てぃんさぐぬ花・・・4 | ブログ連載小説・幸田回生

ブログ連載小説・幸田回生

読み切りの小説を連載にしてみました。

よろしかった、読んでみてください。

 4

 

 朝のラジオ・ニュースで台湾の地震を知った。
 マグニチュード7・?
 台湾中部の南投県 震源の深さは・・・・・
 日本時間の深夜3時前に大きな地震があったようだ。

 

 少女はラジオに耳を澄ませて朝食の準備をした。
 トッドが足元で、餌をねだっている。


 

 少女は神戸の地震をバルセロナのテレビで観ていた。
 遠い異国から、その惨状を眺めている。
 高速道路が倒壊し、ビルが倒れ、木造家屋や商店は焼き尽くされていた。

 

 どれほどの人が死んでいったのか、実感できないでいる。
 何故か他人事のように感じていた。
 被災された方の多くが小学校の体育館での生活に耐えている。
 アキのような子供たち、忘れられた猫もいた。

 

 季節は真冬だった。
 ポリタンクを手に水の配給を、役所やボランティアの弁当を待ち、劣悪な環境と自分の置かれた現実にむかいあっていた。
 下町の商店街が燃え続え、靴屋さん、在日の人が多い街であるという。

 

 1週間ほど、彼女は神戸の市街地をテレビで眺めて続けていた。 
 彼女は日本人であって、日本人でなかった。
 自分が何者であるか、わからなかった。
 あえて考えないでいた。


 

 当時、彼女は小学校6年生で、あのガウディの街に住んでいた。
 有名な坂道が好きだった。
 休みの日に家族で傾斜をのんびりと歩いた。
 バルセロナを、あのガウディの街を想っている。

 

 台湾地震のニュースを聴いてスペインの夏を懐かしんでいた。
 赤い屋根の家でかわいい子猫を飼っていた。
 パパがお庭の竈のような所で火を熾し、香辛料で味付けした美味しいパエリヤを作ってくれた。
 テツは上手いと言ってくれるが、ログハウスのパエリヤには満足できない。

 

 パパのパエリアが食べたくなった。
 料理をテーブルに載せた。
 NHKのニュースに台湾が映しだされている。
 そして、食い入るように見つめ映像を追う。



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