2024冬アニメ 3月7日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2024年冬アニメのうち、3月6日深夜に録画して3月7日に視聴した作品は以下の3タイトルでした。

 

 

外科医エリーゼ

第9話を観ました。

今回はエリーゼがチャイルド家の娘であるユリエンと親交を温める話でした。大雨の中でユリエンを乗せたチャイルド家の馬車が人を轢きそうになってしまい、その相手というのがエリーゼで、エリーゼは転倒してびしょ濡れになってしまう。だが馬車の御者が馬車から落ちて骨折してしまい、エリーゼは大雨の中びしょ濡れになりながら応急処置をする。ユリエンはそれを手伝ってくれて、手にしていた傘を添え木に使うよう差し出し、ユリエンもびしょ濡れになり、2人で御者をチャイルド家の屋敷に運びます。そうしてエリーゼは帰ろうとしますが、大雨が更に酷くなり雷も鳴り出したのでユリエンは屋敷に泊まるようにと言い、エリーゼは親同士が政敵なので親交の無かったチャイルド家に泊まることになる。

そこで風呂に入れてもらい、風呂上りにユリエンと会話することになります。ユリエンとは皇帝の誕生祭にエリーゼがリンデン皇太子の事実上の婚約者であると発表されてしまって以来会っておらず、ちょっと気まずかったが、ユリエンが応急処置の手伝いがしっかり出来ていたり、免疫のことなども詳しいのでエリーゼは不思議に思い、もしや医学の勉強をしているのかと質問すると、ユリエンは恥ずかしそうにその通りだと打ち明ける。ユリエンはリンデンとエリーゼの婚約を知って生きる目標を見失ってしまい、それで自分もエリーゼのように他人に希望を与えられるようになりたいと考えて、エリーゼの真似をしてみたのだと言う。そして、エリーゼは素晴らしい才能を持っているのに比べて、ユリエンは自分には何も無いと言う。

翌朝、エリーゼは大雨に濡れたせいか高熱を出してしまい、引き続きチャイルド家に泊まることになり、ユリエンに身の回りの世話をしてらうことになり、ユリエンがとても器用で優しいことを知る。それに比べてエリーゼは自分で髪を整えることも出来ず、字も汚い。本当は不器用で何も出来ない、もともとはただ性格の悪いお嬢様でしかなかったのです。医学は前世で前々世を悔やんで必死で努力して身に着けたものであり、エリーゼのもともとの才能ではない。何も無いのは自分の方なのだとエリーゼは実感し、前々世ではそんな自分が真面目に生きていたユリエンに身勝手な想いで意地悪をしていたことを反省する。

そして風邪が治ったエリーゼはユリエンに「何も無いことで苦しく思う気持ちが自分にも分かる」と言う。そして自分は孤独と後悔しか無い絶望の中で、それでも自分に出来ることを精一杯やっただけなのだと言う。それは前世で日本人として医学を勉強した話なのだが、そう明確には言えないので抽象的な言い方となって、ユリエンはただ単にエリーゼが過去を反省して人知れず努力してきたのだと解釈し、自分がエリーゼの努力に気付かずに全てが才能のおかげであるかのように言ったことを反省して謝ります。しかしエリーゼは謝罪を求めて言ったのではなく「何も無い人の方が強くなれる」ということを経験者としてユリエンに伝えて励ましたのでした。そうしてエリーゼとユリエンは仲良くなり、ユリエンはエリーゼの晴れの舞台で自分が髪を結ってあげると約束するのでした。

 

 

魔法少女にあこがれて

第10話を観ました。

今回は前半パートは濃厚な百合セックスの話で、後半パートは怒涛のバトル展開となります。どちらも面白かったです。前半パートのロコムジカとルベルブルーメの百合セックスは規制バージョンでは画面が謎の光線だらけで真っ白になってしまいよく分からなかったので来週火曜日のあこがれバージョンで再確認しますが、おそらくブルーレイの超あこがれバージョンでないと完全なものは見れないでしょうね。ただ、規制バージョンでも十分にやりすぎ感があって面白かったです。

そして後半パートのバトル展開はいよいよ最終決戦という感じでムチャクチャ燃えましたね。この作品はエロやギャグに加えて、バトルがちゃんとしているのがまた素晴らしい。トレスマジアとの戦いの頃は凌辱メインだったのでバトルは割とヌルめだったのですが、ロード団とのバトルが始まって以降は一段ギアが上がった印象ですね。特に今回はレオパルトがカッコ良かったです。やっぱりバトル展開がアツい作品はどうしてもクール終盤になると強みを発揮してきますね。

「僕ヤバ」も「ゆび恋」も恋愛モノとしては優秀な作品なんですが、私の個人的ランキングの基準では、こういうちゃんとしたバトル作品が同じクールにあるとどうしても終盤は不利になる。今期はまたそういう作品が割と多い。「SYNDUALITY」と「ブレイバーン」と「戦国妖狐」は想定内ですが、まさかこのエロギャグ作品までバトルでしっかり終盤の話を盛り上げてくるのは想定外でした。

なお、これは「バトルシーンの作画が凄くて盛り上がる」とかいうのとはちょっと違う。だから「フリーレン」とか「メタリックルージュ」はそういうのには含まれないんですよね。ちゃんとバトル展開でストーリーを引っ張って盛り上げていることが重要なのです。結局は私の場合は大事なのはストーリーであって作画そのものではない。もちろんバトルがストーリーを盛り上げる上で作画が重要な役割を果たしているぶんには大歓迎ですけど、バトルそのものがストーリーの盛り上がりに直結していないとポイントは低いですね。そこに作画の良し悪しは関係ない。だからアクションを描くためにバトルをやってるような「呪術廻戦」なんてのは論外ということになります。

