見慣れぬタイトルに引き付けられ、借りた本。なかなかよかった。
主人公の二十代の女性、邑楽風子。
五歳の頃に、かすかに記憶の残る母親に施設の前に捨てられた。施設で育ち、その後、興信所でアルバイトをして金をため、小さな探偵事務所を開いた。探偵といっても、生きている人を探すのではなく、依頼された先祖を探すという探偵。大抵は戸籍をたどり、あとは現地に赴いて、聞き込みなどをしながら、たどっていく。わかる範囲までを調べて、依頼人に報告する。捨て子だった私の両親はどんな人だったのか?それを調べるのに役に立つかもしれないと思い始めた仕事だった。
第一話に登場する依頼は二つ。
最初に登場する依頼は、先祖が武田信玄の重臣だったと伝えられている中年男性からのもの。一番古い戸籍、明治19年までさかのぼると、どうやら農民だったらしい。報告を聞いた依頼人から苦情が来て、さらに追跡してみると、意外な先祖の来歴がわかる。
次の依頼は、宮崎から上京してきた曾祖父のことを何も知らず、知りたいという会社員の依頼。家族に生い立ちなどを話さぬままになくなった曾祖父。その過去と先祖を探るために、風子は宮崎県のひなびた山村に向かい、聞き取りを始めるも難航する。そこには一見しただけではたどり着けない複雑な事情がからんでいた。
第二話では、なんと女子中学生が、夏休みの課題である先祖調べを依頼したいという。水商売で金には困っていない父親。その先祖に人に自慢できるような人がいないかどうかを知りたいと。実は最後にわかるが、彼女は両親には容姿がにてなくて、母親の不倫でできた子ではないか、本当の父親はどんな家系なのか知りたいと望んでいた。
風子と共に調査の旅に同行した女子中学生。最初に見つけたのは、父親の祖父が自分ににた顔立ちをしていたことだった。やはり自分は父の子なんだ、と。さらに調べていくと、意外な先祖にたどり着く。
風子が事務所を借りているビルのオーナーは、好きな男ができたといって家を出ている。そのオーナーから頼まれて、彼女の弟の嫁の先祖探しを頼まれる。弟の息子が奇妙な振る舞いを見せるようになり、原因は先祖をきちんと祭らないからだと言われたらしい。先祖が不明なのは嫁の先祖だけらしい。
嫁の父親は東北のでというだけで詳しくはわからないと。戸籍により祖父母まではたどり着けて、現地に調べに行く風子。先祖の家はすでになく、近所で聞いても突っぱねられる。過去になにかがあったようだが、誰も語らない。偶然知り合った憑ヨリ祈祷により、過去の出来事も奇妙な子供の振る舞いもあきらかになる。
第四話では、風子は横浜のどや街の簡易宿泊所に暮らす男の依頼を受ける。戸籍がないため、戸籍を作るために、自分が日本人であることを証明しなければならない。だから先祖を調べてほしいと。
気が進まないままに受けた依頼で、風子はやっかいごとに巻き込まれる。
さらに、風子をつけ回す探偵が登場する。
そして、第五話では、その探偵絡みで、風子は彼女の両親と先祖をたどることになり、ついに両親の正体が、彼女が捨てられたわけもわかる。
ブラジル人の父は故国に帰り不明だが、母親の消息はわかる。沖縄の親戚の家に身を寄せていたが、すでになくなっていた。いとこから母親の生い立ちと、風子を捨てたいきさつを聞く。
戸籍がなかった母親にとってはやむにやまれない処置だった。
一番の目的を果たした風子だったが、先祖探しの仕事を続けていこうと思う。
これまでは、人は本来孤独な存在なんだと思っていた。しかし、今では違う思いだった。孤独であることは無理なんだと。人は縁の中で生まれ、それによって、新たな縁に結び付く。時にはうっとうしいものだが、時には助け船になるものだと。