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朝のラジオ・ニュースで台湾の地震を知った。
マグニチュード7・?
台湾中部の南投県 震源の深さは・・・・・
日本時間の深夜3時前に大きな地震があったようだ。
少女はラジオに耳を澄ませて朝食の準備をした。
トッドが足元で、餌をねだっている。
少女は神戸の地震をバルセロナのテレビで観ていた。
遠い異国から、その惨状を眺めている。
高速道路が倒壊し、ビルが倒れ、木造家屋や商店は焼き尽くされていた。
どれほどの人が死んでいったのか、実感できないでいる。
何故か他人事のように感じていた。
被災された方の多くが小学校の体育館での生活に耐えている。
アキのような子供たち、忘れられた猫もいた。
季節は真冬だった。
ポリタンクを手に水の配給を、役所やボランティアの弁当を待ち、劣悪な環境と自分の置かれた現実にむかいあっていた。
下町の商店街が燃え続え、靴屋さん、在日の人が多い街であるという。
1週間ほど、彼女は神戸の市街地をテレビで眺めて続けていた。
彼女は日本人であって、日本人でなかった。
自分が何者であるか、わからなかった。
あえて考えないでいた。
当時、彼女は小学校6年生で、あのガウディの街に住んでいた。
有名な坂道が好きだった。
休みの日に家族で傾斜をのんびりと歩いた。
バルセロナを、あのガウディの街を想っている。
台湾地震のニュースを聴いてスペインの夏を懐かしんでいた。
赤い屋根の家でかわいい子猫を飼っていた。
パパがお庭の竈のような所で火を熾し、香辛料で味付けした美味しいパエリヤを作ってくれた。
テツは上手いと言ってくれるが、ログハウスのパエリヤには満足できない。
パパのパエリアが食べたくなった。
料理をテーブルに載せた。
NHKのニュースに台湾が映しだされている。
そして、食い入るように見つめ映像を追う。