「メタリックルージュ」はそれがほとんどダメで、「フリーレン」もストーリーとバトルは別物という印象の作品。まぁそもそも原作の「フリーレン」がバトルシーン無しで成立している作品なんだから当たり前です。「SYNDUALITY」は案外それは出来ていない方なんですが、純粋にストーリーが一番面白いので悪影響はない。「戦国妖狐」もそれに近い作品です。バトルシーン自体は凄いけど、魅せているのはドラマ部分の方です。そうなると一番バトル展開でストーリーを盛り上げているのが「ブレイバーン」で、次いでちゃんと出来ているのが意外にこの「魔法少女にあこがれて」なんですよね。2作品ともタイプは真逆ですが「戦い」が話のメインですからね。「SYNDUALITY」と「戦国妖狐」は旅と冒険の人間ドラマであって「戦い」はサブ要素なのであり、ガチガチのバトル作品は「ブレイバーン」と「魔法少女にあこがれて」の2作品なのです。

ただ今回の「魔法少女にあこがれて」のエピソードは、バトルに関しては盛り上がってきたところで終わっており、ベーゼVSロードエノルメ、レオパルトVSシスタギガントのそれぞれのバトルが決着する真の本番は次回という印象です。このぐらいの内容では先行する「SYNDUALITY」や「ブレイバーン」に追いつくにはまだ弱い。それはたまや迅火の覚醒が次回に持ち越しとなった下記の「戦国妖狐」も同じで、この2作品が「ブレイバーン」や「SYNDUALITY」に追いつく可能性が出てくるのは次回以降ということになりますが、その間に更に上位2作品が引き離してくるかもしれませんね。

一方で「魔法少女にあこがれて」にはエロという大きな武器があり、それに関しては今回はロコムジカとルベルブルーメの濃厚レズセックス場面が描かれました。まず前半パートのその部分ですが、今回のエピソードのメインはバトルの後半パートよりもむしろこっちの方といえます。まず基本的に映像的なインパクトは毎度のことですが凄かったです。そこは実際に大いに楽しませてもらいましたが、ここではそういうインパクト勝負の部分であまり評価したくなくて、あくまで話の中身で評価したい。ただ、今回の場合は、ここはいつもの変態プレイの話じゃなくって百合恋の話なんですよね。

百合とか薔薇とか、同性愛というのは変態みたいに思われてますけど、実際は別に変態じゃないんですよね。いや、行為自体は確かにちょっとアブノーマルではあるんですけど、基本的にはちゃんと相手からの愛を求める純愛なんですよね。鞭打たれて喜ぶアズールよりはよっぽどノーマルです。ただ問題は、私は変態の気持ちは分かるけど、百合恋の気持ちはイマイチよく分からないということです。

だから百合アニメはそもそも苦手分野で、ちょっと敬遠しがちなのですが、ただ今回の前半パートは、あくまでこの作品は「変態的な性癖」がテーマの作品ですから、ストレートな百合恋の話なのではなくて「百合恋を変態行為として描いたエピソード」だといえます。百合そのものを変態行為だと見なしている人には意味が分からないと思いますが、本来は変態行為ではない百合恋を変態行為として描くことによって生じる可笑しさが描かれているのです。そういう切り口で描かれていることによって、私のようなガチ百合が苦手な人間でも楽しめるすれ違いコメディのエピソードになっていました。

まず冒頭、ロコムジカこと阿古屋真珠とルベルブルーメこと姉母ネモの出会いの回想場面が描かれます。それは幼稚園の頃で、ネモは大人しい性格で、友達が出来ず1人でいたようです。それで幼稚園でも1人で影遊びなんかをしていたようです。庭に出来た影の中に入って、影から出たらサメに食べられるとかルールを決めて、ポツンと1人で過ごしたりしていた。そうしているうちに、自分は影の中でしか生きられない暗い人間だと思うようになっていったのでしょう。

実際にネモは暗い性格なのだと思います。前回も真珠ともずっと口喧嘩していましたが、あれも全部最初はネモが真珠に対して悪口を言ったことが発端となっていました。ワザとやっているのかとも思っていましたが、今回の内容を見た限りではそういうことではないようで、自然にああいう悪態をついてしまうようです。それはおそらく基本的に暗い性格なので、ついついネガティブな言葉が出てしまうということなのでしょう。常にネガティブな発想になるので友達も出来ず、友達が出来ても自然と離れていってしまう、そういう性格なのでしょう。そんな自分は1人で影と遊んでいるしかないのだと子供の頃から思っていて、「影」というものに親近感を持っていたので、エノルミータの一員となった後も影を使う能力を発現させたのでしょう。

ところがそういう暗い影のような性格のネモに幼稚園の時に声をかけてきたのが真珠でした。真珠は幼稚園の頃からアイドルに憧れていて、他の子達にも唄を聴かせていたのだが下手なのでみんな真珠の唄を聴きたがらず、すぐに他の遊びをすると言って逃げていってしまった。それで不満に思った真珠は自分の唄を聴いてくれる子を探していて、1人でヒマそうにしているネモに声をかけたのです。そうして真珠はネモに唄を聴かせて、ネモはやはり真珠の唄は下手だと思い、下手だと指摘もしましたけど、それでも他の子のように真珠から逃げはしなかった。1人で居る自分に初めて声をかけてくれたのが真珠であったからであり、我慢して下手な唄を聴いている限りは真珠はネモの傍に居てくれたからです。

そうしてネモは初めて真珠という友達が出来て、真珠も自分の唄を聴いてくれるのがネモだけだったので、ネモと2人で遊ぶことも多くなり、真珠によってネモは初めて影から出て日の当たる場所に立つことが出来た。だからネモは真珠に感謝しており、小学生を経て中学生になってもまだアイドルを目指している真珠の夢を応援したいと思って、文句を言いながらもよく手伝ったりしていた。ネモは暗い性格は変わることはなく、ネガティブな発言をして真珠と喧嘩することも多々あったが、それでも真珠がネモの傍に居続けてくれたのはネモが真珠がアイドルになることを応援しているから。そのようにネモは思っていました。

