2024春アニメ 5月2日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2024年春アニメのうち、5月1日深夜に録画して5月2日に視聴した作品は以下の1タイトルでした。

 

 

怪異と乙女と神隠し

第4話を観ました。

今回は閑話のような内容でしたね。前回まで牛鬼の呪いによる学園不登校事件の話が描かれて、次の事件の話が描かれる前に日常エピソードが挟まれたという印象です。特に乙の可愛い場面が多かったですね。ただ、この作品ですからもちろんタダの日常エピソードというわけではなく、様々な謎が散りばめられていました。全体的には、蓮と乙の化野兄妹の謎に迫ろうとするエピソードであったと思います。

今回はまず冒頭のアバンで、菫子と蓮が働く書店に畦目真奈美がやってきます。彼女は前回の事件で火傷を負って入院していたが退院して学校に復帰するそうです。その真奈美はもともとこの書店に客として来ていたようで、菫子と蓮のことも覚えていたようです。特に蓮は菫子のように若返って姿を変えたりもせず普段の姿のまま真奈美の前に姿を現していましたから、真奈美は自分が行ったことがある書店の店員であったことを思い出したようで、それで書店に行きレジカウンター内に蓮の姿を見つけると、その横にいる以前に見たことがある大人の女性がどうもあの「若造さん」に似ているように思えて近づいていくと、カウンターの前で転んでしまった。すると菫子は思わずその姿を見て「畦目先生?」と言ってしまい、それで真奈美は自分のことを知らないはずのその女性店員が自分の名前を知っていることから、その女性がやはり「若造さん」なのだと確信した。

もともと「若造さん」が実はコオネ女学院の生徒ではなくて事件の調査をするために潜り込んでいた何者かであることや、その「若造さん」が自在に自分の身体年齢を変えることが出来る異能者であることを知っていた真奈美は、その大人の女性店員が「若造さん」の正体だと理解することに抵抗は無かったのでした。もともと若造さんに学校で会った時から妙に見覚えがあると思っていたのもこの書店の店員に似ていたからだったのだと真奈美は納得した。それで真奈美は「やっぱりここの店員さんだったのね、若造さん」と菫子に声をかける。

菫子と蓮はいきなり真奈美が目の前に現れて、先日の件で恨み言でも言われるのではないかと身構えますが、真奈美は逆に先日の一件を詫びて、自分の暴走を止めてくれたことを2人に感謝してくれた。どうやら完全に改心したようで、真奈美は「これからは御守りに頼らずにイジメを無くすわ」と言う。「それが私の新しい夢」と言って笑う真奈美の言葉を聞く限りでは、前回菫子が諭したように真っ当な方法で少しずつイジメを無くすよう努力していこうとしているように見える。だが、真奈美が頭に巻いていたバンダナを外すと、頭には角が2本生えており、菫子と蓮は絶句する。

そのまま菫子の名札を確認して、菫子の本名を確認し「緒川さんも小説頑張ってね」とニッコリ笑って去っていく真奈美からは確かに2人に対する敵意は感じられなかったが、しかし、あの角はどういうことなのだろうかと2人は困惑する。前回の事件の途中から真奈美の頭に角が生えていたことは2人も把握していたが、それはおそらく牛玉の呪いの作用によるものだと思っていたので、牛玉の呪いが消えたことによって頭の角も消えるものだと思い込んでいた。だが、その角がまだ残っているということはどういうことなのだろう。

それはおそらく菫子が呪書を使ったことによって呪書無しでも若返りの呪力を使えるようになったのと同じ現象なのではないかと考えられた。普通はそういうことは起こらないのだが、菫子のような世の中への恨みの深い人間の場合はそうなるのかもしれない。真奈美もまたイジメの件で強烈な恨みを抱いていた人間だったので、そういう現象が起きたのかもしれない。そうだとすると、真奈美は塵輪鬼の呪力をその身に宿したことになり、その呪力はかなり強力なものとなる。もしそうであるなら、さっきの真奈美の「これからは御守りに頼らずにイジメを無くすわ」という言葉も意味合いが全く違ったものにも思えてくる。彼女はもう御守りなどに頼らずとも自分自身の力で相手を発熱させるだけでなく焼き殺すことも出来るのだ。もし、その異能を使ってイジメっ子を排除しようとしているというのなら一大事です。

