2024春アニメ 5月11日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2024年春アニメのうち、5月10日深夜に録画して5月11日に視聴した作品は以下の4タイトルでした。

 

 

アストロノオト

第6話を観ました。

今回はミラのもとにミボー星の女王である母親からビデオレターが届いた場面を部屋に入ってきてしまった拓己が見てしまったところから始まります。ここでミラの母親が告白したところによると、ミラの母親は若い頃に政略結婚が嫌で地球に逃げてきて若い頃の下高井戸に出会い恋に落ちて、現在あすとろ荘のある場所にあった下高井戸の自宅で一緒に暮らしていたが結局ミボー星の追手が来て連れ戻された。しかしその時ミラを妊娠していたという。つまりミラは実はミボー人と地球人のハーフで、本当の父親は下高井戸だったのだが、そのことを知るのはミラの母親だけだった。

母親は別れ際に下高井戸と再会する約束をして、下高井戸はずっと2人が暮らした場所でミラの母親が戻ってくるのを待つと約束したという。そして母親は自分が再び地球に来る口実として、その場所に王位継承に必要なカギを下高井戸に託したのだそうだ。それがミラの王位継承のために必要となり、ミラが探しに来る羽目になったのだが、亡くなった下高井戸がどこにカギを隠したのかが分からない状況なのです。

こうした新情報をミラは知ることが出来たのだが、どうやら庭にカギがあるらしいことが伝わった段階でゴシュ星のスパイの邪魔が入ってビデオレターは途切れてしまい、ゴシュ星人にもこのことを知られてしまった。また拓己も全ての事情を知ってしまい、今までミラを未亡人と思っていたことやご主人が居ると思っていたことや部屋に男が居ると思っていたことも全部誤解だったことに気づいた。そのうえで拓己は全て秘密にすることをミラに約束しますが、ミラが宇宙人でありショーインも同じ星の人間であるということで、やはりミラは自分ではなくショーインを選ぶのではないかと思いショックを受けてしまった。

ミラはずっと地球で母親の来るのを待って孤独死した下高井戸を可哀想だと思うが、ショーインはそうではないんじゃないかと言う。そして2人で生前の下高井戸を知る人々を訪ねて歩いて話を聞き、下高井戸が皆に愛されていて決して可哀想なんかじゃなかったことを知りミラは安堵しました。一方で何だか落ち込んでいる拓己をミラは心配するが、ナオスケはミラと拓己を引き離すために葵が拓己をデートに誘うように誘導し、葵は拓己を町内の昆虫祭りに誘い、一緒に昆虫食を食べようと誘うというところで今回は終わり次回に続きます。昆虫食はともかく、葵と拓己がデートすることになり次回はどうなるのか注目ですね。

 

 

変人のサラダボウル

第6話を観ました。

今回はリヴィアが大活躍するイカレたお話でした。やっぱりリヴィアの話はカオスで面白い。以前にリヴィアが勧誘された挙句に救世主扱いされてしまい逃げ出した新興宗教の教祖の皆神望愛という女が、あれからずっとリヴィアを救世主だと心酔していたようで、リヴィアの像を作って売ろうと考えていたみたいです。しかしリヴィアそっくりの像を作ることが出来ず不満に思った望愛は惣助がもともと在籍していた岐阜で一番大手の探偵事務所に依頼してリヴィアを探してもらい、ホームレスをしているリヴィアのもとにやってきて3Dモデルを引き受けてもらい、自宅にリヴィアを連れてきて3Dスキャンのデータを取る。さらに着せ替え可能なフィギュアにしたいとリヴィアが言うもので望愛はそれなら裸の3Dデータも取らねばいけないと言う。それを聞いてリヴィアは潔く全裸になりデータを取らせ、リヴィアに限界オタク的な愛情を抱く望愛にはご褒美すぎて大興奮。あまりに幸福すぎて望愛は謝礼に200万円を払おうとするがリヴィアは辞退し、それなら商品開発のアドバイザーに就任してもらい、その仕事料として金を払うという形にして、仕事をする以上は報酬を受け取らないのは無責任と説得されてリヴィアはお金を受け取りアドバイザーとして望愛の部屋で寝泊まりするようになった。

実際はアドバイザーの仕事など無いも同然であり、リヴィアは単に望愛の部屋でゴロゴロしてお小遣いを貰って外食したりパチンコしたりする完全なるヒモ状態になってしまい、サウナでたまたま再会したプリケツにもそれはヒモだと指摘されてしまう。そしてバンドが解散して困っていたプリケツにギターをやってほしいと頼まれてしまったリヴィアは、望愛にギターの先生を紹介してもらったりして猛特訓して結構弾けるようになりますが、作曲をやっていたボーカルのプリケツの方は実は作曲初心者であり、前のバンドでは先輩に作曲は任せっきりだったので全然ダメで困っていた。

それでリヴィアが望愛に相談したところ、実は望愛は宗教団体の音楽を自分で作ったりしていて音楽は割とイケる方であり、プリケツの前のバンドの曲を聞かせたら酷評し、更にプリケツも一緒にプリケツの作ってみた曲を聞いてもらったところ、やはり酷評する。それでいっそ望愛に作曲を頼んで、更に望愛もバンドのメンバーになってほしいという話になり、望愛もバンド仲間になればフィギュア制作が終わってもリヴィアと一緒に居ることが出来ると思い引き受けます。こうして意外なメンバーでの新バンドの始動ということになったというところで今回は終わり次回に続きますが、次回はリヴィアの話ではない模様。ただ、いずれはこのバンドの話の続きもありそうですので期待したいと思います。

 

 

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?

