久しぶりにまた金庸の作品を読み始めた。「射ちょう英雄伝」で、主人公の郭靖と義兄弟になりながらも、売国奴としてなくなった楊康の忘れ形見、楊過が主人公のシリーズ、全五巻。

第一巻のサブタイトルは、忘れがたみ。

郭靖と黄蓉と出会ったものの、反抗的なために、郭靖は彼を師匠にあたる全真教に預ける。がしかし、ここでも反抗的な彼は逃げ出し、裏山にいた古墓派の後継者である小龍女に助けられ、武術も授けられる。

小龍女の姉弟子で破門された残虐な李莫愁に襲われ、長年住み慣れた古墓を飛び出した二人は別れ別れとなり、新たな展開が待つことになる。

二人にどんな難儀が降りかかるか、そしていつ再会できるか、楽しみだ。

意外とよかった。

東京の西部にキャンパスを持つ南武大学、人文学部社会学科三年生の坂堂雄基は、就職活動に出遅れた。三年生になると学部の学生はみな、どれかの研究室にはいることになっていたため、彼は有賀研究室に入ることにした。説明会で研究室の准教授有賀が、有名企業ともつながりが多いという発言から、就職に有利かと期待していた。

が、その期待は裏切られた。三十代半ばの有賀は若々しいが頼りにもなさそうな印象。しかも彼の研究する仮想歴史学研究室は、歴史上の様々なifによりできる新たな歴史を研究するという、一見いかがわしい研究室で、次期学部長候補の歴史学教授からは非難され、バカにされる存在で、研究室の存続も危ぶまれるものだった。

研究室には有賀准教授のほかには、修士の女性小春がいるだけ。歴史お宅の父親の感化で歴史が好きだという小春。

雄基のなき祖父の書斎には、海軍にいた曾祖父関連の本がたくさんあるときいた有賀は、見に行きたいと言い出す。

祖父の書斎に入り浸っていた雄基。

書斎を見学した有賀が発した疑問は、海軍にいた曾祖父の個人的な記録が一切ないことだった。

雄基は、それにより知らなかった曾祖父のことを調べ始める。わずかに記念写真が見つかるも、説明がきもなく、詳しいことがわからない。

有賀は小春の助言で曾祖父のことを調べていく雄基は、同じく海軍にいた曾祖父の弟と曾祖父が、戦後帰国したときに、入れ替わっていたという秘密を明らかにする。

さらに、東京帝大で人類学を学んでいた曾祖父が、日本に持ち帰った学術的に価値がある人骨の捜索にも手を伸ばすことになる。それを狙う秘密組織も暗躍し、結基の回りには不穏な展開が現れてくる。

最初は取っつきにくいかもと思ったが、なかなか面白かった。科学と歴史とミステリーがからむ物語。他にもいくつか作品があるようなので、読んでみたくなった。

明日これを返したら、別の作品を借りてみようか。

見慣れぬタイトルに引き付けられ、借りた本。なかなかよかった。

主人公の二十代の女性、邑楽風子。

五歳の頃に、かすかに記憶の残る母親に施設の前に捨てられた。施設で育ち、その後、興信所でアルバイトをして金をため、小さな探偵事務所を開いた。探偵といっても、生きている人を探すのではなく、依頼された先祖を探すという探偵。大抵は戸籍をたどり、あとは現地に赴いて、聞き込みなどをしながら、たどっていく。わかる範囲までを調べて、依頼人に報告する。捨て子だった私の両親はどんな人だったのか?それを調べるのに役に立つかもしれないと思い始めた仕事だった。

第一話に登場する依頼は二つ。

最初に登場する依頼は、先祖が武田信玄の重臣だったと伝えられている中年男性からのもの。一番古い戸籍、明治19年までさかのぼると、どうやら農民だったらしい。報告を聞いた依頼人から苦情が来て、さらに追跡してみると、意外な先祖の来歴がわかる。

次の依頼は、宮崎から上京してきた曾祖父のことを何も知らず、知りたいという会社員の依頼。家族に生い立ちなどを話さぬままになくなった曾祖父。その過去と先祖を探るために、風子は宮崎県のひなびた山村に向かい、聞き取りを始めるも難航する。そこには一見しただけではたどり着けない複雑な事情がからんでいた。


第二話では、なんと女子中学生が、夏休みの課題である先祖調べを依頼したいという。水商売で金には困っていない父親。その先祖に人に自慢できるような人がいないかどうかを知りたいと。実は最後にわかるが、彼女は両親には容姿がにてなくて、母親の不倫でできた子ではないか、本当の父親はどんな家系なのか知りたいと望んでいた。

風子と共に調査の旅に同行した女子中学生。最初に見つけたのは、父親の祖父が自分ににた顔立ちをしていたことだった。やはり自分は父の子なんだ、と。さらに調べていくと、意外な先祖にたどり着く。

風子が事務所を借りているビルのオーナーは、好きな男ができたといって家を出ている。そのオーナーから頼まれて、彼女の弟の嫁の先祖探しを頼まれる。弟の息子が奇妙な振る舞いを見せるようになり、原因は先祖をきちんと祭らないからだと言われたらしい。先祖が不明なのは嫁の先祖だけらしい。

嫁の父親は東北のでというだけで詳しくはわからないと。戸籍により祖父母まではたどり着けて、現地に調べに行く風子。先祖の家はすでになく、近所で聞いても突っぱねられる。過去になにかがあったようだが、誰も語らない。偶然知り合った憑ヨリ祈祷により、過去の出来事も奇妙な子供の振る舞いもあきらかになる。


第四話では、風子は横浜のどや街の簡易宿泊所に暮らす男の依頼を受ける。戸籍がないため、戸籍を作るために、自分が日本人であることを証明しなければならない。だから先祖を調べてほしいと。

気が進まないままに受けた依頼で、風子はやっかいごとに巻き込まれる。

さらに、風子をつけ回す探偵が登場する。


そして、第五話では、その探偵絡みで、風子は彼女の両親と先祖をたどることになり、ついに両親の正体が、彼女が捨てられたわけもわかる。

ブラジル人の父は故国に帰り不明だが、母親の消息はわかる。沖縄の親戚の家に身を寄せていたが、すでになくなっていた。いとこから母親の生い立ちと、風子を捨てたいきさつを聞く。

戸籍がなかった母親にとってはやむにやまれない処置だった。

一番の目的を果たした風子だったが、先祖探しの仕事を続けていこうと思う。

これまでは、人は本来孤独な存在なんだと思っていた。しかし、今では違う思いだった。孤独であることは無理なんだと。人は縁の中で生まれ、それによって、新たな縁に結び付く。時にはうっとうしいものだが、時には助け船になるものだと。