抗プロラクチン血症には、「麦芽」(ばくが)をよく使用します。
麦芽って、芽が出た麦の実です。
発芽玄米みたいなもんなんですかね?
こちらはU社の麦芽。根っこが生えてます。ちょっとモヤシっぽいです。
こちらはM社の麦芽。見た目普通の麦です。同じ麦芽なのに、なんでこんなに違うんでしょうね
昔の人は「抗プロラクチン血症」なんて知りませんでしたが、母乳を止めるのに使っていたようです。
あ、プロラクチンって、「乳汁分泌ホルモン」のことです。
授乳中のお母さんには必要ですが、これから妊娠を希望される場合、排卵を抑制してしまいますので、不妊の原因になってしまいます。
母乳を止めるなら、抗プロラクチンにも効くだろうということで、最近使われるようになったのでしょうね。
麦芽なんて食べ物みたいなもんですが、妊娠中の長期・大量服用は望ましくない生薬です。(少量・短期なら問題なし)
さて、西洋医学ではプロラクチン血症には、カバサールやパーロデルというパーキンソン病のお薬をよく使用します。
パーキンソン病の治療よりもだいぶ少ない量で使用しますが、ドパミン受容体に作用する働きがプロラクチン低下に関係するようです。
そのカバサールやパーロデルなんですが、麦角アルカロイドと言われる成分なんですね。(現在は麦角から抽出するのではなく、化学合成で作っています。他にも片頭痛の薬にも麦角由来の薬があります)
麦角・・・というのは、麦の穂に寄生した菌(キノコ)のことで、麦角菌と言います。中世ヨーロッパでは、この麦角菌に寄生された麦を知らないうちに食べて、ナゾの病気が流行った・・・と考えていました。
自然のものですが、昔の麦角中毒は結構激しいものだったようで、血管収縮による手足の壊死や、時には死亡することもあるそうです
麦芽はもちろん麦角が寄生したものではないのですが、たまたま麦角由来の医薬品がプロラクチン血症に使われる点が、同じ「麦つながり」なので、ちょっと不思議です。
ちなみにキノコつながりで、「冬虫夏草」は麦角菌の仲間だそうです。(でも食べて死ぬわけじゃないよ)