陸軍中野学校 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー


特命スーツ軍団



敬愛なヒト・増村保造センセ。
センセは女を描くことに
たいそう長けていらっしゃったようだが、
男を描けないものに、女は描けない。
この映画を観て、あたしゃ分かったのさ。増村センセは
人間とは、若さとは、男とは、自分とは⋯などなどの
「そもそも」を実に客観的に思考された期間を
十分にお持ちだったと思われる。
たぶん あたしの想像だと、センセにとっての それは
若き日のイタリア留学だったのではと、
独り得心したのであった。

この映画では「若さ」と、
「男集団」の一直線が描かれておりますが、
彼らは幕末の志士群と似てますね、天国のセンセ。
スーツ姿のスパイ養成学校へと選択されてしまった若者は、
やがて 元恋人の命をも
冷徹にスパイの標的としてあしらっていく。
止められない運命、若き日の輝き、その残酷さ・・・・!

指揮官・増村センセの指揮棒が冴え渡っておりますね。
その結末を、平成の世を渡り、
日ごとにオッサン化が進行中の私は
アホだと思う。

ホンマ、男って・・・・・。


★★★★★☆☆ 7点満点で5点
スパイ学校というより、スパイごっこという緩さがあるが、
そこが私の好みで、センセの狙いでもありましょう。
「国のため」に自分を置き去りにし、
命を勝負コマとして扱うことのアホ臭さが伝わってくる。

この映画はスパイの実像に迫るものではなく、
若さとは、青春とは? を観るものに問うものだ。
秀作であるのにもかかわらず苦手な作風の、
『007 カジノ・ロワイヤル』
本作が異質なのは ここで、だから私は
この映画に心から拍手したい。
特に筋運びの軽妙さ!
もちろん、市川雷蔵サマのクールな演技も拍手。
スターのオーラに次々と引き込まれていく。
スーツ姿の雷サマも ええなぁ~。

『次郎長三国志』のお人好しのブタマツを演じた加東大介が
ここでは教官役で、登場一発「出世したなぁ ブタマツ」
と変なところで感心した自分が可笑しく、
クールな場面で笑ってしまった。増村センセ、ごめ~ん。

~'06年 新文芸坐にて観賞~





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