日産の軽自動車規格の電気自動車、
サクラに試乗してきました。
仲の良い担当者に、自分の店はまだだけど隣の市の系列店に入ったのでご一緒にどうですか?!とお誘いを受けて、一緒に出かけてきた訳です。
試乗車の仕様
日産 サクラ X
寸法: 全長 3,395 mm x 全幅 1,475 mm x 全高 1,655 mm
一充電走行距離:180 km
バッテリー充電時間: 8時間 at 200V/14.5A(普通充電)
定格出力:20 kW
最大出力:47 kW
最大トルク:195 N•m
ホイールベース: 2,495 mm
車両重量: 1,080 kg
ボディーカラー
・暁-アカツキ-サンライズカッパー(M)/ブラック(P)2トーン
以下、それぞれの項目に沿って全くの私見でお送りします。
外観
まず第一印象として、イメージはそのまんま東京モーターショー2019のコンセプトカー、IMKそのもの。特にこの色(カッパー=銅)は。
東京モーターショー2019 IMK
サクラ
グリル
今回注目したのは、日産の電気自動車共通のグリルイメージ。
特にフロントマスクのデザインはサイズ(幅と高さ、奥行き全て)で大きく印象が変わってしまうので、同じデザイン言語を共通で使うのは難しいと思っています。
かつてのメルセデスを例に取ると、126と124と201とでは、フロントを細かく見ると実はかなり違うんですね。それを特徴的なグリルを核に細かいデザインワークで印象を同じになるようにしています。微妙なアールの違い、高さの変化などほんと細かい。
アウディはそこをチカラ技で合わせ込み、要はA4のグリルサイズをA6に近付けてしまった。
BMWはキドニーグリルさえあれば良いもんねと、フロントマスク全体の共通化は狙っていません。レクサスもBMW的。
それに対してこの日産の、グリルを含めたフロントデザインは、電気自動車限定とは言え実にフレキシビリティーに富んでいて、初めから軽自動車からフルサイズまで想定していたように思います。おそらく斜め成分と水平成分との関係は(いわゆる)黄金比を含んでいるのではないでしょうか。
ただ、せっかくそこまで理詰めで設計したのなら、そこにもうほんの少しだけ質感アップのコストをかけて欲しかった。例えば最近のメルセデスのグリルのダイヤモンドドットは(好き嫌いはあれど)しっかりコストをかけました感があります。
(メルセデス公式より)
なので「こんなオプション」はほんと、やめてほしい…
これ、LEDで光るとかならまだしも、「ただのステッカー」なんですよ?え、マジですか!
しかも、これ貼るだけで約1万円。実物見ないで言うのは失礼ながら、無いな〜
これ貼ったのがカタログ表紙にもなってるし…
少なくともグリルや本体のデザイナーの作品ではないでしょうね。。。
透過照明と言えば、エンジン(電源)ONで"NISSAN"エンブレムが光ります。もちろんヘッドライトONでも。
まあそれは良いとして、どうせならグリル内のストライプを樹脂の凹凸だけでなく、ススッと淡く光らせたらセンスの良いフロントになると思うのですが。
ガソリン車では過剰装飾かもしれませんが、なんてったって電気自動車ですから!
サイド
一方、サイドの造形。
こちらはガソリン車と変わらない。ん?変わらない??それは変でしょう。
ボンネット内は基本インバーターだけでスカスカなのだから、もっと大胆にキャブフォワードな設計にして、室内を広く取る(マンマキシマム)こともできたのでは?そうしたらガソリン車では不可能なプロポーションと実用的な室内が作れたはず。これはもったいない。逆に言うと軽自動車のスペース効率を舐めてます。
ホイールは、実車に付いていたのは標準の14インチ。こちらは苦言になってしまうので後で言うとして、まずはオプションの15インチを褒めます。つまり実物は見てないけど、カタログで見るだけでもわかる、素晴らしいコンセプトカーからの再現度。
東京モーターショーで撮影した写真と改めてアップで比べてみてください。
IMK
サクラ
これだけイメージを保ちつつ、普段の手入れのしやすさにも気を遣ったのがなお良い。(コンセプトカーの繊細なラインも捨て難いですが!)
