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暑い日が続いています。
予備校現場との接触が減ったこともあり、すっかり月1更新になってしまっていますが、定着しないよう心掛けなければ。
今回は、問題が公表されて参照できるようになったこともあり、今年度(令和7年度)に大きな制度変更のあった裁判所事務官(大卒程度試験)の専門試験について、出題結果が実際どうなったかについて簡単にコメントすることにします。
今年度からの同試験の大きな変更点としては、
➀憲法の専門記述が廃止された代わり、専門試験(多肢選択式)の憲法の問題数が7問から10問に増加。
②専門試験(多肢選択式)の民法の問題数が13問から10問に減少。
③専門試験(多肢選択式)の選択科目に行政法が追加。
になります。
全体として、問題の出題形式は、単純五肢択一式、正誤組合せ式(正誤正正、正正誤誤…)、記号組合せ式(アイ、アエ…)のいずれかで、大きな変化はありませんでした。
➀については、出題分野の比率が注目されましたが、基本的人権7問、統治機構3問と、従来の出題比率からみて、大方の予想の範囲内だったのではと思います。
人権は精神的自由権4問、経済的自由権1問、社会権1問、包括的基本権1問と、自由権、とくに精神的自由権重視の従来の傾向が維持されています。
一方、統治は司法2問、財政1問でした。司法権の限界の問題(№8)で地方議会の出席停止の懲罰に司法審査が及ぶとする判例変更(最大判令2・11・25)が正答となっていること、予算と財政の問題(№10)で予算議決手続という国会の要素を入れて出題範囲を広げようとしている点が注目されます。
なお、憲法の専門記述が一般職で廃止され、総合職のみの出題となったことから、民法・刑法(・訴訟法)の専門記述と揃えて、憲法の出題も事例問題になるか注目していたのですが、従来通り憲法のみ一行問題(財産権の保障について、その制限と補償に触れながら論ぜよ。)でした。
②については、やはり出題分野の比率が注目されました。総則2問、物権2問、債権総論2問、債権各論4問と、債権法、特に債権各論重視の出題だったことは、従来の傾向を維持しています。
担保物権の出題がなかった点は、従来から時々あったことですが、債権の目的(№15)、免除(№16)と、債権総論の出題がマイナー分野ばかりだったのが注目されます。
③は新科目の導入という全く新しい変更で注目されました。
出題分野は行政作用法5問、行政救済法5問と均等で、裁判所だからといって行政救済法の比率を高くしたわけではありませんでした。また、行政組織法の出題はありませんでした。
より細かくは、№21行政立法、№22行政行為、№23行政の実効性確保の手段、№24行政指導、№25情報公開法、№26行政不服審査法、№27処分性、№28取消判決の効力、№29国家賠償法1条、№30損失補償と、満遍ない出題で、行政作用法・行政救済法の内部でも出題分野の大きな偏りはありませんでした。
難易度的にも特別区Ⅰ類~国家専門職レベルで、私見では想定の範囲内でした。
財務専門官試験が新設されたときにも見られたように、新制度初年度は作問者も肩に力が入って難問や変わった出題が見られることがあるのですが、私見では今回は他科目との難易度調整も意識して、全体としては無難に作問した印象です。
行政法に関しては、上記のような状況が維持されるかは、もう少し様子を見る必要はあるでしょう。
なお、刑法は刑法総論5問、刑法各論5問と従来通りでしたが、各論の出題分野については、№36公務執行妨害罪、№37文書偽造罪と国家・社会的法益に対する罪の比率が上がったこと、財産犯が2問にとどまった(№39・40)ことが特徴的でした。
経済理論に関しては、私には評価能力がないのですが、ほとんど計算問題である点は従来通りと思います。個々の問題の分量が減った印象があります。短い問題だからといって難易度が低いとは限りませんが、難易度(変化)について経済学の先生に確認できる方は、してみる価値はあるのではと思います。