2024冬アニメ 3月16日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2024年冬アニメのうち、3月15日深夜に録画して3月16日に視聴した作品は以下の2タイトルでした。

 

 

葬送のフリーレン

第27話を観ました。

今回を含めて残り2話、いよいよ次回が最終話となります。このタイミングでやはり考えるのは2期があるかどうかですが、この作品に関しては当然2期はやるでしょう。それは愚問というもので、問題は次回に2期の告知があるかどうかという点でしょう。そして、おそらく次回に2期の告知もあるでしょう。ただ、2クールもやった後ですからちょっと期間は開くと思うので、具体的な2期の放送時期の告知までは無く、2期制作決定告知ぐらいでしょうね。

そして今期に関しては、今回のエピソードで3次試験が簡略化されたので次回で綺麗に終わるのだろうということが分かりました。このペースなら3次試験は2期に持ち越しなんじゃないかと心配だったんですけど、それは杞憂に終わりそうですね。しかも今回すごく良かった。前半パートも後半パートもムチャクチャ気持ちいいお話でしたね。やっぱりエピソードの完成度が恐ろしく高いんですよね、この作品。

アニメ鑑賞というのは娯楽ですから、当然「楽」をしたいわけで、日々の疲れを癒すためにノンストレスで心地良いものを求めて見る人が大多数です。そういう意味ではこの「葬送のフリーレン」や「僕の心のヤバイやつ」なんかは最高峰の作品なのだと思います。大多数のノンストレス視聴派の人達は今期の最高傑作はこの2作品を挙げるでしょう。

私も実際この2作品を見る時は凄く癒されてるのでそういう気持ちはよく分かるんですけど、やっぱり順位を付けたりする時には、私は自分が癒されてるかどうかよりも、多少ストレスを感じるぐらいに内容を詰め込みすぎるぐらいに頑張ってる作品を低評価はしたくないんですよね。「勇気爆発バーンブレイバーン」「SYNDUALITY Noir」「魔法少女にあこがれて」「戦国妖狐」とかは「フリーレン」や「僕ヤバ」を見る時よりも確かにストレスは感じるんですけど、そのぶん多くのことを伝えようと頑張ってるのは分かるし、一定の面白さはしっかりあるので「フリーレン」や「僕ヤバ」より高評価してもいいと思える。「メタリックルージュ」みたいにストレスの大きさの割に面白さが足りてない作品はさすがに高評価出来ないんですけどね。

まぁそのあたりの評価基準は人それぞれなのでしょう。「ストレス=情報量」を極端に重視する人は「メタリックルージュ」を1位にしたりするのかもしれない。私は「ストレス=情報量」を「癒し=楽しさ」より少し重視する程度ですから、「勇気爆発バーンブレイバーン」「SYNDUALITY Noir」「魔法少女にあこがれて」「戦国妖狐」あたりならば「フリーレン」や「僕ヤバ」より上位に置く。でも「癒し=楽しさ」の方を重視する人ならそれは順位が逆になるのは当然だと思いますし、そういう評価の仕方は全然アリだとは思います。ただ私が多少は不器用で不格好でも強く伝えたいものがあってしっかり面白い作品を高く評価したい嗜好の持ち主だというだけの話です。だから私が「葬送のフリーレン」を低く見ているわけではなく、むしろ、かなりこの作品を愛してると思います。レビューもサクサク楽に進んで楽しい。もちろん今回も素晴らしかったと思っています。

冒頭は相変わらずボケ爺さんに絡まれていたシュタルクのもとに二次試験を終えたフェルンが来て、二次試験でフリーレン(複製体)に粉々に破壊された杖をフリーレンに捨てるようにと言われてフェルンがブチギレていた。ハイターに貰って子供の頃から大事に使い続けてきた杖ですから捨てるなんてフェルンには考えられない。だから、そんなことを平然と言うフリーレンが信じられなくなってしまったようです。確かにこれはフリーレンが悪い。

