2024春アニメ 6月10日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2024年春アニメのうち、6月9日深夜に録画して6月10日に視聴した作品は以下の5タイトルでした。

 

 

響け!ユーフォニアム3

第10話を観ました。

今回は関西大会前の部内のゴタゴタが頂点に達したところから、関西大会の本番直前の久美子の名演説で一気に皆の心が1つになり関西大会に臨むところまでが描かれました。今回がここまでで一番盛り上がることはここまでの流れから十分に予想はしていましたが、その予想を遥かに超える神回中の神回でしたね。「響け!ユーフォニアム」のシリーズで最高の神回とまで断言する自信は無いですが、屈指の神回であったのは間違いない。演奏シーンがあったら最高の神回と思わず言ってしまったかもしれませんが、演奏シーンが無くても十分に屈指の神回ですし、演奏シーンがあったからといって最高の神回とはやはり断言は出来なかったと思う。これぐらいハイレベルなドラマ内容なら実際、演奏シーンの有無とか些末な問題に過ぎませんし。それに、いずれにせよ、おそらく最高の神回はこの後のラスト3話の中で描かれるはずですから、ここで厳密にこだわる必要も無い。今回のエピソードでここまでの溜めに溜めたストレスを一気に解消して、ようやく北宇治吹奏楽部が1つになった。そうなれば、ここからのラスト3話は北宇治のターンでしかない。

そして「響け!ユーフォニアム」のターンでしかないとも言いたいところですが、今期は「ガールズバンドクライ」という凄いのがあるので、ラスト3話がどっちのターンになるかは分からない。ここまでのエピソードの内容の積み重ねを冷静に見れば、今回のエピソードを経てもなお、僅かに「ガールズバンドクライ」の方が上なのかなとは思います。ただ、神回といわれる「ガールズバンドクライ」の8話や10話を観ても私は凄いエピソードだと思ったしグッとこみ上げるものはありましたけど、個人的には涙腺崩壊まではいかなかった。しかし、この「響け!ユーフォニアム」の第10話は涙腺崩壊しましたね。いや、それ以外のエピソードもやっぱり全て、感情をより大きく揺さぶるのは「響け!ユーフォニアム」の方です。ストーリーの出来を冷静に評価したいので「ガールズバンドクライ」の方が現状若干は上なんですが(まぁこの作品にそこで勝ててるあっちも凄いんですが)やっぱりこっちの方がより感情が揺さぶられる。作画や演出や演技がこっちの方がハイレベルであるせいなのかもしれないですが、それだけではなくて、やはりこちらの方がより強く共感出来るからなんでしょうね。

感動させるというのは割と簡単で、ストーリーの作り方が上手ければ感動はします。涙腺のユルい人は泣くでしょうし、最初から共感したくてアニメを見てる人なら共感もするでしょう。でも普通の人間に涙腺崩壊させるまでとなると、やはり徹底したエンタメか、あるいは徹底したリアリティというものが必要で、前クールで徹底したエンタメでそのレベルに達したのが「勇気爆発バーンブレイバーン」だったわけですが、今期はエンタメでそこまで到達した作品は無く、徹底したリアリティでそこに達しているのが「ガールズバンドクライ」と「響け!ユーフォニアム」の2作品だといえる。同じく脚本力ではトップクラスの「夜のクラゲは泳げない」もそのリアリティの部分は足りない。

ただ「ガールズバンドクライ」と「響け!ユーフォニアム」はリアリティの方向性が違っていて、「ガールズバンドクライ」は「不遇な天才のリアリティの徹底した追求」といえます。天才が成功すると考える方がリアリティが無くて、規格から外れがちな天才というのは不遇なものです。「ガールズバンドクライ」はそこを徹底してリアルに描いているから感動する。一方で「響け!ユーフォニアム」は「努力する凡人のリアリティの徹底した追求」といえます。おそらく私がこっちにより深く共感して泣いてしまうのは、やっぱり私が努力してもなかなか報われない凡人だからでしょう。天才は上手くいかなくて窮地に陥った時、才能で事態を打開しますけど、凡人にはそんなことは出来ない。「響け!ユーフォニアム」の主人公で凡人である黄前久美子が今回の話でどうやって事態を打開したのかというと、それが今回のサブタイトル「伝えるアルペジオ」に表されている。

「アルペジオ」というのは「和音を構成する音を一音ずつ弾いていくことでリズム感や深みを出す演奏技法」のことです。その「アルペジオ」を伝えることが久美子の出した結論でした。伝える相手は北宇治吹奏楽部の部員全員であり、具体的には今回のラストシーン前の久美子の部員たちに向けた演説のことを指す。では、それがどういう意味で「アルペジオ」なのかというと、まず「アルペジオ」が「和音を一音ずつ奏でる」ということから、そもそも「和音」とは何なのかという話から考えないといけないでしょう。

「和音」というのは「高さの異なる複数の音を同時に奏でること」であり、そうすることによって美しい音を奏でるわけです。もう少し丁寧に言えば「音楽に想像や感情をもたらす」という役割があるようですが、要するにここでは「複数の音を重ねた方が美しく聴こえる」という意味と解釈しておけばいいでしょう。しかし一方で、その和音を重ねないで1つ1つの個別の音を聴かせた方が深みを出すことが出来る場合もあり、その手法が「アルペジオ」なのです。

ここでは、もちろんこれらの音楽用語は言葉の意味そのままで使われているわけではなく一種の暗喩として使用されていますので「和音」は「皆で出した結論は正しい」ということを意味している。正確には「正しいはず」「正しくなければいけない」ということになる。だからそれに反したようなことは言いづらい。特に皆で決めた結論というのは、和音がそれを構成した個々の音とは全く違う音になるように、その決定過程において個々の意見とは違うもの、一種の「公式見解」になっています。だから、そういう「公式見解」が絶対視されるようになると、個人の意見は言えなくなってしまう。だが「アルペジオ」が和音を構成していた元の個々の音を奏でることで深みを出すように、あえて「公式見解」とは違う自分個人の気持ちを皆に素直に伝えることで事態の打開を図ったというのがこのサブタイトルの意味だといえます。

ただ、単に「自分の気持ちを素直に相手に伝える」というだけならば「ガールスバンドクライ」の主人公の井芹仁菜がいつもやっていることです。仁菜はそれをいつも難なくやってのけてしまい、しかも凄いパワーワードを連発する。こういうことが出来るのも仁菜の才能だといえます。その才能が仁菜を不遇に陥らせることもあれば救いになることもある。だが久美子は凡人なので、まず簡単に「自分の気持ちを相手に伝える」ということに踏み出すことも出来ない。「和音」に暗喩される「世間一般の常識」や「皆で決めたルール」や「周囲の気持ち」などに気を使って黙り込んでしまう。仁菜ならそこで黙り込むことはないんだが、久美子は立ち止まってしまう。産みの苦しみが長いのです。そして、ようやく言葉を絞り出しても、仁菜みたいなパワーワードを連発したりもしない。あんまりカッコいいことも言えない。でも、そこに至るまでの、つまり「アルペジオを奏でる」までの苦しみが深いぶんだけ、久美子の言葉の方が仁菜の言葉よりも、少し深く「響く」のです。言葉自体はカッコよくないんですけど、何故かより深く響いて、人を動かす力がある。

