいいよ私。人混みの中から見つけられるよ私」

「いや、街頭に立つわけじゃないから」

「あんたがおいおいだよ」

「ああ、そうだ。君にはおつ、買ってきてもらいたいものがある」

「今おつかいって言おうとしたでしょ。子供じゃないんだから」

「うむ。だが、大切な用事だ」

イザマは紙に買い物リストを書くと、高梨に渡した。

「大切な用事って、なにこれ。あんた、まさか、こんな趣味が」

「邪推をしないでくれ。とにかく重要なものなんだ。それから、帰ってきたら、荷物が届くはずだから、それを奥に運んでくれ。じゃあ行こうか。早く支度しなよ。金を渡すから銀行までついてきてくれ。自腹切ってでもセクハラオヤジと一緒に出歩きたくないというのなら話は別だがね」

ATMで金を卸したイザマと銀行で別れた高梨は、高揚した気分で隣駅の駅ビル内に居を構える大手雑貨チェーン店に向かい、リストに書かれた通り、パーティーグッズである黒髪のカツラとセーラー服数枚を買った。領収証を上様でもらうことにも抜かりはなかった。それとは別に、税込み2980円のボールペンを買った。その足で、高梨は近くにあるカモメエージェンシーに向かった。

「どうしたの突然」

運良く、社内に荻原はいた。

「駄目だった?」

こぼれ落ちてしまいそうな笑顔で、高梨は言った。

「駄目なことなんかないわ。全然。だけど、どうしたのよ。何その荷物」

「これねえ。付き合ってくれたから、プレゼント」

そう言って高梨は大きなビニール袋を接客室の机の上に放り置いた。

「プレゼント?気を使わなくていいのに。ありがとねリンちゃん。泣けてくるわ。なあにこれ。はあ?なにこれ。私に対するイヤミ!?」

「そっちじゃないよ」

「ああ、ああそう。でも、そっちじゃないよと言われても、なにこれ。セーラー服にカツラ。なんでこんなものを」

「それは、あの人に頼まれたの」

「ふうん。あいつに、ってはあ!?あんた達まさか!?これで何する気!?駄目よ!それだけは駄目よ!リンちゃん達は仮にも兄妹何ですからね!あいつ、あの野郎」

「お姉ちゃん、あのね。違うよ。そっちじゃないよ」

「そっちじゃない!?ああもう、そっちってどっちよ!…なんなのこれは?」

「さあ、わからないけど」

「…とんだ袋小路ね」

「でも、多分、今の仕事に使うんじゃないかなあ」

「仕事に使う?まさか、リンちゃんにこれ着せて」

「だからそっちじゃないよ」

「違う違う。リンちゃんにこれ着せて娘さん見つかりましたって言うつもりなんじゃないかってことよ。あいつならやりかねないわ」

「いやでもさすがにそれは無いんじゃないかなあ。結構真面目にやってるよ。今もそっちの方行ったし」

「そっちの方?ふうん。どこに行ったの?」

「わからないけど」

「…………リンちゃん、プレゼントってなあに?楽しみだわあ」

その頃、イザマは道に迷っていた。しばらくぐるぐると辺りをさまよい、やっとこさ番地にたどり着いたものの、

「同じ住所に名称不明のアパートがふたつ、か。どうなってるんだこの国の住所は。下手な推理小説より難解だ」

イザマは仕方なく、仕事中の宅配業者に栗田の家を尋ねた。家の住所は、半ば脅して、直接栗田から訊いた。

「話は栗田からうかがっています」

ノースリーブのワンピースを着た栗田の細君は栗田に言われた通り、イザマを家の中へ迎え入れた。

「申し訳ないですねえ。主人が忘れ物をしたばっかりに」

「たまたま近くにおりましてね。むしろ助かりましたよ、私は。あなたは災難でしたでしょうけども」

「…いえいえ、そんな。普段は生徒達に忘れ物をするなと叱っているのでしょうに。探偵さんですってね。お忙しいのですか?」

「いやあ、最近暇でしてね。ついでにご主人の浮気でも調査しましょうか?」

「お、お願いしようかしら、ふふふ」

じろじろとなめるように自分を見るイザマに、栗田の妻は生理的な不快感を覚えた。

「ふふん、では早速、用事を果たしましょうかね」

「はあ」

栗田の妻は棚から、一枚のCDーRを取り出した。

「これだと思いますが」

「ああ、これですか。…奥さん」

その言葉に、女は、どきっ、として、瞬時に、最悪の場合大声を挙げれば隣人に救われる、との計算をはじき出した。

「奥さん?」

「は、はい!?」

素っ頓狂な声を挙げた栗田の妻。

「ちょっと、中身を確かめさせてもらいたいのですが、いいですか?」

「な、中身?中身?中身というと」

イザマは小さくため息を吐いた。

「…このCDの中身を、確かめたいのですよ。忘れ物を取りに来て、関係ないものをもっていったら面倒ですからね。よければパソコンを貸してもらえませんか?いやあ、普段は持ち歩いているんですけどね。なんせ、こちらも突然のことで。ご主人が忘れなけりゃあ、ね」

「あ、ああ。どうぞ」

女は助かったと思うと同時に、なあんだ、とも思い、すぐさま脳内で否定した。

「あの、この中身のことを聞いてませんか?」

別室でパソコンと向き合うイザマの後ろにしっかと鎮座して動かない栗田の妻に、イザマは背中越しに言った。

「私、機械に不慣れでして」

「はあ、そういうことではないのですが、この中身は生徒さん達の、まあ、大変パーソナルな情報が入ってましてね。探偵業界も法整備が進み、個人情報の取り扱いに厳しくなりまして、職務上で得た個人情報を関係のない人に見られると、大変困るのです」




微笑シリーズ。自動車販売店パート3(完)

『秘宝館?いえ、車の』
「わかってるよ!秘宝館西武パラレルワールドスクウェアのことだろ!」
『西武パラレルワールドスクウェア?なんですかなそれは』
「はあ!?まあ、まあいいわ、うん」
『お客様。では早速実物大の車をご覧になりますか?』
「実物大!?はあ!?」
『はい、細部までリアルに再現した我が社のモデルカーを』
「そんなもんに手間暇かけるなら実物を」
『お客様、実物と実物大、どちらが興味をそそりますか?』
「ああ!?」
『エロ本における』
「エロ本!?なに重ね合わせてるんだよ!」
『いやお客様、ちんこのモザイクではなくパイオツの話でございますが』


ほーりなげーてやったー!!終わり。

さらについでに

“えんぴつみがき”君は人の為に死ねるか-090608_0731~0001.jpg
似顔絵描いてっていわれたからこれ(みたいなの)描いたら、それ以降しばらく口をきいてくれなくなった女の子がいる。そっくりなんだけどな。見つかったらやばいな。

ついでに

“えんぴつみがき”君は人の為に死ねるか-090608_0719~0001.jpg
こんな感じの夢を見た。真ん中の顔はおれじゃない。