江戸川乱歩賞受賞作。

北海道警察に入った博士号をもつ女性、沢村。警部補となり、本部から所轄に異動し、はじめて実地捜査にかかわることに。そんな彼女に、その素質を認め、先輩として捜査のイロハを教えたベテラン刑事瀧本。

そんな瀧本の異常を感じたのは、逮捕した盗犯の尋問中だった。その被疑者が現場で少女の遺体を見たと証言したときだった。

五年前に起きた誘拐事件。犯人に身代金を渡す際に、駅構内で犯人は列車に引かれ死亡した。誘拐された少女は見つからないまま迷宮入りに。いわゆる、コールドケースになった。

その後、その遺体が誘拐された少女だとわかったものの、犯人はみつからないまま、またも迷宮入り。マスコミに、犯人を死なせてしまった警官を非難する記事が出て、今は交番勤務だった当の警官が拳銃自殺。

その後、捜査資料の一部がマスコミに流れ、記事になったことで、上層部はひそかに、リークした犯人探しを始める。

今は別の署に異動していた沢村までも取り調べを受ける。犯人が見つからなければ、バックが居ない警官を犯人に仕立てるかもしれないと聞いた沢村は、退職も考える。しかし、どうせなら途中で止められた捜査を続けて、事件解決に向かおうと決意する沢村。

当時の目撃者の聞き込みから始めた彼女は、事件の新たな見方を発見し、ついには真犯人にたどり着き、それに自供させて解決するまでを描いている。

前半は少しつまらない気もしたが、後半になり、十分楽しめた。


遠州の山奥にある小さな集落、峰生の名家遠藤家に嫁いだ三代の女性たちを描いた物語。

その敷地に建つ邸宅は常夏荘と呼ばれ、周囲には知られる存在だった。

代々の当主は性的に異常なところがあり、それで悲しいことに堪え忍んで生きてきた。

家紋のなでしこの別名である常夏とよばれたのは、邸宅だけでなく、一族が営む会社や保養施設がある敷地全体もこの名で呼ばれた。不動産業や林業、米相場などで裕福な一族は、昭和になって拠点を東京にうつし、一部の別家だけがのこったが、じり貧状態だったが、平成に入り、二代目の嫁となり、おあんさんと呼ばれる耀子が知り合いと立ち上げたお菓子と惣菜の会社のお陰で、最近は活気を帯びていた。

耀子は少女の頃にわけあって、遠藤家に奉公する祖父のもとに身を寄せ、幸せな時代を過ごした。そのときの幼なじみが立海。しかし、彼は本家の祖父の弟にあたる、年下の少年だった。祖父が老年になって迎えた若い嫁が生んだ次男坊。

耀子も若くして、本家の息子に見初められて、玉の輿に乗ったものの、娘の瀬里ができたあとに、離婚を言い出された。彼には若い頃知り合い、恋仲になった同性の外国人が居た。病勝ちで先が長くないとおもい、彼のもとに行きたいと。

娘が成人するまでというかたちで、別居を認めた耀子。夫は本家のすべてを、立海に引き渡し、出ていき、渡米。そこて新たな事業をして居るらしい。

娘の瀬里が浪人中なのに、塾にもいかず、バイトばかりしていると聞いた耀子は心配で、電話してみるがなしのつぶて。同じ頃に耀子たちが始めた事業が盛況なのをねたんだか、嫌がらせ事件が起こる。どうやら別家の一族が後ろに居る様子。

夫に去られ、娘にも疎んじられ、困惑する耀子。心の奥に今も残る、ある人が居た。

そんな耀子が幸せを迎えるまでをえがいた話。何て言ってしまっていいのかどうか。

すこし、あまりにも境遇が違いすぎて、素直に同感できないかな。

高校生の青春物語等、どうかなとも思いながらも読了。キーワードは宮沢賢治。南関東にある県立高校2年の高田、あだ名はチカは、4月に新入部員勧誘のために、入学式が行われる体育館の前で待ち受ける。相棒は仮入部のキョンヘ。彼らは宮沢賢治がすきで、本を読んだり賢治のことを研究する弱小同好会、イーハトー部の部員。昨年同好会をはじめた部長風見に誘われて入部したチカ。その部長が引きこもりになり、学校にも同好会にも来なくなり、臨時に入ってもらったキョンヘ。

誰も見向きもしないと思っていたら一人の女子、増子、マスヤスが、賢治がすきで入部してくれた。

文化祭で行うビブリオバトルで、風見は昨年優勝した。風の又三郎について熱弁した風見は居ない。でも頑張ろうと意気込む三人。

実はチカは本番に弱い。そのために、受験も希望校に落ち、ランクを下げ、知り合いが居ない高校に入った経緯がある。

ビブリオバトルに向けて頑張る三人の話と、もうひとつ風見をなんとか戻したいと願う彼らのあれこれを描く物語。

部長は最後のメールで、チカに、ほんとうの幸いは遠い、という賢治の言葉を書き込んでいた。それはどういうことなのか?

風見は修学旅行で訪れた岩手で、花巻にある賢治記念館を訪れてから変わったらしい。はたして何があったのか?

最後には退学を決めた風見の悩みが明かになり、それを引き留めて、留年させるまでが描かれる。

なかなかよかったが、正直、そこまで賢治に魅力を覚えない、今の私にはピンと来ないとこも。