そういうところが見事に描かれたのが今回のエピソードなのであり、アルペジオを伝えること自体が大事なのではなく、この作品の場合はそこに至るまでの過程が大事なのであり、その過程があるからこそ皆の心に響き、視聴者の心にも響く。そこを丁寧に描くところにこそ、この作品の最大の強みがある。「アルペジオ」を「伝える」に至るまでのドラマを魅せることこそが主眼といえます。その「過程」は演説場面に繋がっていく今回のエピソード内容だけではなく、このアニメ3期のここまでのエピソード、更に劇場版やアニメ2期やアニメ1期までさかのぼって、全てが伏線となって今回の久美子の演説シーンに繋がってきて、遂には「響け!ユーフォニアム」というタイトルの回収までやってしまう。こういう芸当に関しては、さすがに「ガールズバンドクライ」でも真似は出来ない。

まず今回は久美子が滝先生に質問する場面から始まり、その後、関西大会を前にして久美子が完全に行き詰ってしまうまでが丁寧に描かれていきます。まず前回、麗奈と喧嘩してしまって翌朝は別々に登校することになり、久美子が早朝の職員室に音楽室の鍵を貰いに行った際に滝先生に質問をする場面ですが、ここで久美子が滝先生に質問しようとした意図は前日の麗奈との喧嘩から繋がっているのでしょう。

複数回オーディション制を採用したことによって演奏の質自体は向上したのだが、オーディション結果がコロコロ変わるので部員の中に滝先生への不信感が生じて動揺が広がってしまった。そうした部員の不満の声に対して麗奈は滝先生を信じれば済む話だと言い無視しようとし、久美子は部長として無視は出来ないと主張して対立した。そして、滝先生への部員の不信感をあくまで軽視しようとする麗奈に事の重大さを分からせるために久美子自身も滝先生の判断に納得出来ない部分はあると言った。それはつまり、府大会ではソリに選ばれた自分が関西大会ではソリから外された件のことだったのだが、それを聞いた麗奈は「部長失格ね」と言って怒って帰ってしまった。部長が最も滝先生を信じなければいけないのに、その部長である久美子が滝先生を信じられないとは麗奈から見て言語道断だったのだろう。

そうして部内の混乱に1人で対処することになってしまった久美子は、滝先生に対する部員たちの不信感にどう対処することにしたのかというと、自分が滝先生に今回のオーディションの選考意図を聞き、それを部員の皆に伝えようということだったようです。特にその中でも部内の混乱の最大の原因になっている自分がソリから外された件について滝先生の見解を聞こうと思い、それで久美子は早朝の職員室で滝先生に質問に及んだのです。

久美子はもちろん個人的に自分がソリを吹きたかったし、ソリを外されて不満ではありました。ただ別に今から真由を外して自分にソリを吹かせてほしいと直訴するつもりがあったわけではない。実力的には真由がソリを吹いて不安があるわけではなかったし、今回の決定そのものを覆したいとは思っていなかったし、選考結果そのもので滝先生に文句を言う気も無かった。ただ、府大会では自分を選んでいたのに関西大会では真由を選ぶという滝先生の方針のブレが部内の不信感の原因にもなっていたのは事実なので、そのあたりの理由を滝先生にちゃんと聞いて久美子自身が納得出来たら皆にも伝えようと思ったのです。

ただ、いきなり自分のソリの話を切り出すと個人的な不満を言っていると誤解されそうだと思い、久美子はチューバを4人編成に変えたのはどうしてなのかという質問から入った。チューバの話からユーフォの編成の話に展開させて、そこからさりげなくソリの話に移行しようと考えもあったが、そもそも奏が言っていたように「最初からチューバを4人にしていれば混乱せずに済んだ」という件も引っかかっていたのです。それは確かにそう通りであり、そういうところも滝先生の方針にブレがあると奏たちに誤解される原因になっていたからです。だから久美子はその件についても滝先生の考えを聞きたかった。

その質問に対して滝先生は低音の薄さをカバーする必要があったと説明しますが、そのこと自体は久美子も奏も理解はしている。問題はどうして府大会の時からそうしなかったのかという点なのです。だが、そういう聞き方をしたら非難しているようになるので、久美子は質問の仕方が難しいと感じ、少し考えこんで、こうなったら個々の点で色々質問するよりも、滝先生はとにかく勝つためにその都度考えてくれているのだという言質だけ貰って皆に説明しようと考え、滝先生に「どんな方向の音楽を目指しているのか」について教えてもらいたいと言う。

久美子としては「コンクールを特化した音楽」という答えを期待していたのですが、滝先生は「難しい質問です」と考え込む様子で、どうやら滝先生は「コンクールに特化した音楽」など目指しているわけではないようです。それは当たり前の話で、滝先生はもともと「音を楽しむと書いて音楽」というのが持論であり、久美子たちにも常々「皆さんが納得できる演奏をしてください」と言っていた。もともと滝先生はコンクールで勝つことを理想の音楽としてきたわけではない。府大会と関西大会で方針が変わったりしているので「滝先生は勝つために必死なのだ」と久美子が勝手に誤解して、滝先生が「コンクールに特化した音楽」に宗旨替えしたのだと勝手に思っていただけだったのです。

そこで滝先生は「皆さんが全国大会金賞を目標に掲げたので、それを実現するために考え続けているだけ」だと答える。それを聞いて久美子は自分が滝先生に対して非常に申し訳ないことをしているということに気付いた。もともと滝先生はコンクールなどに囚われない自由な音楽を好む人なのに、そんな滝先生に「コンクールに特化した音楽」を強いていたのは自分たちだったのだと気付いたのです。自分たちが「全国大会で金賞を獲りたい」という目標を掲げたから、滝先生はそれを実現させるために必死で考えてくれているだけなのだ。また、滝先生の信頼を揺るがせる原因となっている複数回オーディション制を提案したのも久美子たち幹部だった。滝先生だって複数回オーディション制にすれば自分が悪く思われることは分かっていて、それでも演奏のレベル向上のためにそっちの方が良いと思って了承してくれたのだ。それも「全国大会金賞」という自分たちの掲げる目標を実現させてくれるためだったのだ。

その結果、夏合宿の時は橋本先生に「音楽を楽しむことを忘れている」と非難までされていたが、滝先生があんなふうに言われてしまうまで追い詰めてしまっていたのは自分たちだったのだ。本来は滝先生はあんなことを言われる筋合いなど無いのに、自分たちのせいであんなことを言われる羽目になってしまった。麗奈が「滝先生は何も悪くないのに」と悔しそうに言っていたのは、そういう意味だったのです。麗奈も悪いのは自分たちの方だということは分かっていて、自分たちのせいで滝先生が講師や部員たちから悪く言われることが辛かったのです。その上、遂に部長である久美子までが滝先生を非難したことで麗奈は完全にキレてしまったというのが昨日の喧嘩の発端だったのです。