第6話を観ました。

今回はバルバロスの居城にネフェリアを救いに行ったザガンがバルバロスを圧倒します。バルバロスの魔術は全てザガンによって無効化されてしまう。これはザガンが子供の頃にバルバロスの師匠の魔術師に殺されそうになった時にたまたま発動した無効化の技だったのですが、その技の研究のためにザガンは魔術師となり、それを究めてきたのだそうだ。このあたりなんか難しい魔術理論の話でよく分からなかったんだが、とにかくザガンの技の前にバルバロスはなすすべなく敗北する。

ただ、そうして研究に没頭するザガンに近寄る者など誰もいなかった中で子供の頃からバルバロスだけはザガンに絡んできたという。それは実は自分の師匠の魔術を奪ったザガンから全てを奪おうとする下心や、ザガンの出方を探るという企みによるものだったのだが、それでもザガンにとってはバルバロスとの時間は心休まる時間であったのは事実だったのでしょう。何だかんだ言ってザガンはバルバロスを殺しはせず、今後も美味い酒をもってくるなら赦すと言う。

だが、バルバロスがネフェリアを生贄にして行おうとしていた儀式の魔法陣が暴走してしまい、そこから魔族が出現する。どうやらバルバロスは魔族を召喚しようとしていたようです。この作品の世界観では、この世界には亜人やエルフも含む人間種族は存在しても神や魔族というものは太古には存在したが現在は存在していないとなっている。今や別の世界に居るという魔族を召喚しようというのがバルバロスの企みだったのです。そして制御不能になって現れた魔族のパワーは圧倒的でザガンも死を覚悟するが、しかし魔族はザガンが受け継いだ魔王の紋章に反応してザガンを主人と認識して跪いたのでザガンはこの世界から消えるよう命令して、魔族は自分たちの世界へ帰っていった。

その後、バルバロスの城が崩れて、全員で脱出して、他の皆は去っていきザガンとネフェリアだけが残され、ザガンはネフェリアに奴隷でも弟子でも召使でもない関係になりたいと申し込む。それを快く受け入れたネフェリアは自分とザガンが出会った証としての首輪を再び付けてほしいと頼み、ザガンはネフェリアにエンゲージリングのように首輪を嵌め、奴隷でも弟子でも召使でもない関係とは何なのか分からないと言うネフェリアを前にして「魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?」と心の中で叫びタイトル回収する。今回はここまでであり次回に続きます。

 

 

ガールズバンドクライ

第6話を観ました。

今回は新川崎に牛丼屋の2人が新たに加入するお話でした。いや、牛丼屋の2人は「紅しょうが」というグループ名でもともと活動しており、2人が新川崎に加わるというのではなく、新川崎と紅しょうがが合体することで新たなグループが誕生するという話なのでしょう。ただ、その新たなグループ名も決まってはいませんし、そもそも2つのグループの合体が正式に決まったわけでもない。今回のラストの段階では「とりあえずちょっと一緒にやってみよう」というぐらいのノリで5人でフェスに出ようという話になっただけです。おそらく次回においてフェスの参加を通じて2つのグループの合体が正式に決まって、新しいグループの名前も正式に決まるのでしょう。そういう意味では今回はフリの回であり、次回がキメの回ということになる。

ならば一段落ちるエピソードであったかというと、まぁ確かにこの作品のキメの回のインパクトは絶大なので、そこは物足りないといえば物足りないが、しかしフリの回として非常に出来が良いエピソードであったので満足感はキメの回と遜色は無い。まず新登場のルパと智が良い味を出していて、既存の3人との絡みもバッチリなので、普通にこれまでの3人体制よりも5人体制に人数が増えた分の賑やかさが楽しい。そしてメインキャラの数が増えたぶんテンポが更に良くなっていて、そのテンポの良い作劇でコメディを交えながらしっかりとアマチュアバンドのジレンマを描き切っていて、ドラマ内容は深みがあり、かなり感情移入させられました。特に桃香の迷いの描写が焦れるものがあって、次回の爆発を強く期待させてくれたぶん、フリの回として優秀であったと思います。またルパと智の過去についても今回は明らかにせず匂わせるだけに止めたのもフリ回として上出来であったと思います。そうして全体的には地味な展開の中でのスタジオでのちょっと5人でセッションしてみた場面が映像の演出も含めて非常に鮮烈で、前回ライブで圧巻だった「視界の隅、朽ちる音」が更にベースとキーボードが入ってバージョンアップしていて、今後の5人体制のライブシーンの期待値が爆上がりして早く見たいと思われてくれました。また今仁菜が今回も相変わらずバカな行動を繰り返してくれて楽しかったです。