この後、二次試験で落ちたラヴィーネの頭をカンネがナデナデする場面がありますが、カンネのヘソしか目に入らない。続いてリヒターの魔法具店にデンケンとラオフェンが買い物に来ている場面となりますが、明らかに買い物が目的ではなく、二次試験に落ちたリヒターを気遣って来ているのがバレバレで笑ってしまう。ラオフェンはどうリヒターを慰めて良いのか分からずドーナツを分けてあげようとして断られる。子供みたいです。デンケンは「ワシは客として来ている」とか言って店内をウロウロして励ましの言葉を探している。カンネはラヴィーネと幼馴染ですから慰めるのは分かりますが、デンケンもラオフェンもリヒターとは今回の試験で初めて会っただけですから本来慰めるような間柄じゃない。それでも気遣おうとしているところに2人の優しさを感じますが、同時に本来慰めるような間柄じゃないから慰め方が見つからなくて困っている様子がユーモラスで微笑ましい。

どうでもよさそうな魔法書を物色するフリをしながら「今回は運が悪かったな」なんて言って慰めようとするデンケンですが、リヒターは拗ねて相手にせず「老いぼれのアンタは3年後はチャンスが無いから落ちたのが俺で良かったな」なんて嫌味を返す。一次試験の時はそんなリヒターの生意気な言葉をいちいちたしなめてマウントを取っていたデンケンですけど、今回はそんなことを言ってリヒターを傷つけたくないので「確かにの」なんて心にも無いことを言ったりする。しかしリヒターはそんな気遣いをされても余計に落ち込むので不愉快そうに「言い返せよ」と絡む。こんな空気の中でドーナツを喰わされるラオフェンが気の毒に思えるほど、2人とも不器用で大人げなくて可愛い。

それでデンケンはリヒターのお望み通りにリヒターの非礼な態度をたしなめることにして、リヒターはどうしようもない生意気な若造で全く褒められた者ではないと言う。だが同時にそんなリヒターを自分はどうしても嫌いになれないのだとも言う。それはデンケンの本音なのだが、それについてデンケンはその理由は自分もかつてはそんな生意気な若造だったからだと言う。人は誰でも若い頃は生意気な若造なので、デンケンは大して意味のあることを言っているわけではない。リヒターもデンケンが何が言いたいのか分からないと思い「何が言いたい?」と問い返す。するとデンケンは、そんな生意気な若造だった自分が今では宮廷魔導士なのだから、リヒターもそう悲観することはないのだと言う。きっと3年後はもっと強くなって一級魔法使いになれる。そういうことをデンケンは伝えたかっただけで、ずいぶんと回りくどい慰めでありました。しかもかなり陳腐な慰めで、そのままデンケンはさっさと帰ってしまう。

そんなデンケンと一緒に去り際にラオフェンが「爺さん、不器用なんだ」と釈明したのに対してリヒターが「お前はデンケンの何なんだよ」と全視聴者と同じツッコミをしっかり入れてくれたのは大満足でした。もう完全に孫ですね。しかし確かにデンケンは不器用でしたが、不器用だったからこそ本気で慰めようとしてくれたことが伝わり、2人が帰った後、店に1人残されたリヒターはちょっと救われた気持ちになり、二次試験に落ちて腐っていた気持ちが少し楽になりました。

それで終わっていればイイ話だったんですけど、そうしているとフリーレンが店に入ってきたので、またリヒターは嫌な気分になってしまう。フリーレンは粉々になった杖を持ってきて直してほしいと言ってきたからです。リヒターとしては新しい杖を買ってくれた方が儲かるのだが、こんなゴミのような破片を繋ぎ合わせても労力に見合った報酬が得られるわけでもない。しかもフリーレンはデンケンと違って慰めの言葉の1つもない。リヒターはフリーレンの立てた作戦で頑張って身体を張って失格したんですけど、それなら何か一言あっても良さそうなものです。しかしフリーレンは「三次試験に間に合わせたいから今日中に直してほしい」とまで言う。二次試験で落ちたリヒターにそんなことを言うとは、フリーレンのサイコパスっぷりは徹底しています。

だがフリーレンがフェルンの杖を直そうと懸命であるのもまた事実です。リヒターに杖の残骸を「ゴミ」と言われても「ゴミじゃない」と反論し、リヒターが修理に乗り気でないのを見て「出来ないならいい」と別の店に持っていこうとする。それでリヒターがムキんあって「出来ないとは言ってない」と、修理をすることになるんですが、リヒターは修復が進むにつれて、その杖はフリーレンの弟子らしき女の子が持っていた杖だと気付き、とても大事に手入れされていることが分かって、ゴミと言ったことをフリーレンに謝罪して、しっかり真面目に修理を仕上げてくれました。そうすることでリヒターは魔法使いとして3年後に向けて再出発しようという気持ちになっていった。