ただ、真奈美からはそのような邪悪な様子は見受けられなかった。心から自分の暴走を反省して、菫子の意見に同意している様子であった。だから仮に真奈美に呪力が宿っていたとしても、もう彼女はその呪力を悪用はしないのではないかと思えた。そういえば菫子も若返りの能力を使えるようになったが、呪書を使っていた時のようにそれを執筆活動のために悪用しようとはしていない。どうも呪具を使っている時と自分自身が呪力を使えるようになった時とでは、精神の在り方が違うようです。呪具を使った場合はどうも精神的に不安定になるようで、自分自身が呪いとなることによってむしろ精神的には安定するようですね。だから、真奈美はこのまま放置しておいても大丈夫なのだろうと思えた。

あと少し気になったのは、呪いそのものとなった真奈美をきさらぎ駅に連れていくことによって蓮が切符を手に入れることは出来ないのかという問題です。もともと蓮は真奈美の持つ牛玉を手に入れてきさらぎ駅で切符と交換しようとしていたわけですから、同じ塵輪鬼の呪力を宿した真奈美でも牛玉の代用にはならないものかと思います。しかし蓮は若変人となった菫子のこともきさらぎ駅で切符と交換しようとはしておらず、こちらの世界の人間が呪力を宿した場合はまた扱いが違うようです。おそらくきさらぎ駅で切符と交換可能なのは、あくまで異界由来の事物だけみたいですね。

まぁとにかくこういうわけでコオネ女学院の「よだれかけ」事件は一抹のモヤッとしたものを残して終結しました。なお、前回のラストシーンで真奈美の病室を訪問した謎の車椅子の少女については今回は全く言及は無かった。これも少し残ったモヤッとしたものの1つです。

その後、OP曲の後に本編が始まり、まずきさらぎ駅の前で乙が鉢植えから植物の芽を生やしている奇妙な描写となります。この鉢植えは前回も登場しており、土しか入っていないように見えていました。そんなものを大事そうにしている乙がどうも奇妙だとは思っていたのですが、今回この場面では乙が傘を広げて頭上に掲げて気合を込めてジャンプすると鉢植えの土の中から植物の芽が出てくるという奇妙な現象が起きている。これは乙の持つ異能のようなものなのかと思えますが、それを見て蓮が「アニメの真似かい?」と気軽に笑っているところを見ると、詳細は結局よく分かりませんでしたが、別に大して悪意のある行いではないようです。これについては今後明らかになっていくのかもしれません。

その後、「よだれかけ」事件の解決の際に負った蓮の火傷がまだ治らないので「おじさんに見てもらった方がいい」と乙が言い、それで蓮が乙に菫子の家に泊まるようにと頼む流れになります。要するに、蓮が火傷の治療のためにきさらぎ駅を離れて何処かに泊まりで出かけなければいけなくなるので、その間乙を1人にしておくわけにいかないから菫子に預かってもらおうということです。そのこと自体はいいんですけど、「おじさん」というのは一体誰なのか。この会話の流れだと医者なのかなと思えますが、「お医者さん」ではなく「おじさん」と言っていることから、蓮や乙にとって身近な存在であるようにも思える。

