第26回関東女子中学高校ラクロスリーグ戦 関東ティーンズカップは昨日6月9日に行われた、準々決勝戦を終えベスト4に絞り込まれた。トーナメント1回戦2回戦全試合結果と、特に幾つかの試合について詳しく振り返るシリーズ2。今回は決勝トーナメント1回戦 桐蔭学園高校vs慶應義塾女子高校、2回戦 都立飛鳥高校vs桐蔭学園高校 を通して振り返る。
<決勝トーナメント1回戦>
波乱を演出したのは桐蔭学園高校だった。
☆1回戦第4試合
桐蔭学園と慶應義塾女子はタイプ的に似たチームであったが故に、勢いの勝る方が一気に走る事は考えられた。そして1Qは正に慶應義塾女子がモメンタムを得てドローワー70番の強い仕掛け等で圧倒し、ショットも1対5と桐蔭学園が封じ込まれ、1Qから追い込まれた様相を見せた。その中で3本のショットを止めた桐蔭学園ゴーリー10番合使(関東U18選抜選手)選手の活躍でかろうじて踏みとどまった印象だった。
CTO(Caused Turn Over)こそ少なかったが、躊躇なく詰めるダブル、トリプルの前での慶應義塾女子の強いライドを交わす意識が強い余り桐蔭学園はミスを連発。ショットを撃つ機会を中々得られなかった。
現代のラクロスでは、不確定要素の多い、1Q,4Qよりも2Q,3Qのパフォーマンスが重要視されるが、この試合2Q、3Q共に桐蔭学園のパフォーマンスが上がらず、一方的な試合になる可能性があったが、ハーフタイムを境に意外な展開に代わった。
試合データを見てみよう
後半のターンオーバー数(T/O)、CTOに着目して欲しい桐蔭学園のT/O数が極端に減り、慶應女子がボールを奪ったCTO数も極端に減少している。それと同時に慶應女子のライドの強度が下がり、ゴール前でのシュートアクションも低下する。そして4Qではショット数が逆転する。
そして、極めて高い桐蔭学園のショット成功率。そしてゴーリーのセーブ力。それが最後に桐蔭学園に勝利を齎したと言える。
☆こぶ平's Eye
この両チームは、フィジカルの強さを武器にする面は持ち合わせていないが、運動量に関してはともに良くボールを動かす活発なラクロスを展開する。そんな中、慶應義塾女子の70番がパワフルに持っていく。それと連動して誰もが仕掛けを見せて数的優位から得点を演出するという点で慶應義塾女子が優位に試合を進めそうだったが、2Q以降、特に後半攻守ともにブレイクをもたらす動きができなくなった慶應義塾女子に何が起こったのか?
これは推測ではあるが、行けるという気持ちがチームを支配した時、行ける理由を理解しそれを更に加速するというより、このまま安全に進めれば行けるという、安定志向に陥ってしまったのではないか。その中で攻撃の機会が減った分わずかに桐蔭学園の攻撃機会が増えそれを100%捉えられた。
それを支えた桐蔭学園の枠内ショット率100%という数値。これが桐蔭学園の強みの一つだった。そしてゴーリーのセーブ。やはり現代ラクロスでゴーリーは重要なファクターである。
決勝トーナメント1回戦では2つの大接戦があったものの、結果的にはシード校が挑戦者を退けて準々決勝へと駒を進めた。
<決勝トーナメント準々決勝>
準々決勝の試合前の下馬評では、予選の結果を見てもAシード4校とBシード4校の間では力に差があるとういう見方が支配的だった。
Aシード4校はそれぞれがタイプこそ違え、超高校級の選手を擁して得点力を備え、高いチーム力を持ったチームであることは間違いなかった。
そして結果は。
第2試合でアップセットが起こった。立役者は、1回戦で5点しか取れずに苦しんだ桐蔭学園だった。1回戦のデータと比較しながらアップセットの理由を検証してみよう。
☆都立飛鳥高校vs桐蔭学園高校
いきなり試合のデータから
①桐蔭学園は1回戦 対 慶應義塾女子に対して5点しか取れなかったが、この試合では9点を取ることができた。それも格上と目される相手に対して。
②CTOで飛鳥以上の数値を残し、飛鳥のミスを誘った。
③ゴーリーのセーブ数において、飛鳥の倍以上のパフォーマンスを記録し、ショットの力がある相手に対して、1回戦よりもセーブ数で上回った(6→7)
この3点に着目してみた。
①について、得点が倍増した。しかも格上相手に。
これは、慶應義塾女子の桐蔭学園に対する周到な準備もあったのだろうが、前方からのハードなプレスのアプローチが徹底しており、ショットの機会も得られなかったのが、今回は同様にCTOを与えても、相手陣で再び奪え返す事ができる割合が多かった。クリア率もかなり向上したはずだ。ここにシュートまでいく攻撃成功率の10ポイントの向上が生まれた。そしてショット数は倍増した。しかし、倍増と言っても12本なのだが、特筆すべきは枠内ショット率100%という数値と、ショットの決定率75%という数値だろう。
