ベストセラーになった「書店ガール」の著者、碧野圭さんは、弓道二段でもあるという。その経験から生まれた作品なのかな。

主人公は高校入学前の矢口楓。春休みに名古屋から東京の西部へ引っ越してきたため、暇をもて余していた。

近所にある神社にフラりと入り込んだ楓は、耳慣れない音を聴く。なんだろうと、本殿のわきを覗いてみると、そこにあったのは弓道場だった。異音は矢が弓から離れるときの音だった。興味を覚えて、弓道場のわきの柵から見物する。

そんな彼女に話しかけてきた少年。大人に混じって矢を射る姿に少しときめいた。彼に弓道会に入らないかと誘われたものの、高校に入ったらテニスをやるつもりだったため、断る。

高校生活が始まり、テニス部に入ったものの、入部数が多いためか、基礎の体力作りばかりやらされ、なんとなく先輩が冷たく思えた楓は、一緒に入った友達と一緒にやめてしまう。

他の運動をする気にもなれず、退屈をもて余していた楓は弓道会に入ることにする。

単なるスポーツではなく、武道の一種である弓道は、最初は決まり事や精神的な教えなど、よくわからず、戸惑いながらも、色々な世代の仲間や先輩と、初心者クラスで学んでいくことで、いつしか彼女は日本古来の弓道の奥が深い魅力にひかれていく。

憧れていた先輩の家族に関わる秘密をラストでは知り、さらには、同期の仲間と共に、一段への昇段審査に受かるまでの一年を描いた作品。

女子高生のスポーツエンタテインメント。

愛川さんの落語家探偵シリーズのひとつ、高座のホームズシリーズの第四作。ラジオやテレビで落語が人気だった昭和五十年代。落語家、林家正蔵は仲間内では謎を見事に解き明かす名探偵として知られていた。悩める落語家たちは、最後には正蔵の長屋を訪ねて、事情を話すと、安楽椅子探偵のごとく、見事に謎解きをする正蔵。


今回の主人公は七代目三光亭鏡楽の弟子鏡治。三十八才、十七年かかってようやく一人前の落語家である真打ちになったばかり。前座時代は痩せていたが、今は肥満体で丸顔、浅黒い肌に、ドングリ眼で、先輩にはタヌキと呼ばれる。最近は頭髪も薄くなり、いい男とは呼べない鏡治。一回り違いの弟弟子鏡也がいる。

そんな鏡治の身近で起きた事件は、師匠の飼い猫の失踪事件。鏡也が食べさせたために死にそうになった飼い猫の黒兵衛が、獣医のお陰で命拾いしたものの、帰ったとたんに逃げ出して失踪。師匠からお目玉をくらい、見つけてこないと破門しかねない有り様。

鏡治は田舎ではやんちゃして上京し、落語家になっていた友人の薦めで落語の道に入った。直後に父がなくなり、母が家業をついだものの倒産して、彼のもとに身を寄せる。そんな母親になぜか好かれたのが、保険の外交員だった美人。その美人が一回りも年上で、見映えもよくない鏡治と結婚し、息子までできた。そのあとに母もなくなる。

天女のように美しく、質素でけなげな若い妻。何かの間違いではないのか?あるいは、妻は何かを隠しているのではないのか?疑心暗鬼になりながらも、突き詰めて聞く勇気もない鏡治。

失踪した猫は珍しい尻尾を持っていて、簡単に身代わりを持ってこれない鏡也は、なんと近所の猫の尻尾切り事件を引き起こす。刑事の内偵もされていると知り、悩む鏡治。本人に自首させることで解決しようとした矢先、女ぐせが悪い鏡也は、やくざの女に手を出し、刺されてしまう。

悩みがつきない鏡治は、最後には正蔵師匠に頼ることになり、見事に名探偵は謎を解き明かす。

今シリーズでも愛川さんは、落語の演目を詳しく解説し、その内容が、筋の話とかかわり合って、見事な展開となる。




シリーズ第八作。

母親に呼ばれて、年末に帰省した尚哉は、一時は会話がなくなった両親とわずかではあるが話ができて、感慨深い。父と将来の話をしたり、自動車免許を取る費用なら出してやると言われる。

散歩に出て、幼馴染みと再会し、研究室の話や准教授高槻のことを話してしまう。

それが縁で、幼馴染みの兄で、母校の小学校の教師をしているものから、調査の依頼がくる。クラスで、モンモンというお化けの話が出て、不登校の生徒もいるという。

調査に出掛けた高槻と尚哉が明らかにした真相はいかに?


高槻のいとこの彼女の友人の女性が、幼馴染みの女性の死による呪いを受けて、悩んでいるという。小学生時代の仲良し四人組。一人の死をきっかけに、次々と二人に呪いがかかったように、不幸になり、次は自分かと悩んでいるらしい。

高槻と尚哉は彼女と会い、最初になくなった女性の悔やみに実家を訪れてみると。二人はそこで何を見たのか?本当に呪いはあるのか?


スキー場が隣接する新潟の田舎の旅館を訪れた高槻と尚哉、佐々倉は、同宿の若者から、失踪した母親が雪女かも知れないと聞く。ある夜いなくなった、その男を探しに出た高槻と尚哉は、崖下に転落し、そこで雪女と出会う。息子を突き落とした男を捕まえていた。息子を置き去りにして去ったものの、旅館の中居としてこの世に留まる異界のもの。この世にあらざる者を知る高槻と尚哉には、一概に彼女を非難はできず、そっとしておく。