久美子も、自分がこれ以上滝先生に非難がましいことを言う資格は無いと思い、「すみません、失礼なことを言いました」と意気消沈して頭を下げ、それ以上質問することは止めてしまった。確かに滝先生の方針がブレている理由は、コンクールで勝ち抜いていくために試行錯誤しているからであったのですが、それはもともと久美子たち幹部をはじめとした吹奏楽部員たちが求めたことだったのです。それをまるで滝先生が勝手にやったことみたいに他人事として部員たちに説明する気など久美子には起きなかった。それで頭を下げて黙ってしまった久美子に滝先生は飴玉を差し出し、教頭から貰ったものだと言い、他の部員には内緒だと言って渡してくれる。

滝先生は部長の久美子がいきなりこんな質問をしてくるということは何か部内で面倒なことが起きているのだろうと察しているのでしょう。おそらく滝先生もバカじゃないので部内の雰囲気が悪いことも分かっているのでしょう。そして、それで久美子が悩んでいることもこれで分かったのでしょう。ただ、それが分かっていながら滝先生は久美子に親身に相談に乗ろうとはしていない。滝先生の言っていることは全く間違ってはいないが、久美子が悩んでいることが分かっているのならもう少し深く関わろうとしても良さそうではあります。ところが滝先生はそうはしないで飴玉を渡した。これはつまり、問題が起きていることは分かっていながらも理由があって久美子の力になってあげることが出来ない申し訳なさが「飴玉を渡す」というちょっとした親切になって現れているのだと思われます。「他の部員に内緒」というところからも、滝先生が自分が問題に適切に対処できない状態にある申し訳なさを知られたくないという意思が感じられる。

ただ、久美子はこの時はそうした滝先生の微妙な心境について想像を働かせる余裕は無く、ただ何となく飴玉を受け取っただけで、音楽室に向かい、その後、朝の練習が始まった。久美子としてはもう滝先生を巻き込むのはやめて自分が部員たちの不満に対処していこうと決意したのですが、この朝練の時に決定的な揉め事が発生してしまう。練習中に何人かの部員が複数回オーディション制について不満を言い、久美子が「後で話を聞く」と言ってその場を収めようとしたのだが、麗奈が「自分たちで納得して受け入れたオーディションのやり方に不満を言うべきではない」と言い返したので、部員たちが「滝先生の決めたことだから仕方ない」と言って従おうとした。

そのまま流しておけばよかったのだが、麗奈は全てが滝先生のせいみたいになっている状況に腹が立っているので、複数回オーディションをすると決めたのは滝先生ではなく自分たち幹部3人だと言ってしまう。それを聞いて部員たちが動揺し、副部長の秀一は困った顔をしますが、仕方なく自分たちが決めたことだと認める。すると、滝先生の方針なら仕方なく従う姿勢だった一部の3年生部員たちが、幹部3人で決めたことなら自分たちが嫌だと言えば方針転換出来ないものかと聞いてきて、麗奈は今さらそんなことが出来るわけがないと撥ねつける。

複数回オーディション制で演奏の質は上がっているのだから、この方針が根本的に間違っているということはないのだ。だから麗奈はもちろん久美子も秀一もこの方式自体を変える気は無い。ただこの方式のせいで部内の空気が悪くなっているのもまた事実なので、久美子はとにかく皆のそういう意見は自分が聞くと言ってその場を丸く収めようとするのだが、麗奈は全国大会金賞という目標のためにベストな方法だと皆で納得した方針に対して、今さら幹部の提案だったから撤回すべきとか言い出す方が間違っているとして不満を全く聞こうとしない。確かに麗奈の言っていることは正しいのだが、文句を言っている部員たちも別に自分のために文句を言っているわけではなく、実際に不満が出ていて部内の空気が悪くて肝心の演奏の質にも悪影響を及ぼしそうなことを心配していて、幹部に何か手を打ってほしいと言っているのです。麗奈や久美子たち幹部だけでなく、他の部員たちだって全国大会で金賞を獲りたいのです。特に3年生たちは今年が最後だから必死です。このままの部内の状態で目前に迫った関西大会に臨んでもきっとダメだろうと、3年生たちはみんな分かっているのです。

そうして大揉めになったところに滝先生が来て、冷静な態度で練習を再開するよう促したのでその場は収まりましたが、練習後、廊下で麗奈と秀一が喧嘩を始めてしまう。秀一がさっき揉めたのは麗奈が久美子が収めようとしてるのを無視して挑発的なことを言ったせいだと責めて、麗奈はナアナアで済ませても非を認めることになると言って反発する。これは要するに久美子みたいに丸く収めようとして誤魔化す方が良くないと言っているようなものだが、だからといって麗奈みたいに正論で押さえつけても不満は消えないと秀一も言い返す。

その喧嘩がヒートアップして大声になってしまい音楽室や廊下に残っている部員たちに丸聴こえになってしまい、慌てて久美子が止めますが、麗奈は拗ねて何処かに行ってしまい、秀一は久美子に謝りますが、もうこうなっては自分たちでは対処不可能だから、滝先生に相談しようと言い出す。確かに久美子みたいに話を聞いて不満を宥めても問題を先送りするだけであり根本的解決にはならない。それでも久美子はとにかく今は関西大会が終わるまでは先送りで対処しようと思っていた。だが麗奈が正論でむしろ不満を煽ってしまったので、もう先送りしても既に現在の状態でも関西大会でマトモな演奏が出来そうにない状態になってしまったと秀一は言うわけだが、そもそも今回の朝練が始まった段階で揉めようが揉めまいが関係なく、既に関西大会でのマトモな演奏は無理な状態にまで事態は悪化していたのかもしれない。久美子の見立てが間違っていたのか麗奈が悪かったのか、今さらもう論じても意味は無い。とにかく現状ではもう幹部だけでは対処は不可能なのであり、それでも関西大会が目前に迫っている以上、滝先生にオーディションでの選考理由について質問して皆に話してもらおうというのが秀一の意見でしたが、こいつはいつもワンテンポ遅いのであって、それは既に久美子が早朝に試みて諦めた方法でした。

ただ、久美子も自分の見立てが甘かったことは認めざるを得ないのであり、何とか問題を先送りして関西大会を乗り切ろうというのはもう無理だと悟った。かといって滝先生にこれ以上迷惑をかけることは心苦しいと葛藤したが、どうしても関西大会を突破して全国大会に行くためはもうそんなことは言っていられないと思い、滝先生に部員の前でオーディションの選考理由を話してもらうよう頼むことを決意した。それに秀一は賛同してくれたが、麗奈に話を通さないわけにいかないので、久美子は麗奈を呼び出して2人で話をすることにした。

