『竹取物語』の冒頭文、締めの言葉は「三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり」である。
ここに、古文で学習すべき観点が凝縮されている。
まず、「三寸ばかりなる人、」の部分。これは主語で、下に助詞「が」が省略されている。マドンナこと荻野文子なら「登場人物の下に読点がついていると98%主語」と教えるかもしれない。98%というのは、何のエビデンスもなく、しばしば批判の対象にされる。98%かどうかはさておき、わりと高い確率で、「登場人物の下に読点がつくと主語」になっている(と思う)。
古文の場合、主語が省略される場合が多い。そのため、主語の判定が重要になる。また、助詞が省略されることも少なくない。そういう点で「三寸ばかりなる人、」は、今後の古文学習においても注視していくことの一例である。
「いとうつくしうてゐたり」は、正確に解釈できるかがカギになる。
「いと」(とても)、「うつくし」(かわいい)、「ゐる」(座る)は、それぞれ頻出の重要単語。
「いと」は、この業界では「たいそう」と現代語訳されることが多い。といっても、「たいそう」なんて現代人は使わない。ただ、とにかくよく見かける訳し方なので、この際、知っておくと良い。「『いと』は英語なら“very”」と教える。英語とのタイアップ。教科横断型(そんな「たいそう」なものではないが)。
「うつくし」は、現古異義語。「美しい」と「かわいい」は似ているようで別の意味。犬を散歩している人に出会って、「かわいいワンちゃんですね~」と褒めることはあっても、「美しいワンちゃんですね~」と言うことはない。そんなことを言えば、変な目で見られてしまう。古文の「うつくし」は、あくまでも「かわいい」。似て非なる意味である。
最後の「ゐたり」は、「ゐる」を辞書引きさせる(古文単語の本でも可)。索引の後ろの方になる。「ゐ」は、ア行ではなく、ワ行。意味だけでなく、古語の行も教えられる。
「たり」は助動詞で、「~ている」という存続の意味を表す。上の「ゐる」に存続の意味を添え、「座る」+存続で、「座っている」の意味になる。古文は助動詞が重要。助動詞一つで意味が変わってくる。
というわけで、「三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり」には、主語の判定、省略された助詞の補充、重要単語、ワ行、助動詞という5つのポイントが含まれている。
今後、古文の学習をするときに抑えておかなければならないことが、凝縮されているのだ。
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