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先日3/17(日)に実施された2024年度の国家総合職試験の問題をみることができましたので、今回はその中から、制度変更がされた基礎能力試験の変化と、それが今後の公務員試験やその対策に及ぼすであろう影響(これは私見色が強くなりますが)について書くことにします。
まず、出題の内訳は(太字は受験案内で事前に公表)、
№1~24=知能分野(24問)
内、№1~10=文章理解(10問)
現代文4問(内容把握3、空欄補充1)
英文6問(内容把握4、文章整序1、空欄補充1)
内、№11~24=数的処理(14問)
判断推理7問、数的推理4問、資料解釈3問※
№25~30=知識分野(6問)
内、自然、人文、社会に関する時事5問、情報1問
※なお、数的処理のうち、判断推理、数的推理、資料解釈の出題数の内訳は、国家一般職や国家専門職の受験案内では公表されていますが、それと同じ出題数でした。
知能分野では、文章理解の現代文と英文の比率が4:6(5:5でなく)であったこと、数的処理の内訳が国家一般職・専門職と同一であったこと以外は、特筆すべき事情はないといっていいでしょう。
一方、注目の知識分野ですが、№30の情報(フローチャート中の式)を除く「自然、人文、社会に関する時事」は、
№25=近年の科学技術
№26=国際情勢など
№27=新しい日本銀行券(新紙幣)
№28=生物などをめぐる最近の動向
№29=近年の法令改正など
というテーマで作問されています。
事前公表された例題のように、時事的な話題と自然・人文・社会科学の知識が組み合わされた選択肢が多く、同じ問題の中で自然・人文・社会科学の知識が併用されている問題もあります。
例えば、№27(新紙幣)は経済だけでなく、紙幣の図柄等に引っ掛けて日本史、文学、生物、美術などの知識が併用されているのは、テーマからも想像がつくでしょう。
しかし、№28(生物など)ですら自然科学一辺倒ではなく、ジャイアントパンダの絶滅危惧種指定に引っ掛けて、「日中国交正常化は、1972年に中曽根康弘内閣が日中平和友好条約を結び実現した。」という知識が選択肢を切る決め手になっています(もちろん『田中角栄内閣が日中共同声明』ですね)。
したがって、「この問題は自然科学」、「この問題は社会科学」といった学問分野による分類はしにくい問題が多いことになります。
また、特定テーマで選択肢を5つ作らなければなりませんから、選択肢の時事部分が、一般的な「時事問題」というには細かすぎないか、と思われる場合もあります。
もっとも、作問者としては、その場合は自然・人文・社会科学の知識で選択肢を切れるようにするか、消去法で解けるようにすれば悪問扱いは避けられるという腹でしょう。
以上を踏まえての今後についてですが、今後の2024年度の人事院管轄の試験(国家一般職、国家専門職)でも、「自然、人文、社会に関する時事」は、上記と同じような問題になると思われます。
取り敢えず今年度(2024年度)の国家公務員受験生は、問題数の多い一般知能である程度安定した得点ができるよう練習に努めるのが最も効果的でしょう。
一方、「自然、人文、社会に関する時事」については、従来の一般知識対策、時事対策を継続して、時事の知識か自然・人文・社会科学の知識か、少なくともいずれかで誤肢を切れるようにしておくのが、対策の基本と思います。
国家一般職・専門職とも問題数は5問(情報が1問と仮定して)でしょうし、特に併願する地方公務員試験が従来の出題と変わらない問題であるとすれば、ここでいたずらに新規な対策を考える必要はないでしょう。
なお、来年度以降に受験予定の皆さんについては、今後の試験の出題をもう少し確認してからにしたいと思いますが、現時点では、地方公務員試験の出題に大きな変化がなければ、従来の対策を大きく変更する必要はないのでは、と考えています。
ただ、国家公務員試験の基礎能力試験の一般知識部分において、頻出の知識をつかむため、「過去問をつぶして頻出知識を抽出する」という従来の金科玉条的方策は、少なくとも短期的には適用しがたい、という点は心得ておいた方がよさそうです。※
一定の難易度にとどまる知識であることは前提としても、それに加えて、たまたまその時事テーマに関連する知識だったかどうかで、出題が決まることになるでしょうからね。
※長期的には、今後もし、特定のテーマ(例えば『科学技術』、『国際情勢』、『生物』など)の出題がほぼ固定化して、過去問が積み重なれば、国家公務員試験の問題でも「過去問をつぶして頻出知識を抽出する」という方法が通用するようになるかもしれません。