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COPE (KU Plankton Lab)

絶滅危惧研究室の営みをつづるブログです

こんにちは。サカノです。

先日、種子島に漁協訪問へ行かせていただいていました。
訪問の詳細については先生がブログで紹介されていると思いますので、私はこの場で、ある映画の舞台について語ろうと思います。

ある映画とは、新海誠監督の作品の『秒速5センチメートル』のことです。鹿児島県種子島は、第2章「コスモナウト」の舞台となっています。1時間3分の短めな映画ですが、その凝縮された時間の中には、観る人それぞれの異なる解釈を促す余白が残されていると感じます。今年は、実写映画も公開予定で、そちらも楽しみにしています。私は『君の名は。』をきっかけに新海誠監督を知り、これまでに色々な作品を見てきました。新海誠監督の作品では、言葉では語られない人々の感情の機微が、何でもない日常風景と、特異な気象や天文現象の自然美によって、叙情的に描かれていると感じます。

聖地巡礼、まずは二人が通う高校。

種子島中央高等学校(旧:中種子高等学校)。中にまで入ることはできませんでしたが、校門の前に立つだけで、作品の世界と自分が重なったような不思議な感覚を味わい、満喫できました。

次は、ヒロインがサーフィンの練習をする海岸。

中山海岸。サーフィンするにはすごくいい波がきていました。作中では、1番大切だと思う彼のこともサーフィンもぜんぜん上手くいかないという葛藤を抱き、波に挑むヒロインがもがきながらも前に進もうとする姿が印象的です。

下校時に二人が寄り道をするコンビニ。

アイショップ石堂店。男の子はまた同じものを手に取り、ヒロインは毎回ものすごく真剣に選びます。二人のすれ違いをさりげなく描いた場面なのだと感じました。先生と一緒に、二人が飲んでいたものを飲みました。

当日は、ロケットの打ち上げはありませんでしたが、作中にはその場面があり、種子島から打ちあがるロケットと、宇宙の深淵までの気の遠くなるくらいのとおい距離は、二人の心の隔たりを象徴しているように思います。初めてこの映画を観たのは、確か中学生のときで、当時は登場人物の心理描写が全く理解できず、ただただつまらなく、記憶にもあまり残っていませんでした。しかし、この訪問が決まる前に、実写映画化決定を知り、もう一度観返したときには、登場人物たちの葛藤や想いを豊かに感じることができました。今回の聖地巡礼を通して、作品をさらに身近に感じられた気がします。そして、これからも観返すたびに、新しい気付きを感受するのだと思いました。

来月公開される実写映画も心待ちにしています。

こんばんは。主宰です。

 

日本プランクトン学会の報告第2弾です。

東北大学の青葉山キャンパスは、伊達政宗の居城のあった青葉山てっぺんに広がるキャンパスです。以前からも理学部などのいくつかのキャンパスがあったのですが、仙台駅近郊にあった農学部雨宮キャンパスがこちらの青葉山キャンパスへ移設となり、複数の施設整備も行われ、たいへん綺麗なキャンパスとなっています。

正面に見えるのが農学部のビル。そこまでは芝生と森が広がり、一般の方々も利用可能なコモンスペースも整備されています。仙台駅から地下鉄も繋がっているので、ここで学べる学生さんたちは、とても幸せですね。

さて、うちの研究室からは3件の口頭発表、1件のポスター発表をしてもらいました。

こちらがみわちゃんに発表してもらったポスター発表です。沿岸域における動物プランクトンの空間変動を塩分で整理できることを証明し、沿岸水移流によって空間的に変動していることを説明しました。移流の効果について注目した研究例は少ないので、強流域に囲まれた日本にとっては重要な発見だとおもっています。

こちらは、ゆうたの口頭発表。小型浮魚類仔魚にとって主な餌はカイアシ類であり、この餌資源の重複を避けるために非甲殻類を摂餌する傾向があることを示しました。小型浮魚類に見られる魚種交替・資源変動を考える場合、この餌資源の重複・分割については重要なメカニズムだとおもっています。

こちらは、なおちゃんの口頭発表。黒潮域の餌は少ないので仔魚にとっては悪い環境という認識がなされてきたものの、餌の質について評価された研究は皆無でした。我々は、仔魚の成長にとって不可欠である長鎖不飽和脂肪酸を測定し、これが黒潮域の動物プランクトンに多く含まれること、黒潮域で優占するハプト藻類を摂餌してこれらの脂肪酸を動物プランクトンが蓄積していることを示しました。黒潮パラドックス解明における、核心的・革新的な部分を証明できたと考えています。

