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さて、前回は、行政法の最新重要判例(横浜市立保育園廃止処分取消請求事件)
を素材にして、受験生の皆さんが苦手としている、行政事件訴訟法の3本柱の総
整理をしていきました。
≪行政事件訴訟法の3本柱≫
①訴訟類型
②訴訟要件
③取消判決の効力
①訴訟類型は、記述式・択一式・多肢選択式のすべてにおいて頻出しているテ
ーマですので、今年も出題された場合、是非とも得点したいテーマです。
特に、抗告訴訟と当事者訴訟・民事訴訟の区別については、下記のフローチャー
トで、もう一度、知識の確認をしておいてください。
なお、今回は取り上げませんが、当事者訴訟には、実質的当事者訴訟の確認訴
訟により、違憲判決を言い渡した2つの判例がありますので、こちらも、プログレカ
ードで、もう一度、確認しておいてください。
①在外国民選挙権訴訟判決(最判平17.9.14:プログレカード097)
②国籍法違憲訴訟判決(最判平20.6.4:プログレカード099)
今回は、国家賠償法1条の未出題重要判例(児童養護施設の職員等の不法行
為責任)を素材にして、国家賠償法1条と民法の不法行為責任の総整理をしてい
きます。
1 事案
Xは、社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所している児童が、他の
入所者の暴力行為によって重大な障害を負ったため、職員の保護監督義務違反
を理由として、県と施設の両方に対して損害賠償責任を提起した。
2 争点
(1)都道府県による児童福祉法27条1項3号の措置に基づき社会福祉法人の設
置運営する児童養護施設に入所した児童を養育監護する施設の職員等は、国
家賠償法1条1項にいう公権力の行使に当たる公務員にあたるか。
(2)国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に加えた損害につき国又は公
共団体が国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う場合、使用者は民法
715条に基づく損害賠償責任を負うか。
3 結論
(1)あたる。
(2)負わない。
4 判旨
(1)法は、保護者による児童の養育監護について、国又は地方公共団体が後見
的な責任を負うことを前提に、要保護児童に対して都道府県が有する権限及び
責務を具体的に規定する一方で、児童養護施設の長が入所児童に対して監護、
教育及び懲戒に関しその児童の福祉のため必要な措置を採ることを認めている。
上記のような法の規定及び趣旨に照らせば、3号措置に基づき児童養護施設に
入所した児童に対する関係では、入所後の施設における養育監護は本来都道
府県が行うべき事務であり、このような児童の養育監護に当たる児童養護施設
の長は、3号措置に伴い、本来都道府県が有する公的な権限を委譲されてこれ
を都道府県のために行使するものと解される。したがって、都道府県による3号
措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童に対
する当該施設の職員等による養育監護行為は、都道府県の公権力の行使に
当たる公務員の職務行為と解するのが相当である。
(2)国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、
その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場
合には、国又は公共団体がその被害者に対して賠償の責めに任ずることとし、
公務員個人は民事上の損害賠償責任を負わないこととしたものと解される。
この趣旨からすれば、国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加
えた場合であっても、当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に
当たるとして国又は公共団体が被害者に対して同項に基づく損害賠償責任を負
う場合には、被用者個人が民709条に基づく損害賠償責任を負わないのみなら
ず、使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わないと解するのが相
当である。
5 判例のロジック
判旨(1)について
まずは、国家賠償法1条1項の責任が発生するための要件について、再度、確
認していきます。
①国又は公共団体
②公権力の行使
③公務員
④「職務を行うについて」
⑤故意又は過失
⑥違法に他人に損害を加えたこと
要件②の「公権力の行使」については、昨年の本試験問題(問題9)でも出題さ
れたように、判例は、行手法・行審法・行訴法の「公権力の行使」よりも広く解釈
しています。
通達は、国民の法的地位に影響を与えるものではないから、その発令・改廃行
為は行政事件訴訟法3条1項の「公権力の行使」および国家賠償法1条1項の
「公権力の行使」にはあたらない。(×→平成22年問題9)
すなわち、判例は、国または公共団体の作用のうち、純粋な私経済作用と2条
にいう営造物の管理作用を除くすべての作用を、「公権力の行使」に含めて解
釈しています(広義説)。
では、公権力の行使に係る業務が、民間の法主体(社会福祉法人)に委託され
た場合、公権力の行使にあたる公務員の職務行為と解することができるのでし
ょうか?
