こんばんは、ノックノックスのヤストミです。
今日から数日にわたって「幸せの標本」のあとがきを綴っていこうと思います。
もう6年も前になりますが、初演の「幸せの標本」が現在唯一の劇団員でもある柵山さんとの出逢いでした。今回の楽隊でヴォーカルを務めていたAsumiが橋渡し役となってくれたおかげで、ノックノックス初の植栽の舞台美術が完成したのです。
現在のノックノックスをご覧になっている方で、「幸せの標本」のこれまでの歩みを詳しく知る人も少ないと思いますので今回はこちらをお話します。
まず、今回の上演版と6年前の初演を比べた際、一番の違いは登場人物にあります。初演はトカゲが存在しません。ゴリライモ、手羽先、お母ちゃん、船長の4人のものがたりです。しかも船長は今ほど優しくなくて、蜜蜂を増やせなかったら人間だけ殺す爆弾で地球を浄化するぜ!的なポジションでした。怖い・・・。ちなみにチンパンジー型の宇宙人という設定がありましたので、劇中でバナナを食べていました。また、当時は名古屋で活動しておりましたので、私も名古屋の常識内(?)で脚本を書いておりました。何が言いたいのかと申しますと、手羽先は料理の名前だと思っていたのです。正式には手羽唐なのですが、名古屋には元祖手羽先の風来坊という手羽唐の名店がありまして、手羽先=あの料理だという認識だったのです。ですからゴリライモの「手羽先って、部分ですよ」の台詞は「手羽先って、料理ですよ」となっていました。懐かしいです。
その後のツアーで上演した「幸せの標本 完全版」ではじめてトカゲが登場します。初演は設定がぶっ飛んでる割に随分と柔らかいお話で毒っ気がありませんでして、それを一手に引き受けてくれたのがトカゲです。彼は憎たらしく見えますが、割と言っていることはまともで、どうやっても憎みきれないノックノックスきってのナイスヴィランです。出番は少ないですが(と言うかこれ以上出てきたらバランスがおかしくなります)、ツアーでも常に人気キャラでした。ガーデナーの柵山さん一番のお気に入りキャラもトカゲです。ちなみに、ツアー版の上演時には私は上京しておりまして、手羽先が料理ではなく、身体の部分であることを知りました。ですので例の台詞は名古屋公演のみ「料理」その他の土地では「部分」としておりました。今考えると・・・料理はなしですね。
トカゲの登場により、一気にものがたりの厚みが増した「幸せの標本 完全版」ですが、トカゲのインパクトがある割に、ものがたりの行き先に迷いがある内容でして・・・特に手羽先のポジションがあやふやになっていました。そもそも手羽先はお母ちゃんやゴリライモと違って、船長が連れてくる予定だった生き物ではありません。寂しさからただついて来ただけ、という設定があります。初演では割とトゲのあるキャラクターだったのですが、ツアー版でトカゲが登場したことによりそのポジションはトカゲが担うことになります。人間に飼われていた経験上、人間のことは好きではないけれど・・・お母ちゃんは特別。というどっちつかずの性格が、ものがたりの内容的にどうしてもトカゲに食われてしまうと言いますか、弱いキャラクターになってしまいました。ものがたりとしては良かったですし、弱い手羽先もそれはそれで魅力的だったんですけどね・・・。
初演からずっと手羽先推しの私としては(そう、作者は手羽先推しなのです)これではいかんと奮起し、ラストシーンを大幅に変更しました。それが2度目の再演「幸せの標本 沖縄公演」のバージョンです。私は手羽先がトカゲに向かって放つ「みんな地球で生まれたんだもの~・・・」の一連の流れがとても好きでして。これは沖縄版で生まれました。私がこの作品で言いたいことはこれにつきます。あそこは手羽先が地球を背負っているようなシーンですしね、そりゃ船長もトカゲを止めに入りますよ。手羽先のキャラクターが花開いた瞬間です。彼女はゴリライモと違って頭がいいですから。だからこその説得力です。
そんなこんなで、もともと目立つポジションの・・・と言いますか・・・はじめから完成されていたお母ちゃん、ゴリライモ、船長らと、手羽先、トカゲのバランスが取れ、更に台詞のリズム感の変更や不必要な台詞のカットなど全編に渡って修正を加えたのが、今回のレッドシアター版「幸せの標本」なのでした。
それでも雑味は残しているんですけどね。のど越しが良すぎてしまうと気持ちの良い作品になってしまいますので。それは他の作品でやります。
と、これまでの歩みを私目線で、簡単にお話して参りました。明日はキャラクターについてお話ができればと思います。
それではもう暫く「幸せの標本」のものがたりにお付き合いくださいませ。
撮影 勝見里奈