まず冒頭の場面は団地の一室でのルパと智の場面から始まります。というか、この2人組は仁菜たちがいつも行く牛丼屋の店員の2人ですが、前回まではまだキャラ名も明らかにはなっていません。第1話で仁菜が桃香と出会った直後にこの牛丼屋に寄って、アホの仁菜がこの店員2人に中指を立てて顰蹙を買っていましたので、ずいぶん初期から登場しているキャラということになります。褐色巨乳のルパの方はいつも店の中で騒いでいる新川崎の3人組にも常に好意的で、自分たちのバンドの名刺を渡そうとしていたりしましたが、ロリっ子の智の方はいつも不機嫌で店の奥にいて新川崎の3人とは絡んでいなかった。結局はこれまでのエピソードでは随所で登場はしていましたが、仁菜たちが牛丼屋に行く場面にしか登場しておらず、自己紹介もしていないままでありましたが、前回の新川崎のライブハウスの初演奏の際には2人とも客として見に行っていました。

今回の冒頭の場面は、まず智が前日のライブハウスの配信映像をスマホで見ていて、そこでの新川崎の「視界の隅、朽ちる音」の演奏シーンを見ています。智たちは生でこのライブを見ていたはずですが、また配信映像で繰り返し見ているのですから、よほど興味を惹かれたのでしょう。ただ、あまりファン目線で見ているという感じでもなく、相変わらず智は不機嫌そうな顔です。まぁ地顔がこういうムスッとした顔みたいで、別に怒ってるというわけでもないようですが、上機嫌というわけでもないようですから、ファン目線で新川崎を見ているわけではないようです。つまり、ルパと智が新川崎のライブを見に行ったのもファン心理で見に行ったのとは違うということなのでしょう。

その後、智は部屋のエアコンを切りますが、これは別に電気代をケチっているわけではなく、自分たちで作った曲にボーカルを

録音する作業をするためでした。マイクがエアコンの音を録ってしまわないようにということなのでしょう。更に環境音が入らないように智は頭に段ボール箱をかぶって自分の頭部とマイクを覆ってしまいますが、救急車がサイレンを鳴らして通ったために録音は中止となります。こんな壁の薄そうな団地の一室でボーカルの録音をするのは大変そうです。録音しているということは配信用ということなのでしょうけど、スタジオを借りずに自宅で作業しているということは、あくまで個人的にやっている配信なのでしょうね。

ただ、ここでの智とルパの会話を聞く限りでは、智がボーカロイドで歌のメロディーを作って、それに合わせて生歌を録音するという作業行程のようです。だがボーカロイドでメロディーを作るとメロディーラインが複雑になって歌うのが難しくなるようです。智はキーボードが本職のようでボーカルは本職ではないので、ちょっと歌唱力が追い付かないようです。ただ、それは智が歌が下手というわけではなく、智の作るメロディーがハイレベルすぎて、本職のボーカルを出来るぐらいの者でないと歌いこなせないということみたいです。それでルパは上手いボーカルを探そうと提案するのですが、どういうわけか智はそれを嫌がっている。それでルパも諦めて2人でやっていくしかないと言います。

ただ智は迷いがあるようで、ルパに本当にそれでいいのかと尋ねて、それに対してルパは彼女たち2人のやっている楽曲配信サイトのフォロワー数を智に見せます。そのフォロワー数は2万を超えているぐらいでありました。私は配信とかやってないのでそのあたりの相場感は詳しくはないのですが、例えば同じく主人公たちが顔出し無しで楽曲配信をやっている「夜のクラゲは泳げない」の第5話では主人公のまひる達が最新曲がバズったとか言って有頂天になっていた場面でのフォロワー数は千人程度でしたから、それに比べれば遥かに多いように思えます。

しかし、智はその2万というフォロワー数を見ても喜んだ様子は無く、部屋の壁に貼ってある写真を見上げます。その写真には智とルパが映っていましたが、他の2人の女性が映っていて、その4人の上には「目標!!武道館!!」とデカデカと文字が書かれている。そしてルパはその写真を見つめながら「もし本気で目指すのであれば」と言う。それはつまり、その2万というフォロワー数では武道館を目指すには足りないという意味なのでしょう。

そのあたりの相場感も私は詳しくはないのだが、後の場面でライブハウスのオーナーが仁菜にバンドがプロデビューするための条件として最近はネット上の人気が重要だと言っており、それはつまりそのバンドのフォロワー数が重要だと言及しているので、だからここでルパがまず智に自分たちのフォロワー数を指摘しているのでしょう。ただ、オーナーの話の中で旭川でアマチュアで活動していたダイヤモンドダストがプロデビューを決意した時のフォロワー数が1万だったと言っているので、だいたい1万あたりがアマチュアがプロになるボーダーラインなのでしょう。だからフォロワー数2万のルパと智の紅しょうがは十分にプロのレベルには達している。

ただ、フォロワー数1万で勇んで上京してきた旧ダイヤモンドダストもその後はインディーズで活動していたわけで、そのぐらいのレベルではプロとはいってもせいぜいインディーズ止まりです。ルパと智も、この自宅で細々とやっている感からして間違いなくインディーズのレベルであり、しかも2人しかいないようですから旧ダイヤモンドダストより状況は悪い。むしろ2人でこんな自転車操業みたいなことをやっていてフォロワーが2万人というのはかなり健闘しているといえるでしょう。だが、おそらくフォロワー数が2万人では武道館を目指すには足りないのでしょう。

