マーケティング会社で、エリート社員として、効率と結果に固執して、最年少で管理職になっていた大崎雄哉に、突然、ロンドンで暮らす大伯母、笠原玉青の訃報と、日本にある土地が相続されていることを聞く。

ほとんど記憶にもない大伯母、残された土地は、もと華族だった笠原家の屋敷があった場所。都内の一等地にあり、売ればかなりの財産になる。現在は十六夜荘というシェアハウスとなっていて、男女四人が住んでいる。住人に退去を通告したものの、登記簿によれば、戦後土地は銀行により売却され、のちに大伯母が買い戻しているが、飼い主には大伯母以外に、中国人の名前が記されていて、できればその人物の許可を得ないと転売できない。

その人物と大伯母の過去を調べ始める雄哉。折しも強引に仕事を進めてきた雄哉は、罠にはめられ、退職を余儀なくされてしまう。そんな彼が、怪しげな住人たちに近づき、大伯母の過去を探る家庭を描いた物語が展開する。

その間に、大伯母の戦時中から戦後までの様子が描かれる物語が、交互に描かれる。

そして、最後には、問題の人物が現れて、大伯母のその頃の様子が明らかにされることで、彼女の屋敷や十六夜荘への思いが、雄哉にもわかるようになり納得されると共に、今はなき大伯母や祖母や母親との思い出がよみがえり、雄哉は、十六夜荘をそのまま残し、自分も同居することに決める。

大河ドラマのような長編で、なかなか興味深かった。巻末の解説者によると、後に出た長編「痛みの道標」には、今作の登場人物に似たものが出ているらしい。

読んでみたくなった。図書館で見かけたことはあるが、古内さんの別の分類になるエンタテインメントの方に、以前は興味があり、こちらは読む気になれなかったが。

調べてみると、昨年の九月に、すでにこれを読んでいたようだ。最後まで読むと、確かにあちこち覚えがあったが、再読しても後悔はないな。

著者の北海道警察シリーズの第七作。

サッポロ・シティ・ジャズで賑わい始めた初夏の札幌。市内で起きた宝石商盗難事件をおっていた機動捜査隊の津久井は、当番明けの夜に、馴染みのジャズバー、ブラックバードで、ピアニストの安西と出会う。長らくジャズを離れていた彼女は、人気アルトサックス奏者四方田に声をかけられ、シティジャズへの出演が決まっていた。ジャズが縁で急接近した二人だが、彼女が覚醒剤で逮捕歴があることがわかり、別れる。

折しも、中島公園近くの池で、女性の死体が見つかり、争っていた女性が目撃されていた。しかも、被害者が四方田と関係があった女性で妊娠していたことがわかる。女性関係が派手で、何人もの女性と関係していた四方田。被害者が覚醒剤で逮捕歴があることがわかり、近くのホテルにいた安西も容疑者に。津久井がひそかに、アリバイを尋ねると、彼女は明らかにしない。シティジャズへの出演前に事情聴取を受けたら、出演が危ぶまれる。自分の担当の事件もあり、彼女を助けられないと悩んだ津久井は、仲がよい佐伯に頼んで、真犯人の逮捕を依頼する。どうやら四方田をめぐる女たちの争いが根底にあるようだと、佐伯に示唆する。

無事に、真犯人が捕まり、安西の疑いは晴れるかどうか?

このシリーズは、はじめて読んだが、なかなか面白そうだ。

第一作では、道警本部の婦人警官がマンションで死体で見つかり、交際していた津久井が容疑者にされ、しかも射殺命令まで出ていた。翌日に、道警の不祥事の証人として出る予定だったから、上層部からの口封じにあったらしい。四面楚歌の彼の疑いを晴らすために立ち上がったのは、佐伯警部補で、信頼できる仲間を集めて、ひそかに真相究明にあたり、見事に津久井を救い出すという。それは、読んでみたくなるね。

その第一作を思い出させるような展開が、今作にもあるらしい。

薬剤師・毒島花織の名推理シリーズ第三作。

二月頃に読んでいたようだが、再読しても、わずかしか覚えていない。


新型コロナウィルス感染が始まった頃のホテルミネルバを舞台にした三作を収録。

爽太の先輩馬場さんが高熱が出て、自宅待機させるかと思われたが、独り者で生活がきちんとしていない馬場を一人にさせるのを心配して、総支配人は、コロナの影響で客室が空いているので、最上階の一室に隔離することになる。

一緒にいた爽太も、馬場の飲み差しのペットボトルから飲んだ可能性があり、感染の恐れがあるとして、別の部屋に隔離させて、馬場の面倒を見ることになる。

そんな隔離中に、ホテルスタッフのクルミの父親の酒乱からの回復の話、薬剤師の毒島さんが、何度も訪れるシングルマザーに見事に対応した話、さらに、ホテル従業員が次々と高熱を発し、その原因究明に活躍する爽太と毒島さんの話が語られる。

今回もなかなか興味深かった。