こちらは、ほのかの口頭発表。北部薩南海域は小型浮魚類の産卵場となっているのですが、ここ近年で卓越する仔魚の魚種交替が認められており、小型浮魚類の資源量変動と同調していることが見えてきています。資源量変動には、クリティカル・ピリオド仮説とマッチ・ミスマッチ仮説が提唱されていますが、これについて東アジアの小型浮魚類資源について実証した例はなく、当該海域でこれを証明しようとしました。摂餌を開始するような仔魚は餌の多い場所に多く、餌の少ない場所に少ないということが、いずれの小型浮魚類仔魚でも認められました。この結果は、小型浮魚類の資源量変動や魚種交替のメカニズム解明に大きな役割を果たしたと考えています。

学会終了後、みんなで記念撮影をしました。学術的に意義のある研究成果を出してくれたし、聴衆に対して丁寧・親切に説明もしてくれて、私としては誇らしく感じました。

なので、仙台の街に繰り出してみんなで慰労会をしました。盛岡で勤務してるまあくんも仙台にわざわざ来てくれて、みんなで乾杯しました。お魚の美味しいお店をチョイスしてくれて、みんな満足。いずれ、インスタで見れます。

 

最後にちょっと反省。

私としては学生発表賞を受賞できるくらいの発表だったとおもっていましたが、いずれも受賞ならずでした。受賞がすべてではありませんが、こんなによい仕事をしてくれたのに受賞させてあげられなかったのは、私の指導がどこかまちがっているとおもいました。どこが悪いのか十分理解できていないのですが、受賞された学生さんの発表をよく思い返して、今後の指導に活かしたいとおもいます。

 

みなさん、よい発表をありがとうございました。

こんばんは。主宰です。

 

9月9日~12日まで、東北大学青葉山キャンパスにおいて、日本プランクトン学会・ベントス学会合同大会が開催されました。うちの研究室から研究発表があったので、報告します。

毎年恒例イベントとなりましたが、秋になると研究成果がまとまってくるので国内学会・国際学会で研究発表をさせることにしています。選択肢はいくつかあるのですが、うちの研究室では次のようにして修業させています。

 

国内学会(日本プランクトン学会):国際学会で発表するための練習。コメント・アドバイスをいただいて、国際学会で発表する内容やパフォーマンスを磨く。

国際学会(PICES):本当の意味での本番。専門家集団からコメント・アドバイスをいただいて、卒論や修論の改訂に活かす。英語によるコミュニケーションだけでなく、研究交流の楽しさを体験する。

研究集会(南九州水産海洋研究集会):卒論や修論の最終発表会のための練習。審査に耐えられる十分な内容と質疑応答対策のための材料を得る。

 

幸い、この数年間で九州地方には海洋学・水産海洋学・浮遊生物学に関する研究者が多く在籍するようになってますし、練習船を使った海洋観測・標本採取のために国内・海外から多くの研究者が来学するので、普段からよい研究環境になっています。この研究環境で得た成果をより広いコミュニティにみてもらって、客観的に自分の出来栄えを評価する場として使っています。

 

九州地方からはかなり離れた地域での学会開催となったことと、研究発表前に若手会が開催されるので、学会前に早めに集合してもらうことにしました。若手会前日には、塩釜市魚市場・仲卸市場を見学し、小型浮魚類の水揚について調査をしました。北部薩南海域では小型浮魚類仔魚の魚種交替が起こっており、近年ではマイワシ仔魚が多く採取されるようになってきました。このため、巻網漁業基地となっている塩釜にも多くのマイワシが水揚げされ販売されていることを想像して現地調査をしました。

こちらが仲卸市場。通常だと許可された仲買人・卸売業者しか入れないのですが、ここでは一般の人も入れるようになっています。

仲卸市場の中はこんな感じ。鮮魚だけでなく、乾物業者もはいっており、多様な海産物を購入できるようになっています。このため、地元一般市民だけでなく観光客も訪れて買い物を楽しんでいます。また、我々だけでなく学生らしき集団もあり、市場調査もしていました。

生鮮魚を扱う仲卸業者さんの店先はこんな感じ。ここは底魚の扱いが多いようです。マイワシだけでなく、マサバ・マアジ・カタクチイワシ・サンマなどの小型浮魚類を探していましたが、サンマの取り扱いはあるものの、マイワシは全く見かけませんでした。もしかすると、魚市場で一括買取されて大手業者へ直接輸送されているのかもしれません。鹿児島中央魚市場では、いくつかの魚種がそのようになってましたので。

ちょっと時間があったので、私がポスドク時代にお世話になっていた東北水産研究所を訪問しました。プランクトン研究するなら、ここは避けて通れない研究所です。先日、小達和子さんがお亡くなりになりましたが、小達和子さんとそのご主人である小達繁さんはこちらでご研究を長くなさっておりました。

 