これも後のシーンで言及されるが新ダイヤモンドダストのメジャーデビューライブ前のフォロワー数は5万だそうです。だが新ダイヤモンドダストのデビューライブの会場は東京ドームシティホールであり、かなり大きな会場ではあったがキャパは3千人であり、キャパが1万人の武道館に比べれば遥かに小さい。つまり相場感としてはフォロワー数が5万でも武道館には届かないということになり、紅しょうがのフォロワー数2万人は確かにインディーズの覆面アーティストとしては優秀な部類ではあるが、武道館を本気で目指すのであれば全くお話にならないレベルなのでしょう。ちなみに「夜のクラゲは泳げない」で花音たちが目標としているフォロワー数は10万人ですが、こちらの作品と比較すると、素人の女子高生たちが覆面アーティストとして目指す数字としてそれがいかに途方もない数字か分かる。

また、そもそも紅しょうがの場合は智とルパの2人しかいないのですから武道館なんて夢のまた夢です。フォロワー数がまだ2万で全然足りないという点も問題だが、そもそもちゃんとメンバーを揃えなければネットで楽曲配信するのが関の山で、武道館でライブなんて出来るはずがない。壁に貼ってある写真に「目標!!武道館!!」と書いたのはその時点でメンバーが4人揃っていたからなのでしょう。そのうち2人は写真では顔の上にシールが貼って顔が隠されており、つまりもう今は居ないということです。智がキーボードでルパがベースですから、おそらく居なくなった2人は、1人がドラムで、もう1人がボーカル兼ギターだったのでしょう。だから、智の作ったメロディーを歌いこなせるボーカルだけでなく、ギターとドラムも見つけなければ武道館を本気で目指すことは出来ない。ルパが言いたいことはそういうことなのです。

おそらくそんなことは智だって当たり前のように分かっているのでしょう。ちゃんとしたボーカルを加えれば配信楽曲のレベルは上がって更にフォロワーが増えるであろうし、ギターとドラムも加えればちゃんとライブハウスでライブも出来てフォロワー数も更に増えるだけでなく、メジャーデビュー出来る可能性も出てくる。それだけで一気に武道館ライブが実現するというわけではないが、少なくとも武道館を本気で目指せる土俵には立てる。智とルパが新川崎のライブを見に行ったのもそういうことを念頭に置いてのことであるし、智が新川崎のライブ映像をチェックしていたのもそういう理由があってのことです。しかし、それが分かっていながら智は新たにメンバーを増やすことに消極的みたいです。

それはおそらく壁に貼ってある写真に写っている智とルパ以外の2人の顔にシールが貼ってあることと関係があるのでしょう。もともとはこの4人で武道館を目指していたのでしょう。つまり4人でメジャーデビューを目指していたということです。ところが現在は智とルパ以外の2人はいなくなっており、まるで存在を抹消するかのように顔が隠されている。そして智とルパはメジャーデビューを成し遂げることは出来ておらずどう見ても行き詰った状況にある。それでいて、4人で目指していた「武道館」という目標をまだ諦めていないみたいなのです。まぁ状況的にほとんど諦めかけている感じなんですが、それでも諦めきれないという言い方の方が正確かもしれません。こうした状況を見ると、どうも居なくなった2人のメンバーとの別れがあまり良い思い出ではなくて、4人でやっていた頃の活動がトラウマのようになっていて、それで智としては新しいメンバーを加えることに消極的なのでしょう。ただ、それでも武道館という目標は捨てきれないところを見ると、武道館へのこだわりは強いようです。

このあたり、智とルパの心理と桃香の心理は対照的といえます。桃香の場合は旧ダイヤモンドダストの4人で映った写真は大切にしており、自分以外のメンバーの顔を隠したりしていない。桃香にとっては旧ダイヤモンドダストは良き思い出なのであり、むしろ他のメンバーを裏切って脱退してしまったのは自分だと思っており、そんな自分は音楽をやる資格が無いと思って田舎に帰ろうとまでしていた。桃香の場合は非常に自罰的だといえます。それと対照的に智とルパは他罰的であり、いなくなった旧メンバーの顔はシールで隠してしまった上で自分たち2人だけが武道館という目標を追求する正当な資格があるかのように「目標!!武道館!!」と書いた写真を掲げている。おそらくそれぞれの経緯に違いがあるのでしょうけど、この全く正反対の二者が出会うことでどのような化学反応が生じるのか楽しみになってきます。

ここで場面は新川崎の3人の方に切り替わり、前日のライブハウスデビューの疲れを癒すために3人で銭湯に行きサウナに入ったりしています。いきなりサービスシーンですが、なんだかこの3人は世知辛くてあんまり色気を感じない。まぁそこがまた魅力なんですが。とりあえずこの場面、仁菜はまた喉を潰しているし、すばるも筋肉痛がひどいみたいです。20分のライブだったんですが、桃香が「ムチャクチャなライブだった」と評しているように、かなり無理をしたようです。それに比べて桃香は平気そうであり、これは鍛え方が違うというわけではなく、慣れの問題なのでしょう。桃香は場慣れしているのでペース配分が上手なのであり、仁菜とすばるは場慣れしていないのでずっと全力で突っ走り、その結果、喉を潰したり筋肉痛になっているのです。そういう点、桃香はやはりプロ経験者であり、仁菜とすばるはアマチュアの素人レベルなのだといえます。こういうのは演奏の上手下手とか才能の有無とかの話ではなく、長くプロでやっていくためには必要な別の能力といえます。それが備わっていない以上は、どれだけ演奏や歌が凄くてもやはりプロではなくアマチュアなのでしょう。

