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最後は、小田急高架訴訟本案判決(最判平18.11.2)です。
実は、小田急高架訴訟には、2つの判例があります。
2つ?
まずは、フレームワーク思考で、講義の中でお話している行政事件訴訟の4
つの箱を、もう一度、思い出してみてください。
大切なのは、②要件審理と③本案審理の箱です。
ちなみに、却下判決と認容・棄却判決も、②要件審理と③本案審理に対応してい
ますので、くれぐれも、却下判決と棄却判決を間違えないように…
平成18年度記述式参照
おそらく、小田急高架訴訟と聞いて、原告適格を認めた判例として知識を整理さ
れている方は多いと思います。
最大判平17.12.7
しかし、原告適格を認めた段階では、要件審理の箱をパスしただけですから、当
然、次の本案審理の箱の話が出てきます。
今回、もう一度、確認するのは、小田急高架訴訟「本案判決」(最判平18.11.2)の
方です。
でも、なぜ、この判例が重要判例なのか?
まずは、平成22年度(問題43)、平成21年度(問題43及び問題8)に出題された3
問の共通項(出題のツボ)を発見してみてください。
①グルーピング
↓
②抽象化(出題のツボの発見)
↓
③構造化(パターン化)
問題43 次の文章は、ある最高裁判所判決の一節である。空欄(ア)~(エ)に当
てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。
原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の
取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全
専門審査会の専門技術的な(ア:調査審議)及び判断を基にしてされた被告行
政庁の判断に(イ:不合理な点)があるか否かという観点から行われるべきであ
って、現在の科学技術水準に照らし、右(ア:調査審議)において用いられた具
体的(ウ:審査基準)に(イ:不合理な点)があり、あるいは当該原子炉施設が右
の具体的(ウ:審査基準)に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全
専門審査会の(ア:調査審議)及び(エ:判断の過程)に看過し難い過誤、欠落
があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被
告行政庁の右判断に(イ:不合理な点)があるものとして、右判断に基づく原子
炉設置許可処分は違法と解すべきである。
問題43 行政裁量に関する次の文章の空欄(ア)~(エ)に当てはまる語句を、
枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。
土地収用法20条3号は、土地収用を行うことのできる事業の認定にあたっては、
当該事業が「土地の適正且つ合理的な利用に寄与するもの」でなければならな
いとしている。この場合、(ア:要件)についての裁量が問題となるが、判例は、
その場合の裁量判断について、「本来最も重視すべき諸要素、諸価値を不当、
安易に軽視し、その結果当然尽くすべき考慮を尽くさず、また本来考慮に容れ
るべきでない事項を考慮に容れもしくは本来過大に評価すべきでない事項を過
重に評価し」、これらのことにより判断が左右された場合には、裁量権の濫用・
踰越にあたるとして、違法となるとしている。これは処分における(エ:判断過程)
について、司法審査を及ぼしたものといえる。
問題8 行政計画に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
3 計画策定権者に広範な裁量が認められるのが行政計画の特徴であるので、
裁判所による計画裁量の統制は、重大な事実誤認の有無の審査に限られる。
(×)
1 事案
東京都は、小田急線梅ヶ丘駅付近から喜多見駅付近の間の6.4キロの区間に
ついて、高架化事業を行おうとし、事業認可の申請を行った。旧建設大臣は、東
京都に対し、連続立体交差化を内容とする都市計画事業の認可(以下「本件鉄
道事業認可」といい、この認可に係る都市計画事業を「本件鉄道事業」という)を
し、これを告示した。これに対して、Xらは、本件鉄道事業認可等が違法であると
して、旧建設大臣の事務承継者である関東地方整備局長に対し、これらの各認
可の取消しを求めた。
2 争点
旧建設大臣が行った本件鉄道事業認可は違法となるか。
3 結論
違法とはならない。
4 判旨
(1)このような基準に従って都市施設の規模、配置等に関する事項を定めるにあ
たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、
技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると、
このような判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられていると
いうべきであって、裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容
の適否を審査するにあたっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされ
たことを前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要
な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合
理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等に
よりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限
り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきもの
と解するのが相当である。
(2)以上の見地に立って検討するに、前記事実関係のもとにおいては、平成5年
決定が本件高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用
したものとして違法となるとはいえないと解される。
5 判例のロジック
最高裁は、まず、判旨(1)において、都市計画の決定については、政策的、技術
的な見地からの判断が不可欠であることを前提に、行政庁に広範な裁量を認め
ています。
そう、本件のメインテーマは、行政裁量です。
行政事件訴訟法30条は、「行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ
又はその濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる」
としています。
では、どのような場合に裁量権の逸脱・濫用があったといえるのでしょうか?
従来は、裁量統制の手法としては、行政行為における裁量判断の結果に着目し
たうえで、その実体法的違法についての審査をしてきました。
①事実誤認
②目的違反・動機違反
③信義則違反
④平等原則違反
⑤比例原則違反
⑥基本的人権の尊重
実は、行政書士試験の過去問でも、④平等原則違反や⑤比例原則違反は、頻
出していますので、要注意です。
①当該非行が極めて軽微なものにとどまるにもかかわらず、免職処分を選択し
た場合は、(ウ:比例原則)に違反し、裁量権の濫用・踰越となる。(平成21年度
問題43)
行政裁量ではありませが…
②通達は、国民の法的地位に影響を与えるものではないが、特段の理由もなく
通達に反する処分については、平等原則に違反するものとして、相手方たる国
民との関係においても違法とされる余地がある。(○→平成22年度問題9)
③もし特定の事例についてこの基準より重い処分が行われたとき、場合によって
は、(エ:平等原則)などに違反するものとして違法とされる余地がある。(平成19
年度問題42)
本件において、最高裁は、判旨(1)において、「その基礎とされた重要な事実に誤
認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合」というように、重大
な事実誤認」があった場合には、裁量権の逸脱・濫用になると述べています。
もっとも、最高裁は、上記部分に続けて、「事実に対する評価が明らかに合理性
を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその
内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合」にも、裁量
権の逸脱・濫用になると述べています。
では、本件は上記基準に照らして違法となったのでしょうか?