それでネモは真珠の唄を聴き続けていましたが、真珠の唄は一向に上手にならず、アイドルになるのは絶望的に思えた。しかしネモはむしろその方が真珠と2人きりで真珠を独占出来て都合が良いとも思っていた。真珠がアイドルになって人気者になってしまったらネモは真珠と2人きりでいられなくなってしまう。逆に真珠がアイドルになることを諦めてしまったら、ただ1人だけ真珠のアイドルになる夢を応援しているネモと一緒にいる必要が無くなってしまう。だからネモにとっては、真珠が唄が下手なままでアイドルを目指し続けるのが最も都合が良かった。

つまりネモは真珠の幸せを望んでいたのではなく、真珠を独占したかっただけであった。自分の中にそんな歪んだネガティブな感情があることにネモは気付いていたが、それでも同時に自分を影の世界から救ってくれた真珠への感謝の気持ちや、真珠を大切に想う友情だって存在しているのだと自分に言い聞かせ、本気で真珠のアイドルを目指す夢を応援もしていた。そう自分に言い聞かせることでネモは自分が真珠の傍にいる資格があると思えていたのです。

ところがある日、オーディション用の衣装を見に行く日に寝坊している真珠を起こそうとしてベッドで眠っている真珠の身体に触れた時、ネモは欲情してしまい、自分が真珠に対して恋愛感情を抱いており、性欲を抱いていることに気付いてしまった。しかし、それはネモにとって、あってはならないことであった。もともと真珠を心の中で裏切っているという負い目を秘かに抱いていたネモは、あくまで自分は真珠に対して友情を抱いていて、真珠からの友情に応えているのだと思うことで心のバランスを取っていた。だがネモの真珠に対して抱く感情が友情ではなく性欲であったとするなら話は全く違ってくる。真珠はそんなことは全く望んでいないのだから、ネモは真珠の友情を裏切って、真珠からの友情を利用して真珠を手に入れようとしているだけということになる。そして、そのために真珠がアイドルになることを応援しているフリをしているということになる。そんなことはネモには許容できなかった。子供の頃に自分を影の世界から救ってくれた真珠に対してそんな仕打ちをして良いはずがなかった。

だからネモは自分のそういう本心を封印してしまい、自分自身も勘違いだったのだと思うようにして忘れてしまった。そして真珠が「世界征服に協力すればアイドルにしてやる」というロードエノルメの誘いに乗ってエノルミータに入りロコムジカになった際にも、ネモ自身は世界征服とか全くどうでもよかったが、真珠と一緒にいたいという想いでエノルミータに入りルベルブルーメとなった。そして真珠とコンビで各地の魔法少女狩りをしながら、真珠がアイドルとして地方公演をしたいと言えば、影で人を操る能力を使って真珠に内緒で観客を集めたりしていた。そんなことをしても意味が無いとは分かっていたが、観客が集まらないと真珠が悲しんで泣いたりするので、真珠の涙を見たくないと思ってバカなことだと分かっていてもネモはそんなことを繰り返していたのです。そうしてベーゼ達と戦いネモと真珠は敗れてしまい、真珠がいきなりロード団を裏切ってベーゼ達の仲間になるとか言い出してネモは驚いたのでした。

そうして翌日、改めてベーゼに呼び出されたネモと真珠はどういう意図でベーゼ達の味方になるつもりなのかと質される。真珠たちがもう敵対する意思は無く正体も明かしているので、ベーゼもうてなとしての正体を明かしており、キウイもこりすも正体を明かしている。そうやって信頼関係を築いた上であらためて本音を明かしてもらおうというところです。そこでうてなから真意を聞かれた真珠は、まずもともとロードエノルメが気に入らなかったこと、うてな達が真珠の唄を聴いて褒めてくれたことを理由として挙げた。しかも真珠はうてな達を自分のファンクラブに入れてやるとか言い出して、うてなにはどうでもいい話ではあったが、ネモは心穏やかではない。

更に真珠はロードエノルメとシスタギガントと戦うにはうてな達では力不足だから手を貸したいのだと言う。エノルミータの構成員は身体に刻まれた星の数で強さが決まるらしいというのは何度も言及されてきたが、ここで整理すると、ロードエノルメは星4つでシスタギガントは星3つでしかもかなり強力らしい。それに対してベーゼは星2つで、レオパルトは星無し、ネロアリスは星3つだが不安定だという。それではどう見てもベーゼ達が劣勢なので、それぞれが星3つのロコムジカとルベルブルーメが手助けしてやろうということです。要するにバラバラに分かれていては各個撃破されるだけだから、弱い者同士手を組もうという話みたいです。まぁ乗り気になって提案してるのは真珠だけであり、ネモは不服そうで文句ばかり言ってますが、これはこの2人のいつものノリであり、結局はネモは文句を言いつつ真珠のやることについてくるのですけど。

これを提案されたうてなは、2人に魔法少女狩りのことについて質問し、2人が魔法少女狩りについて全く反省していないことを確認すると、2人に変身アイテムを返して変身させて、その上で手製のドールハウスに2人を閉じ込めてしまった。うてなはあらかじめドールハウスを作って持参してきていたのであり、最初から2人を閉じ込めるつもりであったのですが、それは「禊」のためだと言う。真珠から「仲間になりたい」と提案された後、うてなは2人を仲間に加える前に、うてなにとって何より大事な魔法少女を狩った罪を償わせなければいけないと考えて、わざわざ2人を閉じ込めるためのドールハウスを作ったのです。だからこうしてドールハウスを徹夜で作って翌日に改めて会ったわけです。

