2023冬アニメ 3月23日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2023年冬アニメのうち、3月22日深夜に録画して3月23日に視聴した作品は以下の4タイトルでした。

 

 

もういっぽん!

第11話を観ました。

今回を含めて残り3話。前回が過去最高の盛り上がりエピソードを更新して、この後のラスト2話が更に盛り上がって終わるのだと思われ、今回はその合間の溜め回でした。ただ、その溜め回としての出来が素晴らしい。

この作品は凄くアツい柔道アニメではあるんだけど、バリバリのスポ根というわけじゃなくて、あくまで等身大の女子高生が柔道をするという青春部活アニメというのがコンセプトです。金鷲旗大会が開始して第8話以降は試合の描写が続いて、それはそれでアツかったんですけど、少し未知たちの柔道選手としての側面が強調されて、等身大の女子高生って感じがやや薄めになっていた。この後の立川学園との試合が始まったらやっぱりどうしても柔道選手としての側面が強調されがちになるから、だからその前にこういう溜め回を使って未知たちや相手選手たちもみんな柔道選手である前に等身大の女子高生なんだということを強調するのは意義深いことだったのだと思います。

アニメのエピソードに「決め回」だの「溜め回」だの「繋ぎ回」などがあるというのは、本来の意味としては、物語に深みを出すためには緩急というものが必要だからなのでしょう。正直言って、毎回が決め回でも作品としては成立するし盛り上がるとは思います。だから「溜め回」や「繋ぎ回」というものは単純に物語の流れの中で自然にやや盛り下がった部分が出来てしまった結果の産物であったり、単に合間の息抜き目的のユルい話やギャグ回であったりすることが多い。しかし本来は「溜め回」は「決め回」をより盛り上げるための緩急としての「溜め」なのであって、単に内容の薄い手抜き回などではない。だから「溜め回」でしっかり決める場面があって、この「溜め回」でこそ作品の本質を描くことが出来る作品は名作なのだと思う。

大抵は「決め回」でそれをやる作品が多いが、クライマックス展開前の溜め回で、単なるクライマックスに向けての盛り上げや息抜きギャグだけではなくて、しっかり作品の本質を真正面から描いた上で、更にED曲のタイトル回収までやってのける構成の今回のエピソードは見事なものだったと思います。あくまで溜め回ですから、この作品のベストエピソードではない。だが、これほど出来の良い溜め回というのはあまり見たことがないというぐらいの出来の良さでありました。ラスト2話に向けて最高の「溜め」となったと思います。

この作品の本質というのは、つまり「この作品の登場キャラたちは柔道選手ではあるが、あくまで等身大の女子高生である」ということです。では「等身大の女子高生」とは何なのかということですが、ありがちな描き方としては、柔道に打ち込む一方で、オシャレして遊びに行ったり、素敵な彼氏を作ったりという青春を満喫することに憧れたりする乙女な側面もあるという描き方がある。今回もそういう描き方も確かにしている。ただ今回はそういう表面的な描写だけにとどまらず、更にその本質に踏み込んでいっているのが素晴らしいのです。

単に「彼女たちは柔道の試合で勝負しながら等身大の女子高生でもある」ということを描くだけではなく、更に一歩踏み込んで「等身大の女子高生である彼女たちがどうして柔道の試合で勝つことにこだわるのか」ということを描こうとしている。そして彼女たちにとっての「勝つこと」の真の意味とは何なのかについて描いている。これを描くことによってラスト2話の決戦の意義が明確になっていくのです。この「勝つことの意味」の描写を鮮明にするために、あえて青葉西とは正反対に見える存在である柔道名門校で優勝候補の立川学園というものを登場させているのであり、まず彼女たちの「勝つことの意味」を描いた上で、青葉西の「勝つことの意味」を描くという構成にになっています。これはどちらが正しくて、どちらが間違っているというものではなく、その本質は同じなのであり、だからこそラスト2話の試合の場面が盛り上がってくるのです。そして、それを生徒たちの視点ではなく、夏目先生とその後輩の犬威先生の視点で描くというのが巧い。

