お花の鉢植えが並ぶ境内。
花の寺、とりわけコスモスの寺として有名です。
先週末のある夕暮れ前、誰もいない般若寺へ。
初めての場へ足を踏み入れたとたん、
「お芝居の舞台装置に入ったみたい」
こんなことを思ってしまった。
お寺の佇まいがあまりに可愛らしく、
演劇舞台に紛れ込んだ気分になったのだ。
それはたぶん、雲ひとつない淡い空の色に
小振りな花の鉢植えがあまりに栄えていたので、
架空の場へと錯覚させた気がするけれど、
ぼちぼちと小花が咲く参道を歩いてみると、
どちらかというと、古い民家を訪ねた気分になった。
般若寺は人の温もりでこしらえられている、
徳の厚い名刹と感じたのでありました。
といっても…雑然と草木が伸びている様に
もう少し整えてもいいのに…
なんてことも思ったりしたけど、
観音様が自然のままの花々で縁取られている様は、
やはり可愛らしく、ついつい顔がほころんだ。
格式張らないところが奈良的でいい、と思い直す。
般若寺のシンボル「十三重石塔」。
高い! これほどの高さの石塔は貴重とか。
これから見頃の紫陽花と気の早いコスモスに囲まれて。
コスモスが咲き乱れる頃はたいへんな人出だそうで…
紫陽花が咲く、この季節に訪れる方が風情がありそう。
小振りの山紫陽花の鉢植えが無造作に置いてあり
なんだか照れていらっしゃる…?
猫も幸せそうに眠っております。
可愛らしい名刹と比喩した般若寺ですが、
至るまでの「奈良坂」と呼ばれる街道を歩いたとき、
それまで奈良で味わったことのない
哀訴の“気”を強く感じたのです。
後で知ったことだけど、
街道は京都に続くため、戦火が耐えなかったとか。
そういえば道行きで突如、
東大寺の後姿が見えたので嬉々となり、
思わず手を合わせた私だったけど、見晴しの良さは、
かつての要塞跡を知らしめていたんだと思う。
帰りのこと、ハンセン氏病患者を保護していたという、
「北山十八間戸」の前を通った。
元々は般若寺の慈善により造られたとか。
街道で感じた哀訴の“気”は
悲劇だけでなかったと思いたい。
般若寺
写真とイラストで分かりやすく解説してくださっています。
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