2024春アニメ 4月13日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2024年春アニメのうち、4月12日深夜に録画して4月13日に視聴した作品は以下の5タイトルでした。

 

 

アストロノオト

第2話を観ました。

今回はまずミラの秘密について説明がされます。前回でもちょっと示唆はされましたけど、ミラはミボー星という異星からやってきた異星人の姫であり、ミボー星の王位継承権を争っている立場らしい。前回地球に来る前に宇宙で何者と戦っている描写もあったので敵対勢力もしっかり存在しているようですね。それでミラが地球にやって来た理由は、王位継承権を得るためには「鍵」というものを手に入れる必要があるのだが、その「鍵」が地球にあるこの「あすトろ荘」の何処かに隠されているらしい。それでミラは地球に来て「あすトろ荘」の大家に上手く収まることが出来て、住人には内緒でコソコソと「あすトろ荘」の中で毎日「鍵」を探し回っているようです。なおミラが飼っているプードルのナオスケは実は護衛の宇宙人なのだが、外見が地球の犬に似ているということで怪しまれないように他人の前では犬のフリをしているようです。

ただミラは実は堅苦しいミボー星の王族の暮らしに飽き飽きしていて、地球での生活の方が楽しく感じてしまっていて、「鍵」探しにもあんまり真面目に取り組んでいないようで、ナオスケにいつもケツを叩かれているようです。前回、拓己がミラの部屋の外で聞いた会話は、そんなふうにミラがナオスケの説教を喰らっていたのがたまたま聴こえてきたのですが、拓己はてっきりミラが未亡人であり、部屋で謎の男と2人っきりで深刻な話をしていたのだと勘違いしてモヤモヤしている。ナオスケは拓己がミラのことを監視している怪しい奴だと警戒するが、拓己が未亡人だとかワケの分からんことを言って悶えているのを見て、ただの変態だと結論づける。

一方、ミラは古株の住人の山下から先代の大家である下高井戸太助という男の話を聞き、あすトろ荘の建設時からずっと大家をやっていた下高井戸は実はミボー星人だったのではないかと推測して、下高井戸の遺した資料などを調べ始める。そして下高井戸の話を聞いた拓己が下高井戸が梅酒を作っていたのだろうという話をしたので、ミラは拓己と一緒に物置にある梅酒を見に行く。その一方であすトろ荘の中をどうやら敵のスパイっぽい怪しげな機械が何かを探して動き回っており、その暴発によってあすトろ荘が停電してしまい、ミラと拓己は物置に閉じ込められてしまいます。

それで仕方なくミラと拓己は物置の中で梅酒を呑んで扉が開くのを待つことになり、拓己はミラに結婚しているのかと質問するがミラは結婚していないと答える。だが扉の向こうからナオスケの声でミラに「ご主人が来た」という呼びかけもあったりして拓己は混乱します。そんな拓己に酔っぱらったミラは自分はこれまで自由の無い境遇だったと打ち明け、今は明日の朝ごはんが何だろうと考えるのが一番の楽しみなのだと言う。それを聞いて拓己はミラがブラック企業に勤めていたのだと勘違いして「自分の人生は自分で決めていいんですよ」と慰めます。

翌朝、拓己は住人の照子に友達から相談されたことだと偽って「未亡人で、謎の男と同居していて、ご主人が来て隠れなきゃいけない人」についてどう思うかとミラについて相談するが「間違いなくクソだね」と言われてしまう。ミラの方は酷い二日酔いだったが、下高井戸太助についてミボー星に問い合わせの手紙を送り返事を待つことにした。そんなこんなでミラと拓己はちょっといいムードになったのだが、そこに突然ショーイン・ジンジャーというマントを翻した怪しげなイケメンが登場してきてミラのフィアンセだとか言うので拓己が驚愕したところで今回は終わり次回に続きます。

 

 

変人のサラダボウル

第2話を観ました。

今回はまず異世界からやって来てホームレスになってしまった女騎士リヴィアの状況が描かれます。リヴィアはすっかりホームレスに順応してしまっていたが、サラ姫を探さねばならないということを思い出し焦る。それでホームレス仲間の鈴木が探偵に依頼してみたらいいと助言してくれるが、依頼のための金が無いのでリヴィアは途方にくれます。

するとチャラそうな男がリヴィアに声をかけてきて手っ取り早く稼げる仕事があると誘ってくるので、リヴィアはよく分からないままセクキャバでキャバ嬢として働き始める。この展開は大爆笑しました。リヴィアがアホ可愛くて素晴らしい。それでビキニアーマーの女騎士コスプレで接客してオッパイの谷間に1万円札の束を入れられてしまいオッパイを揉ませるべきか否か悩む。ところがそうしていると警察のガサ入れがあって、リヴィアは警察の取り調べを受ける流れになってしまい、身元不明者とバレると面倒なことになると思い逃げ出す。そうしてホームレスの鈴木のところに戻ると、鈴木が格安の探偵事務所を調べてくれていて、そこからばセクキャバで客にチップで貰った数万円で依頼出来ると知り、リヴィアはその探偵事務所に行くのだが、そこがたまたま鏑矢探偵事務所であり、リヴィアはサラとの再会を果たしたのでした。

その後、リヴィアも鏑矢探偵事務所で探偵助手として働き始めるが全く役立たずだったのでクビになり、結局またホームレス生活に戻った。いや惣助もサラも酷いな。まぁ役立たずじゃ仕方ないけど。それにしてもリヴィアの薄幸ポンコツな転落っぷりには笑わせてもらいました。ちなみに鈴木はリヴィアのバイタリティー精神に影響されて発奮して、もともとの職業であった小説家に戻ったようです。