だが、その話を聞いて麗奈は承知出来ないと言う。滝先生を信じれば済む話だという麗奈に久美子は今の1年や2年は滝先生の指導で全国に行ったのを2年前に見た今の3年みたいには滝先生を信頼できないのだと説き、滝先生の選考が原因で起こった混乱なのだから滝先生が説明すれば混乱は収まるはずだと説得しようとする。だが麗奈は選考結果に不満がある者は滝先生がどう説明しても選考結果が変わらない限り納得はせず、余計に部内は混乱するだけだと言ってあくまで反対する。

これは実際どうなのか分からない。案外みんな納得するような気もするのだが、とにかく麗奈は自分たちが原因で起きた混乱に滝先生を巻き込むことに強い抵抗があるようです。それはもちろん久美子だって同じ気持ちなのだが、実際に自分たちでは打つ手がないのだから関西大会を突破するためには仕方ないのだと言って麗奈に辛い決断に賛同してくれるよう求める。しかし麗奈は部長として何もしないで滝先生に頼ろうとするだけの久美子を非難する。前日の喧嘩の際に麗奈が久美子のことを「部長失格」と言ったのはそういう意味だったのです。滝先生を信じないことを「部長失格」と非難したわけではなく、問題の原因を滝先生に押し付けて自分で何も手を打とうとしない久美子の態度を「部長失格」と非難していたわけです。

それは久美子には痛い指摘だったが、実際に久美子には現在の部内の状態をどうにか収めて関西大会を突破出来るようにする策など何も思いつかない。むしろそんなに偉そうに言うのなら麗奈に名案を教えてほしいものだと思ったら、麗奈はあくまで正論で説き伏せるしか方法を知らないようです。関西大会を突破するだけが北宇治の目標ではない。全国大会で金賞を獲るのが北宇治の目標なのだ。そのためには最高の演奏が出来るようにするための体制は揺るがすことは出来ない。だから一切の妥協はしてはいけないというのが麗奈の信念だった。それは確かに正論だったが、そんなことを言っていても部内の混乱は収まらず関西大会の突破は出来ないだろう。滝先生に話をすることにも賛同してもらえず、麗奈は帰っていき、久美子は途方に暮れた。

それで久美子は完全に行き詰ってしまい、あすか先輩の住んでいるマンションに行って相談してみることにした。久美子が1年生の時の3年生で、当時の副部長である低音パートのリーダーだった田中あすか先輩は今は京都市内で女子大生をやっており、現在住んでいる家に行ったことは無かったが、絵葉書を貰って住所は知っていた。あすか先輩とは久美子は1年生の頃はあまり気が合わず衝突することが多く、あすか先輩はいつでも久美子の内心を見透かして批判的に見てしるような感じで、正直久美子はあすか先輩が苦手であったが、同時に自分にはない視点を持って吹奏楽部をよく見ている人だという信頼はあった。だから、自分の力では吹奏楽部の問題に対処出来なくなってしまい、盟友である麗奈とも完全に決裂してしまった今、久美子は「あすか先輩なら自分では思いつかないような視点で解決法を見つけてくれるかもしれない」と思い、とにかく関西大会直前ですから、藁をも縋る想いであすか先輩の住むマンションにアポ無しで訪問したのでした。

そうして、あすか先輩のマンションの部屋に行くと、あすか先輩は出かけていてすぐ帰るとのことで、そこにはあすか先輩とルームシェアしているという中世古香織先輩がいた。香織先輩もあすか先輩と同学年で、久美子が1年生の時に3年生だった香織先輩はトランペットのパートリーダーで麗奈の直の上の先輩にあたる。そして、麗奈が1年生の時のコンクールでトランペットのソリを吹くことになった時に麗奈とソリの座を賭けて争った相手でした。久美子が奏や真由に語ったように、この麗奈と香織先輩のソリ争いがきっかけとなって北宇治の実力主義の伝統が始まったのだと久美子は主張している。

その香織先輩に部屋に通された久美子は、あすか先輩が「もしその絵葉書を使って久美子が家に来るとしたら麗奈と喧嘩した時だろう」と予想していたという話を香織先輩から聞かされる。あすか先輩は相変わらず久美子の行動は全てお見通しみたいです。そこにあすか先輩が帰ってきて、どうやらあすか先輩が期待していたのは麗奈との痴話喧嘩のような話だったらしくて、部内の揉め事の話だと聞くと落胆した様子であったが、久美子はこれまでの経緯をあすか先輩と香織先輩に説明する。

すると、あすか先輩は、真由がソリを辞退したいと言うのなら、辞退を受け入れて久美子がソリを吹けばいいと言う。そうすれば部員たちは納得して混乱は収まるのだとあすか先輩は指摘する。確かにその方が部員たちは納得するかもしれない。真由が勝手に辞退する形なら滝先生の選考が間違っていたという形にもならない。万事丸く収まる。実際に麗奈と秀一が喧嘩して部内の空気が最も行き詰っていたタイミングで真由はソリを辞退しようと申し出ようとして奏に制止されていた。真由もそれが一番丸く収まると思ったのでしょう。だが奏に止められて思いとどまったのは、やはり久美子に「部のためにソリを全力で吹いてほしい」と言われたからなのでしょう。

しかし、確かに真由の辞退を受け入れるのは名案ではある。だが久美子はそれはダメだと言う。それは北宇治の実力主義の伝統に反する。2年前の麗奈と香織先輩のオーディション以来ずっとその伝統でやってきたのに自分が部長の時にそれを途切れさせるわけにはいかないと久美子が言うと、あすか先輩はバカバカしいとばかりに話を遮って「それは全部、黄前ちゃんのワガママなんだよ」と指摘する。「オーディションで上手い人が選ばれて吹いてほしい」とか「それで納得出来ない人が出たら滝先生に説明してほしい」とか、それらは全部、久美子がスッキリしたいからそう願っているに過ぎないのだとあすか先輩は言う。

実際、久美子の言うような「北宇治の実力主義の伝統」なんてものは存在しない。少なくとも部員みんなでそう決めたなんていう史実は存在しない。その始まりだと久美子が主張する麗奈と香織先輩のオーディションの時は、滝先生の選考の信頼が揺らいだので部員全員の拍手の数で決めようと言っていたのに、大多数の部員たちはどちらにも拍手出来ず結果を出すことが出来ず、香織先輩が麗奈の演奏の方が良いと認めてソリを辞退して、それで麗奈がソリを吹くことになったのです。あの時、麗奈は一時は辞退しようとしていて、「オーディションで上手い人が選ばれて吹いてほしい」という久美子の主張に背を押されて麗奈は辞退せず全力で吹いた。だが結果的に麗奈がソリを吹けるようになったのは香織先輩が辞退したからであり、「オーディションで上手い人が選ばれて吹く」なんていう方針を部員の総意で決定したなんてことは事実に反する。久美子の言ったことは単にワガママだったのであり、そのワガママが通ったに過ぎない。

