メルセデスベンツ C220d ステーションワゴン に試乗してきました。
実は先日、ガソリンモデル(C200)に少しだけ乗ってみたのですが、なかなか試乗記の筆が進まず。。決して悪くはないものの、どうも期待はずれ感が強かったんです。
それが最近、知り合いから「今回のCはディーゼルが抜群」と言う話を聞いて、それならディーゼルモデルにも乗ってみようかなと思っていたところ、近所のヤナセに届いたと連絡があって試乗するに至りました。
以下、それぞれの項目に沿って全くの私見でお送りします。また、価格や仕様は変動しますので参考程度で。
試乗車
価格など
C220d ステーションワゴン本体: 705万円
オプション
AMGライン:32万6000円
パノラミックスライディングルーフ:23万3000円
ベーシックパッケージ:15万4000円
リアアクスルステアリング:14万5000円
オプションを加えた合計価格はおよそ800万円。
試乗車のオプションははっきり詳細を確認していないので、もう少し他にもあるかも。Cクラスも乗り出し900万円の時代です。
仕様
■ エンジン
エンジン型式 OM654M
最高出力 200ps(147kW)4200rpm
最大トルク 44.9kg・m(440N・m)1800~2800rpm
直列4気筒DOHCターボ+モーター
総排気量 1993cc
内径×行程 82.0mm×94.3mm
圧縮比 15.5
過給機 ターボ
燃料供給装置 電子制御燃料直接噴射(コモンレール)
燃料タンク容量 66リットル
使用燃料 軽油
■ 足回り系
ステアリング形式 パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前) AGILITY CONTROLサスペンション
サスペンション形式(後) AGILITY CONTROLサスペンション
ブレーキ形式(前) ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後) ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(前) 225/50R17
タイヤサイズ(後) 225/50R17
■ 駆動系
駆動方式 FR
トランスミッション 9AT
モーター最大トルク 20.4kg・m(200N・m)
ボディーカラー
■ ポーラーホワイト
ソリッドカラーはもうこれだけになってしまいました。
いわゆる普通の白です。これはこれで普通の良さもあって嫌いではありません。が、その他の色、オプションカラーも含めて言うと、最近のメルセデスは色に関してはすっかりつまらなくなってしまいました。
もっと「特別な色」を選べるようにしても良いと思いますが、売れないからなんでしょうね。
外観
比較的無駄の少ない(競合比)、クリーンな面構成をしています。まさにSクラスをモチーフにしているのが、誰が見てもわかります。
フロントデザインも押し出しが控えめで、上品と言って良い仕上げ。(このAMGラインでさえ)
全体として、メルセデスに期待するクォリティと品の良さ、そしてブランドの記号性を兼ね備えている、完成度の高いものだと思います。
とは言え私的には不満な点もあります。
最大の不満はボンネットのパワーバルジ。縦に2本走っているプレスラインです。
これ、V8時代のC63あたりでボンネットの高さをギリギリ低めつつエンジンのクリアランスを確保するような場合なら良いと思うのですが、今回のCクラスは全て4気筒。雰囲気だけのデザインで、これはいただけない。やはりメルセデスデザインなら「全てのカタチに意味がある」と言いたいです。それとも空力に効果があるとかあります?
あとサイドビューのライン。特にタイヤハウスを繋いでいる下側。これも個人的には邪魔ですね。
ホイール
ホイールはAMGラインオプションのものでした。
ぱっと見はまあこんなものかなと言う感じです。
前に見た、いかにもエアバルブのスペースだけ切り取りましたみたいなことにはなっていないのはプラスですね。
でもこの内側の縁取りって必要ですかね?星型スポークだけではダメなんでしょうか。ボディーのラインがシンプルなので、ホイールももっとシンプルな方が全体に馴染むと思うのですが。
ただ、ホイール内径にピタリと寄せた感のあるブレーキキャリパーとブレーキローターは良いです。これは一体感があってホイールの径に説得力があります。
逆に、ローターに合わせるための縁取りデザインだとすれば、意味はあるので認めざるを得ないかな。
内装
一見、すっきりした印象ですが、それは物理スイッチがとても少ないからだと思います。センターの巨大ディスプレイも、すっかり見慣れてきました。
が、今回ちょっと困ったのは、センターのCOMANDコントローラーもきれいさっぱり無くなったため、走行中に手探りでサッとやりたい操作が難しくなったことです。
それらの大部分はタッチパネルとステアリングコントローラーに移植されたようで、後は慣れなんでしょうが、移植されなかった機能は最低でも階層2つは潜ることになり、とても「らしくない」操作系になっています。
特に苦労してしまったのが「走行モード(ダイナミックセレクト)の切替」です。停車中にタッチパネルのメニューを触りまくったけどどこにも無い。ステアリングスイッチにもそれらしきものが無い。それならと、恥ずかしさをこらえながら(単独試乗なのでそれほどでもないけど)、 "Hi, Mercedes! ダイナミックセレクト変えて!"と叫んでみたりしたけどダメ。ここでAIが正しい操作を教えてくれたり、操作すべきスイッチが点滅したりしたらメチャクチャ感動したけど、未来はそこまで身近には無く。
結局、巨大ディスプレイの下のバーの一部が、走行モードの切替スイッチを兼ねてました。
正直、これはどうかと思います。
走行系機能の操作部を、従来ならエアコンかオーディオの操作をする位置に置くなんてこと、かつてのメルセデスでは考えられなかったなあ。これ、ディスプレイ上で色々やらせてるから、人間工学的な最適配置に対して鈍感になってしまったように思えます。それとも私が古い??
