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早いもので2023年度も今日で終わり、明日から2024年度で、新たに公務員になる方も、定型句ですが、期待と不安で一杯ではないかと思います。
今年は4/1が月曜日ということで、残念ながら丸1週間勤務しないと週末になりませんが、こればかりは回り合わせですから、腹に力を入れて頑張ってください。
年度末は例年、新公務員になる方に向けて偉そうなことを書くのを、勝手に例としているので、今回は恥を忍んでもっともらしいことを書くことにします。(←どこにそんな必要が!)
年明けから地震やら空港事故やら物情騒然としましたが、これらに象徴されるように、今後わが国は大きな混乱・転換期を迎えることになるでしょう(わが国だけではありませんが)。
有形・無形の社会インフラを運営する皆さんは、望むと否とにかかわらずご苦労されることであろうと頭が下がります。
「では、どうする」についてもっともらしいことを言える有能さを持ち合わせないので、老兵は静観するしかありませんが。
皆さんは明日から当面は新しい仕事に慣れるために夢中になると思いますが、そうしつつも、一日のどこかで日常から距離を置いて考える時間を確保し、日常から距離を置いた思考を継続するよう心掛ければ、当方のごとくバカになることを防止する一助になると思います。
今まで講師商売をやってきた経験からも痛感するのですが、教師と役人は油断するとあっという間にバカになります。
要因は数ありますが、最大のそれの1つは、試験の採点や申請書の処理等から分かるように、仕事の多くがネガティヴ・チェックにあることです。
外交官出身の評論家、佐藤優の書いたものを読んで感じるところがあったのですが、曰く、外国語の書物を1冊翻訳するのに必要な語学力を10とすると、その訳書の誤訳を指摘するのに必要な語学力は1か2で足りると。
つまり、他人の成果物にダメ出しをするのは、その作成者よりはるかに低い能力でも可能である、ということです。
したがって、そのようなことばかりしていれば、当人の能力はどんどん低下していく上、意識的に歯止めをかける必要があるにもかかわらず、本人がそれを自覚することは極めて困難です。
しかも、そのような立場に胡坐をかいていると、自分の能力が低下の一途をたどっているにもかかわらず、逆に自分の能力がどんどん向上していると勘違いしかねません。
なお、容易に推測できるように、組織での地位が上がれば上がるほど、その危険は高くなります(手を抜けば、日頃やることが、部下のネガティヴ・チェックで済むようになります)。
ちなみに、皆さんは、中学生や高校生(下手すれば小学生)の時分に、周りの大人はバカだなあ、と思ったことはありませんか?
……ありませんか、そうですか。まあ、それは幸いなのかな?
というわけで、新公務員の皆さんに向けて、将来老廃兵の一丁上がり、とならずに世の荒波を乗り切るうえでの工夫について一言しなければ、単に不安を煽るだけに終わってしまいかねない段階となりました。
ただ、具体的な能力や工夫の方策は、皆さんそれぞれの天稟やこれまでの体験、携わる職や今後の人生設計により異なるでしょう。
そこで、ここでは、最大限の共通項として、冒頭でも言及したように皆さんが自らの思考を継続するために、思考停止に陥る危険のある言葉を2つ紹介し、用心を促す警鐘を微かながら鳴らしておくことで、責めを塞ぐことにします。
➀ 歴史に「if」はない。
この言葉は歴史を学ぶ上で金科玉条・絶対命題のごとく叫ばれることがあるので、「歴史は繰り返す」という諺にありがちの真逆の言葉があるにもかかわらず、無条件降伏してしまいがちです。
確かに歴史的事象は一回性のもので、全く同一の事象はないという点では、間違いなく正しいでしょう。
しかし、それは敢えて言うならば学問としての(特に『科学』を気取った)歴史学研究での話でしょう。
この言葉は、歴史的事象を現在の(自分の)問題と突き合わせて考えたり、もののの見方・考え方を鍛える作業、つまり歴史を「鏡・鑑」として用いるという、多くの先人が利用してきた知恵の源泉を等閑視させかねません。
一方、「歴史は繰り返す」の方も、彼此の状況の違いを捨象した法則性にこだわる点で、歴史哲学としてはともかく、自分の問題についての思考・判断については、その正確さを下げるかもしれません。
② 陰謀論
面白さ優先で虚偽上等の都市伝説を陰謀論呼ばわりするのはまだしも、表層に現れた事象の背景にある事柄・問題を検討する作業を陰謀論呼ばわりして一顧だにしないのは、思考停止一直線でしょう。
厄介なのは、両者の境界が曖昧な場合があることと、プロパガンダとしてある立場に都合の悪いことを陰謀論呼ばわりする場合があることです。
思考エネルギー節約のためのレッテル貼りにこの言葉を使わず、個々の事柄を個別に検討・判断する姿勢が大事でしょう。
長くなるほど面白みが揮発していくので、このくらいにしておきます。
ともあれ、皆さんの今後が楽しいものになりますように。