
早朝、まだ薄暗い台所で灯りをつけたとき、
まず目に飛び込んだのは、テーブルの上の柿でした。
あかく色付いた、といいますが、これは朱色です。
オレンジ色より黄味の強い、鮮やかな色。
色付いて甘~くなった柿の味を思い浮かべての「朱」です。
書道で、私たちは黒い墨を使って練習しますが、
先生は、朱墨を使って添削してくださいます。
朱を含んだ筆を使って、「こんな風に・・・」と実際の筆遣いを示しながら。
その、腕の動かし方を目に焼きつけて、
今度は実践してみるのですが、そう簡単には同じようにできません。
黒い墨の上に朱色が載り、その上をもう一度黒い墨でなぞる。
そんな風にして、どれだけ練習したでしょう・・・
穏やかに、小学生の私に書の基本を教えてくださった先生を偲びながら、
その先生のような優しさと、
伸びやかな雰囲気を出せるようにと、筆を運びました。