新しさも伝統美もある。グリルを含めたクルマ全体のデザインとの協調性もあり、最近のこのクラスとしては輸入車含めても傑作と言ってもいい。(実物を見てから最終的な結論にしたいけど)
と、ベタ褒めしたところでここから苦言を。
試乗した実車の標準14インチホイールは、わざわざ15インチのデザインを改悪したと言っても過言ではないデザイン。これどうですか?
先進性もデザイン性も伝統美も、みんなどこかに消えてしまっていますね。
どうせと言っては何ですが、補助金前提であればこの価格差が支配的とは思えないので、15インチを素直に標準装備にすべきだったのでは。
さらに苦言したいのが、オプションカタログにある、このホイール。
これ以上無いくらい普通。これになぜ9万円も追金して(全体としての)デザインのダウングレードをしなくちゃいけないのか!(このホイールは安いグレードでは選べないらしい。つまり高いグレードを買わせるためか!)
ただ、15インチホイールで欲を言わせてもらえるならば、ボディーカラーと合わせたら言うことなかった。(コンセプトカーは同色。さらにタイヤのサイドウォールもデザインされている)
カッパーならせめてゴールド系。
他にブルーのボディーにブルーのホイールとかも似合いそうじゃないですか。
シルバー一択ではちょっと味気ない。限定車かマイナーチェンジで用意されないかな。
内装
最近のトレンドである、バカでかいタッチディスプレイに機能を集約する方向性かと思いきや、案外オーソドックスにまとめてきてました。ナビは完全に別体で他車種と共通。サードパーティ製も選び放題。
メーター、ナビ&オーディオ、空調と完全に分離した配置は、よく言えば迷いにくく、悪く言えば新鮮さが無い。
電気自動車ならではの提案よりも、ガソリン車からの乗換時に違和感が少ないように意図されたようです。このあたりはトヨタの方針と同じようですね。それはそれで好印象(操作系のわかりにくさは自動車の場合、即トラブルや事故に繋がる) なところもあるのですが、ナビが9インチとかね、あまりに普通過ぎます。まあそのあたりのさじ加減が難しいんですけどね。
シフトレバー
あとオーラの試乗の時にも気になった、同じデザインのこのシフトレバー。今後これを共通化していくのでしょうか?!
手を置くとシフト表示が見えなくなるって、それおかしくないですか??
もしデザインとの両立を狙うのなら、シフトレバーを握るとレバー握り部の表示が消えてレバー底部周辺の視認可能な場所に(小さくても良いので)シフト表示が透過照明で現れる、とかが良いですね。それなら拍手ものです。握っているかどうかの検出は簡単だし。
内装その他
内装で残念なのは、アリアで個人的に高評価だったハプティックデバイス(振動子型触感スイッチ)が全く採用されなかったこと。あれは押し込んでないのにあたかも押し込んでいるような感触が良く作り込まれていました。基本は多分アルプス電気かどこかの開発かと思いますが、実車搭載の段階で日産自らチューニングしたことでしょう。まあお試し程度のものは20年くらい前からありますが、それを軽自動車クラスに積んでこそ、と言うもの。
シートについてはコメントに困りました。
悪くは無いんです、確かに。でも、、何か物足りないのもまた事実。ごめんなさい、単独でコメントするだけの内容が無いです。
走行
例によってここまでお待たせしました。
ただ、前提として最初に書いた通り地元のディーラーから少し離れたところで試乗していることもあり、市街地しかも渋滞エリアがほとんど。海沿いのバイパスが少しあるけど山坂道はゼロ。
前後左右に重心が移動する山坂道の切り返しこそ、低重心設計の電気自動車が違いを見せつける舞台だと思うんですけどね。まあ、地元に配車されたら改めて乗ってみます。
そう言う訳でほぼ平地のみの試乗コースなのが残念ですが、ゼロスタートを含む加減速の繰り返しと、法定速度内の巡航は試すことができました。
静粛性
静粛性については悪いはずも無く、でもこのクラスの電気自動車として想定内。
日産車で言えば
