今回の取り上げる季語は「蟻」で、夏の季語となります。
蟻は日本に二百以上、全世界では一万以上の種類が生息していると言われています。
種類の多さもさることながら、大規模な巣を作る種類では数万匹、小規模な巣を作るもので数百匹が集団生活を営んでいます。
蟻は高度な社会性を持った生活を営んでおり、昆虫として最も進化したものと認識されています。
このように種類、数の多さからか海外旅行で食べ残しに見慣れぬ蟻が列を作ってやって来ていたことを記憶しています。
このようにありふれた存在なので、蟻から思い浮かぶのは誰でも知っているような風景や成句などで、これはみんなが見過ごしていることだというものが思いつかず、なかなか類想から抜け出すことができません。
これは以前に取り上げた夏の季語の「ごきぶり」に通ずるところがあります。
類想から逃れるには季語の感覚(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)の中でその季語から受ける印象が薄いものや、その季語から連想されにくいものを題材にして詠んでみるという方法があります。
歳時記の例句や自身が思いつくことから、蟻の印象が強い成分を拾い出してみると視覚が一番強いように思われます。
また、例句からは連想力も強いことがわかりました。
逆に聴覚、触覚、嗅覚、味覚は比較的弱いと思われます。
しかしながら、言うは易く行うは難しで、あまり詠まれていない題材を使っての作句は至難の業ですが、なんとかものにしたい季語ではあります。
とめどなく蟻の這い出る穴の音
(俳句ポスト投句)
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。