後半パートはサラが惣助のもとで初仕事をする話で、愛崎ブレンダという惣助の知り合いの弁護士の依頼で離婚調停のための浮気調査の仕事をする。それで調査対象の人妻の張り込みをするが、怪しい動きがあったのでサラが魔術を使って空を飛んで家の中を見ると、人妻と浮気相手のエグい濡れ場を発見してしまい、さすがにサラも赤面するがこれで依頼は大成功となり、またサラは飛騨牛にありつけたのだった。こんな感じで後半パートは大して面白くなかったが、前半パートのリヴィアの話はかなり面白かった。次回もリヴィアが転落する話っぽいので期待しています。

 

 

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?

第2話を観ました。

今回はザガンがネフィリアと一緒に買い物に行く話が描かれました。ネフィリアを城に連れ帰った翌日、元は孤児でコミュ症のザガンの食生活があまりに貧相で、本人は貧相であることすら無自覚だったが、ネフィリアの指摘で初めてザガンは自分の食生活が貧相だと気付き愕然とする。それでネフィリアが自分が料理を作ると言うのでザガンは好きな子の手料理を食べるという人生最高の展開に喜びますが、そういう素直な気持ちを相手に伝えることすら不器用で出来ない自分に絶望する。

それでも2人で食材を買いに街に行こうとしますが、よく考えたらネフィリアを買うために全財産を払ってしまったので馬車に乗る金すら無いことに気付き、徒歩で街に向かおうとする。しかし追いはぎが馬車を襲ってきて、ネフィリアがそれを見て怯えているのを見かねて追いはぎたちを退治したところ、馬車の持ち主に感謝されて用心棒として雇われて街まで同乗させてもらい謝礼まで貰って買い物の軍資金が出来た。

それで食材以外にネフィリアの生活に必要なものを買おうと思い、服屋に行きネフィリアに似合う服を身繕うようにと店員に言うと、店員はネフィリアの首輪を見てザガンがSM趣味の人だと勘違いしてネフィリアにボンテージ風のエロい服を試着させる。ここは非常に目の保養になりました。その後、マトモなメイド服を身繕ってもらい、更にネフィリアの首輪を外そうとして道具屋に行くがネフィリアの元の持ち主であるマルコシアス魔王の居城に行って鍵を探すしかないということが分かる。

その後、遅くなってしまったので2人で夕食を喰って帰ることにして料理屋に入り、ネフィリアはそんなふうに他人と共に食事するのは初めてで嬉しそうにする。また首輪を外せば自分が逃げるかもしれないと分かっているのに首輪を外そうとしてくれているザガンのことも嬉しく思う。ザガンの方はネフィリアと一緒にいると街の人々が妙に親切にしてくるので不思議に思うが、実はザガンの日頃の行いによって救われていた街の人々は多く、ザガンがいつもは他人を寄せ付けない態度だったので礼を言うことも出来なかったのだが、ネフィリアと一緒にいることでザガンが柔和な表情になっていたので声をかけやすかっただけでした。

こんな感じで2人はイイ感じに距離が縮まっていきましたが、ザガンがツンツンした態度をとってしまい自分のコミュ症ぶりに絶望してワーワー騒ぐギャグはちょっと見飽きてきましたね。ただ今回は最後に前回ザガンに命を救われた女騎士シャスティルが再登場して、前回の事件の黒幕はザガンだと決めつける教会幹部の命令でザガン討伐を命じられてしまいましたから、次回はシャスティルも絡んでまた新しい展開が描かれそうなので期待はしています。

 

 

ガールズバンドクライ

第2話を観ました。

今回は仁菜がバンドをやろうと決意するまでの話でした。というか、アレで決意したのかどうかよく分かりませんが、とにかく桃香とすばると和解したのは間違いない。まだ予備校のこととか大学進学の話とかもクリアになっていないし、そうスッキリとした話だったわけではない。しかしこういうスッキリしないところが魅力の作品ですね。

前回の第1話を観た時は正直ちょっと戸惑いの方が大きかった。この作品の良さに1話で気付けなかったところは我ながら恥ずかしいですね。今期の割と尖った類似の少女群像劇の中で「夜のクラゲは泳げない」の良さに1話で気付けないヤツはバカだと思うし、「終末トレインどこへいく?」の良さを1話で断言してしまっているヤツはちょっと早計だとは思う。「夜のクラゲ」は凄く分かりやすい。一方で「終末トレイン」はまだ奥深い作品だし危うい作品でもあるので1話で断言してしまうのは理解が浅いとは思う。ただ、この「ガルクラ」は1話で「良い」と断言してしまっていい作品だし、1話で気付くべきだった。それが出来なかったのは私の未熟でした。

原因は、どうしてもこの作品を「ガールズバンドアニメ」というジャンルで見てしまい、そのジャンルの他の作品と比較する視点をどうしても消し去ることが出来なかったからでしょう。だから楽曲とかCGの出来とか演出とかに目を奪われてしまい「各要素が尖っているけど全体的にちょっとチグハグな作品」という印象を持ってしまった。この作品が東映が絡んだ2.5次元のガールズバンドプロジェクト発の企画だという事実も、そうした偏った見方をしてしまう要因になったと思う。