では今回の内容ですが、まず次の3回戦の相手の立川学園が優勝候補だと知って慌てる青葉西の面々の場面から始まります。ここで「立川学園が優勝候補」だと皆に教えたのは夏目先生であり、青葉西の情報収集係の南雲ではない。南雲も一応は立川学園の情報は集めていたようですが、ここからの場面での受け答えはどうも歯切れが悪く、南雲としても情報分析や作戦面では2回戦の錦山戦でちょっと全精力を使い果たしている印象です。錦山戦での南雲の働きは凄かったですからね。南雲としては2回戦の錦山戦を自分の役目の山場と見て全力で取り組んでいたのでしょう。そうなると、どうしても次の立川学園の方はやや調査などは疎かになっていたようですね。一方で夏目先生が立川学園に詳しいのは、これは情報収集をしていたというよりは、特別な思い入れがあってもともと詳しく知っていたようです。何故なら後述するように立川学園は夏目先生の母校であり、立川学園の柔道部顧問は夏目先生の高校の時の後輩の犬威凛子だったからです。

ただ、夏目先生が立川学園の選手たちについて詳細に教えてくれたわけではなく、ここで立川学園の情報を青葉西の皆に教えてくれたのは、意外なことに1回戦で戦った博多南の梅原でした。梅原は博多南の湊や野木坂と一緒に青葉西の皆の前に現れて、立川学園の中心メンバーについての情報を話し始める。3年生の富士森はインターハイ全国大会78㎏超級のチャンピオンで「重戦車」の異名を誇るという。つまり2回戦の錦山のエースだった堂本よりも遥かに強いということです。そして同じく3年生で立川学園の主将の榊原は高校選手権全国大会の63㎏級の準優勝者だそうで、異名は「畳の鬼」だそうです。この2人が二枚看板というところでしょうが、錦山みたいに2枚看板以外は並の選手というわけではなく、立川学園は他のレギュラー含む部員の大半が中学時代から名の知られた強豪選手ばかりで、他に今回の登録選手の中では2年の真島は軽量級ながら多彩な技の持ち主で「技のジャングル」という異名、同じく2年の葉月は寝技の名手で「武道場のアナコンダ」という異名だという。

ただ実際はこれらの強豪選手たちはこの大会ではまだ試合をしていない。立川学園は2回戦からの登場だから、青葉西と錦山の試合とほぼ同時にやっていた試合がこの大会の初戦だったのだが、その2回戦は先鋒の1年生の小田桐が5人抜きで勝ってしまったので他の選手の出番は無かったのです。1年生ながら先鋒に抜擢されており、しっかり5人抜きという結果を出しているあたり、この小田桐という選手も強豪選手なのでしょう。梅原の言うには、特に今の立川学園は強い選手が揃っており「黄金世代」と言われているらしい。そして、その「黄金世代」の選手たちを全国から集めて鍛えあげて現在の立川学園の全盛期を築いたのが「若き名将」といわれる顧問の犬威凛子だそうです。

まだ若い犬威は顧問に就任して数年で黄金世代を作り上げた名将であり、5人抜きを決めた小田桐にも決して甘い顔はせず厳しく指導しており、5人抜きをした小田桐ですら気を抜けば試合には出してもらえないみたいです。つまり小田桐でさえレギュラー固定メンバーなのではなく、とりあえず抜擢して使ってみただけであり、もっと上の選手が他にもいるみたいです。梅原も小田桐のことはよく知らないみたいであり、1年生ということもあるのでしょうけど、5人抜きの小田桐でもレギュラーではないとは、確かに立川学園の選手層は厚いみたいです。そんな最強軍団の黄金世代を率いる犬威先生は立川学園の選手たちに向かって金鷲旗とインターハイのダブル優勝を目標として圧倒的に勝つぞと檄を飛ばし、いかにも闘将という感じです。

なお、立川学園は2回戦は小田桐以外は出番は無かったが、実はそもそも主将の榊原は出場していなかったみたいです。予選無しの全国大会である金鷲旗大会はマンモス大会であり、優勝するには2日間で7試合もしなければならない。だから立川学園ぐらいの強豪校になると最初の方の試合ではエース級は全試合は出さずに温存してくるものみたいです。そういう影響で高校では実績の乏しい小田桐も抜擢されて出場していたのでしょうね。

そういうリアルタイムの立川学園の情報に関しては梅原はあんまりよく分かっていないみたいです。そもそも梅原は1回戦の相手の青葉西が選手が4人だということを試合開始時に知ってビックリしていたぐらいですから、事前に他の高校の情報を収集するようなタイプではないようです。だから梅原の立川学園情報も、この会場で集めた情報なのではなく、単に立川学園の選手が有名選手が多いからもともと知っていただけみたいです。つまり梅原は柔道マニアなのであり、柔道雑誌などで聞きかじった情報を青葉西に教えてくれているわけです。

