ハダカイワシ観測@オープンラボ | COPE (KU Plankton Lab)

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絶滅危惧研究室の営みをつづるブログです

こんばんは。主宰です。

 

鹿児島大学ではまだおやすみ中ですが、普段は教務が非常に多いのでこのおやすみ中にやるべき仕事がたくさんあって、フル稼働中です。ちょっと時間が経ってしまいましたが、9月上旬に実施したハダカイワシ観測について報告したいとおもいます。

鹿児島大学水産学部では、お盆休みが終わると東南アジア・東アジアから来学した留学生と共に、大学院生向けの特別集中講義が1か月にわたって実施されます。その一環として、関心ある研究室に留学生が訪問し、様々な研究活動を実施します。我々の研究室(小針・久米・小玉研究室)では、南星丸を使ってハダカイワシ観測を行っています。

この観測における学術的問いは、「深層散乱層の正体は何か?」です。深層散乱層(DSL: Deep Scattering Layer)とは、船舶に搭載されている音波を発する装置・機器を使うと、海中の深い層に見える影のことです。本来、海底にぶつからないように監視するためだったり、魚群を捉えるためだったりに利用されますが、なぜか海底とは異なる場所に影ができます。

これがその例です。赤く見えるのは海底ですが、それよりも上に緑色の薄い影が見えます。これのことを指します。昼だとこの辺りに見えるのですが、夜になるとこの影が消えたり、表層付近に形成されます。

日没になるとこの影が浮上したり、日出になると潜行するので、おそらく生物であろうことが想定されます。そこで、昼と夜にこの層を狙って曳網して生物を採取し、この影の正体を調べようというものです。

まずは、海洋観測機器を降ろして、海中の環境を調べます。そうすると、水温が急激に減少したり(水温躍層)塩分が急激に増加する(塩分躍層)深さが、50~80mくらいにあることが分かります。従って、これよりも深い場所にある深層散乱層は、躍層付近に多い植物プランクトン(あるいはそれらを摂餌する動物プランクトン)ではないことが想定されます。そこで、次は大きな網を曳網して、より大型生物を採取することを試みます。

そうすると、3種類ほどの仔稚魚が採取されました。イワハダカ・キュウリエソ・ヨウジエソのようです。しかも、今回は大型個体は採取されず、仔魚・稚魚がたくさん採取されました。このため、深層散乱層はおそらくこれら魚類によって形成されているだろうと想像されます。このような野外調査の内容を、さらにデータを加えて海外から来学した留学生たちが9月下旬に報告してくれることになっています。

今回参加したメンバーは、これらの方々。前列の真ん中ふたりが留学生です。ふたりとも楽しそうに実習に参加していました。

南星丸では、やっぱり暖かいごはんをいただけるところが最高ですね。この時も、おいしい夕飯をみんなでいただきました。ごちそうさまでした。

次回は、10月に予定されています。北海道大学水産学部から安間さんがいらっしゃって、一緒に観測・標本採取する予定です。これらの標本を使って、卒論生が生活史解明をしてくれることになっています。