中2の古典の定番教材『平家物語』。冒頭文とともに、よく見るのが「敦盛の最期」。
「敦盛の最期」に限らず、『平家物語』には敬語がたくさん出てくる。
敬語は、小学校でも既習である。そして、口語文法の敬語は、中2で学習する。
ということは、『平家物語』に出てくる古典文法の敬語と、口語文法の敬語を、同時に教えてしまえばいいのではないか。
そんな無茶な、と思われるかもしれないが、小学校である程度習っているから、意外とこれができる。
「敦盛の最期」の本文に入る前に、文学史をまとめ、背景知識を教えたら、音読へ。そうすると、やたら「たまふ」「候ふ」などが出てくることに気づく。
そこで、内容読解に入る前に、本文に登場する敬語を一気にまとめて整理する。
1.尊敬語…動作主が高位の人・相手
「のたまふ」(おっしゃる)←「言ふ」
「まします」「たまふ」(~なさる、お~になる)【補助動詞】
2.謙譲語…動作主が自分(相手が高位)
「奉る」「つかまつる」(~いたす、お~する、~し申し上げる)【補助動詞】
3.丁寧語…です・ます調
「候ふ」(~です・ます・ございます)【補助動詞】
敬語の種類が分かれば、主語も分かる。「敦盛の最期」だと、豪華な装束を身にまとっている「大将軍」(平敦盛)の方が高位なので、尊敬語が用いられていれば敦盛の動作。それに対して、大将軍の首を持ち帰って手柄を立てたいと思っているのは熊谷次郎直実なので、謙譲語が用いられていれば直実の動作。
これは、口語文法でも通じる。自分の動作に使うのが謙譲語。自分の動作に尊敬語を使うことはあり得ない。ごはんを食べるとき、「いただきます」と言うのは、自分が食べるから。「いただく」は謙譲語である。
謙譲語は、字義から「謙遜して譲る語」とわかる。そこで、同じくらいの身長の生徒を立たせる。片方をしゃがませる。そうすると、相手が高くなる。それを見せて、「自分を下げることによって、結果的に相手が高くなります。これが謙譲語です」と説明する。自分を下げて相手を立てるというのは、いかにも日本人らしい発想。
謙譲語の補助動詞の訳し方で「~し申し上げる」は口語文法では出てこない。古文独特の訳し方だけど、教科書の現代語訳もそれで載っていることがよくあるので注意。
最初にこれをまとめておけば、以降、敬語が出てくるたびに何度もノートの最初のページに戻って確認する。この作業をくり返すうちに、敬語の種類・訳し方も頭に入っていく。敬語の種類がわかったら、発問として必ず「主語は誰ですか」と問う。
中学古典としては、かなり踏み込んだやり方だが、大学受験でも敬語で主語の判定をすることが重要になってくる。
口語文法とリンクさせながら、古典文法を習得する、一つの例である。
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