そういう意味では桃香はメジャーデビューはしなかったものの、やはりバリバリのプロなのだといえます。だが、そんなプロでありながら自分がプロに徹しきれずにメジャーデビューを拒んでダイヤモンドダストを裏切って脱退してしまった罪悪感にずっと苦しんでいた。だから一旦プロになりながら覚悟の欠如でおめおめとアマチュアに戻ってしまった自分を許すことが出来ず、音楽をやめようとしていた。そのタイミングで仁菜に出会い、すばるに出会い、彼女たちにロックの原点を見出し、再びロックの原点に戻ってアマチュアとして音楽に夢中になった初心を思い出した。そして2人と新川崎を結成した後、居酒屋での大喧嘩を経た後の前日のライブハウスでのライブは桃香にとっては、完全に過去の罪悪感を吹っ切ってアマチュアとして再出発する覚悟が決まった場であったといえる。

だが、それはあくまで桃香にとっては「アマチュアとして再出発する」という覚悟であり、再びプロを目指そうという考えは無かった。一度プロの世界から逃げた自分がプロの世界に戻るというのはさすがにあり得ないと思っていた。前日のライブを経た今の、あくまで桃香がやりたいと思っているのはアマチュアの立場でロックの原点を追求するということに過ぎなかった。だが同時に桃香はかつてアマチュアからプロを目指した経験者として、あのような物凄いライブに陶酔してしまった人間がもっと上を目指したくなるという心理はよく理解できた。自分もかつてそうだったからです。だから、桃香は仁菜やすばるがプロになりたいなんて言い出さないかヒヤヒヤしていた。桃香自身はプロに戻る気は無いのですからそれは困るのです。

しかし仁菜は自分がプロになるという意識はあまり無いみたいで、それは桃香は安堵した。ただ仁菜の面倒臭さは桃香の想像の斜め上を行っており、それは結局は桃香を閉口させた。仁菜はどうやらあのライブで桃香こそが本来のダイヤモンドダストのロックを受け継いでいるのだと証明したかったみたいなのです。そういえば、すばるにライブには新ダイヤモンドダストのライブに行ったファン達も来るから何を見せたいか考えるようにと焚き付けられていましたね。それで仁菜としては自分たちが頑張って桃香の正しさを証明してやろうと思っていたようです。完全に厄介オタクの思考です。もちろんそこには仁菜自身の新ダイヤモンドダストの方向性への反発や、新ボーカルで過去の因縁の相手であるヒナへの対抗心もあるのだが、そういうものも全部ひっくるめて新ダイヤモンドダストと自分を対立させようとする仁菜の執念に桃香は閉口した。

それで桃香は自分は新ダイヤモンドダストと対抗するつもりは無いと言い、そもそもダイヤモンドダストのフォロワー数はデビューライブ後に更に2万増えて7万となっていて、それに比べて新川崎はフォロワー数は500人で勝負にならないと指摘する。それでもダイヤモンドダストへの対抗心を捨てきれない仁菜は、その現状をひっくり返すために何とかしようと言いますが、桃香は自分たちは普通にアマチュアで活動するだけだと言い張る。しかし仁菜はあくまでダイヤモンドダスト打倒を諦めず「バンドの目標を作ろう」とか面倒臭いことを言い出す。更にすばるまで話に乗っかってきて、元プロの桃香が自分たち素人とただ一緒にアマチュアバンドをやるというのは変だとか、何か狙いがあるんじゃないかとか因縁をつけてくる。桃香は何も狙いなど無いしアマチュアでやりたいだけだと正直に答えますが、どうも2人がやはりライブで上手くいった影響でこのままではプロになりたいとか言い出すんじゃないかと心配になってきます。

そうして桃香とは別れて牛丼屋に寄った仁菜とすばるでしたが、仁菜は桃香が自分の気持ちを逆なでするようなことばかり言うので腹を立てて牛丼屋で大声で喚き散らします。ホントにこいつ迷惑です。すばるの方は仁菜が怒ってばかりだから桃香が本心を明かさないのだとか言って、相変わらず桃香が何か狙いがあるのだと思い込んだままみたいなことを言う。しかし、おそらくすばるの場合は実際は桃香の内心の迷いに気づいて「何か狙いがあるんじゃないか」と言っていたのでしょう。

すばるは桃香がただ漫然と自分たちとアマチュア活動をするというのはやはり不自然だと思っている。元プロの桃香だからこそ、プロの世界から逃げたことに負い目を感じているというのは前回の居酒屋での告白からも分かっていましたが、すばるは自分も似たところがあるので桃香の気持ちはより深く理解できたのでしょう。すばるの場合は桃香とは逆で、本来目指していた役者の道からバンドの世界に逃げてきたわけですが、それで祖母に対する負い目はありつつも、だからこそバンドの世界で心に期すものもあった。それと同じで、プロの世界から逃げた負い目を持ちながらも桃香もアマチュアの世界で心に期すものがあるはずだとすばるは思ったのです。

そして、それは仁菜も同じなのではないかとすばるは思っていた。仁菜もまた熊本で学校から逃げて川崎に出てきてバンドをやっている。だからこそこんなに必死なのだろう。一度逃げてしまった人間だからもう負けたくないという気持ちはすばるにはよく理解できた。だからきっと仁菜が必死なのは桃香のためではなくて自分のためなのだろうと思い、仁菜自身がダイヤモンドダストに負けたくないのではないかと問うと、仁菜もそれは正直に認めた。自分の大切な思い出だから汚されたくない。因縁の相手のヒナにも負けたくない。だからダイヤモンドダストに負けたくないのは自分の想いなのだと仁菜は認める。