ちなみに先ほどから出て来ている「重戦車」だの「畳の鬼」だのという各選手の異名は単に梅原が勝手に命名したものであり、別に一般的にそう呼ばれているわけではないようです。梅原の柔道のスタンスはあくまで「楽しく自分たちの柔道をやりたい」というものであり、立川学園を倒して全国優勝しようとか考えているわけではない。だから、ちょっとファン心理みたいなものも入っていて、有名選手に独自の異名なんかをつけて面白がっているのでしょう。この異名に関してはギャグ的な扱いで描かれており、この後の未知たちが立川学園について話をする場面でもこれらの異名が使われ、いっそうギャグ的に扱われるのですが、この「梅原が選手に異名をつけるクセがある」というのが実は後の展開の重要な伏線になっているのです。

梅原のいる博多南との試合自体が、まず博多南のドラマとして感動的なものであり、同時に未知の柔道の原点と現在が繋がる物語上の重要なポイントとなっていたわけですが、その博多南の梅原が未知と出会ったことが、ここでまた今回の非常に重要なタイトル回収の伏線であったという構成が素晴らしい。各キャラを使い捨てにはせず、各キャラのドラマが重層的に繋がり合って物語が進んでいくというのがこの作品の本当に凄いストロングポイントだなと感心させられます。

この場面も、別に立川学園の情報をもたらすのが梅原である必要は無くて、普通に南雲からの情報提供でいいのです。だが、ここであえて梅原を登場させて情報提供をさせて、それに関連して「梅原が選手に異名をつけるクセがある」という伏線を置いておくことで後の今回のラストの場面に繋がってくる。もしかしたら梅原というキャラは物語の上で非常に重要な今回のそのラストの場面のために用意されたキャラなのかもしれないが、その場面の説得力を増すために今回の立川学園に関する情報提供の場面だけでなく、あの激アツの青葉西と博多南の試合の描写もあったのかと思うと、その異次元の構成力には脱帽するしかない。

ただ、まぁとにかく梅原の立川学園に関する情報はちょっとファン心理も入っていて、メディア経由の情報でもあるので、やや大袈裟で、実態よりも強く思えるようなものとなっています。それでちょっと青葉西の皆がビビってしまっていると気付いた博多南の湊がそのことを指摘すると、梅原は慌ててそんなつもりじゃなかったのだと釈明します。梅原は青葉西の皆を怖がらせようと思って立川学園の選手の情報を教えたのではなく、作戦を立てる参考になればと思って親切心で教えてくれたのです。その理由を梅原は湊が未知と仲良くしてもらっているからなどと言いますが、梅原自身も1回戦の未知の柔道を見て自分の目指す柔道を見つけたと思っており、未知たちと仲良くしたいという気持ちはある。だからこうしてわざわざ未知たちのところに2回戦勝利のお祝いを言おうと思ってやって来たところ、たまたま立川学園の話が出ていたので自分の知っている立川学園の選手の情報を教えて何かの参考にしてもらおうとしたところ、それが未知たちをビビらせてしまっているなどと湊に指摘されて慌ててしまったのでしょう。こういう不器用なところが梅原の可愛いところですね。

そこで慌てている梅原をフォローするように湊が青葉西の皆を元気づけようとして、2回戦の錦山戦での青葉西のメンバーの凄かったところを褒めてくれる。実際、博多南の3人が観客席から青葉西と錦山の試合を見守っていたことは前回もしっかり描写されていましたし、今回こうして2回戦の試合が終わると同時に会場まで博多南の3人が降りてきて青葉西の皆のところに来ているのも本来は2回戦の勝利をお祝いするためであったのでしょうから、その本来の目的を湊は果たしているわけです。そうした湊の言葉を聞いて、未知たちも博多南の3人が2回戦の応援をしてくれていたことを嬉しく思い元気を回復させ、立川学園との試合に向けて気合を入れます。そして博多南の3人とも一緒に青葉西の皆は2回戦突破の記念写真を撮ります。そして、この様子を試合を終えて引き上げる途中の立川学園の選手の1人、海外留学生っぽいエマ・デュランという選手が興味深く見つめる。