一方、菫子は書店の仕事は今日はお休みで、自宅に籠って執筆活動をするとのことであったが、どうやら執筆活動の傍ら、蓮と乙の化野兄妹について色々と調べている様子。菫子だってバカではないので化野兄妹がどうも普通ではないことにはとっくに気付いている。廃駅に2人で住んでいて、呪いについて妙に詳しくて、奇妙な事件に首を突っ込みたがり、おかしな標識が見えたり奇妙な能力を使ったりするのですから、普通だと思う方がどうかしている。本当に人間なのだろうかと疑っても当然です。菫子は一見バカみたいに見えるし確かにバカな面もあるのだが、小説家として本の出したこともあるぐらい基本的にはインテリですから頭は良くて、2人に対して不信感丸出しで質問攻めにしたりしないのは彼女が慎重であるからであり、好奇心の塊である彼女はある程度はバカを演じて蓮と乙に調子を合わせて彼ら自身や彼らの関わる事件について情報収集することを優先しているみたいです。それは究極的には菫子自身の執筆活動にフィードバックされるのであり、だから菫子が化野兄妹について調べたりしていることも広い意味では執筆活動の一環といえます。

しかし、過去のマスコミによる報道などを探っていっても化野兄妹に関する記録は見つけられなかった。過去に起きたオカルト紛いの事件を調べても化野兄妹らしき者の関与は見いだせなかった。妖怪に関する本などを調べてみてもめぼしい手掛かりは得られなかった。それで手詰まりとなった菫子が窓の外を見ると桜の季節であることに気付き、酒と肴でも買ってきて部屋の中で花見でもしながら執筆活動をしようと思い立ち、アパートの部屋からコンビニに出かけます。

そうして部屋を出た時にドアの外に黒猫がうずくまっていて菫子は少し驚いたが、コンビニから帰ってきてもまだその黒猫は同じ場所にうずくまっていた。そして菫子が部屋の中に入っていくと黒猫も後ろからコソッと部屋の中についてくる。ここで猫が妙に印象深く描かれているのですが、実は第1話からずっと猫が菫子や蓮の周辺には現れている。どうも菫子や蓮の様子を猫が観察しているみたいに見えるのです。これはちょっと奇妙な描写であり、何かの伏線なのだろうと思われるのですが、怪異が現れると標識で気付くはずの蓮や乙がいる場面でも猫は現れていて、蓮や乙が何も反応していないところを見ると、これらの一連の場面の猫たちは怪異というわけではないようです。

とりあえず、部屋に戻ってきた菫子は刺身を肴にしながら発泡酒を呑んで遠くにある桜を愛でながら、化野兄妹をモデルにしたミステー小説の出だしの部分をちょっと書き始めてみる。そんなことをしていると何故か刺身が無くなっていて、見てみるといつの間にか部屋の中に入ってきていたさっきの黒猫が刺身を盗み喰いしているのを見つけて菫子は腹を立てるが、猫が幸せそうに刺身を喰っているのを見て赦してやろうと思い、微笑んで発泡酒を喉に流し込む。するとそこに蓮からスマホにメッセージが入り、乙を2~3日預かってほしいと言ってくる。そこに乙が例の鉢植えと荷物を持ってやってきて、菫子が事情を聞くと、蓮は牛鬼の件で負った怪我の治療で出かけなくてはならなくなったのだという。

それで菫子はそもそも化野兄妹は保険証などを持っているのだろうかと不思議に思い、そのことを乙に質問してみると嫌そうな顔をして黙り込むので、やはりこういうことを探られるのは嫌なのだと思い菫子はそういうことはもう聞かないと約束して乙を宥めて何も気にせずこの部屋で寛いでくれていいと言います。それで安堵した様子の乙でしたが、部屋があまりに散らかっているので寛ぐどころではないということで、2人で部屋の大掃除をすることになる。

その後、2人は近所の銭湯に出かける。2人では菫子の部屋のユニットバスでは狭いので銭湯に行くことにしたのです。ちなみにこの銭湯はたまたま乙の友達の麻美の家が経営している銭湯であり、銭湯に入っていく乙の姿を見た麻美は、一緒に来た大人の女性が何処かで見覚えがあるけど思い出せないと悩んだりします。高等部の「若造先輩」と似ているけど大人なので違うということで混乱したようですね。