ただ、すばるはそうした仁菜の気持ちは理解しつつも、現実問題として大手の事務所がバックについているメジャーなプロのダイヤモンドダストに自分たちが勝つのはハードルが高いということは指摘しておく。すばるとしてもこれ以上ダイヤモンドダストの件で仁菜と桃香に喧嘩を続けられても困るので、もうちょっと仁菜に落ち着いてほしかったのです。ただ、この2人のやり取りを牛丼屋の奥でルパと智が聞いており、もともとボーカル候補として目をつけていた仁菜がダイヤモンドダストに対抗心を燃やしているという事情を知ってしまったルパは、これで仁菜たちを勧誘しやすくなったと思い智に「どうします?」と水を向けるが、智の方はまだメンバーを入れることに抵抗があるようで無視している。

ただ結局は智もその後「視界の隅、朽ちる音」のキーボードの伴奏を練習したりして、仁菜たちと一緒にやることを検討し始めるようになった。そんな智にルパも「辛い思いをするくらいなら今のままでいいと考えるのなら武道館という目標は諦めるべき」とハッパをかけて、どうしようかと迷う智に「勘ですけど、あの3人は智ちゃんに合うと思います」と背を押す。だが、それでも智は仁菜たちをまだ信用できない。

一方、仁菜はすばるに「プロのダイヤモンドダストに勝つのは難しい」と言われてしまったことが悔しくて、それなら自分たちもプロになればいいのではないかと考え、帰宅するとスマホで「バンドでプロになる方法」を検索したりする。どうでもいいけどそろそろ電灯を買えよと思ってしまうが、とにかくそんなものを今さら検索するということは、これまで仁菜がプロになるという発想を抱いたことも無いということの証といえます。

だが結局プロになる方法は検索してもよく分からなかったので、仁菜はライブハウスのオーナーのところに行ってプロになる方法を質問する。するとオーナーはネットで人気のあるバンドに事務所が声をかけてくるのだということを教えてくれた。フォロワー数が多くてライブの集客力があれば勝手にプロデビューの話は舞い込んでくるのだという。しかし仁菜はそもそも事務所なんて無くても桃香が言っていたようなネットでの配信だけでもプロになれるのかと思っていた。だがオーナーの言うには、タイアップで資金を引っ張ってきて、その金で宣伝を打つためには事務所は必要なのだという。そうやって宣伝を打たなければ新ダイヤモンドダストみたいに人気が出ないのです。

つまりダイヤモンドダストに勝つためには自分たちも事務所に声をかけてもらわなければいけないのだが、そのためには「フォロワー数」と「ライブの集客力」が必要らしい。ライブはまぁ頑張るとして、フォロワー数というものを増やす方法が仁菜には分からなかった。オーナーはとりあえずプロを目指すのなら旧ダイヤモンドダストがインディーズデビュー前に地元の旭川で活動していた時のフォロワー数の1万を目標にしてみたらいいと言ってくれたが、新川崎の現在のフォロワー数は500弱であり、それを1万にまで増やす方法は仁菜には見当もつかなかった。オーナーはおそらく地道に自分たちの音楽をやっていけば道は開けるということを言いたかったと思うんですが、参考にするようなお手本も知らないので、とりあえず仁菜は新ダイヤモンドダストがこんなにフォロワー数が多いのだからその方法は参考になるかもしれないと本末転倒なことを考え始める。

それで仁菜はスタジオで練習中に、いきなり桃香やすばるに衣装を可愛くしたいとか、インスタに萌え画像を上げようとかバカなことを言い始める。桃香が呆れて冗談で「新川崎女学院」として学生服でバンドをやろうかなどと言うと、仁菜はそれすら真面目に検討する始末。そんなにしてまでフォロワー数を増やしたいのかと呆れて、すばるがそれは今のダイヤモンドダストと同じやり方ではないかとツッコミを入れますが、仁菜は売れるためにはプロにならないとダメで、プロになるためには人気が出ないといけないのだからこういうやり方も仕方がないとか言う。

それを聞いて桃香は、それこそ旧ダイヤモンドダストがメジャーデビュー前に葛藤した問題そのものではないかと思う。しかし、それはちゃんと活動実績を積んだ上でメジャーデビューで商業ベースに乗る段階で突きつけられる問題なのであって、まだちゃんと活動実績も積んでいない段階でそんな客に媚びるような真似ばかりしてもバカにされるだけで、それこそプロデビューなんて遠のくだけだろうと思えた。つまり仁菜の言っていることは全くトンチンカンなのだが、それ以前にそもそもどうしてプロになるという話が出てくるのかと桃香は思った。この新川崎はアマチュアでやるとあれほど言っていたのに、やはり仁菜はあのライブの陶酔でプロになろうなどと思ってしまったのだろうかと心配になる。