だが実際はこの作品はそういう各要素のバランスで良し悪しを判断するような作品ではなく、むしろそうしたチグハグさもこの作品の味付けになっていると見るべきでしょう。そんな綺麗なガールズバンドアニメなどではなく、一言で言えば、まさに「東映」の作品だったのだと思う。描かれているのは、泥臭くてベタで王道で古風な青春ドラマだったのです。ちなみに戦隊やライダーやプリキュアがどうしてシリーズが長期にわたって人気なのかというと、基本はこれらも泥臭い青春ドラマだからなのです。アレを対象年齢層高めに作るとこういう作品になるのです。昔の青春映画のノリですね。

同じガールズバンドアニメでも「ぼざろ」も「MyGO」も青春ドラマではあるが現代風です。「ぼざろ」は非常に洗練されていて「MyGO」は粗くて尖っているけど、どちらも現代的な作りになっている。特にこの作品と「MyGO」との対比を考えるのが適切かと思いますが、「MyGO」の燈は「生きるために歌う」という感じだが、この作品の仁菜は「歌うことでしか救われない」という印象で、より切迫感がある。そのくせ「皆がバンドやるのが当たり前」という世界観の「MyGO」と違ってこの作品の場合は最初から可能性も限定されてしまっている。それが「古風」であって「MyGO」が「現代風」というのは、つまり「ロック」というものの解釈の仕方に差があるということでしょう。

「MyGO」は既に「ロック」が社会性を獲得した世界において「ロック」の未来を描こうとした作品なのだと思う。一方でこの作品は「ロック」の根源的な本質を描こうとしているように思う。だからこの作品の方が古風な印象なのであり、ベタで王道の青春ドラマになっており、燈のポエトリーがあくまでロックの最先端であるのとは違い、仁菜の場合は別にロックじゃなくても、彼女の魂の叫びはそれこそブルースや演歌の流しをやっていたとしても成立するし、いっそ音楽の形をとる必要も無い、もっと根源的なものでしょう。燈は絶対に夜中に電灯を振り回して暴れたりしないけど、仁菜はそういうことをやってしまう。それがロックの根源だからです。燈は洗練されているからそんなことはせず全てをポエムに昇華させることが出来るが、仁菜はそんな器用さは無い。その泥臭さがこの作品の持ち味といえます。いや仁菜ももちろん1クールかけて成長して洗練されていくのでしょう。それはロックの成立の歴史の追体験ともいえる。そうしたロックの歩みを描く青春ドラマなのだと思います。

そういう古風な本質が、この作品の音楽性の高さやCGの出来の良さによって幻惑されて見えにくくなってしまい、チグハグな印象を抱いてしまったのが私の失敗でした。ただ第1話の段階で全く分かっていなかったわけではなく、実際は二度目に視聴した段階で大体そのことには気付いて、既にレビューを投稿した後だったので「しまった」と後悔していたんですけどね。つまり一度目に視聴した段階でちゃんと見ていなくて、適当にレビューしてしまったのが失敗の本質です。クールの序盤は視聴作品数も多くて、どうしてもこういう疎かな視聴をして失敗する作品が出てくる。この作品は事前の期待値があんまり高くなかったので特にそういうことが起きる可能性が高かったのだといえます。この作品の場合は失敗に気付くことが出来たのでマシな方で、失敗に気付かないまま視聴を切ってしまう作品も多々あるのが現実でしょう。実際去年の夏クールでは「MyGO」も実質1話切りしてましたしね。どちらかというと苦手なジャンルなのだと思います。

ただこの作品の場合、1話はそうした本質が分かりにくかったのも事実であり、その点、今回の第2話は非常に分かりやすく王道の青春ドラマを描いてくれたと思う。見ていて、仁菜の愚かしさがなんとも愛おしくてグイグイ惹き込まれていき、最後は非常に感動しました。神回だったと思います。私は携わっているスタッフの過去作品に絡めて色々言うのは好きじゃないんですが、今回を見て、やはり同じ脚本家の過去のオリジナルアニメ作品で、同じように序盤がドタバタしてギクシャクしてから綺麗にまとまって物語が転がり始めた「宇宙よりも遠い場所」の序盤を彷彿させるという意見にはついつい頷いてしまいました。もし、この作品が「宇宙よりも遠い場所」の再来となるのであれば、今期は同じ脚本家がシリーズ構成を務める原作付き作品「響け!ユーフォニアム3」の圧勝かとも思えたが、案外分からないかもしれない。同じく完結作品となる「夜のクラゲは泳げない」「終末トレインどこへいく?」も含めてどうなるか分からないといえます。さすがに今期で「響け!」が完結することを考えると、完結作品以外は「響け!」を超える可能性は無いと思いますから、可能性があるのはこれらの作品に「死神坊ちゃん」を加えた範囲内ということになるでしょう。

そういうわけで、今回の内容ですが、まずは冒頭は仁菜の部屋に桃香が居候していて一緒のベッドで起きる場面から始まります。前回、住んでいるシェアハウスを解約して旭川に帰ろうとしていた桃香を川崎駅でマイクパフォーマンスで呼び出して、意味不明なセッションをして引き留めた仁菜でしたが、そのまま桃香は旭川に戻るのをやめて仁菜の部屋に転がり込んだみたいです。住んでた部屋を解約してしまったんだから仕方ないんですが、居候しながら桃香は仁菜の部屋で酒浸りみたいです。あの感動的(?)な前回のラストからのいきなりクソみたいな展開に笑ってしまうが、もう肉体関係まで結んでいるかのように誤解してしまいそうな2人の気だるい関係性がじわじわきます。イモジャージ姿の仁菜と便器を抱いてしゃがみ込む桃香に萌えは皆無ですが、萌えが無いぶんむしろ爛れた関係を感じてしまう。