そうして作業は終わりフリーレンは元通りに直った杖を持って帰っていき、夜になっていてリヒターは店じまいを始めたが、そこにシュタルクと一緒にヤケ喰いしていたフェルンが通りかかって、リヒターはフリーレンに杖の修理をやらされたと告げる。それでフェルンが驚いて宿に戻ると自分の杖は元通りに直って置いてあり、フリーレンはもう就寝していた。それを見てフェルンはハイターの言葉を思い出します。それは「フリーレンは感情や感性に乏しいが、そのぶんきっと貴方のために思い悩んでくれます」というものでした。確かにフリーレンはデンケンなどとは違い人情の機微に疎くて他人を傷つけてしまうことが多いが、それでも自分が大事な相手を傷つけてしまったことを反省して思い悩むのです。誰にでも器用に優しい行動が出来る人物ではないが、だからこそフリーレンが不器用に思い悩む相手というのは心の底から彼女が大切に想う相手だという証になる。自分が彼女にとって本当に大切な存在なのだと実感することができる。それは素晴らしいことなのです。だから「彼女以上の師はなかなかいませんよ」とハイターは言った。その言葉を噛みしめてフェルンは寝相の悪いフリーレンに優しく布団をかけてあげるのでした。

そして後半パートは翌日、最終試験である三次試験の開始となります。三次試験に合格すれば一級魔法使いになれるわけで、ここはもともと危険な課題が用意されていたのですが、二次試験がフリーレンの活躍によって大量の合格者を出してしまったので予定が狂ってしまった。そもそもゼンゼが二次試験を合格が難しい内容にしていたのは、実力の劣る者が三次試験に進んで死亡することを避けるためだった。ゼンゼが自分を「平和主義者」と言っていたのはそういう意味だったのです。そして、それはこの試験の主宰者であるゼーリエも同じ想いであり、このまま三次試験で大量の死者が出るのは望まないということで、三次試験は予定した内容を取りやめにしてゼーリエが受験者を1人ずつ面接して合否を決めることになった。

このゼーリエと試験官の一級魔法使い達との会議の場面で、もともとの三次試験の担当であった一級魔法使いのレルネンがフリーレンの魔力制限に気付いていたという話が出ます。他の一級魔法使いたちはフリーレンが魔力制限をしていることに気付いていなかった。だが、レンネルは一級魔法使いの最古参であり実力も一番みたいであり、魔力制限特有の魔力の揺らぎが全く分からないぐらいに洗練されたフリーレンの魔力制限の僅かなゆらぎに気付いた。今までフリーレンの魔力制限に一見で気付いたのは魔王だけだったが、つまりレンネルは魔王と同等の境地に達しているということです。

そのレンネルは「フリーレンの本来の魔力はゼーリエ様に匹敵する」と言ったが、これは実は間違いであった。ゼーリエもまた魔力制限をしていたのです。つまりゼーリエが魔力制限して周囲に見せていた魔力は本来の魔力よりも遥かに小さいものであり、それがフリーレンの本来の魔力と同等ということは、ゼーリエの本来の魔力はフリーレンの本来の魔力よりも遥かに巨大なものだということになる。そして、フリーレンの魔力制限の魔力の揺らぎには気付くことが出来たレンネルも、ゼーリエの魔力制限の魔力のごく僅かな揺らぎには気付くことが出来ていない。それだけゼーリエの魔力制限の技術がフリーレンよりも洗練されているということです。やはりゼーリエの力は底知れない。

ゼーリエは本当はこの50年における一番弟子ともいえるレンネルに自分の魔力制限の魔力の揺らぎに気付いてほしかった。そして魔王を倒したというフリーレンに挑んで打ち勝ってほしいと思っていた。そもそもゼーリエが50年前に表舞台に出てきて大陸魔法協会を作って人間の魔法使いを育成し始めたのは、不肖の孫弟子のフリーレンが魔王を倒したということを聞き、そのフリーレンを超える人間の魔法使いを育成したいと思ったからなのでしょう。ゼーリエは千年前にフリーレンに「お前を倒せるとすれば魔王か人間の魔法使い」と予言し、魔王でもフリーレンを倒せなかったと知り、それならば人間の魔法使いを育成してフリーレンに挑ませてみたいと思ったのでしょう。だがレンネルをはじめゼーリエの弟子たちは誰も恐れてフリーレンに挑もうとしなかった。それはやはり人間は寿命が短いから命を惜しむからなのだと思い、ゼーリエは「やはり人間の弟子など持つのではなかった」と後悔していた。