それでどうしてプロになりたいのかと質問すると、仁菜はダイヤモンドダストに勝つためにはプロになるしかないとか言い出す。それで桃香は呆れて、そもそも自分はダイヤモンドダストに恨みも無いし対抗心も無いと何度も言ったはずだと仁菜に言い聞かせようとしますが、仁菜は「私が負けたくないんです」と言い返す。それは自分の個人的な恨みを晴らすために桃香やすばるを巻き込むということであり、桃香は迷惑だと言う。だが、それでも負けたくないと言う仁菜に対して、桃香もすばるもそれ以上言葉をかけられなかった。すばるはそのように仁菜を焚き付けたのは自分だと自覚していたし、桃香はそれが仁菜のロックの根源だということは分かっているので、それを押さえつけるのは違うと思った。やたらと自分を焚き付けてこられるのは迷惑でしかなかったが、仁菜自身がそうやって鬱屈することを止めることは出来ない。そこはプロになるかアマチュアのままかは関係なく、根源的に大事な部分でした。

それで練習の後、仁菜と2人で牛丼屋に来たすばるは、仁菜の負けたくないという気持ちには理解を示しつつ、さすがにいきなりプロを目指すとか萌え要素で攻めるなどのトンチンカンな方法論には苦言を呈した。そんなことをしても上手くいかないし、ダイヤモンドダストに勝てるわけがないと諭すすばるであったが、仁菜は本当はプロになっても簡単に上手くいかないことも、ダイヤモンドダストに勝てない可能性が高いことも分かっているのだと言う。それでも何でも試したいと思って足掻いているのは、最初から負けると思って諦めるのが嫌だからなのだと仁菜は言う。何故なら自分たちは間違っていないから。間違っていないと信じたいから。だから仁菜はトンチンカンだと笑われても足掻くのです。

その仁菜の言葉を牛丼屋の奥で聞いていた智の表情が変わる。智は実はずっと仁菜が本気でダイヤモンドダストに勝てると思っているのだと思って、なんてバカなのだろうかと呆れていた。そして、そんな無謀な夢に本気で挑んで失敗した者はどうせ絶望して諦めるのだろうと思い、そんな愚かな人間と手を組むことは抵抗があると思っていた。智がそんなふうに考えるのは、おそらく過去の仲間との別れに関係しているのだろうと思うが、詳細は今のところは不明です。しかし、智の想像とは違って、仁菜は既に絶望していながら、それでも挑もうとしているのだと智は気づいた。しかもそれは自分たちの選んだ道が正しいと信じたいからだという。それを聞いて智はそれは自分とルパと同じなのだと気付いた。自分たちも武道館を目指すなど現状は到底無理だと絶望していながら、それでも自分たちが正しいと信じているから武道館を目指すことを止めていないのだ。それで仁菜たちが自分たちと同じなのだと知った智は、彼女らとなら一緒にやれると思い、カウンターに飛び出してきて、仁菜とすばるに「紅しょうが」の名刺を差し出し「よろしく」と言う。

それで仁菜とすばるは仕事が終わったルパと智に誘われてカフェに行き話を聞くことになったが、名刺を見て牛丼屋の店員2人がバンドをやっていることは分かったが、自分たちに一体何の用なのか分からず困惑していた。まさか全く無名で素人同然の自分たちが勧誘されるという想像はしていなかったのです。それで紅しょうがの2人が新川崎の3人全員と組みたいという意向であると知って驚く。

そういうわけでルパと智に自宅兼作業場に一緒に行くことになり、道すがら2人の話を聞くことになった。それによると、ルパと智はプロデビューの誘いは受けたこともあるらしいのだが、その際に方向性が合わないという理由でプロデビューには至らなかったようです。これは今回の話だけでは詳細は不明だが、プロデビューの誘いは4人組だった頃にあったのではないかと思われる。そして、おそらく2人いなくなったのは、そのプロデビューに絡んだトラブルが原因なのではないかと思えてくる。そうなると旧ダイヤモンドダストから桃香が脱退した時と似たケースのようにも思えるが、全く同じというわけでもなさそうです。ここでルパが仁菜たち3人を誘った理由について「この人達ならちゃんと意見をぶつけられそうだと思ったから」と言っており、これは言い換えれば「以前に別れた2人は意見をぶつけ合う関係ではなかった」と言っているように聞こえる。また、そういう仁菜たちが智に合うとルパが言っていたところを見ると、智は異なった意見をぶつけ合える関係を好んでいるらしい。おそらく「自分が正しい」という確固とした信念を持っている仁菜を気に入ったのもそういう理由なのでしょう。そうなると以前にいた2人はそういうタイプではなくもっと流されやすいタイプだったということなのでしょうか。とにかく全体的な印象として、智とルパと以前にいた2人の関係は、旧ダイヤモンドダストとはちょっと違うケースのように思えてきます。

そしてルパと智の部屋に行って壁に貼ってある写真を見て、2人の目標が武道館だと知った仁菜が武道館のことをよく知らないと言うので、4人で一緒に九段下の武道館を見に行く。それで武道館の大きさに感動した仁菜が「ここで歌えたら自分が間違ってなかったって思えるよね」と言うのを聞き、智もルパも自分たちが武道館を目指す理由を改めて強く確認できたような気がした。2人もまたプロデビューを拒んだ自分たちの選んだ道が武道館から一見遠ざかる選択であったことは分かっていたが、それでも自分たちは自分たちが間違っていなかったことを証明するために武道館を目指す、それが自分たちが武道館にこだわる理由であり、武道館にはそれだけの特別な意味が2人にはあったのだと思われる。ただ、それが何なのかは今回はまだ分からない。