ただ仁菜の部屋がそもそもまだ電灯も付けておらず引っ越し荷物もダンボールの中みたいな状況なので自炊も出来ないわけで、それで数日間2人でコンビニで買ってきたものを部屋で食べたりしているみたいで、居候させてもらっている桃香の奢りなのでしょう。そうなると桃香は金を出したぶん酒も呑む権利は主張するわけで、仁菜としても拒むことは出来ないので、いつも桃香が酔っぱらっているという未成年の女の子の部屋でやっていいことじゃない最低な状況が現出しているわけなのでしょう。

そんな中、仁菜は予備校への入学手続きをしに行き、元の部屋に戻れるように手続き中で返事待ちでヒマしている桃香もそれについていく。仁菜は熊本で高校を中退して上京(川崎だけど)してきたわけだが、バイトしていないのに家賃が払えていたり、予備校の学費が用意出来ていたりして、親の支援は受けているようです。つまり家出して出て来ているわけではない。そのあたりどうも複雑な事情がありそうなのですが、桃香はあえて立ち入らないようにしている。

とにかく仁菜は大学に行くことに特に興味があるようではなく予備校に通うのも乗り気というわけではないようです。ただ「大学は行かなければいけない」「高校中退で終わったら大変だろうし」と言っているところを見ると、おそらく地元の高校を中退して川崎に出て来るのを親に許可してもらい経済的支援を受ける代わりに「ちゃんと予備校に行って大学に合格すること」を条件として付けられているのでしょう。そして仁菜自身がそれを「仕方ないこと」「当然のこと」と受け入れているのは、それ以外に特に他にやりたいことがあるわけではないからなのでしょう。

前回も仁菜は「特にやりたいことがあるわけじゃない」と言っていた。ガールズバンドのアニメだから、てっきり主人公は音楽をやりたくて上京してきたのかと最初は思ったんですが、そうではないというのはなかなか斬新ですね。つまり音楽をやるようになる経緯からちゃんと描くということであり、それは言い換えると、主人公にとっての「音楽」「ロック」というものの持つ意味をより根源的に描くということです。もちろん他のガールズバンドアニメでもその部分はちゃんと描かれる。しかし主人公が音楽をやっていない段階からドラマをちゃんと描くというのは、そこをより緻密に描くということになります。

ただ、桃香はてっきり仁菜がバンドをやる気になっているものだとばかり思っていたようです。あの川崎駅前での謎セッションの時に「一緒に中指立ててください!」と仁菜が犯罪的なことを叫んでいたのを聞き、桃香はそれを「一緒にロックしてください」と言っているのだと解釈したようです。まぁ実際にその後に桃香がギターを弾いて仁菜が歌を唄いましたから、その流れを考えると桃香が仁菜がバンドをやりたがっていると思っても無理もない。てゆーか、私もそういう展開になると思ったし、視聴者の多くもそう思ったことでしょう。普通のガールズバンドアニメならそうなるはずです。

だが仁菜は「一緒に中指立ててください」というのは「一緒に頑張りましょう」という抽象的な意味合いで言ったようです。もともと仁菜は中指を立てるジェスチャーの意味を知らず、桃香に「ありがとう」という意味だとデタラメを教えられて信じ込んで牛丼屋で店員に向けて中指を立てたぐらいのアホなんですが、さすがにそれがデタラメであることはもう知っていたみたいで、川崎駅前に行ってマイクパフォーマンスをした時点では中指を立てるジェスチャーの意味は「このクソったれ野郎」という意味だということは分かっていたみたいです。

つまり仁菜はあの時、桃香に向かって「世間に負けずに反骨精神で一緒に頑張りましょう」という意味で呼びかけたのであり、当然桃香に対しては「東京に残って音楽を続けてください」という意味で呼びかけた。だが「一緒に」というのは「私も一緒に音楽をやりたい」という意味で言ったのではなく「私も桃香さんと同じように東京で頑張る」という意味で言ったのであり、もともと特にやりたいことの無い仁菜は「私の場合はとりあえず親との約束もあるから勉強を頑張る」というつもりであったようです。そういうふうに仁菜は説明しますが、しかし、これはちょっとおかしい。

桃香が音楽を続けるというのは確かに「中指を立てる」という表現に相応しい行為だといえます。上京しても結局は売れることはなく終わってしまった桃香の音楽など世間の人は求めていない。ただ桃香が自分がやりたいだけなのです。誰からも求められていないものを自分がやりたいという理由だけで押し通すから「このクソったれ野郎」と中指を立てる行為だといえるのです。しかし仁菜が予備校で勉強して大学に行くことは仁菜が求めていることではなくて仁菜の親が求めていることです。親の言いなりになって勉強する仁菜が桃香に「一緒に中指立ててください」なんて言える筋合いは無いはずです。

だから、あの時、仁菜が桃香に向けて大声で「一緒に中指立ててください!」と言ったのは、本心では予備校での勉強を念頭に置いての言葉ではなかったはずなのです。だが音楽をやるという意味でも無かったのも事実であり、それはもっと根源的な反骨精神そのものであり、それを仁菜は自分の言葉で言語化できないので自分自身がそれが何なのかよく分かっておらず「自分は勉強を頑張るのだ」ということで自分を納得させようとしている。