だから今回も真由の辞退を受け入れて円満解決すればいいのだとあすか先輩は指摘しているのであり、それを今回は久美子のワガママが邪魔しているのは皮肉なことだと笑っている。「オーディションで上手い人が選ばれて吹く」なんて方針にこだわらない方が部内は丸く収まるのだし、2年前だって本当はそうだったのだ。しかし、その結果、北宇治は2年前、全国に行けた。ならば久美子のワガママは正しかったと堂々としていればいい。麗奈のように部内の円満なんて無視して実力主義を押し通せばいい。しかし久美子は実力主義を標榜しながら部内の円満も目指そうとしている。結局、久美子のワガママには一貫性も無く、正反対のワガママを平気で言う。

それは久美子だけじゃなくてみんな同じなのだとあすか先輩は言う。みんな何が正しいのかなんて分かっていなくて、どうすればいいのか判断が出来ない。だから2年前の部員たちも麗奈か香織先輩かを選ぶことも出来なかったのだし、今回も滝先生も本当は久美子と真由のどちらがソリに相応しいか相当迷っていたはずで、選んでしまった以上は堂々としているしかないだけなのだとあすか先輩は言う。それを聞いて、久美子は滝先生が飴玉をくれた時、本当は久美子が苦悩していることを知りながら、あえて深入りしないようにしていたのだろうと気付いた。

あすか先輩は真由も結局どうしたらいいか分からず迷っているだけなのだろうと指摘する。辞退すると言いながら本気で吹いたり、どうしたらいいのか分からず迷い続けているままなのだ。他の部員たちだって何が正しいのか分からないから不安になっているのだ。滝先生も迷っているし、久美子だって迷っている。誰も何が正解なのか分かっていないのだ。そう指摘されて、確かにそうかもしれないと久美子は思う。複数回オーディション制も、そもそも完全実力主義のオーディション方式も、正解ではなかったのかもしれない。しかし、そんな答えも見えず皆がバラバラな状態で打開策も無いまま関西大会を迎えて、マトモな演奏が出来るとも思えない。一体どうしたらいいのかと久美子はあすか先輩に訴える。

すると、あすか先輩は「黄前ちゃんの良いところは、無責任に言いたいこと何でも言っちゃうところでしょ」と言う。そして「私の時みたいに」と付け加える。それは、あすか先輩が2年前の全国大会の前にコンクールメンバーを辞退しようとしたのを久美子が反対した時のことだと、久美子はすぐに思い出した。あの時、家庭の事情で練習に参加出来なくなったあすか先輩は、そんな自分がコンクールに出てはいけないと言って出場を辞退しようとしていた。

それには前段階があって、関西大会の前に2年の希美先輩が部に戻ろうとしていたのを「自分の都合で辞めた者を受け入れられない」と言って拒んでいたのがあすか先輩であり、久美子はそれに反対して希美先輩を受け入れたいと言っていた。結局、個人的理由でどうしても全国大会に行きたかったあすか先輩が2年のみぞれ先輩への悪影響を懸念して難癖をつけて希美先輩の邪魔をしていたのが真相であり、2年の優子先輩や夏紀先輩たちが尽力してのぞみ先輩と希美先輩が和解して希美先輩は部に戻れて、あすか先輩もそれを了承したのだが、そのあすか先輩が今度は全国大会の前に自分の都合で練習をサボってコンクールメンバーに居残るのは筋が通らないと言って辞退しようとしたわけです。

その2年前の関西大会の前の希美先輩の一件の際に久美子は最初はさんざん色んなことを言っていたクセに最後の方は騒ぎが大きくなってくると何も言えなくなって傍観するだけになってしまった。それで全国大会の前にあすか先輩にコンクールメンバーに復帰するよう説得に行った際、人の心に土足で踏み込んだ挙句にビビって傍観者になるような人間の言葉は誰にも響かないとあすか先輩にバカにされて、それでキレた久美子が「私があすか先輩に吹いてほしいんです」とワガママを言って説得したのです。それであすか先輩は説得されてコンクールメンバーに復帰する道を選んだわけですが、あの時、真にあすか先輩の心に響いたのは単に久美子が言ったワガママそのものではない。

あの時、久美子はあすか先輩にそんな子供みたいなワガママが通るわけがないと笑われたのに対して、「子供で何が悪いんですか!」と逆ギレして、あすか先輩が「これが正しい選択だ」と言って自分の辞退を正当化していた理屈を「どうして大人ぶろうとするんですか?あすか先輩だってまだ高校生で子供なのに!」と非難して、本当は全国大会で吹きたいという自分の気持ちを素直に言ってほしいと求めたのです。

実はあすか先輩も当時、本当は何が正解かなんて分かっていなかった。ただ、希美の復帰に反対していた自分が練習を休んで全国大会に出るのは筋が通らないと思って、それが吹奏楽部的に正しい理屈なのだから、自分の個人的な意見なんて言うべきではないと思っていただけだった。だが、久美子にああいうふうに言われて、実際は自分も他の誰もまだ子供で正しい答えなんて分かっていないのだから、久美子のように自分の言いたいことを素直に言って相手の心を動かすことが出来ればそれでいいのだと思うことが出来たのでした。実際、久美子の素直な言葉はあすか先輩の心に響いた。だから、あすか先輩も自分の素直な気持ちを吹奏楽部の皆に伝えようと思えたのでした。

その時の、久美子の自分の気持ちを素直にぶつけた言葉が響いたのだというあすか先輩の話を聞き、それが今の久美子に響いた。そして久美子は1年前の出来事のことも思い出す。あすか先輩たちの学年が卒業して、久美子が2年生になった去年のこと、新入生として入ってきた1年生の久石奏がオーディションでワザと下手に吹いて落選しようとした事件の時、奏が頑張って金賞が獲れなかった過去がトラウマになっていて実力主義を否定しているのに対して、久美子は北宇治の実力主義は大丈夫だと言い、頑張りが否定されることは無いと言った。だが奏は久美子のことを事なかれ主義で自分の意見を言わない人だと指摘して、そんな人が結果が出ないかもしれない頑張りを肯定するのは似合わないと言いました。

それを聞いて久美子はあすか先輩に指摘された自分の良くない面を思い出し、奏にちゃんと自分の気持ちを素直にぶつけなければいけないと思った。その時に久美子が奏に言ったことは、確かにこれが正しい方法だと思って頑張ったとしても結果が出ないかもしれない。上手くいかないかもしれない。でも上手くいかないことばかりなのが当たり前なのであり、上手くいかないかもしれないという不安ばかりの中で頑張ることで何かが残る。自分はユーフォニアムが上手くなるために結果が出ないかもしれないと思いながらも頑張り続けるのだと言った。その久美子の言葉は奏にしっかり響いたのです。

そうした、あすか先輩との会話や奏との会話を思い出した久美子は、部長になってからの自分がそうした気持ちを忘れがちだったことに気付いた。部長なのだから皆で決めた部の方針を大事にしなければいけないと思い、実力主義や複数回オーディションの方針に反するような発言は慎み、それに反対する意見にも正面から向き合うことを避けていた。一方で部長として部員の気持ちに寄り添わなければいけないと思い、皆が部の方針や滝先生に不満を抱く気持ちにも共感してしまい、そのために皆に毅然とした態度をとることからも逃げてナアナアな態度ばかりとってしまっていた。そうした中で自分個人の本当の気持ちを素直に言葉にして伝えることを忘れてしまっていた。