このドールハウスは通常のネロアリスのドールハウスではこの2人を閉じ込めるには完全ではないと考えて、うてなの考案でロコムジカの音波攻撃を遮断するための完全防音仕様で、ベーゼの魔力で内部の音響や照明を自在に操ることで2人の攻撃を封じられる仕掛けになっており、そうして作り上げたドールハウスにネロアリスの魔力を込めて相手を閉じ込めることが出来るようにしたものでした。こうして作られたドールハウス内部には大型モニターが設置してあり、そこには「マジアベーゼが満足するまで出られない部屋」と文字が出ていた。そしてモニターに映し出されたベーゼは閉じ込められた2人に「仲良くなってほしい」と要求するのでした。そして部屋の中にはベッドが置いてあった。

つまりベーゼは2人に百合プレイを要求しているのです。「禊」とか言ってますけど、魔法少女を狩られて不満に思ったベーゼは、その埋め合わせに2人の百合プレイを見て愉しもうとしているだけのことでした。わざわざこんなドールハウスを徹夜で作ってくるぐらいですから、最初から2人に百合プレイを迫る気満々であり、2人が魔法少女狩りを反省していない方がむしろベーゼには好都合だったのでしょう。まぁハナから反省するぐらいなら魔法少女狩りなんてやらないでしょうし、ベーゼが魔法少女好きだと知らない2人が反省しているフリをするはずもないことも見越していたのでしょうけど。

ただ、ベーゼも2人が嫌がるプレイを強要するつもりは無い。ノンケ同士に無理矢理にレズプレイなどさせても興ざめだとベーゼは思っていました。やはり愛し合う百合を見てこそ愉しめる。この2人ならばそれが見れるとベーゼは分かっていたのです。この2人が口喧嘩ばかりしながら心の奥底では深い絆で結ばれていることは戦いの中でベーゼは理解していました。だからルベルブルーメを人質にとる作戦でロコムジカに勝利出来たのです。だが、この2人は別にベタベタした百合カップルというわけでもなく、お互いの愛情に無自覚なのだということも分かった。

それこそがベーゼの望むものであったのです。既に何度も身体を重ねた百合カップルの濃厚プレイなど見てもそんなに興奮はしない。嫌がるノンケ同士に無理強いしても興奮しない。やはり一番興奮するのは、2人が戸惑いつつも初めて相手に身体を許し合い百合の愛に目覚める瞬間を見ることでした。それを困惑して恥じらう2人に半ば強制的に追い込んでやらせていくのが自分であるという征服感も堪らない。そんなふうにベーゼは考えており、その至福が得られれば魔法少女狩りのことは忘れて心から喜んで2人を仲間に迎えられると思ったのでした。

だが真珠はネモと仲良くしたくないと言う。ネモが自分のステージで観客を操って偽物のファンを動員していたことでまだ怒っていたのです。それに対してネモも「むしろ感謝してほしいぐらいだ」とか悪態をつくのでまた口論になる。それを聞いてベーゼは真珠に「もう素晴らしい唄を歌えるようになったんですから怒らなくていいでしょう」となだめる。前回の戦いで真珠は音痴を克服出来たので、もうこれからは実力でファンを集めることが出来るようになったのです。だからもうネモの能力で観客を操ったりする必要も無くなった。ファンだってネモだけじゃなくて、これからはもっと増やすことも出来る。

それに気付いた真珠は上機嫌になり、調子に乗ってネモに対して「もうお払い箱ね」と言ってからかう。するとネモは「ふざけんな!」とキレて涙を流す。「お払い箱」と言われて、今まで何のために自分が真珠のためにこんな苦労をしてきたのかと口惜しくなったのです。いや、「何のために」なのかはネモ自身がよく分かっていました。全て自分のためだったのです。真珠のためにやったのではなく、自分が真珠を独占したくて、真珠が偽物のアイドルであることを望んでいただけだった。真珠の本当の笑顔を知っているのは自分だけだと思いたかった。だから真珠を笑顔にしたくて偽物の観客を用意したりしていた。そんな自分の醜い本当の気持ちを真珠に言えるはずもなく、ネモはただただ自分の醜さにムカついて、こんな自分が真珠に嫌われるのは当然だと思い、悔しくて泣いていた。

しかし、真珠はネモが「ふざけんな!」「今まであたしのやってきたことは何だったんだ!」「誰も聞いてくれなかったらお前泣くだろ!」と言って泣いているのを見て、ネモが自分のために汚れ役をやってくれていたのだと思った。それでネモに対する怒りが消えて、「お払い箱」なんて酷いことを言ったことを謝る。そしてネモが自分にとって大切な存在だということを改めて実感する。そうして2人は仲直りしましたが、そんな2人にベーゼは仲直りのキスをするよう要求する。

ネモは驚いて、そんなことは真珠が嫌がるはずだと思い拒絶するのだが、意外にも真珠はキスをすると言ってネモに迫ってくる。ネモは狼狽えるが、真珠は「キスをしなければベーゼは満足せずこの部屋からずっと出られないから仕方ない」と言う。それでネモはあくまで真珠が恋愛感情抜きでこの部屋から出るために仕方なくキスをするのだと思い、申し訳ない気持ちになる。自分も真珠に対して恋愛感情が無いのならお互いが「部屋を出るために変態プレイを強要された」と割り切ることは出来る。だがネモにとっては真珠とのキスは願っても叶えられることはないと思っていた悦びだった。自分だけがそんな至福を感じて、真珠は苦痛にしか思っていないのだとしたらあまりにも真珠に申し訳ない。

それでネモは「嫌じゃないのかよ?」と真珠に確かめるが、真珠は「嫌なら死んでもしないわよ」と答える。それは真珠にとってネモとのキスは決して嫌なことではなく、真珠も心の奥底ではネモを特別な相手として意識しているという意味であった。そうした自分の感情に初めて真珠は気付いた。また真珠はネモが自分とのキスを嫌がってはいないのだと気付いて嬉しくも思った。そうすると真珠はネモが急に愛おしく思えてきた。