そうして三次試験の面接が始まるが、花が咲く温室の中に1人ずつ入っていってゼーリエの面接を受ける。そのはずだが、ゼーリエはカンネ、ドゥンスト、ラオフェン、シャルフ、エーレに対しては一言も喋らないうちに「不合格」と言い渡す。彼らは皆、ゼーリエの巨大な魔力を見て恐怖を覚えてしまい、自分が一級魔法使いになった姿をイメージ出来なくなってしまっており、そんな者は一級魔法使いには出来ないというのがゼーリエの判断だったのです。まぁ巨大な魔力といっても魔力制限されているものなんですけどね。

だからなのか、続いて温室に入ってきたフリーレンはゼーリエの魔力に恐怖などは覚えていない。そもそも旧知の仲ですから今更恐怖も何も無い。しかしフリーレンもまた自分が一級魔法使いになった姿をイメージしていない。そもそもゼーリエが自分を合格にするはずがないとフリーレンは分かっているのです。まぁ確かにそうなんですけど、ゼーリエも孫弟子のあまりのやる気の無さに呆れて一度だけチャンスを与えることにして「好きな魔法を言ってみろ」と質問する。

それに対してフリーレンは「花畑を出す魔法」と、師匠フランメから教えられた魔法を挙げる。それはフランメが一番好きな魔法であり、千年前にゼーリエが「虫唾が走る」と言った魔法である。それを聞いてゼーリエは「フランメから教わった魔法か」「実に下らない」と吐き捨てて不合格だと告げた。それでフリーレンが大人しく引き上げていこうとするので、ゼーリエは自分や師匠の好きな魔法を愚弄されて反論もしないとはどこまで無気力なのかと呆れて、フリーレンに「お前のような魔法使いが魔王を倒したとは信じられない」と更に挑発する。

するとフリーレンは立ち止まり、ヒンメルたち仲間がいたから倒せたのだと答える。そして、かつてヒンメルにどうして自分を仲間にしたのかと質問した際にヒンメルから聞いた答えの話をする。実はヒンメルは子供の頃に森で迷子になった時、フリーレンと出会っており、その時にフリーレンが「花畑を出す魔法」を使ってくれて綺麗だと思ったのを覚えていて、それで勇者となって魔王を倒す旅を始めた時にフリーレンを仲間に誘ったのだという。つまり、「花畑を出す魔法」がフリーレンとヒンメル一行を結び付けて、その結果、魔王を倒すことが出来た。ゼーリエが「何の役にも立たない」と吐いて捨てた「花畑を出す魔法」が魔王を倒して世界を救ったのです。

これでゼーリエはフリーレンに一本取られた形となったが、それはあくまで問答の上でのことであり、「花畑の魔法」が実際に世界を救う力があったわけではなく、そんなものは単なる偶然に過ぎない。それゆえ、あくまで戦える魔法を重視するゼーリエはフリーrネンの「不合格」判定は変えず、フリーレンは不合格に終わった。続いてはフェルンだが、フリーレンは去り際にゼーリエに「ゼーリエはフェルンを不合格には出来ない」と予言する。何故なら「フェルンはゼーリエの想像を超える」からだと言い、フリーレンは「人間の時代がやって来たんだ」と言い残す。それは千年前のゼーリエとの問答のフリーレンなりに辿り着いた答えだった。エルフよりも寿命の短い人間たちがエルフよりも早い判断で築き上げてきた「人間の時代」、そこで生まれた「自分を倒すことが出来る人間の魔法使い」、それこそがフェルンなのだとフリーレンは言っているのです。

しかしゼーリエはフリーレンと入れ違いに温室に入ってきたフェルンを見て、そんな印象は抱かなかった。他の受験者と同じようん立ちすくんでゼーリエの巨大な魔力を見つけているだけのフェルンを見て、ゼーリエは凡庸な印象を受けた。しかしフェルンの表情に恐怖の感情が無いことに気付き、ゼーリエは何が見えているのかと訊ねる。するとフェルンは「揺らいでいる」と言ったのです。つまりフェルンには、レンネルでも見えていなかったゼーリエの魔力制限の際の魔力のごく僅かな揺らぎが見えているのです。そして、フェルンがそれを見えていることに気付いていたフリーレンもまたゼーリエの魔力制限に気付いていたと言えます。フェルンがゼーリエの魔力制限に気付くことが出来たのは、もともとフェルンが魔力制限のエキスパートであったからというのもあるでしょうけど、一級魔法使いの筆頭のレンネルでも気付かなかったことに気付いたわけですから、その力は間違いなく本物であり、確かにゼーリエの想像を超えていた。

