2024年度国家総合職専門択一試験・行政法コメントその1 | 彼の西山に登り

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【本文】

 

2024年度国家総合職専門試験(多肢選択式)の法律区分の行政法について、簡単にコメントします。

行政法は問題数が多いので、記事が長くなり過ぎないよう、今回は行政法総論についてです。

例によって、今後の公務員試験の参考のための簡単なコメントで、詳細な解説ではありません。

№は法律区分のものです。

 

2024年の行政法は、行政法総論4問(基礎理論1問、行政作用法総論3問)、行政救済法6問(行政争訟法(広義)4問、国家補償法2問)、行政組織法2問と、ほぼ標準的な配分でした。

 

 

【№8】=正答2

行政法の効力に関する問題。多くの方が手薄な分野ですので、難しいと感じた方も少なくなかったかもしれません。オ×が切れないと、正答が1つに絞れません。

 

ア× 法の適用に関する通則法2条は、「法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。ただし、法律でこれと異なる施行期日を定めたときは、その定めによる。」と規定しており、法律の施行日は重要事項ではありますが、附則など法律において定めることが義務付けられてはいません(同条ではただし書で規定し、一応例外扱いです)。とはいえ、実際には法律の附則で定める場合が多いですが、その場合も、一定の期間内に施行すると規定するにとどまり、具体的施行日の決定は政令に委任する例が少なくありません。「この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」(行政不服審査法の例)のように、具体的な委任であれば、もちろん許容されます。

 

イ〇 最大判昭32・12・28。

ウ〇 条例の属地主義の例外として認められます。※1

エ× 日本の法令の規定は、日本国外での外国人の行為には適用されないのが原則ですが、わが国の法律で外国に在住する外国人にも権利を認める例はあり、行政機関情報公開法3条が「何人」と規定しているのは、この趣旨で規定されたとされています。情報公開法の問題としては、典型的な引っ掛けですので、分かりやすかったと思います。

オ× 臨時法の説明はおおむね妥当ですが、限時法は改正により有効期間を延長することが可能です。例えば、道路特定財源である揮発油税、地方道路税、自動車取得税、自動車重量税等の税率の引き上げは、当初2年間の暫定措置として、限時法である租税特別措置法によって行われましたが、その後、同法の改正により、30年以上にわたり延長し続けました。※2

 

 

【№9】=正答1

行政指導に関する行政手続法の条文素材の問題。肢1〇・3×は条文の読みが複雑で分かりにくく、正解肢が絞りにくくなっています。

 

1〇 行政手続法3条2項6号により、意見公募手続等の適用除外です。

2× 地方公共団体の機関がする行政指導は、根拠規範のいかんにかかわらず、行政手続法の適用除外です。(行政手続法3条3項)。本肢は処分の場合です。

3× 行政手続法34条は、「許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。」と規定しています。本肢は条文とは逆の場合に書き換えてあります。

4× 行政手続法35条4項2号。書面交付の適用除外です。

5× 行政手続法36条の2第1項ただし書。行政指導の中止等の求めの例外です。

 

 

【№10】=正答1

行政計画に関する判例素材の問題。イ×・ウ×は頻出判例ですが、ア〇・エ×は頻度やや低めの判例で、難易度は高めです。

 

ア〇 最判平16・1・15。

イ× 最判昭56・1・27。同判例では、本記述が「当該決定の性質にかかわらず、」としている点につき、「右決定が、単に一定内容の継続的な施策を定めるにとどまらず、特定の者に対して右施策に適合する特定内容の活動をすることを促す個別的、具体的な勧告ないし勧誘を伴うものであり、かつ、その活動が相当長期にわたる当該施策の継続を前提としてはじめてこれに投入する資金又は労力に相応する効果を生じうる性質のものである場合」に限定しています。また、本記述は「代償的措置を講ずることなく施策が変更……地方公共団体は不法行為責任を負わない。」としていますが、同判例は、「地方公共団体において右損害を補償するなどの代償的措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び、地方公共団体の不法行為責任を生ぜしめる」としています。

 

ウ× 最判昭57・4・22。同判例は都市計画の用途地域の指定につき、処分性を否定しています。

エ× 最判平11・11・25。同判例は、都市計画区域について定められる都市計画は、公害防止計画に適合するよう定められなければならないとする都市計画法13条1項柱書後段は、「都市計画が公害防止計画の妨げとならないようにすることを規定したものと解され……そこで執ることとされている施策を妨げるものであれば、都市計画は当該公害防止計画に適合しないことになるが、(都市計画)法13条1項柱書き後段が右施策と無関係に公害を増大させないことを都市計画の基準として定めていると解することはできない。」としています。

 

 

【№11】=正答3

行政調査に関する判例素材の問題。ア×→肢3・5までは平易ですが、正解肢に絞るためにウ×が分かるかがカギになります。租税法律関係ですので、判例を知らないと引っ掛けられる可能性があります。

 

ア× 最大判昭47・11・22。同判例は、所得税法に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといつて、憲法35条の法意に反するものではないとしました。重要基本判例です。

イ〇 最判昭53・6・20。

ウ× 最決昭48・7・10。旧所得税法上の質問検査につき、同判例は、質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解すべく、また、実施の日時場所の事前通知、調査の理由および必要性の個別的、具体的な告知のごときも、質問検査を行なううえの法律上一律の要件とされているものではないとして法律上明文の規定がなくても許容される場合を認めています。

エ〇 最決平16・1・20。

オ〇 最決昭55・9・22。

 

 

今回はここまでとします。

 

 

※1 宇賀克也『行政法概説Ⅰ』【第7版】2020年 有斐閣 P27(以下、宇賀Ⅰ)。最新版でない点ご容赦ください。

※2 宇賀Ⅰ P21。