アリア > リーフ > の外挿線(延長線)上に正しくプロットされていてヒエラルキーが綺麗に守られている感じ。
二重ガラスのオーラとは異なり窓ガラスは一般的なものですが、窓からの侵入はあまり気にならない反面、フロアからの低周波成分の振動がやや気になるかな。
絶対的な音圧(音量)をどう評価するかは、このクルマをどう使うかによるかと思いますが、少なくともガソリン車とは別物の静かさで、裏切られ感は無いでしょう。モスキート音にも似たインバータノイズは車内外ともよく抑え込まれていますし、タイヤもごく一般的なエコタイヤ(EP150)ですが、ロードノイズが我慢できないようなこともありません。(実はEP150って色々な隠れ仕様があるので評価が難しいのですが)
加速
アクセルを踏んだ時の加速感は軽ターボを完全に上回ります。しかしプレミアムクラスの電気自動車にありがちな「速すぎる」ことはなく、そこは敢えて絞っている感じ。これはアクセルをゼロスタートでベタ踏みするとわかりやすいです。ある速度域から、踏みつけているのにパワーが漏れて抜けていくような感じになります。
これは明確な不満とまでは言えないものの、ドライブモードを切り替えてsportsにした時くらいは全開で加速させて欲しいところですね。慣れると逆に不満になっていく気配があります。
その他、回生ブレーキ強めのワンペダル運転もしましたが、加減速のGがsportsモードに合っている感じで、他のモードとは相性が悪かったです。逆に試乗後半はワンペダルばかり使っていたので、ブレーキタッチの印象が希薄。悪くはなかった気がしますが。。
例によって運転アシスト系の確認はほとんどしていないので、性能の程はわかりません。
まとめ
クルマとしての出来は、ターゲットが明確な分、その範囲で言えば上々の部類かと思います。航続距離は実質100kmくらいとは言え、例えば我が家のタントの使い方で言えば99%以上網羅することでしょう。静粛性、加速、スムーズさは全て別物レベルですから、「自分は今、電気自動車に乗ってるぜ!」な満足感を充分満たしてくれるのでは。
私から見た問題点は大きく2つ。
一つ目はなんと言っても価格でしょう。
試しに作ってもらった見積書(の一部)がこちらです。
中間グレードのXにプロパイロットとナビを付けただけで320万円を軽く超えました。国の補助金前提として、あとオプションとかを少し見直すとしても、まあ250万円は下らないでしょう。感覚的には補助金抜きで100万円以上高いです。
その100万円を改造費に費やしても、ガソリン車に同じレベルの静粛性と加速をもたらすのはほぼ無理なので絶対的に高価かと言われればそうでもないのですが、特にうちの使い方は「アシ車」
とっておきのお出掛け靴やトレーニングシューズに何万円か払うことはあったとしても、近所のお買い物サンダルには数千円で充分、と言う感覚で言えばやはり払いたくない差額ですね。ですからガソリン車と金額的にも同格になったと言うのはあれ、私的には誇大広告。
同格とか言うのがそもそもの間違いで、同じでは無いんですよ。別格な静かさや加速にお金を積む気があれば、ある意味適正価格に近付いたと言えるのだから、そこに価値を見出している人なら満足でしょう。でも自分の使い方とは違う。
2つ目は、99%カバーしたとしてその残りの1%の問題。
例えば年に何日あるか無いかの片道100kmを超える移動、これをどうするか。
スマホのように予備バッテリーを気軽に持ち歩くにはコスト的にもサイズ的にも苦しいので、いっそレンタカーとのセットオプションとかどうでしょうね。
電気自動車オーナーは年に何日か無料で、航続距離に不安の無い非電気自動車が借りられるとか。
これ実はメルセデスでは既に「シェアカー・プラス」として実現してますよね、さらに電気自動車以外も使える。
(公式より)
制約が色々と多い軽自動車規格の電気自動車でこそ、このシステムを導入すべきと思います。それならハードルがうんと下がると思うのです。
追記
今回はいつものエリアでは無いところで試乗しているため、定点観測的な見方が出来ていません。
できれば日を改めて慣れたコースで再度試乗したいところです。