だが、ネモはあくまで真珠が部屋を出るために割り切ってそんなことを言っているのだと思った。だから本気で「真珠も私のことが好きなんだ」と喜ぶことは出来ず、真珠は本心では自分とのキスを嫌がっているはずだと思った。だが、こうまで言って真珠がキスをして2人で部屋を出るために頑張ってくれようとしているのだから、この際自分も肚を括ろうとネモは決意した。

それは単にキスをするという決意ではなく、嫌がりながらも自分とキスしようとしている真珠の想いに応えるために「決してこの場を自分の想いを遂げる場にはしない」という決意だった。この場では真珠に対する想いは封印し、あくまでベーゼに変態プレイを強要されて嫌だけど仕方なくキスさせられているという形にしようと思った。そうすることで真珠と心を1つにすることが出来て、愛する真珠と共に居る資格を得ることが出来る。決してここで真珠を裏切ってはいけない。ネモはそう思った。

それでネモは棒立ちになって真珠からのキスを受け入れる形となった。一方で真珠は急にネモが可愛いという気持ちが湧き上がってきて積極的にネモの唇をむさぼる形となり、ずっと真珠の身体に欲情してきたネモの方が受けに回り、初めてネモに欲情した真珠が攻めに回るという倒錯した形となったのでした。更にベーゼがキスだけではなくそれ以上の行為を要求し、ネモは嫌がりますが真珠は積極的に応じて、この倒錯した関係性のまま2人はベッドで裸になって交わることになる。

そうしていると、ネモは真珠に身体を弄ばれながら必死で自分の想いを抑えようとしても、真珠に身体を愛されるとどうしても悦びが突き上げてきて、真珠に申し訳ないと思ってそれを必死に隠そうとする。一方で真珠は初めて自分の中から湧き上がってきたネモへの想いの正体が分からず戸惑いながら、その想いの暴走を止める術すら分からず感情に任せてネモの身体をむさぼる。この何とも初々しい2人の倒錯したセックスを堪能して、ベーゼはお肌ツヤツヤになり大満足し、2人を部屋から解放した。そして真珠もネモも、あくまで相手は部屋を出るために百合プレイに応じてくれたのであり、自分のことを恋愛対象としているわけではないと思いつつも、互いのことをこれまで以上に意識するようになったのでした。

一方、ロコムジカとルベルブルーメが裏切ったと知ったロードエノルメはそんなことは些事に過ぎないと笑い飛ばして世界征服の覇業を開始すると宣言して進軍を開始する。そうしてロードエノルメの魔力で生み出した魔物の大群が町を襲い、ロード団の仕業と判断したうてな達はロード団との決着をつけるため変身して立ち向かう。ロコムジカとルベルブルーメも加わって5人で魔物と戦うが、魔物たちはもともとエノルミータを誘き出すために暴れていたものであり、一斉に襲い掛かってきて大激戦となる。魔物たちは個々の戦闘力は大したことはなかったが、倒しても何度でも復活してきてキリが無く、徐々に5人は劣勢となっていく。ロードエノルメの魔物は彼女の魔力そのものから作られており、ロードエノルメ自身を倒さなければ無限に復活してくるのだそうです。そうして5人は魔物の群れに呑み込まれてしまい絶体絶命の窮地となり、更にそこにシスタギガントが巨大化して現れてトドメを刺そうとしてくる。

そこでレオパルトが火器で魔物をぶっ飛ばして5人は一旦脱出に成功し、レオパルトは自分たちにこの場を任せてロードエノルメを倒しに行くようにとベーゼに指示する。ベーゼは他の皆を心配するが、レオパルトは「たまにはあたしもいいとこ見せたいんだよね」と笑顔で言うのでベーゼはレオパルトの気持ちを汲んでロードエノルメと決着をつけに行くことを決意し、ヴェナリータと共にナハトベースに向かうことにした。その別れ際、レオパルトはベーゼに「この戦いが終わったらホテルに行こうね」と、まるで死亡フラグみたいなことを言う。それだけのレオパルトの覚悟に応えてベーゼは「分かった」と普段は決して言わないようなことを言ってその場を離れる。

するとレオパルトは他の3人に魔物たちの相手をするようにと指示し、自分がシスタギガントを倒すと言う。皆は星無しのレオパルトが星3つのシスタギガントに勝てるはずがないと心配し、特にネロアリスは心配して止めようとしますが、レオパルトは「大丈夫だ」と応え「考え無しはもう止めだって言っただろ」と言う。それで何か考えがあるのだろうと思い、ネロアリスもレオパルトに好きなようにさせることにして、自分たちは魔物との戦いに専念します。

そうしてレオパルトとシスタギガントとの戦いが始まりますが、レオパルトの火器攻撃はシスタギガントには通用せず、レオパルトはシスタギガントに捕まって放り投げられ、更に巨体のボディプレスを喰らってしまう。これで勝負あったかに思われましたが、レオパルトは仲間から見えない位置に移動したことを確認すると突然に服を脱ぎ去り裸になる。するとレオパルトの胸には星が3つ刻まれており、レオパルトは「あたしの本気の力見せてやるよ!」と叫んで、別形態に変化してシスタギガントに襲い掛かっていく。