乙は銭湯に来るのは初めてのようで、広い湯船に浸かって上機嫌になり、普段は廃駅に住んでいて風呂はどうしているのかなどという菫子の質問に答えてくれたりもするようになる。更に一緒にサウナに入って菫子の巨乳に嫉妬して理不尽なパンチで攻撃したりする。そして風呂上りに髪を乾かしていると、乙は泊めてもらうお礼に牛乳を買いたいけどお金が無いとか言ったりして、色々してもらって感謝はしている模様。結局、菫子の奢りで2人でコーヒー牛乳を呑みます。更に菫子が帰りに何か食べていこうと言い、乙に何か食べたいものは無いかと聞くと、乙は「ラーメン」と答える。

一方、その頃、蓮は雑踏の中を歩いていて、路地に例の標識を見つけると、その路地の奥に入っていき、いつの間にか誰も歩いていない町のど真ん中にいた。その町は全く人の居る気配も無く、さっきまでの雑踏とは大違いであることから、例の標識を目指して歩いた先がこの奇妙な無人の町であることから、ここに蓮が居ること自体が一種の怪異的な現象だと考えられる。

すると、その無人の町で蓮に呼びかけてくる声があり、その声は「なんでこんな所にいるの?ダメだよ、こんな所に来ちゃ」と蓮に向かって大声で呼びかける。声の主は中年男性みたいです。だが蓮はその声を聞くと急に明るい顔になって「おっさん!久しぶり!」と手を振る。それを見て相手の中年男性も「化野くん?」と驚き、どうやら2人は顔見知りのようです。そして蓮は「探したよ!」と笑顔で中年男性に駆け寄り馴れ馴れしく身体に触れようとしますが、中年男性は慌てて蓮をヘッドロックして動きを止めて「勘弁してくれよ!そんな大声出したら上に気付かれちまう」と注意します。そして「此処は本来、人が居ていい場所じゃないんだぜ」「悪いことは言わないから、さっさと帰りな」と大きな声で言う。だが蓮が「そんなこと言うなら土産は要らないんだね」と言って手にしていた紙袋の中身を見せると、中年男性は途端に態度を変えて「待っていたぞ化野くん、大歓迎だよ」とさっきと真逆のことを言います。

この謎めいた遣り取りはどういうことかというと、要するにこの「おっさん」と蓮に呼ばれた男は「上」と彼が呼ぶ何者かの命令で、この場所にやって来た人間を追い返す役目を担っているようです。だが蓮はそういう役目でこの「おっさん」がこの場所に居るだろうと予想して、この場所に来て「おっさん」と会うことが目的だったようです。「おっさん」の方も蓮の持ってくる土産を目当てにして蓮に会いたいと思っており、蓮を追い返す気は無いのですが、それでも建前上はこうして蓮と密会することはルール違反みたいで、だから相手が蓮だと気付いた後も、あくまで蓮のことを追い返そうとするような芝居を続けていたということです。だが結局は蓮に意地悪を言われてお土産を貰うために蓮を歓迎する態度に切り替えたので、「上」の監視というものもユルユルなのでしょう。

ここで蓮が相手のことを「おっさん」と呼んでいることから、蓮が怪我の治療の件で乙と会話していた場面で乙が言っていた「おじさんに見てもらった方がいい」という言葉の中の「おじさん」がこの「おっさん」と同一人物であるということが分かる。蓮は怪我の治療のためにこの「おっさん」に会いに来たのです。そして、そのために怪異の標識のある場所から奇妙な無人の町にやって来たのだが、その場所について「おっさん」は「此処は本来、人が居ていい場所じゃないんだぜ」と言った。つまり、この場所は現実世界ではなくて「異界」だと思われる。