仁菜の方はベースのルパとキーボードの智が加わって、武道館を目指すという目標を達成すれば、ダイヤモンドダストに勝てたと思えるかもしれないと思えてすっかり上機嫌で、さっそく桃香にこのことを知らせようとする。桃香もベースとキーボードを欲しがっていたからきっと喜んでくれるはずだと言う仁菜であったが、すばるは桃香にそのまま伝えれば反対されるに決まっていると言って仁菜を止めます。

武道館でライブをするということはプロになることを意味しており、アマチュアでやると言い張っている桃香が賛成するはずがない。ルパと智だってプロデビューを念頭に置いて新川崎の3人を誘っているのであり、そのことを桃香が知ったらその誘いは断るだろう。だからすばるはひとまず武道館やプロ志望ということは隠したまま、ルパと智の楽曲の音源を桃香に聞かせて、単に「一度一緒に演奏したいと言ってきている2人組」という形でルパと智を紹介することにした。

それで桃香は音源を聞いて2人の腕前が確かなものであると知って好感を持ったようで、一度一緒にライブをやることを了承してくれて、とりあえず練習スタジオで顔合わせがてらセッションすることになった。仁菜はそんな誤魔化しをしてもすぐに本当のことを言わなければいけなくなり、嘘をついていたと言われて余計に話がこじれるんじゃないかと心配して、やっぱり正直に最初から話した方がいいのではないかと文句を言いますが、すばるは桃香の場合はこの方法の方が良いと思うと言う。

桃香の心は二面性があるのだとすばるは言う。すばる自身が役者としての自分とバンドマンとしての自分の二面性を生きているし、もともと別の自分を演じる役者なので、そのあたりの機微はよく分かるのでしょう。1人の桃香はプロから降りた自分がプロを目指す資格は無いと自制しようとする気持ちが強い。だがもう1人の桃香はただ純粋に良い音楽を追求しようとする。そこはプロもアマチュアも関係ない。ただ良い音楽、良いロックがあればそれに流されてしまう桃香が存在している。だから、嘘でも何でもいいから桃香を誘い出して「良い音楽」の中に放り込んでしまえば、きっと桃香は流されてくれる。それが根本的な解決にはなたないことはすばるにも分かっている。きっと何処かでまた衝突があるだろう。ただ、とりあえず取っ掛かりはそういうウヤムヤのなし崩しでスタートして、その後のぶつかり合いはすばる自身も仁菜もいつものことであるし、どうやらルパも智も「意見のぶつかり合い」は大歓迎みたいだから、まぁ何とかなるだろうというのがすばるのプランでした。そして、そのプランを理解して、ルパと智は桃香が気持ちよく流されてくれそうな「良い音楽」を準備することにした。

そうして練習スタジオでの顔合わせ当日となり、ここで智がすばるの祖母の安和天童の大ファンであることが判明したり、桃香が噂の2人が牛丼屋の店員2人だと知って驚いたりする場面の後、5人でのセッションが始まる。これは「視界の隅、朽ちる音」にベースとキーボードの演奏を足したもので「完全版」という感じで音に厚みがあって素晴らしかった。是非これのライブを見たいと思わせてくれるものでした。映像的にも五色のビームが飛び交う斬新な演出で、これは初めてフルバンドの音が重なったのを聞いた仁菜の新鮮な感動を映像で表現したものであり、秀逸な表現であったと思います。

そして演奏が終わった後、仁菜は桃香にルパと智の2人がこれからも一緒にやっていきたいということを伝える。まだプロ志望のことや武道館のことは伝えていないが、続けて仁菜が「私、やってみたいんです」と言ったことで桃香にもそれが大きな意味を持ったことであることは伝わった。そして、その上で仁菜は「桃香さんは間違ってない、桃香さんの歌は負けてないって証明したいんです」と言う。ここで桃香が簡単に認めてくれそうな「私が負けたくないんです」ではなく、あえて桃香を戦わせようという言葉を使うのが仁菜らしいストレートなところで、ここは桃香が仕方なくついてくる形ではなく、桃香にその気になってもらわなければ意味がないと仁菜は考えている。すでに4人はやる気になっているのだから、桃香もやる気になってもらわなければいけないのです。そして、そのお膳立てはすばるの作戦で上手くいっているはずでした。その結果は、桃香は黙ってギターの弦を軽く弾いて一応了承する意思を伝えてくれた。やはり「良い音楽」が桃香の心を少し動かしてくれたようです。

そうして5人でライブをすることになったが、それは音楽フェスへの出演でした。アマチュアのチャレンジ枠に応募して選ばれて話題をかっさらう。フェスには音楽業界の人間も多く見に来ているから、そこで目に留まればプロデビューの話にも繋がるかもしれないし、そこまでいかなくてもフェスで話題になればフォロワー数もライブの集客力も上がるだろう。それら全てプロを目指しての動きであり、ルパと智を仲間に加えるということはそういうことを意味していることは、仁菜の言葉を聞いた時から桃香もほとんど分かってはいた。それでも「良い音楽」に流されてなんとなく付き合っている形となっている。しかし、その音楽フェスに新ダイヤモンドダストも参加すると知って、仁菜の心も桃香の心も揺れるというところで今回は終わり次回に続きます。次回は遂に5人の新バンドの結成と音楽フェスでのダイヤモンドダストとの対峙など、盛り上がること必至となりそうですね。