だが桃香はその根源的な言語化できない仁菜のドロドロモヤモヤした反骨精神がロックに通じるということが分かっており、だからてっきり仁菜がバンドを一緒にやりたがっていると勘違いしたのですが、そうではないと仁菜に否定された後も、その否定が矛盾していることも分かっている桃香はやはり仁菜が心の奥底では何らかの形でそのモヤモヤを解消したいと思っているのだと理解していた。だから桃香は仁菜に「勉強は頑張るとして、バンドもちょっとだけやってみないか?」と誘う。

仁菜は無理だと答える。楽器など何も弾けないからです。しかし桃香は仁菜は良いボーカルになると言う。理由は「声が良い」そして「心が良い」からだという。そして「バンドって、言いたいことが溜まってる奴らが集まってやるものだと思う」と桃香は言う。つまり、仁菜は「言いたいことが溜まってる奴」なのであり、そういう心がバンド向きなのだと桃香は言っているのです。それは言い換えると、仁菜が「これから予備校に通って勉強して大学に行くのが私の人生」と納得しているのは本心ではなくて、本当は心に不満を溜めこんでいるのだろうと桃香が見透かしているということになります。

それは確かに仁菜には図星でした。そして、そんな心に溜め込んだ想いを歌に乗せるのが1つの生き方であるという理屈も理解は出来た。「音楽は言いたいことが溜まってる奴がやるもの」だと、そういう理屈ならば仁菜にも抵抗なく受け入れることは出来た。しかし仁菜にはよく分からず受け入れ難かったのは、桃香が「音楽は言いたいことが溜まってる奴がやるもの」とは言わず「バンドは言いたいことが溜まってる奴らが集まってやるもの」と言ったことだった。どうしてバンドでなければいけないのか、どうして1人で音楽をやるだけじゃダメなのか、仁菜にはよく分からなかった。溜まってるものを吐き出すだけならば1人だけの方がいい。溜まってるものを抱えた者同士が集まって吐き出し合えばきっと嫌なことが増える。他人と関わって嫌な想いをするのは御免だと仁菜は思った。だからバンドにこだわることに意味があるとは思えなかった。そもそも桃香だってバンドを解散して1人で唄っていたではないかと仁菜は思った。

しかし桃香はそうして1人で唄った末に挫折して旭川に帰ろうとしていた。そして仁菜の呼びかけに応えてバンド形式でセッションをしてみて再び音楽をやろうと思えた。その時、桃香は自分はやっぱり1人で音楽をやるのではダメなのだと気付いたのです。仁菜みたいな「言いたいことが溜まってる奴」と一緒にやらなければいけないのだと気付いた。だからこうしてバンドに拘っているのです。

桃香は仁菜に「バンドって良いんだよね」と言い、バンドをやってると陰口とか告げ口とかでギスギスして、いつも一緒だからどんどん鬱憤が溜まっていって爆発して喧嘩になるとか説明しだす。そう聞くとバンドなんてロクでもないものとしか思えないが、それでも桃香は「自分1人じゃ出来ないものを自分以外の人と生み出すのは楽しい」と言う。それを聞いて仁菜は桃香が他人と我慢して仲良くした方が良いと説教しているように思えて不愉快になってきた。何かを生み出すために嫌な相手とも妥協して仲良くするものがバンドだというのなら、やっぱり自分にはバンドなんて無理だと仁菜は思った。

ただ、そうやって他人と妥協して上手くやっていくのが大人の生き方なのであり、そういう大人だからこそ色んなものを生み出せるのだろうとも思えた。それが出来ない自分はやっぱりダメで未熟な子供なのだろうとも思えてくる。その後帰り道でスーパーに寄って自宅で料理するための食材などを買って、帰宅して桃香が料理を作りながら、料理がバンドの色んなメンバーが同時進行して仕上げていって最後に全部合わせる作業と似ていると説明し始めると、それを聞いて仁菜はやっぱり自分にはそんなことは出来ないと思い落ち込み、自分は家事でも何にも役に立てないとこぼす。それを聞いて桃香は、そういうのはぶつかるしかない、失敗して学ぶしかないのだと諭す。

その後、部屋で2人で鍋を突きながら、仁菜の育ちが良いという話題になり、仁菜が実家は金持ちではないが家訓を守ったりするような厳格な家風で地元でも有名で、それが原因なのか仁菜が地元の高校でリーダー格の女子生徒に集団イジメを受けて学校に行きづらくなって、それで高校を中退して上京してきたのだと打ち明ける。

すると、それを聞いて桃香は「やっぱり歌った方がいい」と仁菜に言う。こういうのを聞く限り、桃香は決して仁菜が思っているように「良好な人間関係から良い音楽が生まれる」と考えているわけではないことが分かる。仁菜が地元であらゆることが上手くいかず行き詰って東京に逃げてきたのだという話を聞いて、そんな仁菜だからこそバンドで唄うべきだと桃香は言っているのです。だからさっきのバンドの話も、どんどん鬱憤が溜まっていって喧嘩になるような連中と一緒だからこそ、自分1人じゃ出来ないものを生み出せるのだという趣旨で言っていたのであり、妥協して仲良くすべきだなどとは言っていないのです。「言いたいことが溜まってる奴」同士が集まって、更に揉めに揉めて嫌なことが起き続けて、いっそう「言いたいことが溜まりまくった状態」だからこそ、自分1人の「言いたいことが溜まった状態」の時よりももっと凄いものが生み出せるのです。