しかし蓮は「異界」に行くための切符を手に入れるために苦労しているのであって、こんな簡単に「異界」に来ることが出来るならこんな怪我を負ってまで苦労する必要はそもそも無い。しかもこの場所は「おっさん」が此処に来てしまった人間を追い返す役目を担わなければいけないぐらいだから、それなりの頻度で普通の人間が迷い込んでくるのでしょう。だから、この場所は確かに「異界」ではあるが、蓮や乙が帰ろうとしている「異界」とは全く別物だといえる。おそらく両者は繋がってすらいないのでしょう。繋がっているのなら、蓮や乙はこの場所経由で目的の自分たちの本来居るべき「異界」に行けばいいはずだからです。要するに「異界」といっても様々な種類があって、現実世界との出入りが容易な「異界」もあれば、特別な切符で電車に乗らないと行くことが出来ない到達困難な「異界」もあるということでしょう。あるいはその到達困難な「異界」と、おっさんが言っていた「上」とは何か関係があるのかもしれない。

ところで、この「おっさん」ですが、これは都市伝説として有名な「時空のおっさん」だと思われます。「時空のおっさん」というのは「きさらぎ駅」と同様にネットの掲示板に投稿された体験談から始まった都市伝説であり、一応「実話」ということになっています。2006年の投稿だが、投稿者が家を出て通っている大学に到着すると誰もおらず、携帯電話が鳴ったので出てみると知らない中年男性の声で「どうしてここに居るんだ?」と怒鳴られ、怖くなって逃げ出すと気がついたら家に戻っていて時間も巻き戻っていたが、その時間には食べていなかったはずの朝食を自分が食べた痕跡があったとか、そういう投稿です。そして、その投稿があった後「自分も同じようなおっさんに会って同じような経験をしたことがある」という投稿が相次いで、そうした投稿に共通して登場する中年男性は「異世界の番人」なのではないかと噂されるようになり「時空のおっさん」と呼ばれるようになったのです。

この「時空のおっさん」の都市伝説そのものは一応は「実話」ということになってはいますけど、個人的にはイタズラの投稿による妄想の産物だろうと思っています。ただ確かにそういう都市伝説は存在しているという点で「きさらぎ駅」と同じであり、「きさらぎ駅」を登場させているこの作品の世界観の中に「時空のおっさん」が登場するのは当然と言ってももいいでしょう。「きさらぎ駅」も「時空のおっさん」もその都市伝説の背後に広がる世界観は酷似しており、この現実世界と似通った「異界」の存在を前提としており、それがこの作品の世界観とも似通っているからです。

上記の「時空のおっさん」の投稿においても投稿主の迷い込んだ大学構内というのは「異界」だったと思われますが、そこは彼が普段通っている大学と全く同じ場所だったという。他の「時空のおっさん」の目撃例でも、投稿主たちが「時空のおっさん」と遭遇した場所は現代日本と同じような場所で、しかし何故か無人の場所であったという。一方「きさらぎ駅」に関する報告例でも周囲の風景はだいたい現代日本風だが、やはり基本的には無人の風景で、廃墟のようになっていることも多い。少なくとも剣と魔法の異世界みたいな架空の世界ではなく、こういう都市伝説の「異界」というのは現代日本に酷似している。それを人々は「別の時空に存在するパラレルワールド」だと言う。そこを守っている番人だから「時空のおっさん」なのだという。

そうしたパラレルワールドが現実世界と重なって存在しており、現実世界からパラレルワールドに迷い込む人間が時々いて、そういう人間を元の世界に戻すのが「時空のおっさん」の役目なのだといわれています。そういう時空の穴のような怪異が現実世界の路地に潜んでいて、そこから「時空のおっさん」が居るような浅い層のパラレルワールドに行くことが出来ることを蓮が知っていて、それで路地からこうやって異界にやって来て「時空のおっさん」に会いに来たということなのでしょう。なお、第1話で蓮が菫子と追いかけっこをしていた時に何度も標識のある路地から先回りして現れたのは、こうした時空の穴を利用して異界経由でショートカットして先回りしていたと考えれば辻褄は合う。