この点が争われたが、今回の児童養護施設の職員等の不法行為責任事件(最
判平19.1.25)の判例です。
最高裁は、判旨(1)において、入所後の施設における養育監護は本来都道府県
が行うべき事務であり、このような児童の養育監護に当たる児童養護施設の長
は、3号措置に伴い、本来都道府県が有する公的な権限を委譲されてこれを都
道府県のために行使するものであるとして、当該施設の職員等の養護監護行為
は、都道府県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為と解するのが相当し
ています。
このように、最近では、本来行政が行うべき業務の民間委託の増大に伴い、国
家賠償法1条1項の適用が争われるケースが増えています。
この点、指定確認検査機関が行った建築確認が違法であった場合、指定確認
検査機関と本来の建築確認の権限が帰属する地方公共団体のいずれが責任
を負うのかという問題があります。
最高裁は、当該事務が地方公共団体に帰属するという解釈を踏まえて、委託元
である地方公共団体も損害賠償責任を負う可能性があることを判旨しています
(最判平17.6.24)。
なお、本件の争点は、指定確認検査機関の確認に係る建築物について確認をす
る権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、行政事件訴訟法21条1項
所定の「当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体」にあたるか
という点です。(結論は、あたる)
指定確認検査機関による建築確認訴訟(最判平17.6.24)については、平成22年
度の新司法試験において出題されています。
最近の行政法の問題は、司法試験の択一式と類似する問題が何問か出題され
ていますので、本判例も要注意かもしれません。
国家賠償法の問題は、
判例問題が中心ですが、平成21年度に出題された「権限の不行使と国家賠償責
任」に関する問題のように、ある程度、同じ事例の判例が蓄積されると、シリーズ
問題として大問で出題されることがあります。
いわゆる「民による行政」についても、重要判例がいくつか出ていますので、近年
中には出題される要注意テーマではないでしょうか。
受講生の皆さんは、櫻井・橋本「行政法」の青枠組みとともに、他資格セレクト過
去問問題108で、もう一度、知識を総整理しておいてください。
ちなみに、指定確認検査機関による建築確認訴訟(最判平17.6.24)については、
その前提の抗告訴訟が、昨年の問題16で出題されています。
問題16 次のア~オの訴えのうち、抗告訴訟にあたるものの組合せはどれか。
ア 建築基準法に基づき私法人たる指定確認検査機関が行った建築確認拒否
処分の取消しを求める申請者の訴え。
ということは、指定確認検査機関による建築確認訴訟(最判平17.6.24)は、出題
済みとも言えそうですが…
判旨(2)について
まずは、本題に入る前に、国家賠償法1条と民法715条の相違点について、プロ
グレカード142で、もう一度、知識の確認をしておいてください。
伊藤塾の中間模試問題19でも、国家賠償法1条と民法715条の関係を問う問題が
出題されています。
知識と知識の「つながり」
国家賠償法1条と民法715条の相違点の中で、本件で問題となるのは、加害者本
人に対する責任追及の可否についてです。
この点、判例は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務
を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合、公務員
個人は民事上の損害賠償責任を負わないものと解しています(最判昭30.4.19)。
最高裁は、判旨(2) において、上記の判例の趣旨から、「国又は公共団体以外の
者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、当該被用者の行為が国又
は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が被害者に対して同
項に基づく損害賠償責任を負う場合には、被用者個人が民法709条に基づく損害
賠償責任を負わないのみならず、使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負
わないと解するのが相当である」と述べています。
すなわち、地方公共団体に対する国家賠償請求が認められる場合、被害者は、
被用者個人に対する民法709条責任に加えて、使用者に対する民法715条責任
も追及できないということになります。
以上が、「民による行政」の後始末の問題です。
結局、「民間委託や民営化は行財政改革のツールとして多用される傾向にあるが、
上記の判例は、行政事務を委託したからといって公的責任がなくなるわけでなく、
安易な制度設計が許されないことを示唆している」のだと思います(櫻井・橋本「行
政法」3版(p388))。
なお、本判決は、地方公共団体が被害者に対して、国家賠償法1条1項に基づく
損害賠償をした場合の求償権については何ら述べてはいませんが、求償権につ
いては、国家賠償法1条2項の条文を、もう一度確認しておいてください。
国又は公共団体が、民間に事業を委託している例は数多くみられ、近時よく用い
られるPFIの手法もその一つです。
平成21年度(問題48)には、PFI(Private Finance Initiative)など、行政改革の手
法を問う問題が一般知識で出題されています。
問題48 行政改革に関する次のア~オの記述のうち、妥当でないものの組合せ
はどれか。
ア NPM(New Public Management)は、ケインズ主義を理論的基礎として、1980
年代にイギリスのサッチャー政権において採用され、これに基づいて公的部門の
見直しが行われた。(×)
イ エージェンシー制度は、企画立案部門と実施部門を分離し、実施部門に大き
な裁量を与えることによって柔軟な組織運営をめざすものであり、日本でもこれを
モデルとして独立行政法人制度がつくられた。
ウ PFI(Private Finance Initiative)は、公共施設等の施設や運営に民間の資金
やノウハウを活用する手法であり、日本でもこれを導入する法律が制定され、国
や自治体で活用されている。
エ 指定管理者制度は、それまで自治体の直営か外郭団体に限定されていた公
共施設の管理運営を、営利企業、NPO法人などの団体にも包括的に代行させる
制度であり、地方自治法の改正によって導入された。
オ 市場化テストは、民間企業と行政組織の間でサービスの質や効率性を競う入
札を実施し、行政に勝る民間企業があれば、当該業務を民間企業に委託する制
度であるが、日本ではまだ導入されていない。(×)
このように、一般知識においても、行政改革・財政改革の「視点」からの問題が頻
出していますので、もう一度、一般知識もざっくりと確認しておいてください。
知識と知識の「つながり」
一般知識(政治・経済・社会)の問題が、行政学を専門とする試験委員を中心に
作問されていることを考えると、当然のような気もしますが…
まさに、問題作成者(試験委員)との対話です。
次回は、③小田急高架訴訟本案判決(最判平18.11.2)です。
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