ここで桃香の音楽観やバンド観というものが普通のガールズバンドアニメとは一線を画したものである点が面白い。桃香の考え方では「才能のある者が音楽をやるべき」ではなくて、むしろ何をやっても上手くいかず不満や絶望を溜め込んだ人間の方が音楽をやるべきだということになる。更に特徴的なのは、「そういう人間の方が音楽をやれる」という考え方ではなく「やった方がいい」という発想である点です。つまり目指すべきは「成功」なのではなく「救済」なのです。音楽は成功するための手段なのではなく、音楽でしか救われない人間が運命的に音楽を選ぶべきだというのが桃香の考え方なのでしょう。仁菜が歌でしか救われることがない人間だと気付いたからこそ、桃香は歌うべきだと言ったのです。

そして同時に桃香は自分はもはやそのような救済を必要としていないということにも気付いていた。かつては救済を求めて歌っていたが、既に救済されてしまったのか、あるいは救済を必要としない人間になってしまったのか、とにかく桃香は歌による救済を必要としなくなってしまった。だから歌うのを辞めて旭川に帰ろうとしていた。だが仁菜の歌にギターで応えてみて、ギターで仁菜の歌を支えることが今の自分なりの音楽に対する最も真摯な向き合い方なのだということに気付いた。そうして桃香はもう終わったと思っていた自分の音楽が甦ってくるのを感じて、そういうバンドならばもう一度やってみようと思ったのです。

そういう気持ちで桃香が「自分がボーカルじゃないバンドでギターに専念したい」と言い仁菜にボーカルをするよう誘うと、仁菜の心は揺らいだが、それでも仁菜は熊本で高校を中退すると言った時の父親との遣り取りを思い出して思いとどまる。父親はその時、高校を中退すると将来の選択肢が狭まると言って反対したが、仁菜はそれなら東京で予備校に通って大学に進学すると言い張って上京を許されたのです。つまり東京行きは「負けて逃げる」ものではなく、あくまで前向きな選択だという形で親を納得させたのであり、仁菜自身もそれで自分に折り合いをつけたのです。それなのにバンドなんてやり始めてしまい、歌に救いを求めたりすれば、まるで自分が熊本から負けて逃げ出して歌に逃げ込んだみたいになってしまう。それではダメなんだと仁菜は思い桃香の申し出を断り、桃香もそれを受け入れた。桃香は仁菜は歌でしか救われない人間だと思ったので誘ったのだが、それはあくまで桃香がそう感じたからに過ぎず、仁菜自身が別の方法で自分を救済しようとしているのならばその意思は尊重すべきだと思ったのです。それに、今の仁菜のように「負けた」ということを認めようとせず「言いたいこと」を封印しようとしている人間には歌は歌えないとも思えたのでした。

それ以降は桃香は仁菜をボーカルに誘うことはなくなり、しばらく経って桃香のもともと住んでいたシェアハウスに再び入居出来るようになり、桃香が仁菜の家からもとの家に引っ越す日となった。その際、仁菜は桃香から貰っていた「中指立ててけ!!」と書かれたギターを桃香に返した。それによって仁菜はまだ残っていた桃香のバンドでボーカルをやるという未練を断ち切ったつもりであった。桃香もそうした仁菜の想いを尊重して、せっかく仁菜にあげたギターではあったが、受け取っておくことにした。そして最後にもう一度、仁菜の歌を聞きたいと言って2人で多摩川の河川敷に行きます。

桃香としては、仁菜の歌による救いを支えたいと思ったからこそ再び音楽をやるモチベーションが湧いてきたのだから、このまま仁菜と別れて音楽をやっていくのは不安があった。だからせめて最後に仁菜の歌を心に焼き付けて、それを支えに音楽をやっていこうと思ったのです。仁菜と「一緒に中指立てていこう」と誓い合った以上は音楽を辞めるわけにはいかないので、とりあえずはそういうふうにするしかなかったのだといえます。仁菜も申し訳ない気持ちはあるので、桃香に「中指立てたくなったら小指立ててください」と言い、2人でそうすることを約束します。これはちょっと謎みたいですけど、要するに2人だけの特別な「中指の立て方」を新しく決めたのであり、離れ離れになっても「一緒に中指立てて頑張っていこう」という2人の想いは消えることなく繋がっているのだという証のようなものといえます。そうして仁菜は河川敷で1曲歌って、それを聞いて桃香は満足そうに笑ってトラックで去っていき、去り際に窓から手を出して小指を立てて見せた。それを見送って仁菜は1人で部屋に戻ると涙を流して悲しみます。

それにしても、前回の駅前セッションの場面も凄かったですけど、今回の河川敷の歌唱シーンもまた、やっぱりCG作画の出来が素晴らしいですね。単純にCGの完成度が高いだけじゃなくて、東映アニメーションがプリキュアシリーズのEDダンスやCGアニメ映画で長期間かけて地道に積み上げてきた「カワイイ」に特化した唯一無二のCG作画の技術を全部注ぎ込んでブラッシュアップさせている。これこそ世界に誇るべきものだと思えました。