それでさっきまで「人間の弟子など持つのではなかった」と後悔していたゼーリエはフェルンに「弟子になれ」と命令する。断れば不合格にするとでも言い出しそうな勢いであった。だが、あらかじめフリーレンに「何を言ってもゼーリエはフェルンを合格にする」と言われていたフェルンは「私はフリーレン様の弟子です」と言ってゼーリエの命令を拒否する。果たして合否はどうなったかというと「合格」であった。ゼーリエが私情で有望な魔法使いを落とすようなことはしないとフリーレンには分かっていたのです。

こうしてフリーレンは不合格となったがフェルンは合格して一級魔法使いとなった。これでフリーレン達は北に向かって旅立つことが出来る。目的は達成です。後は次回の最終話、デンケンやユーベルやラント、ヴィアベル達の合否判定と、1期の物語の終幕が描かれることになるでしょう。

 

 

治癒魔法の間違った使い方

第11話を観ました。

今回を含めて残り3話です。いよいよ魔王軍との戦いが始まり、カズキとスズネが黒騎士にやられて大ピンチというところで前回が終わり、それを承けての今回のエピソードとなりましたが、激アツの展開でのタイトル回収の流れとなり、まさにこのエピソードのためにここまでのエピソードがあったかと思える神回となりました。

まずカズキとスズネが倒されてしまい、黒騎士がトドメを刺そうとした直前、ウサトが飛び込んできて黒騎士にパンチを喰らわせた。これで黒騎士は顔面を思いっきり殴り飛ばされて吹っ飛んでしまい、その隙にウサトはカズキとスズネに治癒魔法を施して、黒騎士が起き上がってきて襲ってくると、ウサトはカズキとスズネを抱えて逃げ出す。この際にスズネは意識が回復していて、黒騎士の仮面が一部剥がれて、痛がってウサトに怒りを示していたのを見て、ウサトが黒騎士に一撃を喰らわせたのだということに気付く。しかし他の者が黒騎士を攻撃しても黒騎士にはダメージは与えることは出来ず、魔力によってダメージを返されていた。それなのに何故かウサトの攻撃だけは黒騎士にダメージを与えていて、ウサトにはダメージが返ってきていない。それがスズネには不思議で、ウサトに事情を聞こうとして、黒騎士が反転の魔術を使うということを伝えて、その上でウサトが何をしたのか聞こうとしたところで黒騎士が追いかけてきて、カズキとスズネの治癒を終えたウサトは他の味方たちを治癒するためには黒騎士を倒すしかないと覚悟を決めて黒騎士に戦いを挑む。

ウサトはもし反転の魔術でダメージを返されても自分に治癒魔法をかけて治せばいいと割り切って突っ込んでいくが、黒騎士を殴ってもダメージは返ってこない。それで相手の魔力切れなのかと思って攻め込んでいく。黒騎士も鎧から黒い剣を伸ばしてきてウサトを串刺しにしようとするのだが、何故かその黒い剣もウサトが触れると溶けるように消えていってしまいます。

この信じ難い事態をスズネは唖然として見守り、そこにカズキも目を覚ましてウサトが自分たちを救ってくれたことを知り、カズキが黒騎士と戦って圧倒的に優勢であることに驚く。そして同時に、ウサトがずっと治癒魔法を全身に纏いながら戦っていることに気付き驚く。そんなことをすれば、相手を治癒しながら戦っているようなものだから相手にダメージを与えられない。どうしてウサトはそんな意味不明な戦い方をしているのかと驚くカズキの言葉を聞いて、スズネはどうしてウサトの攻撃が黒騎士に有効なのか、その仕組みが理解できた。

ウサトはどういう理由かは不明だが、黒騎士が反転魔術を使うということを知る前からずっと治癒魔法を使いながら相手を攻撃していたようだ。そんなことをすれば相手を治癒しながら攻撃するのでダメージは与えられないのだが、黒騎士は自分の受けたダメージを相手に返すことで相手にダメージを与える戦士なので、ウサトからダメージを貰えないのでダメージを返すことが出来ずウサトにダメージを与えることが出来ず一方的に攻撃を受けてしまっているのです。