自分はただ上手くなりたい。皆で頑張って上手くなって最高の演奏がしたい。その先に全国大会の金賞があると信じているだけだ。別に今の北宇治の方針の正しさを証明するために全国大会の金賞を獲りたいと思っているわけではない。全てが上手くいった先に全国大会の金賞があるとは思っていない。自分たちはまだ子供で凡人で、頑張っても失敗してばかりなのだろう。でも、それでも、何度失敗しても、それでも最高の演奏をして全国大会で金賞を獲りたい。おそらく、成功を積み重ねた先に全国大会の金賞があるのではなく、失敗を乗り越えた先にしか全国大会の金賞は無いのだと思う。そして、失敗を乗り越える原動力となるものは、たとえどんなに間違っても失敗しても、それでも最高の演奏がしたいというワガママな想いなのだ。そういう自分の本当の想いを、自分の言葉でちゃんと皆に伝えたいと久美子は強く思った。そして、それこそが麗奈に求められた「部長としてやるべきこと」なのだと久美子は気づいたのでした。

そうして麗奈と秀一にもその想いを伝え、2人も賛同して支えてくれるとも言ってくれた。真由も久美子が全国でソリを吹けるチャンスを残すために関西大会で頑張って吹くと言ってくれた。それらの想いを受け取って久美子は関西大会の本番前のチューニング室で部員全員の前に立つ。そして、自分は1年も3年も対等に競い合えって1つの目標に向かって進める北宇治が好きだから、北宇治の演奏で全国金を獲りたいと願って頑張ってきたが、それでも2年間全国金に届かず悔しく思い、何かを変えなければいけないと思い複数回オーディションを採用したと説明する。そして、その方針は間違っていないと信じているとも言う。だが、そのために皆を戸惑わせたことを謝りたいと言い、久美子は「すみませんでした!」と頭を下げる。それを見て、続いて秀一も立ち上がり頭を下げ、麗奈も立ち上がり頭を下げます。

そうして自分の失敗を認めた上で、それでも久美子は「それでも私は北宇治で全国金を獲りたい!」と顔を上げ「ワガママかもしれない!でも、ここにいるメンバーと、不安も戸惑いも全部吹き飛ばす最高の演奏をして全国に行きたいんです!」と涙目で訴える。そして「1年間皆を見ていて思いました!こんなに練習しているのに上手くならないはずがない!こんなに真剣に向き合っているのに響かないはずない!北宇治なら獲れる!あたしたちなら出来るはず!だから自信をもって!今までやってきたことを信じて!」という久美子の必死の言葉を聞きながら、部員たちにもその言葉はしっかり響いて、自分たちもまた失敗していたのだと気付きつつも、久美子の言葉に勇気を貰い、そこから再起する勇気が湧いてくる。そして熱い気持ちがこみ上げてきて目が潤んできて、身体にグッと力が漲ってくる。

そして久美子の言葉が最後の方はもつれて途切れてしまうと同時に、葉月や緑輝が拍手をしながら「私も全国行きたいぞ!」「緑のです!」とそれぞれが自分の「ワガママ」を言って応え、皆も口々に「獲ろう!全国金!」「絶対行こう!全国!」と公式見解ではない自分の素直な気持ちを叫びつつ気合を入れ、全員のワガママが拍手と共に久美子を盛り立てる。それを承けて麗奈が呆然としている久美子にいつもの掛け声をするよう促し、久美子は笑顔で「そんでは、ご唱和ください!」と叫んで拳を握り、「北宇治ファイト~、オー!!」と皆で掛け声を合わせるのでした。皆が北宇治の公式見解に縛られることなく、それぞれのワガママな自分の心の底から湧き上がってくる本当の気持ち「どんなに上手くいかなくても、どんな形になっても、それでも最高の演奏をして全国大会で金賞を獲りたい!」という部分で一致し、遂に北宇治吹高校奏楽部は大山場の関西大会本番の直前になって本当の意味で心を1つにすることが出来たのでした。

こうして北宇治吹奏楽部は遂に心を1つにして関西大会本番のステージに立ち、その演奏開始前の場面でED曲が始まり、ED曲が終わったCパートでは演奏後の拍手が送られる場面が描かれますが、一同の満足そうな表情から察するに、きっと快心の演奏が出来たのだろうと思われます。もともと久美子たちが採り入れた複数回オーディションで演奏の質自体は上がっていたのです。問題はその副作用で皆が混乱して心がバラバラになっていたことだったのであり、それは本番直前の久美子の自分の気持ちを素直に伝えた演説で皆の心が1つになったことで解消していたのです。こうして北宇治吹奏楽部は最大の危機を乗り越え、次回は冒頭から10月の全国大会に向けての場面から始まるものだと信じています。これで残りはラスト3話ということになり、ここから更に盛り上がっていくのだと思われます。

 

 

鬼滅の刃 柱稽古編

第5話を観ました。

今回は柱稽古の続きが描かれましたが、恋柱の甘露寺の稽古と、蛇柱の伊黒の稽古と、風柱の不死川の稽古を描き、最後に岩柱の悲鳴嶼の稽古場に炭治郎が到着したところで終わりました。そうなると次回の第6話は悲鳴嶼の柱稽古が描かれて、そこで柱稽古は終わり、その後は残り2話ということになるのかと思います。6月30日深夜放送の第8話までは確定しているようですが、その後に7月7日に第9話があるのかどうかは不明です。

前回までかなりアニオリで引き延ばしていたので今回もそうなるのかと思いきや、今回はアニオリがほとんど無くて原作に忠実に作られていてテンポが上がって一気に3人の柱の稽古を描いたところを見ると、前回までのアニオリはやっぱりもともと分量が少ない柱稽古編を全8話構成に引き延ばすためのものだったのだろうと思われ、今回そういうアニオリが無かったということは、もう前回までのアニオリで必要なだけの引き延ばしは達成出来たということなのでしょう。そうなるとここからは原作通りになるとすると、おそらく第9話は無くて、全8話で柱稽古編は終わるのだろうと思います。

ただ、この全8話というのは私としては一番微妙な尺になるのでちょっと悩ましいところです。私の個人的ルールでは10話分以上の尺があれば話数が少ないぶん順位を下げるという補正の対象外にしていますので、普通は全8話ならば話数補正の対象内なんですが、この作品の場合は第1話が45分拡大版で2話分の尺がありましたから、もし最終話となる第8話も45分拡大スペシャルならば尺的には全10話分と同じとなって話数補正の対象から外れるからです。「鬼滅の刃」の場合はこれまで最終話は45分拡大スペシャルになることが多いので、柱稽古編も同様となる可能性は高いといえます。だが現時点ではそのあたりは不明なので、現状はとりあえず第1話の拡大分も含めて全9話分の尺の作品として扱い話数補正で半ランク下げた評価をしておきます。