さて、その後1週間経って、仁菜は予備校に通って勉強したりしていたが、気が付けば1週間誰とも喋っていないことに気付き、桃香のことが恋しくなる。すると夜になって桃香から「要らなくなった電灯を貰ったけど欲しくないか?」という連絡が入る。仁菜の部屋はまだ電灯を付けていなかったので仁菜は有難く頂戴すると返事して、今から取りに行くと伝えて桃香の家に向かいます。仁菜は久しぶりに桃香に会えると思ってウキウキして出かけていき、そして桃香の家に到着して桃香といっぱいお喋りしようと張り切りますが、家で出迎えた桃香は電灯を仁菜に渡すと、電灯を譲ってくれた相手だと言って「すばる」という女子を紹介する。すばるはドラムをやっているのだそうで、桃香は新たなバンドのメンバーを集めているようでした。仁菜はてっきり桃香と2人っきりでお喋り出来ると思って喜んでいたので、いきなり桃香が知らない女子を家に上げているのを見て嫌な気分になります。更に桃香がバンドメンバーを集め始めていると知って、桃香がもう自分のことはどうでもいいと思っているように思えて寂しくなり、桃香に必要とされているすばるに嫉妬してしまったのです。

桃香は3人で食事に行こうと誘い、仁菜の表情が硬いのを見てすばるは自分は遠慮すると言うのですが、桃香は未だ東京に馴染めていない様子の仁菜を心配して、同じ年のすばると友達にしてあげようと思い、すばるにも一緒に来るようにと求めて、結局3人でしゃぶしゃぶを食べに行く。そうして店に入ると、すばるも桃香の意図を察して、気を使って仁菜と打ち解けようとして積極的に話しかけてくるのだが、最初からすばるに対する印象が悪い仁菜は積極的に話しかけられると余計にすばるのことが鬱陶しくなっていく。それで上手く返事が出来ないでいると、桃香とすばるが会話をし始めてしまい、そもそも自分が会話しようとしないのが悪いクセに、仁菜は2人が自分を仲間外れにしているゆに思えて、それが熊本でクラスの女子たちにイジメの一環で無視されたり陰口を叩かれたりしていた時の記憶と重なってきて、ますます嫌な気分になってしまう。

それで耐えられなくなって仁菜はトイレに行き、そこに桃香がやって来て、すばるが接点を持とうとして頑張ってるんだから少しは相手をするようにと文句を言う。それを聞いて仁菜はそんなふうに「無理して話してやってる」みたいなのは「上から目線」で腹が立つと言い返し、自分みたいなメンドくさい相手にも気遣ってあげているというアピールが鬱陶しいとか、僻み根性ですばるのことをムチャクチャ言い出す。それを聞いて桃香も怒って「そんなふうに人のこと見てたら何時まで経っても誰とも話せないぞ」と怒鳴る。仁菜は自分が僻んでムチャクチャなことを言っていることは分かっていたので、桃香の言う通りだと思った。それでも頭に血が上っていたので素直に謝って態度を改める余裕も無く、こんな自分はもうダメだと諦めてしまい「自分は性格が悪いから一生1人なんだと思う」と捨てゼリフを残すと、貰った電灯だけ回収してさっさと店を出て行ってしまう。

そうしてしばらく外を歩いていると、次第に冷静になってきて自分のやってしまったことの愚かしさが胸に迫ってきて、仁菜はボロボロ涙を流す。しかし、夜道で1人で電灯を持って歩きながらボロボロ泣いている女子の絵面がシュールすぎて笑いが止まらない。ホントにバカな子です。桃香もすばるも自分のことを考えてくれて接してくれていたのに、自分は勝手に東京で孤独になって勝手に僻んで嫉妬して、自分のことを気遣ってくれる人に逆恨みして酷いことをして、なんて自分はバカなんだろうと思い、仁菜は「バカじゃないの!」と泣きながら何度も叫ぶ。もうね、シリアスなシーンなんですけど、ホントに仁菜が愚かすぎてシュールで笑えてくる。

そうして仁菜が完全に不審者と化して叫び続けていると、酔っ払いの男が「うっせぇな!」と怒鳴ってくるので、仁菜も「うっせぇ!」と言い返して中指を立てるが、ここでちゃんと桃香との約束を守って小指を立てているのは偉い。いや、意味は同じく「ファック・ユー」だから全然偉くないのだが、更に続けて仁菜は電灯をブンブン振り回して暴れ始める。とてもシラフとは思えない行動です。それで酔っ払いの方が一気に酔いがさめて一目散に逃げていき、仁菜は方言が出て「せからしか!!」とか喚き散らして帰っていきます。

そうして自分の部屋に戻ってきて、既にフードがあちこちにぶつかってバキバキに割れた電灯を天井に取り付けようとする。いや、もうそんなもんつけなくていいだろうと思ってまた笑えてくるんですが、テーブルの上に乗っても背が届かず電灯をつけることが出来ず仁菜はテーブウから転がり落ちる。いやホントに酒飲んでたんじゃないかと疑いたくなるほど行動が面白い。そうしてバキバキになった電灯と一緒に床に転がってしまった仁菜は天井を見上げて涙を流して「1人じゃ電気もつけられない。一生暗いままなんだ。ずっと闇なんだ」と謎の名言を吐く。こんな奇行の後で誰がそんな上手いこと言えと言ったか。

ただ、仁菜の絶望感は笑いごとじゃなくて本物です。桃香の誘いを断ったのは仁菜自身であり、それで仁菜は1人で東京でちゃんとやっていくつもりだった。でも孤独になってしまい寂しくなって桃香を頼り、桃香が他の子と仲良くなっていると嫉妬して酷いことを言ってまた孤独になってしまい、自分は結局どう転んでも孤独でどうしようもない人間なんだと思い知った。熊本でも東京でも、場所を変えても自分はずっと同じことをやっている。熊本でも負け犬で東京でも負け犬なのであり、未来は真っ暗だと完全に絶望してしまったのです。