噂によれば、宇宙から地球を撮影した地表の写真の中には地球とは違う天体の地表が映っていることが稀にあるという。そこは大抵は荒野のようなものが広がっていたりしており、都市伝説でよく証言される「異界」の風景とよく似ている。この地球には本当に異次元空間にある別の世界が重なって存在しているのかもしれない。それは剣と魔法の世界のような全くの別世界ではなく地球が何処かの歴史の分岐点から分かれて別の歴史を辿ったパラレルワールドなのであり、だから現実世界と似ているのかもしれない。そして、そういうパラレルワールドというものが多数存在しているとして、それらの異界に別の世界の人間が迷い込まないように管理している「上」と呼ばれる世界が更に別に存在しているように思われる。少なくとも、この場面での「おっさん」の話を聞く限りではそう解釈できる。

前々回の蓮の回想シーンで描かれた蓮や乙のもともと居た世界の様子も現実世界と似た感じの世界であったし、あれもパラレルワールドなのかもしれません。ただ、あれはこっちの世界に来てからの回想である可能性もあり、今回は乙の回想シーンでは地獄の賽の河原のような場所も描かれており、もしかしたら蓮と乙の本来の元居た世界というのはああいう超常的な世界だったという可能性もあり、そこはまだ断定は出来ません。あるいはそういう超常的でちょっと宗教的イメージの「異界」も存在しているのかもしれず、そこは現実世界に似たパラレルワールド的な「異界」とは異質な場所であり、だからこそ「切符」が無ければ行けない特殊な「異界」なのかもしれません。それこそが「上」と呼ばれる世界なのかもしれないですね。

菫子と一緒にラーメンを食べに行った乙はラーメンを美味しそうに食べますが、菫子に「君たちは何処から来たんだい?」と問われると「あたしはあっちから来た」と言って指で真上を指さしている。「あっちってどっち?」と菫子に聞かれて「さあ」と答えており、乙自身は自分が元居た世界についてあんまり詳しくないようだが、しかしここで「上」を指さしているのはやはり気になるところです。更に菫子が「お兄さんの他に家族は居るのかい?」と質問すると乙は逆に菫子に家族が何処にいるか聞き返し、菫子が地元に居ると答えると「私の家族も地元に居る」と真似をして返答していて、この質問には真面目に回答しているわけではないと思う。そして蓮がコオネ女学院で真奈美と言い合いをしていた時に「妹を返したい」と言っていたのを聞いていた菫子がそれはどういう意味なのかと問うと、それについては乙は何も答えなかった。それは簡単に他人に教えることは出来ない重大な秘密なのでしょう。

ただ、この「乙を元の世界に返す」という件に関しては今回気になる情報も出てきた。場面を蓮と時空のおっさんの方に戻すが、時空のおっさんは普段はこうして蓮と会って蓮からのタバコなどの嗜好品のお土産と引き換えに住民票や保険証など現実世界の現代日本での生活に必要な偽造書類などを渡してくれているようです。乙がお嬢様学校であるコオネ女学院に通えているのもそういうカラクリがあったわけですね。普通の人間に対してはただ追い返すだけの時空のおっさんが蓮に対してだけはそんな取引をしてくれるというのも、蓮が異界生まれの人間であるからなのでしょうけど、「上」から与えられたルールを破ってまで蓮に協力してくれているところを見ると、蓮が只の異界人であるというだけの理由で協力しているのではないようにも思える。蓮と乙は異界人の中でも「上」と通じた何らかの特殊な立ち位置なのではないかという気がする。

まぁそういうわけで時空のおっさんはいつものように蓮が何か書類でも求めて自分に会いに来たと思ったようですが、どうやらそうではなくて身体の異常に関する相談だと気付くと、慌てて「もしかして君、目を使ったの?」と問いただす。それで蓮が頷くと、おっさんは「使うなって行っただろう」と呆れる。そして「使えば使うほど、その目は君の身体を壊していく」「妹を送り返す前に君が死んじゃうぜ」と忠告する。どうやら、蓮の「呪い返しを強制的に起こして呪いを消してしまう目の能力」というのはかなり蓮自身の身体にとって危険なものみたいです。それを蓮は今回の「よだれかけ」事件で真奈美に対して使ってしまった。使った後、蓮の目から変な液体が出て苦しんでいたのは、牛玉の呪いは関係なく、そもそも目の力を発動した反動であったようですね。ただ、あの場面は目の力を使わなければ真奈美を止めることは出来ず蓮も菫子も危険だったので仕方なかったでしょう。しかし、そもそも焦って事件に首を突っ込まなければ目の力を使う羽目にならなかったのも事実です。