それで今回の内容ですが、甘露寺の稽古では柔軟体操をして、伊黒の稽古では甘露寺と仲が良いことで嫉妬されて伊黒に嫌われた炭治郎が厳しく指導されて、隊士たちが縛られて配置された室内で正確な太刀筋で戦う訓練を受ける。それで伊黒の羽織を斬ることが出来た炭治郎は次の不死川の稽古に向かい、不死川の稽古では善逸と一緒になり、更に玄弥とも再会するのだが、玄弥が兄の不死川と揉めている現場に出くわしてしまう。不死川は玄弥が呼吸を使えないことや鬼を食って戦っていることが気に入らないようで、玄弥に鬼殺隊を辞めるよう要求して半殺しにして再起不能にしようとするので、炭治郎は割って入って不死川と喧嘩になりボコボコにされてしまう。それで結局ムチャクチャになってしまい、炭治郎と不死川は接見禁止ということになってしまい不死川の稽古は炭治郎は強制終了となり、善逸と共に岩柱の悲鳴嶼の稽古に向かい、稽古場である滝に到着したところで今回は終わり次回に続きます。まぁまぁ面白いんですが、まぁ修業編という感じで、まぁ普通かなという印象です。

 

 

転生貴族、鑑定スキルで成り上がる

第10話を観ました。

今回を含めて残り3話となりました。今回はアルスがミーシアン州の総督候補である2人の兄弟のうちの兄の方であるクランと会う話となります。クランが治めている大都市センプラーで催される周辺の領主を集めてのパーティーに招待を受けて田舎の小領主のアルスは緊張し、一体どうして自分が呼ばれたのだろうかと困惑します。

そうしてセンプラー城でパーティーに参加したアルスは仕えている領主であるカナレ郡長であるルメールによって他の領主に紹介してもらったりするが、そこにクランが登場し、一同の前で話し始める。アルスがクランの能力を鑑定してみたところ、とんでもなく高いステータスで驚かされる。そのクランは皆に向かって、サマフォース帝国の政権の腐敗を非難し、ミーシアン州の後継者争いで弟バサマークに勝利して自分がミーシアン州を統一した暁には、ミーシアン州を独立させてミーシアン国を建国すると宣言し、更に腐敗したサマフォース帝国を打倒して新たに天下を治めるという意思まで窺わせた。

あまりに壮大な話にアルスは驚くが、一同は大いに気勢を上げる。するとクランはアルスを壇上に招き、皆にアルスを紹介したいと言い出す。アルスは驚いて戸惑うが、クランに挨拶して傍に行き、皆の前に立つ。するとクランはペレーナ郡におけるバサマークの謀略を見破ったアルスの功績を称えたのでした。その後、アルスがバルコニーで1人で休んでいると、そこにクランが1人でやってきて、自分の部下たちのことをどう見たのかと質問してくる。どうやらクランはルメールから聞いた話で、アルスが他人の能力を見抜く優れた能力を持っていて優秀な人材を集めているということを知っているようで、自分の部下の能力を鑑定してほしいみたいです。

それでアルスはどう答えたらいいものか迷うが、正直に答えて、大した能力の人は居ないと言う。すると、クランは怒ることはなく嬉しそうに笑い、アルスが正直に答えてくれたことを喜ぶ。クラン自身、自分の部下たちは真面目で信頼できる者たちではあると思いつつも能力はバサマーク陣営に比べれば劣ることは分かっていたのです。財力や兵力では勝るクラン陣営も、それを使いこなす人材面ではバサマーク陣営に比べると劣っており、このままでは勝ち目は薄いということをクランは分かっていました。だからこそアルスのような新しい優秀な人材が出てきてくれたことを嬉しく思っており、大いに期待していると言う。また、クランはルメールのことは数少ない自分の優秀な部下として頼っており、ミーシアン国を建国した後は重要な領地を与える予定なので、その際にはアルスが手柄を上げていればカナレ郡長に昇格させたいとも言う。

そしてクランは、アルスに今後は部下を伴って自分の軍の軍議に参加するようにと言い、自分のために優秀な人材を探してほしいとも頼む。そのクランの期待に応えたいと強く思ったアルスは、ランベルクに戻るとさっそく人材探しを始め、シャドウに人材探しを依頼します。するとシャドウのリーダーのファムは、自分の店に転がり込んできたミレーユという酒飲みの大柄な女が自分の変装を見破ったり、前ミーシアン総督の従者であったらしきことなどから面白いと思い、アルスに紹介する。するとアルスが鑑定した結果、ミレーユは化け物みたいな高い能力の持ち主だと分かったというところで今回は終わり次回に続きます。

こんな感じで、なんだかアルスの大出世の可能性も出てきたり、大戦争の予感もあったりして、ずいぶん盛り上がってきたんですけど、しかし残りは2話ですから、どう考えても大戦争が始まる前に今期の話は終わってしまいそうです。2期があればいいんですけど、こういうなろう系ラノベ原作は原作の宣伝と割り切ってアニメを作ってる場合が多いので2期があるかどうかは不透明ですね。あればいいんですけど。

 

 

無職転生Ⅱ ~異世界行ったら本気だす~ 第2クール

第21話を観ました。

今回は転移迷宮編が本格始動した前回からの続きで、引き続き迷宮攻略が進んでいくお話でしたが、主にルーデウスとロキシーの関係が描かれていました。前回のラストで行方不明になっていたロキシーを迷宮内で救出することに成功したルーデウスでしたが、救出されたロキシーの方は自分を救出した人がルーデウスだとは気づいていない様子です。そりゃまぁ確かにルーデウスが幼児の頃に別れて以来、文通はしていた時期はあったが直接は一度も会っていないのですから、青年に成長したルーデウスを見ても幼児の頃のルーデウスと別人に思えても当然です。

しかもロキシーは白馬の王子様のように自分を救ってくれた青年をルーデウスとは気づかないまま恋に落ちてしまったみたいです。その後、すぐに相手がルーデウスと知ることになったのですが、その時にはもう手遅れですっかりルーデウスに夢中になってしまったようです。同じヒト族同士であればロキシーは三十路ぐらいになっているはずなのでここまでチョロくないんでしょうけど、ミグルド族は長命種なのでロキシーは現時点でもまだブエナ村で暮らしていた頃と外見もほとんど変わっておらず、内面的な成長もあまりしていないみたいで、まだ精神的に小娘なんでしょうね。

今回は「そもそもどうしてロキシーがゼニス救出のために命を賭けてくれているのか」についての説明も兼ねて、ロキシーのこれまでの人生について語られています。ロキシーは今よりも更に小娘の頃に魔法の師匠と喧嘩して逃げ出してしまい、行くあてもなく途方に暮れていたところをパウロの依頼を受けてブエナ村に来て幼いルーデウスの家庭教師をすることになったのですが、その頃のロキシーは魔法は中途半端な腕前で、そんな自分の未熟さを隠すために虚勢を張っていた、結構しょうもない小娘だったのであり、そういうことはパウロやゼニスには分かっていたのでしょうけど、幼いルーデウスだけは分かっていなかった。