シート(スイッチ)
シート調整スイッチがSクラスなどと同じ感圧式に。その結果、一つ前のCモデルで不満だったスイッチの反力(バネ)などの安っぽさは払拭と言うか消滅しました。シートを動かすモーターも、少しグレードが上がった気がします。まあ個人的には機械式スイッチの「溜めのある動作感」が好みなので、一つ前のSクラスが史上最高ってことになりますかね。もう機械式スイッチに戻ることはないでしょうから。シフトレバーを操作する時のしなやかさなんかも、もう味わえなくなって久しいですから。
シート
見ての通り、色気は皆無。まるで事務椅子です。座ってもその印象が裏切られることはありません。
でも実は別に悪い意味ばかりではなくて、万人を普通に座らせてくれます。特に問題無いけれど、、、期待値(車格と価格からくる)を超える感動とかは無いかな。
走行
試乗で自由が効くときにはいつも走っている、バイパスと山坂道、渋滞しやすい一般道の全てを含むコースで1時間弱の試乗をさせてもらいました。
他に試乗を待っているお客様や営業担当の都合などを鑑みて特に問題無い時は、このようにやや長めの試乗をさせてもらっています。
もしこの車を実際に使うとしたら、目的にもよるけれど、普通に1時間くらいは走らせますよね?(短い場合があるとしても)
だからよくある10分弱くらいの試乗、あれではなかなか真価がわかりにくい。
私の場合、さすがに一見さん的な店で1時間の試乗を願い出ることはしませんが、本気で買い替えを狙う時はたとえ軽自動車でも1時間くらいの試乗をしてから決定していました。自宅の近くのスーパーまで乗り付けてみるとか、バイパスでの加速を確認するとか、1時間でも足りないくらいに試したいことは色々ありますから。
そこで感じた今回のC220dの白眉は、なんと「エンジン」
だいたいメルセデスの通常ライン(AMGや限定車、SLやGTなど以外)で、エンジンが良いなどと私がここで言うこと自体珍しいのですが、さらに今回はそれがディーゼルだというところが珍しさに拍車をかけてます。
実はその前にガソリンモデルも試乗しているのですが、それよりずっと良いと感じました。これまた珍しい。
ガソリンモデルも決して悪くはない。悪くはないのですが、じゃあ何を記事に書こうかと考えた時に筆がちょっと止まってしまったんです。書いて書けないことはないが、とりあえず他のモデルも乗ってからにしようかと。
何しろこのディーゼル、窓を開けても十分静か。とは言えアイドリングや低速時にはディーゼル特有の音や振動が残っているので、雑誌などでよく言われる「そうと言われなければディーゼルとはわからない」までのことはないですよ。ここまで出来の良いディーゼルモデルですらそう言えるのだから、巷で言われているのがいかに誇張されたものかよくわかると言うものです。一方、巡航速度に達すれば相当繊細に感じ取らないとわからないのは確かだし、何より踏み込んだ時の自然でAMG的に強力な加速やバラツキ感のない回転フィーリングなど、ガソリン車を上回るもの(と言うか別物)を見せつけてくれました。これは、アリです。
あえて言うならば、頻繁に入るアイドリングストップからの復帰に小さくない振動を伴う(この瞬間が一番ディーゼルを感じさせる)あたりに改善の余地があるかもしれません。
なお、EQAでダメ出しした走行中のリアカメラの作動音は、気をつければわかる程度なのでOKとして良いレベルです。
あとこれは個体差かもしれませんが、ブレーキのタッチがとても良いように感じました。
足回りがクイックなのに相反するように落ち着きがあるところも美点だし、街乗りからロングドライブまで、ステーションワゴンと言うこともあってオールマイティにこなせそうなのもいいですね。
切替にメルセデスらしからぬロジックで苦労してしまったダイナミックドライブですが、実際に切り替えてみるとやはり前モデルからの変化が感じられました。エコでも十分使える(鋭い加速をする)のは嬉しい変化な反面、コンフォートモードの立ち位置が微妙になりましたね。
いっそのことエコとコンフォートを一体化して無くし、スポーツと新たにスポーツ+を作って3段階にするのが自分的にはベストかな。スポーツ+を楽しめるだけのチカラがあります。
まとめ
総じて意外なほど高評価になりました。1台でフォーマルからカジュアル、買い物のアシからロングドライブまでとても守備範囲が広い車です。
ただ惜しむらくは趣味性までは盛り込めなかった。自動車として求められるそれぞれの要素は高いレベルだと思うのですが、メルセデスならではの主張は何か、どこにあるのかと問われると、迷ってしまいます。
実用性を高レベルでまとめたと言えば、私も乗っていたW/S124のEクラスが世間的にも挙げられ、今でも神話化されています(私的には皮肉も込みで)が、あれには主張も個性も有り余るほどありました。
だから年月とともにそれが趣味性にまで昇華されたんですね。
それがこのCクラスには無いのが残念。
奇しくもこの価格800万円は、まさしくそのEクラスとちょうど重なる価格帯です。すっかり車格(サイズ)とともに価格もEクラス化したことを実感しましたが、かつてのEクラスがその世代の最後の傑作とされたように、純内燃機関の車の最後の世代として語り継がれるようになるかは、ちょっと微妙かもしれません。
まあ、メルセデスとしてもそこは狙っていないのでしょうね。