どうやらレオパルトは本当は星3つだったのを仲間には隠していたみたいです。「考え無し」ではないと言っていたのは、その封印を解くことを考えていたからだったんですね。このようにレオパルトは星3つであることを隠していて、だから仲間と一緒に戦っている時には星1つの形態のままで戦っており、イマイチの強さで戦いの足を引っ張ったりしていた。そのことをロコムジカ達にバカにされたり、ヴェナリータにこのままでは身の振り方を考えてもらうと言われたりしても、レオパルトは自分が本当は星3つだということを明かそうとしなかった。その理由は今回は明言されなかったが、次回明かされるのでしょう。おそらくはベーゼに守ってもらえる存在でいたいとか、そんなところなんでしょうけど。こうしてレオパルトとシスタギガントの戦いが佳境に突入する一方で、ナハトベースにはロードエノルメと決着をつけるべくベーゼが到着したというところで今回は終わり次回に続きます。

 

 

戦国妖狐 世直し姉弟編

第9話を観ました。

今回は修行回のような内容で、しかも前後編の前編でしたので次回も修行回なのでしょう。そうして今回と次回の修行回の後、残り3話が最終決戦ということになりそうです。ただ修行回といっても新情報がかなり多かったし、物語の核心に踏み込む内容もあり、更に修行と並行して次回は千夜に関するドラマも描かれそうなので、充実した内容の修行回であったと思います。相変わらずハイレベルな作品でありますが、クール終盤に入ってきて他の上位作品もハイレベルな内容になってきていますから、更に上位に食い込んでいくには今回ではまだ力が足りなかったという印象です、前回や前々回がかなり濃い内容でしたから、今回も良かったんでけど、やはり前後編の前編ですからちょっと力不足で、次回の後編に期待ですね。

まず今回、たまと迅火と真介を匿ってくれた山の神が、自分がたま達に味方する目的を話してくれます。基本的には山の神も闇ですから断怪衆とは敵対しており、だから断怪衆と敵対するたま達は味方ということなのですが、山の神にはもっと具体的な目的もあり、それは泰山という闇を断怪衆から取り戻すことだそうです。泰山は山の神の仲間なのですが、今は断怪衆に囚われて洗脳されて手先にされている。その泰山があの迅火が断怪衆の総本山に乗り込んだ時に吹っ飛ばされた城の化け物だったのです。どうやって泰山を奪還するかというと、やり方はシンプルで、思いっきりぶん殴れば目が覚めるらしい。ただ、あの巨大な城をぶん殴るなんてたま達には出来ないので、それは山の神がやるらしい。しかし断怪衆の結界のせいで闇である山の神には泰山の居場所が分からないようにされているらしいので、たま達が道案内する必要がある。

それが山の神がたま達に加勢する見返りということになる。たま達は山の神を泰山のもとに案内する見返りに山の神から貴重な情報を提供してもらい、強くなるための修行をつけてもらうこととなった。そして、その時間を稼ぐために山の神はたま達を追ってきた神雲と千夜の足止めをしてくれた。前回のラストで千夜が倒した大天狗は実は大量の鴉の闇が化けたものであり、神雲と千夜は鴉たちによって迷いの術をかけられてしまい、森の中で迷い続けることとなってしまう。その術を破るために神雲は瞑想しますが、その精神統一を邪魔するために山の神は森に住む闇たちに命じて、タヌキが全裸の女に化けて現れるとか、色々と神雲の気が散るようなことを仕掛けて、なかなか神雲たちがたま達の居る洞窟に辿り着けないようにした。

そうして山の神はたま達に断怪衆に関する情報を教えるが、断怪衆には3つの大戦力があるという。そのうち1つが泰山であり、1つは竜の霊力改造人間である神雲で、残る1つが「くずのは」という妖狐だそうだ。この「くずのは」という名を聞いてたまは驚愕します。実はくずのははたまの母親らしい。ただ、くずのはは闇であり、断怪衆にとっては討伐対象であるはずであり、断怪衆そのものがくずのはと手を組んでいるわけではないし、泰山のように洗脳しているわけでなく、火岩や蒼岩のように霊力改造人間の贄となったわけでもない。

そこには断怪衆の僧正であり霊力改造人間を作り出している責任者の野禅が絡んでいる。野禅はもともと商人の子であり、霊力があったので断怪衆の僧となり、呪具や術の研究を好みあまり前線で戦うタイプではなかったようで、そうして研究を続けて僧正の地位に昇ったようです。野禅が神雲や道錬と昔馴染みみたいであったのも、同郷というわけではなく、断怪衆に入ってから付き合いが長いということなのでしょう。

この野禅がまだ若い頃、強力な闇の討伐に加わり、その討伐対象が妖狐のくずのはだった。だが、野禅とくずのはは相思相愛となり、野禅はくずのはと手を組み、精霊転化でくずのはの力を借りて精霊態となった野禅は仲間である断怪衆の討伐隊を皆殺しにして、その上でくずのはは討伐したという嘘の報告を行い、断怪衆に所属しながら秘かにくずのはを匿ったらしい。だから野禅の傍にはくずのはが居るのであり、野禅と戦うということはくずのはと戦うことになり、そしてくずのはの力で精霊転化した野禅と戦わねばならないということを意味する。

迅火の師匠である黒月斎の秘術である精霊転化を野禅も使えるというのは意外な話であったが、野禅は黒月斎のことを知っていたようであり、何らかの繋がりがあったのでしょう。だから精霊転化も使えるようになっていたとしても不思議ではない。こうなると迅火は同じ精霊転化を使う野禅と最終的には戦う羽目となり、しかも野禅の精霊転化の力の源であるくずのははたまの母親であり、たまよりも強力な闇である可能性が高い。そうなると、たまがくずのはを超える力を身に付けねば迅火は劣勢の戦いを強いられることになりそうです。

更に驚くべきことに、野禅はずっと「闇を人にする研究」をしているらしい。もしかしたら、くずのはを人間にしようとしているのかもしれない。くずのは自身がそれを望んでいるのかもしれない。そのあたり詳細は不明だが、山の神の言うには、霊力改造人間というのはその研究の副産物らしい。これは何とも興味深い話で、闇を人にするための研究の副産物として生まれた霊力改造人間の資料を、人から闇になろうとして迅火が手に入れようとしているのです。何とも皮肉な話といえます。