しかし、それならば黒騎士もまたダメージを受けていないはずなのだが黒騎士はずっと苦しんでいる。それがカズキには意味が分からないと言うが、スズネはそれは純粋にウサトの拳が与えている痛みによるものなのだと言う。ダメージは治癒魔法によって回復しても痛みは残る。ウサトのパンチはあのローズの地獄の筋トレ特訓で鍛え上げらえたものであり、殴られると凄く痛い。その痛みを間断なく与え続けらえているので黒騎士は意識朦朧でダウン寸前なのです。ダメージを全く与えなくても痛みによって意識を奪ってしまえばウサトの勝ちということになる。

問題は、そんな攻撃方法はたまたま今回は黒騎士に対して唯一有効な戦い方としてハマってはいるものの、他の相手に対しては余計な手間が増えるだけで何の意味も無い戦い方だということです。ウサトは黒騎士が反転魔法を使うということを知る前にその戦い方で黒騎士に一撃を加えてスズネ達を救っていたのだから、おそらくそんなワケの分からない戦い方をずっと続けてこの戦場を駆けてきたということになる。

つまりウサトは相手を殴って気絶させるために治癒魔法を使ってきたということになる。治癒魔法というものは本来はそんなことのために使うものではない。病人や怪我人を治癒するために使うべきものなのだ。ウサトは一体何をバカなことをしているのかとスズネは呆れたが、そのウサトの意味不明な行動のお陰で自分たちが命拾いしたこともまた紛れもない事実だった。それでスズネは呆れてしまい、思わず「なんて間違った治癒魔法の使い方なんだ!」と苦笑してしまう。

この作品、タイトルは「治癒魔法の間違った使い方」だが、ここまでのストーリーの何処を見ても「治癒魔法が間違った使い方をされている場面」を見たことがない。どの場面でも基本的に治癒魔法は相手や自分を治癒するために使われていた。それは「正しい使い方」であり、「間違った使い方」ではなかった。だからてっきり「タイトル詐欺」なのかと思っていたのですが、まさかここでこんな形で見事なタイトル回収が行われるとは予想外でした。相手を殴って気絶させるために治癒魔法を使うとは予想外で、なるほど確かにこれは治癒魔法の使い方としては間違っています。

そうしてウサトはこの「必殺」ならぬ「必生の治癒パンチ」で黒騎士をノックアウトしてしまい、黒騎士は黒い鎧が消えて正体を現しますが意外にも美少女魔族でした。これは驚きでしたが、とにかく気絶している間に縛ってしまい捕獲に成功し、部下の魔族たちは驚いて逃げていき、ウサトは味方の兵士たちの治癒をしていきました。

それでスズネが「治癒パンチ」とは何なのかとウサトに聞くと、これはローズから教えてもらったパンチなのだそうです。前回、ローズがウサトに何かとっておきの技を教えていた場面がありましたが、それがこの「治癒パンチ」だったのです。ウサトはどうしても相手を殺したくないが、それでも戦場では敵を倒さねば本来やるべき治癒活動が遂行できない場合も多々ある。そんな時にどうすればいいかという問題の解決策として、ローズはウサトに「殴りながら治せば死ぬことはなくなる」ということで「治癒魔法をまとったパンチで殴れ」という秘策を授けた。それがこの「治癒パンチ」でした。それが今回たまたま黒騎士に有効な攻撃となり、カズキやスズネを救うことが出来たのです。

そして、これがきっかけになって戦況が逆転して王国軍が優勢となり、ウサトはローズと共に後方に下がることになった。そうしてカズキやスズネの活躍もあって王国側が勝利して魔王軍は撤退していった。そしてローズはウサトに「お前が勇者を救えたから今回の戦いは勝つことが出来た」と褒めて「よくやったな」と笑顔を見せてくれる。するとウサトはこの世界に来てからのこれまでの出来事が全て報われたように思えて涙を流して喜ぶ。そしてウサトは泣きながらローズに向かって「貴方に会えて、助けになれて良かった」と言うのでした。それは5年前に死んだアウルがローズに言った言葉と同じ言葉でした。それを聞いてさすがにローズもグッときますが、「よく生きて帰ってきてくれたな」とウサトの肩を掴む。そうしてウサトは体力も魔力も尽きて眠り込み、こうしてウサトの初陣は終わったというところで今回は終わり次回に続きます。