ちょっと長くなったので、研究発表についてはまた次回報告します。

 

こんばんは。主宰です。

 

8月にハダカイワシのための乗船がありましたが、9月にもハダカイワシのための調査が南星丸で行われました。生活史や摂餌生態を解明するために、様々な時期で標本採取をする必要があるからです。我々の研究室では、8月に生鮮ハダカイワシを採取・飼育して、代謝速度を測定するための酸素消費量を測定しました。下船後にすぐにデータ解析したのですが、結果としては非常によくないものでした。この方法を継続すると研究成果が得られないリスクがあるので、9月の調査までに文献調査をして、別の方法(酵素活性)で代謝速度を推定することにしました。これならば、確実に標本・データを確保できるので、研究成果なしという最悪のリスクを回避できるからです。

さて、以前まで南星丸では暖かくて美味しいご飯を提供してくれてました。ただ、残念ながら司厨部職員が欠員となってしまったため、現在ではご飯を持参しなければなりません。各自持参となるとあまり面白くないので、うちの研究室では分担して持ちより、ブッフェスタイルで夕飯にすることにしました。

学生には主食・野菜をもってきてもらうことにしました。せっかくなので、様々な冷凍チャーハンを持参して味比べということになりました。私は海老チャーハンが美味かったです。

私の担当は主菜。何種類かの揚げものにしました。夜間調査なので、お腹にたまるものにしました。

こちらは男子学生が作ったきんぴらごぼう。見た目も味も完璧。最近の男子学生って、ちゃんと料理するんだね~っておもいました。

こちらの学生は、ご飯とみそ汁だけもってきて、主菜は現地調達とのこと。生憎、夕飯の時間には釣果なしだったので、こちらの主菜を分けてあげました。夜中に挑戦したところ、ようやくマサバをゲット。お刺身にしていただいたとのことです。遅い夕飯だったけど、よかったね~。

たまたまですが、また来月にハダカイワシの調査があります。以前はたくさんハダカイワシを採取できていたのですが、最近は採取機材の選択が悪いのか、なかなか採取できません。ただ、出張先でたいへん有意義な情報を得たので、次回はその情報に基づいて調査をする予定です。こうご期待。

こんばんは。主宰です。

 

9月3日~5日にかけて、学術変革領域研究「マクロ沿岸海洋学」に参画する若手研究者を対象として、サマースクールが指宿にて開催されました。大型科研費によって推進されているプロジェクト研究ですが、ここには多様な学術領域からなる若手研究者が参画しており、これら若手研究者のキャリア育成のために、毎年サマースクールが開催されます。今年は、鹿児島大学水産学部の堤さんがコンビーナーとなり、指宿にて開催となりました。

このサマースクールでは、2名のシニア研究者が講演を行うほか、研究交流のために参加した若手研究者が自分の研究成果を発表します。これらの講演や交流を通して、キャリア育成・アイデア創造など、研究者として必要な能力を育成してもらうというのが目的です。僭越ながら、講演者として招待され、これを機会にこれまでの黒潮パラドックスに関する研究成果の総括をすることにしました。2012年頃から黒潮パラドックスに関する研究を始めましたが、これまでたくさんの卒論生・修論生たちがこの研究に関わってもらい、たくさんの研究成果を得ることができました。これらの研究成果が黒潮パラドックス解明にどう貢献したのか、この研究においてどのような発想や苦労があったのかについて、ざっくばらんに話ました。私はキラキラ研究者ではないので、泥臭くて超現実的なはなしをしたつもりです。たぶん、キラキラしたお話をしたほうが若手研究者をエンカレッジするにはいいかもしれませんが、そういった研究者はごく一部だと感じていましたので、正直に話すことにしました。

私の他には、九州大学応用力学研究所の木田さんが講演されました。回転水槽を使って、コリオリ力を表現した実験をなさってくださり、間近で海洋物理現象を見ることができたので、私にとってはとても新鮮でした。また、陸上に降った雨水がどのようにして河川へ流入するか、それらが海へどのように流れて混合するのかというお話をされましたが、そのどれもが想像とは全く異なる話だったので、とても斬新に感じました。若手研究者にとってはよいお話であることは間違いないですが、それ以上に私にとってもよいお話でした。

晩には、ご飯を食べながら参加者たちといろいろな話をすることができました。ここには領域代表の羽角さんもご参加されていたので、この大型プロジェクト研究を計画なさった当初のお話をたくさん伺いました。研究のアイデアはどこから生まれたのか、研究目的を達成するためにどのような研究体制をどのように構築されたのか、研究推進におけるご苦労は何かなどなど、学会とは異なり少人数での懇親会という時間が設けてあったので、具体的にじっくりとおはなしを伺うことができてよかったです。