何にしても霊力改造人間というのはたまたま副産物として生まれたものだったのであり、それを野禅は面白がって断怪衆の戦力として利用しようと思い付き、そのために人間や闇の命を玩具のように扱ったのです。そして、それをくずのはも承知の上で協力している可能性が高い。そうした事実を突きつけられて、たまも迅火も真介も怒りを覚えて、やはり野禅とくずのはが霊力改造人間の研究を止めずに自分たちに立ち塞がるのならば倒さねばならないと決意する。

その決意を受けて、神雲たちを足止めしている間に山の神はたまと迅火と真介の3人を鍛えると言う。まず迅火の「妖精眼」というものの封印を解放した上で霊力を向上させるという。そして全員の意識の緒を緩めるという。意識の緒を緩めるというのは、己の運命を作る力なのだという。たとえ相手が強くても自分の力に限界は無いことを気付かせることみたいです。要するに、相手が強いという常識に囚われて自分の力では勝てないという思い込みを解除して、限界を超えた強さを身に着けるということみたいですね。発想の転換によって力の限界を超えるということであり、普通の肉体の力ではそう短期間で変わるような話ではないですが、これは霊力の話ですから、根本的に発想の限界を超えることで、同時に意識のステージが上がって霊力も限界を超えるというのはあり得る話です。ただ、これもそう簡単に出来ることではない。いくら何でも神雲たちを足止めしている間にそんなことは無理だろうと普通は思うところだが、山の神は洞窟内の時空を弄って、ちょっとした「精神と時の部屋」みたいな状態を作って、次の夜明けまでは外の世界よりも長い時間を使って3人が修行出来るようにした。

そうして気が付くと、たまは広い池の真ん中の石の上に立たされており、術を使って水の上を歩いて脱出せよという課題であるということが推察出来た。一方で真介は断崖に囲まれた荒野に立たされており、唯一の出口は大きな岩で塞がれていた。これはその岩を切り開き外に出るようにという課題だと思われた。そして迅火は広い平原に立たされており、そこに現れた山の神は迅火に侍女のりんずという少女と戦うよう指示する。りんずは人間の少女で山に捨てられていたのを山の神が拾って育てたようだが、さすがに山の神の弟子だけあって非常に強くて、迅火は苦戦する。それで迅火は強敵と戦うことで強くなる修行なのかと考えるが、りんずに斬り落とされた腕が、斬り落とされたはずが元に戻っていたりするので困惑する。こうして戦っていること自体が現実ではなくて山の神の幻術なのかとも思ったが、幻術で戦わされたところで鍛えられるわけがない。これは一体何をやらされているのだろうかと迅火は戸惑います。

真介の方にもたまの方にも山の神は分身体を送って2人が課題にどう取り組むのか観察していたが、真介は岩を荒吹の風の術で斬ろうとしたが岩はビクともせず、仕方なく普通に荒吹の刀身を叩きつけてみたが、やはり岩はビクともしなかった。たまの方は精神を集中させて水の上を歩いていこうとしたが、山の神の分身体が笑わせたりして邪魔してきて失敗を繰り返す。一方で、森の中では瞑想の邪魔ばかりされてキリがないと思った神雲は、千夜に単独で行動して迅火を見つけ出して殺すよう命じる。千夜はどうやら闇を千体も同時移植した特別な霊力改造人間だそうで、千夜ならば迷いの術を破ることが出来るのではないかと神雲は考えたようです。それで千夜は森の中を進みますが、途中で出会った小さな闇から命乞いされて差し出された玩具に興味を持ってしまう。やはり特別製の霊力改造人間で人の心など無いように見えても本質は子供のままのようです。

そうして迅火の方はりんずと戦い続けながら、山の神から「妖精眼」というものについて説明を聞くことになる。迅火は「妖精眼」という言葉自体を聞いたことがなかったが、「妖精眼」は「特殊能力と強い霊力を持った眼」なのだそうで、迅火は生まれつきその「妖精眼」を持って生まれてきたらしい。ただ、その能力は生まれつき封印されているらしい。

ここで重要なことは「妖精眼」を持つ者は必ず双子で産まれてくるのだそうだ。そして双子が揃っていると悪い闇を引き寄せるのだそうで、それゆえ双子は引き離されて育てられる。だから迅火が産まれた時、「妖精眼」の持ち主であるのを見破った黒月斎が山戸家に助言して、双子の兄は山戸家に残して、双子の弟である迅火を自分が引き取って弟子として育てたのです。黒月斎ともともと親交のあった山の神は黒月斎から聞いてそのことを知っていたので今回こうして迅火に真相を伝えたのです。更に付け加えると、妖精眼の持ち主である双子は命を共有しており、片方が死ぬともう片方も死ぬのだそうだ。つまり、自分は無事に生きていても遠く離れた地に居る双子の片割れが死ぬと自分も突然命を奪われるのだ。なんとも理不尽な定めといえます。

迅火にとっては何とも衝撃的な真実であるが、迅火は実はもともとこうした事実のうちの幾らかは子供の頃から知っていた。知っていたのは自分が本当は山戸家の子であり、双子の兄がいるということ。それで迅火はこっそり山戸家を覗きに行って父や兄の様子を見たこともある。そうして見た兄はとても幸せそうに見えた。裕福な家で実の父親に可愛がられて甘やかされていた。それに比べて自分はいつも他人の黒月斎に厳しい修行を強いられて、貧しく辛い生活だった。どうして同じ家に同時に生まれたのに自分だけがこんなに不幸なのだと迅火は絶望して、もう人間などやめていっそ闇になってしまいたいと思った。迅火が闇になりたいと思うようになった真の理由はこういうことだったのです。

