阿曽原温泉小屋下のテント場から一旦下り 、再び上りに転じて阿曽原谷辺りに来ると、沢水が頭上から降り注いでおり、それを除けようとして、危うく転落しそうに。この日本最大の黒部渓谷に転落することは、即、死を意味します。
谷を越えるとまた下り、最下部に達すると、そこから九十九折(つづらおり)の急登が始まります。
高度に於いて100m以上上ると、ようやく水平の歩道に戻ります。ここからの歩道は樹林の中ということもあり、前日のような、道幅が70cmほどの断崖絶壁箇所はありません。
所々の樹林の切れ間からは、この後、その全容に圧倒されることになる「黒部の怪人」こと、奥鐘山(1543m)が見え隠れしていますが、この時点ではただの岩峰に過ぎません。
道が右急カーブとなる折尾谷には滝が懸かっており、清 涼感を得られます。
しばらく歩き、後ろを振り返ってみると、さきほどの折尾滝の全景と、谷を横断する一筋の水平歩道が遠望でき、改めて岩盤を刳り貫いて造成した水平歩道の驚異を感じさせられます。
やがて、前日よりは道幅が広いものの、「大太鼓」と呼ばれる断崖道となり、その道が最も東に振った地点周辺からは、「黒部の怪人」の大岩壁が視界一杯に迫ります。
恰も山頂から最下部の黒部渓谷沿いまでが一枚岩のように見え、カメラに収まりきらないその岩盤の迫力に圧倒されてしまいます。ここがこの日最高の絶景ポイント。
断崖道が終わり、志合谷まで来ると不気味な素掘りトンネルが口を開けています。当然中は真っ暗。
入口には大量のスーパーのゴミ袋が放置されているのですが、これは袋を足に履いてトンネル内の湧き清水を通過するため。しかし袋をしばるヒモがなければ、その役目が果たされません。
マグライトを点けて歩いて行きましたが、最初、水溜り程度だった清水の水かさは、やがて向こう脛まで達し、トレッキング・シューズ内は水で溢れます。
全長150mのトンネルで谷を通過するようになっているのです。
トンネルを出ても水平歩道は続き、所々、白馬の山々を遠望することができます。
欅谷(けやきだに)を過ぎると道は下降に転じ、やがて黒部峡谷
鉄道
阿曽原温泉小屋からここまでは四時間半ほど。
黒部峡谷鉄道にはトロッコ車輌があり、黒部川沿いを宇奈月温泉まで走ります。宇奈月温泉駅からは富山地方鉄道に乗り換え、JR北陸本線へと向かいます。
この黒部渓谷下ノ廊下コースは、前半部は登山上級者向きですが、後半は中級者でも辿ることができるため、宿泊施設のある欅平から大太鼓ないし折尾谷まで、逆コースで登ってみては如何でしょうか。
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