枠内ショット率については、2試合続けて100%と、これがフロックではない事が証明されている。そしてそこからの83%、75%というショットの決定率がもたらされた事。これはどのチームよりも高い数値であり、どのような練習でもたらされたのか注目すべき値だ。
②CTOで飛鳥を上回った
これは、フィジカルの強さで上回る飛鳥に対して、集散の速さで対応した事と、ライドの際のチェックの技術が優れていた事も挙げられる。飛鳥の1オン1に対して、度々ボールを刈り取ることに成功していた。これは守備の健闘であり、飛鳥に簡単なショットを撃たせない効果としても大きかった。
③ゴーリーのセーブ
現在のラクロスにおいて、ゴーリーの力、特にセーブ力は試合の勝敗を大きく左右する。その意味において桐蔭学園10番合使選手のパフォーマンスは正に勝敗の行方を左右した。
圧巻は8対8からの飛鳥11番吉村選手のゴールクリース前からのショットをセーブし、決勝点に繋げた冷静なフィードを送ったプレイだ。シュート力のある飛鳥に対して7セーブは値千金だった。もちろんゴーリーのセーブし易いポイントに相手を追い込んだ桐蔭学園の守備も良かったと言える。
勝因と考える②③については1回戦の対 慶應義塾女子戦と同様だが、①の攻撃機会を多く持てた事は、守備との相対ではあるが、重要なポイントは。桐蔭学園のアタックの選手が口にしていた「前回、攻撃に行けずに不甲斐ないプレイに終始したが、この試合では絶えず前にボールを送ることを意識して積極的に仕掛けていきたい。」という事の実践をしたという事だろう。
この切り替えを成功させたコーチングも評価されるべきであろう。こうして今回世紀のアップセットが演じられた。
☆こぶ平's Eye
飛鳥サイドからすると、何故負けたのか中々受け入れるのには時間が掛りそうだが、1Qで逆点はしたものの、「こんなもんじゃねぇだろう!」の気持ちが2Qの無理なショットに繋がったのかもしれない。2Q4本と1Qと同じ数のショットを放ちながら、枠内は1本、それも下に行ってしまうショットでセーブされる。そこに守備を交わす桐蔭学園のファストブレイクが有効打として決まり、「こんなはずではなかった」という気持ちに選手もベンチも侵された可能性がある。
3Qに入ってもボールは奪えるが、桐蔭学園の守備を崩しきれず、ターンオーバーからの失点を重ねて、最後にファストブレイクで1点を返すのみに終わった。
4Q 4対8となったのが残り6分。ここから飛鳥らしい、スピードの乗った1オン1をベースに、思い切りのよいプレイがようやく続き、残り90秒での、11番吉村選手の必殺ドロー自取りからの82番人見選手へのホットラインも通して同点に追いついたのは流石だった。
勢いに乗った11番吉村選手のドローブレイクショットをセーブされ、そのターンオーバーを決められ万事休した。
残りの6分の攻撃が、何故それまでの時間にできなかったのか?という悔いは残るかもしれないが、それをさせなかった、桐蔭学園の守備が功を奏したというべきなのだろう。
更に加えれば、4Q 4対8 とリードして残り6分、桐蔭学園はボールキープを進める選択もあったが、敢えての更なる攻撃姿勢に反撃の機会を得られたという事もあった。
10人それぞれの個の力では上回っていたはずのチームが破れるそれもラクロスなのだろう。
最後に全日本中学高校女子ラクロス選手権大会決勝のデータと比較して見ると
飛鳥高校は同じ8点だが、明らかにショット決定率が下がっている。ターンオーバー数と被ターンオーバー数はほぼ同じ。セーブされた数だけ勝利が遠のいた。
かくして、第26回関東ティーンズカップラクロスのベスト4は
2年連続チャンピオンを目指す 東京成徳大学中高
秋からの進化が著しい 日本大学高中
全日本中高ラクロス王者 横浜市立東高
予選Bブロック3位から上がって来た 桐蔭学園高
となり6月15日(土) 神奈川県のMSP会場で準決勝を戦う
準決勝組み合わせは
第1試合 10:30 東京成徳大中高 vs 日大高中
第2試合 13:00 横浜市立東高 vs 桐蔭学園高
となっている。
桐蔭学園高校の春ベスト4進出はいつの事だろう。2009年は確かにベスト4。それ以降、、、、
読者のご指摘で確認された事があります。2022年の春季特別大会において、予選ブロック1位、決勝トーナメントで目白研心中高を6対3 と破ってベスト4に進出していた。
funeさん 情報ありがとうございます。
さぁ、ティーンズラクロスも大詰めを迎え、一段高いレベルでの戦いとなる。どんな結末が待っているのか?6月22日の決勝戦が待ち遠しい。
以上 関東ティーンズカップ 決勝トーナメント振り返り2でした。
やっぱりラクロスは面白い!!
こぶ平