迅火は本当にずっと自分だけがこんな理不尽な目に遭う理由が分からず、ずっと親や黒月斎や兄のことを恨んで生きてきた。だが、こうして山の神から真相を聞き、親や黒月斎が自分を憎くて理不尽な目に遭わせたのではないということが分かった。そのまま山戸家に留めておいたら悪い闇がやって来てもっと不幸なことになっていただろう。だから、むしろ親や黒月斎は自分を守るために山戸家から外に出したのだということは分かった。

だが、それが分かったことによって迅火はますます救いの無い絶望感に襲われることになった。これまでは親や黒月斎を恨むことで、全てを親と黒月斎のせいにすることで心が救われているところがあったのです。だが親や黒月斎が悪人ではなかったと分かったことによって、どうして双子のうち兄ではなく自分だけが不幸な方の運命を背負わされてしまったのだろうかという想いが更に膨れ上がってしまった。それは完全に運だけの話だった。誰も悪意など無く、産まれたばかりの2人の双子に差など何も無く、本当にたまたま選ばれたのが迅火の方だったのです。生まれついて不幸な運命だったとしか言いようがない。それで真相を知って余計に迅火は絶望してしまい、ひたすら自分の不幸を呪った。

そもそも山の神がこんな真相をいきなり迅火に話したのは、このように迅火に「自分は生まれつき不幸だ」と思わせるためであった。だが山の神は「妖精眼」の封印の解放をすると言っていたのだから、これは封印の解放のための準備なのだと思われる。迅火がもともと自分が山戸家の生まれであり双子の片割れであることを知っていて双子の兄の幸せそうな姿を見たことがあるということは山の神にとっては想定外であったようだが、結局のところ迅火は山の神の言葉によって「自分は生まれつき不幸だ」と深く絶望した。だから山の神の狙い通りに事は運んでいるといえます。

そうして山の神は迅火に「君は不幸だ」と告げ、これまでの不幸ばかりの半生を思い出してみるようにと嘲笑う。迅火はそれを聞き、自分の不幸を思い出していく。だが不幸な中でも楽しいこともあったとも思えた。黒月斎のところでは闇と友達になったりした。その闇も殺されて辛かった。そして黒月斎が死んだ後、たまと出会い、真介と出会い、灼岩と出会った。そして灼岩が死んでやはり辛かった。しかし灼岩が命懸けで守った双子が産まれて迅火は涙を流して喜んだ。だが同時に自分と兄のことを思い出して悲しくもあった。

そうして考えてみると、やはり辛いことの方が多いように思えた。確かに自分は不幸なのだとも思えた。しかし、本当にそうなのだろうかと迅火は思った。自分が辛いと思った時というのは、その前に幸せだと思っていたから、その幸せが失われたことが辛かったからなのではないか。闇の友が殺された時も、灼岩が死んだ時もそうであった。自分はその前が楽しかったのだ。そう考えたら、日々の細かな出来事で辛さを感じる時というのは、幸せでないからそう思えるからだということが分かった。幸せを知っているからこそ人間は不幸を感じるのだ。つまり、不幸に思うことの多い者は多くの幸福を知っているのだ。自分の人生は確かに辛いことばかりだった。だが、それは自分が不幸ではなかったから辛いと思っていたということなのだということに迅火は気付いた。つまり自分の人生は本当は幸福だったのだと気付いた、その瞬間、迅火の視界に異常が生じた。目の前に居る山の神が周囲に奇妙な光を纏っているのが見えたのだ。

山の神は「そうだよ、幸か不幸か決められるのは君だけだ」と言って迅火の到達した結論を正解だと認め、迅火が試練をクリアしたことを教える。「封印を解くカギは自らの居場所や存在を自分で赦すこと」だと山の神は言う。つまり、山の神がわざわざ妖精眼に関する真相を伝えて迅火を「自分は生まれつき不幸だ」と思わせた理由は、それを乗り越えて自分を肯定することが妖精眼の封印を解除する条件だったからなのです。そうして迅火は条件をクリアして妖精眼の能力に覚醒した。そうすると、りんずの身体の周囲にもオーラのような光が見えて、それらを見ると、りんずの攻撃の中に見せかけだけの攻撃が混じっていることも分かった。さっき腕を斬り落とされたように見えたのもその類の術だったのだと理解した迅火は、そうした攻撃は避ける必要が無いと見切ることが出来るようになった。そして、自分の身体にも同じような光が覆っているのが分かり、どうやらこうした光は人間も闇も関係なく存在しているのだということも分かった。つまり、人間も闇も根本は同じ存在なのだということに迅火は気付いたのでした。

一方、真介の方はどれだけ荒吹で斬りつけても岩は斬れないということに気付き、途方に暮れて空を見上げる。そうすると、上空は塞がっていないことに気が付き、別に岩を斬って通っていかなくても、空を飛んでいけばこの場から脱出することは出来るのではないかと思った。刀を持っているから岩を斬らねばいけないと思い込んでいたが、一歩下がって冷静に考えてみれば、岩を斬らずともこの場を脱出は出来る。それで真介は山の神の分身体に「ここを脱出するのが課題なんだよな?」と確認すると、荒吹に風を起こしてもらい、その風に乗って浮き上がり「これで上から出て行くのアリか?」と質問する。すると山の神の分身体は「霊力は意識と想像が作る力」と言い「君、凄いね!」と合格であることを伝える。そうすると空に穴が開いて、そこから真介と山の神の分身体は一緒に元の世界に排出されて飛んでいき、森の中に落下する。そうして真介は森の中に落ちていき、そこにちょうど玩具で遊んでいた千夜がいて、もつれて転がった真介の手にしていた荒吹の刃が千夜の喉元に突きつけられる形となったところで今回は終わり次回に続きます。