その頃のルーデウスは前世の引きこもりだった頃の記憶がトラウマになっていて家の外に出ることさえ出来ずにいたのですが、ロキシーに諭されて家の外に出ることが出来るようになって前世のトラウマを乗り越えて人生が一変した。だからルーデウスにとってロキシーは大恩人であり神のように崇拝する対象となったのです。だが実際のロキシーはそんな大した人間ではなく、むしろ幼いルーデウスの魔術の才能に驚かされることばかりで、自分がいかに未熟であるかを思い知らされることばかりだった。そうして素直に魔術を習って魔術が上達していくルーデウスの姿を見て、自分が虚勢を張って無駄に時間を過ごしていることがいかに愚かであるかを悟り、反省してブエナ村を出てイチから魔術の勉強をやり直そうと決意したのです。

そうしてブエナ村から去っていった後からが本当にロキシーが偉大な魔術師になった時期なのであり、ラノア魔法大学で真面目に勉強して水星級魔術師にまで昇りつめた。その頃までルーデウスとは文書のやり取りはしていた。ルーデウスとロキシーの文書のやり取りは転移事件でルーデウスが魔大陸に飛ばされるまでは続いていました。そのやり取りの中で、まだ子供だったルーデウスはロキシーが水星級魔術師になったり王子の家庭教師をしているという話を聞き、やはり自分の師匠は偉大な人だったのだと思い込み、勝手に自分の幼少期を「偉大な魔術師ロキシーとその弟子ルーデウス」という関係性で解釈して喜んでいた。

しかしロキシー側から見れば、ブエナ村に居た頃の自分はただの生意気で未熟な小娘に過ぎず、そんなどうしようもなかった自分を立ち直らせてくれたのがブエナ村での日々だったのだと深く感謝していた。だからパウロやゼニスのことをかけがえのない恩人だと思っており、ルーデウスのことも弟子というよりも親友のように大切な存在だと思っていた。だから転移事件でグレイラット一家が行方不明になってしまったと聞いて、ロキシーは今こそ恩義を返す時だと思って、全てを擲ってグレイラット家の皆の行方を捜し、パウロと合流して今はこうしてゼニス救出のために命を賭けてくれているのです。

そこに青年に成長したルーデウスが現れて自分の危機を颯爽と救ってくれたものですから、もともとルーデウスのことを割と対等な親友のように思っていたロキシーはルーデウスを好きになってしまった。だがルーデウスは偉大な師匠であり神のように崇拝対象としているロキシーに恋愛感情を抱くなどという不遜なことが出来るはずもなく、全くそんな気はありません。ただただ神に会えて嬉しく、幼児の頃に甘えたようにロキシーにやたらと懐いて距離を詰めてくる。それでますますロキシーはルーデウスを意識してしまい「今度一緒に迷宮攻略をしよう」とかデートの誘いみたいなことをしたりしてアプローチしてくるのだが、ルーデウスは師匠に誘われて嬉しくてOKしたりする。

ルーデウスは妻帯者なので普通の女性からの誘いならそんな気軽にOKしたりしないのですが、相手は魔術の師匠であり、ある意味では親よりも親近感を抱いている対象であるロキシーですから話は別なのでしょう。それでロキシーはすっかりルーデウスも自分に脈があると勘違いしてしまう。ルーデウスが妻帯者であることを最初から言っていればこんなややこしいことなる前にロキシーの熱も冷めたのでしょうけど、ゼニス救出のために余裕の無い日々の中でついつい言うのを忘れてしまったためにこういうことになってしまったのです。後になってパウロはロキシーがルーデススに惚れてしまっていて、ルーデウスが無自覚にそれを助長してしまっていることに気付きますが、もう今となっては真実を告げたらロキシーがヘソを曲げてしまいパーティーの空気が悪くなってしまうと思い放置することにしたようです。

まぁそんな感じですれ違いラブコメの様相を呈しつつ、パーティーはゼニスを探して迷宮探索を続けるが5層まで進んでもゼニスは見つからない。そしてルーデウスが持参してきた攻略本の記述の5層までで終わってしまい、ここから先は未知の領域というところで6層に降りる転移魔法陣のトラップをどうクリアするかで行き詰ってしまい、そこでルーデウスがベガリット大陸に来た時に使った転移魔法陣の構造とここの魔法陣の類似点を見つけ出し、隠し階段の先に本物の魔法陣があることを見破ったところまでで今回の話は終わり、次回に続きます。残るはラスト3話ですが、次回はいよいよゼニスを見つけることが出来るのでしょうか。

 

 

死神坊ちゃんと黒メイド(第3期)

第34話を観ました。

今回を含めて残りが何話なのかはまだ明確ではないのですが、これまで1期も2期も12話構成であったので、おそらくこの3期も12話構成であり、今回も含めて残り3話だと思います。いよいよシャーデーとのやり取りも大詰めですが、今回は遂にシャーデーを説得することに成功しました。だが、まだもう一波乱ありそうな感じになったところで次回に続きます。

他人の心が読めることで恐れられて誰からも愛されていないと知ってしまう悲しさにより魔力が暴走してしまったシャーデーの攻撃でフリーが負傷して戦闘不能となり、ニコはやはりもうシャーデーを殺すしかないと決意する。そうしてニコとシャーデーの戦いが始まったが、シャーデーの身体は魔力の暴走に耐えられなくなり勝負は決する。ニコはシャーデーにトドメを刺そうとするが、坊ちゃんがあくまでシャーデーと友達になるためにそれを阻止し、坊ちゃんの「生き物を殺す呪い」とニコの「不死の呪い」が反発しあって膠着状態となる。そうした坊ちゃんの姿を見て、嘘偽りなく自分と友達になろうとしているのだと実感したシャーデーは自分の絶望する心との葛藤に苦しみ昏倒して意識を失う。そしてシャーデーの魔力が意思を持ち暴走を開始し、魔術学校の先輩たちもやってくるが収拾がつかなくなる。

そんな中、アリスがイブリンの魔法でシャーデーの心の中に入りシャーデーと会い、シャーデーの孤独から救われたいという想いを知る。そして、それがかつて出会った頃の坊ちゃんに似ていると感じる。シャーデーはもう裏切られるのが怖いので生きたくないと言い、自分を殺してくれれば呪いを解くと言い、アリスに剣を渡すが、アリスはシャーデーを抱きしめて「貴方を愛してくれている人を信じてあげてください」と言う。ずっと誰かにこうして抱きしめてほしかったのだと自分の気持ちに気付いたシャーデーは現実世界で必死に自分に呼びかけてくるダレスの声に応えて目を覚まし、ダレスの顔の傷を治し、アリスを体外に出し、そして暴走した自分自身の魔力に立ち向かうところで今回は終わり次回に続きます。