しかし、そうやって仁菜が部屋ですすり泣いていると、そこに桃香とすばるが入ってきて、桃香は「やっぱりやろうよ、バンド」と仁菜に語りかける。どうやら桃香とすばるは仁菜を心配して追いかけてきて、桃香が同居している時にカギの隠し場所を知っていたので、それを使って部屋に入れたようです。仁菜は桃香たちが部屋に入ってきたことにも驚いたが、それ以上に一度はバンドをやることを断った上にさっきあんな酷いことをした自分をまた桃香が誘ってくれることに驚いた。だが桃香は「言ったろ?仁菜の歌声が好きだって」と言って微笑みながら仁菜の前に座る。

仁菜はあんな酷いことをした汚い心の持ち主である自分の歌声なんて桃香が好きになるはずがないと思い「どうしてそんな嘘を言うんですか?」と問い返す。だが桃香は「ウソじゃないよ」と言い、「ひん曲がりまくって、こじらせまくって、でもそれは自分にウソをつけないからだろ?弱いクセに自分を曲げるのは絶対に嫌だからだろ?」と指摘する。つまり、仁菜が絶望の闇に沈んでいるのは、絶望の闇に沈むことを避けるために自分を曲げて妥協しようとしなかったからだと指摘しているのです。熊本の高校でもそうしてイジメられて、熊本の家からもそうやって逃げ出し、東京でも孤独になってしまった、それらは全て「仁菜が妥協しなかった結果として陥った絶望」なのであり、その絶望は誇るべき絶望なのだと桃香は言っている。そして、その絶望を受け入れた時にそこから湧き上がってくる「言いたいこと」を凝縮した「歌声」は美しいのだと桃香は言っているのです。その歌声こそが仁菜自身を救済し、世の中の同じような絶望を抱えた人々の心に届く歌になる。

そんな歌声を桃香もかつては求めていて、確かに桃香自身もそれに救済されていた。しかし、それを桃香はもう忘れてしまっていた。それを思い出させてくれたのが仁菜の歌声だったのだ。「それは私が忘れていた、私が大好きで、いつまでも抱きしめていたい、私の歌なんだ」と言って桃香は仁菜の涙を指先で拭い、仁菜の歌声を自分のギターの音色で抱きしめることが今の自分にとっての「歌」なのだと伝える。

それを聞いて仁菜は嬉しく思ったが、同時にそれは自分が絶望を受け入れなければいけないことだと悟り、「そんなの要らない!」と言って泣きだす。そこにすばるが天井にバキバキの電灯を付けて明かりを灯して部屋が明るくなり、明るくなった部屋で大泣きしている仁菜の姿が妙に滑稽で桃香もすばるもつい可笑しくなって爆笑してしまい、すばるは仁菜を指さして「めんどくせー!」と大笑いする。もうなんかバキバキに割れた電灯といい、仁菜の行動がアホすぎて気を使うのがバカバカしくなったようです。それで仁菜も腹を立ててすばるの脛にゲンコツを食らわして、すばるはますます仁菜のことを面倒臭い奴だと呆れる。そんな仁菜とすばるの遣り取りを面白そうに見ていた桃香は「いいから、そのメンドくさいの全部、歌にぶつけなよ」と言って仁菜に差し入れに買ってきたヨーグルトを差し出し、仁菜はそれを受け取ってイッキ飲みすると、これで歌を唄うのを了承してしまったと思い、更に絶望して号泣し、それを見てまた桃香もすばるも大笑いするのでした。こうして今回の話は終わり、これでおそらく、仁菜がボーカル、桃香がギター、すばるがドラムという編成でバンドが結成されたということになるのでしょう。まだメンバーが足りないという問題や、仁菜の予備校とか大学進学はどうなるのか等、気になる点はありますが次回を期待したいと思います。

 

 

HIGHSPEED Etoile

第2話を観ました。

今回は主人公の凛の初レースが描かれました。凛は元はゲーマーだったようですが、レースゲームで世界記録を出したのを見込まれてスカウトされてレーサーになったようです。最初に同期っぽい連中が登場して凛と絡みますが、彼女らの関係性がよく分からないので別に何とも思わない。単に萌えキャラをたくさん出したいだけとしか思えない。キャラはデザインはやたら萌え萌えで可愛いですが、CG作画自体はかなりチャチなのでせっかくデザインは良いのだがあまり魅力を感じない。

その後は延々とレースシーンが描かれて、最後は周回遅れとなった凛がトップレーサーのキングを抜いて失格となって終わります。ここが今回の一番の見せ場と思われ、周回遅れが追い越すという反則行為だったとはいえ、キングをぶち抜いた新人ということで注目されるという描き方となっています。しかし、そこに至るまでのレースシーンがとにかくつまらない。何がどうつまらないのか言語化するのが難しいですが、まずはやはりCG作画の力量不足が大きいのだろうと思う。あとはやっぱりレースシーンを面白く見せるのって難しいんだろうなと思う。そう考えると「MFゴースト」とか「オーバーテイク!」ってやっぱり凄かったんだなと改めて実感します。

というか、レースシーンの手抜き加減とキャラの極端な萌え志向、薄い内容のストーリー、そういうのを考え合わせると、そんなに真面目に見るような作品じゃないんだろうと思える。たぶん途中で見るの止めると思いますけど、でもこういうの意外に嫌いじゃないですよ。こういう中身スカスカで萌えキャラばっかり出て来るスポーツアニメって昔は結構あって、頭空っぽにして楽しめましたから。この作品もサービスシーンが増えたら案外完走するかもしれません。まぁもう少しCGが良くないとダメかもしれないけど。