だから蓮は「それでもやらないと、もう時間が無いんだ」と苦しそうに時空のおっさんに言い返す。「時間が無い」から乙を元の世界に戻すための切符を手に入れるために無茶しなければならないということなのでしょう。ただ「時間が無い」というのはどういう意味なのか。乙が元の世界に戻ることが出来るのは期間的に制限があるということなのか。それとも蓮や乙の命そのものに時間的な制限があるということなのか、現時点では詳細は不明です。

ただ時空のおっさんはそうした蓮の切実な事情は理解してくれているようで、仕方ないとばかりに蓮の目の様子を見てやり、あまりに酷い状態だったので呆れますが、医者には連れて行ってくれるという。医者といってももちろん普通の医者ではなく異界の医者なのでしょう。ただ「気休め」に過ぎないと言っているところを見ると、この蓮の目の状態を完治させることが出来る医者など異界でもあまりいないようです。

そして、ここで時空のおっさんは謎めいたことを言う。「焦らなくてもここなら怪異は見つかる」「何せここは新しい町だからね」「新しい土地には新しい神が宿るのさ」と。これはつまり、蓮が切符を手に入れるためには怪異を集めなければいけないと焦っているからであり、そのせいで目を使う羽目になっているのだが、おっさんはこのパラレルワールドでなら怪異はすぐに見つかるから焦らなくてもいいと言ってくれているのです。どうもこのおっさんの言うことを聞く限り、パラレルワールド的な異界というものは順次新しく生まれてきているようで、そうした新しく生まれた異界は空白地帯になっていて、そこには新たな怪異が集まってくるみたいです。だからこの場所で怪異を探せばいいだろうとおっさんは蓮に助言してくれているようです。ただ蓮がその助言を素直に聞くのかどうかは分からない。蓮がそれでも現実世界で怪異を探そうとすることには、それは相応の理由があるのでしょう。

その後、ラーメン屋を出て家に戻った菫子と乙の場面に変わり、菫子が小説を出版したのが15歳の時だと知った乙が自分も今15歳だと言い、その後ベッドで眠ってしまい、賽の河原のような場所を幼い頃の乙が歩いていると、そこに虚空から蓮が現れるという奇妙な夢を見て目覚めて、その後また寝ます。そして朝目覚めると部屋には菫子は居らずテーブルの上にカロリーメイトが1つ置いてあり、まさかこれが朝食なのかと絶望していると、ちゃんと菫子がハンバガーショップで朝食を買ってきてくれて一緒に食べ、菫子も高校生の「「若造先輩」の姿になって一緒に登校するというところでED曲が流れます。

そしてCパートで、先ほど賽の河原の夢で出てきた幼い頃の乙が蓮と一緒に橋の下でインスタントラーメンを作って食べる回想場面が描かれ、乙がラーメン好きなのは蓮と一緒に食べた想い出の味だったからだということが判明する。しかし、この橋の下の場面ですが、どう見てもこちらの現実世界そのもののように見える。少なくとも賽の河原的な世界とは異質な世界に見える。そうなると、蓮と乙がこちらの世界に来たのは子供の頃ということになるが、前々回の回想の場面も子供の頃のようだったが戦場の町のような異様な世界であったし、やはり現実世界に似たパラレルワールドである可能性もあり、現時点ではまだ明確なことは分からないですね。まぁとにかく今回はここまでで、蓮は目の治療のために何処かの異界に行き、次回はちゃんと戻ってくるのかどうか不明ですが、おそらく次回は次の怪異の話が始まるのだと思います。