最高裁は、判旨(2)において、「前記事実関係のもとにおいては、平成5年決定が
本件高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したも
のとして違法となるとはいえない」としています。
小田急高架訴訟判決(最大判平17.12.7)は、
判例変更をしてまで原告適格を認めた画期的な判決と云われましたが、結局は、
本案では、違法なしと結論づけています。
司法権が行政権に対して、こういう消極的な態度で良いのかについては、色々な
意見があるとは思いますが…
櫻井先生は、「行政法講座」の中で、本件について、次にように述べられています。
「あえていえば、行政訴訟が原告国民にとって「負け戦」である事態は依然として
変わっておらず、せいぜいその「負け方」に少々変化があったというにすぎない。」
「同様の顛末は、いわゆるもんじゅ訴訟においてもみられ、行政訴訟において大
事なことは、原告適格が認められたその先にこそあり、実体審理において踏み込
んだ裁量審査が行われ、現実に行政の非違が糺される仕組みをどう構築するか
が求められている。ここに平成16年改正の限界がある」と。(p73)
御尤もでございます!
実は、合格コーチ、櫻井先生のファンなのです(笑) 。
なお、もんじゅ訴訟の顛末については
↓こちらの記事を
さて、ここまでお話してきて、鋭い方は、冒頭に挙げた3問の共通項(出題のツ
ボ)が見えてきたのではないでしょうか?
キーワードは、判断(の)過程
平成22年度問題43は、伊方原発訴訟判決(最判平4.10.29)、
平成21年度問題43は、日光太郎杉事件判決(東京高昭48.7.13)、
問題8は、小田急高架訴訟「本案判決」(最判平18.11.2)が素材になっています。
すなわち、判例は、最近では、実体的審査に加えて、裁量処分にいたる行政庁
の判断形成過程に着目し、その合理性に有無の観点から裁量審査を行ってい
ます。
判断過程審査
平成22年度・平成21年度と2年連続して、試験委員が多肢選択式(1問8点)にし
てまで問いたかったのは、行政裁量の裁量審査(判断過程審査)だったと云えま
す。
平成21年度は、これに加えて、択一式でも、判断過程審査を聞いていますから、
試験委員の中に、行政裁量に関心のある試験委員がいるようです。
問題作成者(試験委員)との対話
行政裁量は、以前はほとんど出題されていなかったテーマですが、ここ数年は、
平成16年の行訴法改正に伴って学者の関心が高くなっているため、頻出重要
テーマになっています。
今年の本試験で出題されるかどうかはわかりませんが、試験委員が関心のあ
るテーマですから、受講生の皆さんは、念のため、もう一度、プログレカード等
で知識を整理しておいてください。
ちなみに、2年連続、問題25・問題26枠で出題されている、国家公務員法と国家
行政組織についても、最低限の知識は、プログレカード等で確認しておいてくだ
さい。
国家公務員法は、つぶやき確認テスト(13)参照
↓こちらから
なお、行政裁量は、①司法権と行政権の役割分担あるとともに、②立法権と行
政権の役割分担の問題でもあります。
知識と知識の「つながり」
①司法権と行政権の役割分担の問題は、憲法においても、「司法権の限界」とい
うテーマで、平成19年度・平成14年度に出題されていますので、もう一度、憲法
の復習もしておいてください。
≪司法権の限界≫
(1)憲法が明文で認めたもの
①議員の資格争訟裁判(55条)平成17年・平成20年度
②裁判官の弾劾裁判(64条)平成20年度
(2)憲法の解釈上の限界
①自律権に属する行為
②自由裁量に属する行為(立法裁量・行政裁量)※
③統治行為
④部分社会の法理
さて、以上で、「最後の最後!行政法重要判例を読み解く!」シリーズは、すべ
て終了です。
行政書士試験は、全体の約40%を占める行政法の出来次第で合否の大枠が
決まってしまいますから、本試験までの残りの時間で、是非とも、行政法の知
識の精度を、さらに一歩高めてみてください。
精度を高める!
特に、今回はお話していない、行政手続法・行政不服審査法は、条文ベースの
問題が中心に出題されますので、出題のツボに沿って、条文のポイントを再度
確認しておいてください。
最後の最後は、櫻井・橋本「行政法」の目次を見ながら、今まで学習したことを
思い出す、イメージトレーニングをやってみてください。
森から木、木から枝、枝から葉へ☆
では、受講生の皆さんとは、2011年度の最終講義でお会いできることを楽しみ
にしております。
■2011年度最終講義■
2011年度行政書士本試験分析会+α
~「フレームワーク」と「ツボ」で読み解く本試験問題~
□11月23日(祝)14時~17時(ライブ)
□伊藤塾御茶ノ水校
□担当 合格コーチ
過去問「分析」の名手「合格コーチ」が、「フレームワーク」と「ツボ」という独自の
切り口から本試験を読み解きます。
中小企業診断士(経営コンサルタント)ならではの本試験「分析」。
どなたでも予約不要(無料)でご参加いただけます。
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