それは未知たちがみんな敬礼をして写真に収まっていたからでした。敬礼は未知が南雲に挨拶したり一緒に写真を撮る時によくやっていたポーズで、南雲の父が警察官だからカッコいいとか言って始めたポーズだったのですが、それをここでは皆でやっているわけです。この様子を見て海外留学生のエマは、敬礼を「勝った時に日本人がするポーズ」だと誤解したようです。このエマという選手は小田桐と同じ1年生みたいで、留学生なので南雲も「データが無い」と言っている選手ですが、実は後で明らかになりますが、立川学園の秘密兵器のような選手みたいです。

エマはなんだか呑気そうなおっとりした性格みたいですが柔道は強いみたいです。実は2回戦の試合で立川学園は最強メンバーの中で2人を温存して臨んでいたらしく、そのうちの1人が主将の榊原なんですが、もう1人がエマだったようですね。その代わりに出ていたのが小田桐なのですから、つまり1年生ながらエマは5人抜きをした小田桐よりも強いということになる。そのエマが青葉西の敬礼ポーズに興味を持ったわけですが、本当にエマが惹かれたのは敬礼ポーズそのものではなく、そうやってはしゃぐ未知たちの笑顔みたいです。特に未知の楽しそうな様子を見て、エマは心惹かれるものがあったようです。

その後、立川学園の選手たちが生徒だけで休憩時間を過ごす場面が描かれますが、ここでは1年の小田桐が犬威先生が厳しいとボヤいたり、2年の真島と葉月がこれから始まる夏合宿が真の地獄で、自分も去年は脱走したという話をしたり、さっき犬威先生と一緒に試合会場にいた時よりもかなりユルい印象です。休憩時間中は自由にしていてもいいみたいで、小田桐とエマはダラダラ座って雑談をしており、小田桐はエマにフランス人のイケメンを紹介してもらって恋に落ちる妄想を延々と語っており、未知に負けないくらいアホなキャラだったということが明らかになります。

一方で2年生の真島と葉月は自主的に投げ込み稽古をしており、1年生よりはマジメなのですが、小田桐は休憩時間にまで稽古をするような真島たちの方が女子高生として終わっているというようにディスる。そんなだから彼氏も出来ず、イケスクという乙女ゲームにハマっているのだとバカにされて真島は小田桐を締め上げますが、このイケスク、つまり「いけないスクールデイズ」は未知や早苗もハマっている女子高生に人気の乙女ゲームみたいですね。柔道漬けの日々で彼氏など作るヒマもない真島はイケスクで妄想を発散させているわけで、彼氏がおらず妄想彼氏の話で盛り上がる小田桐とそう大差は無いですね。

そういう残念な後輩たちに喝を入れるように3年生で主将の榊原はインターハイ優勝も、金鷲旗優勝も、高校選手権優勝も、そして彼氏も全部手に入れればいいと言い放つ。立川学園の柔道部員ならそれが可能なはずだとドヤ顔で言う榊原であったが、実際は榊原も彼氏はずっといないみたいで、結局全員男っ気無しで、なんとも残念な子たちです。強豪校の宿命か、柔道に青春の全てを捧げてしまっているみたいですが、そりゃ全国大会の優勝候補ともなればそんなものでしょう。ただ、それでも素顔の彼女たちも普通の女子高生なのであり、こうして集まると彼氏がどうのこうのという話題で盛り上がる。梅原が仕入れたメディア経由の情報などとは違って、素の彼女たちは冷徹な柔道マシーンなどではなく、青葉西の未知たちと同じ普通の女子高生なのです。まぁその普通の女子高生の未知たちも結局は彼氏はおらずイケスクで満足してるんですけど。

そんな立川学園の選手たちから見ても、さすがに闘将である顧問の犬威先生は自分達とは違って本物の冷徹な柔道マシーンなのだと思っている。柔道に全てを捧げて色恋などに興味も無いのだろうと思っている。ところが犬威先生は会場で青葉西の顧問の夏目先生の姿を見つけると、夏目先生が1人になった時、なんかすごくキャピキャピした様子で声をかけてくる。どうやら夏目先生は立川学園時代の犬威先生の1学年上の先輩だったらしくて、当時の犬威先生は夏目先生に憧れていたみたいです。在学中は柔道部の犬威先生がバレー部の夏目先生を慕ってよく会っていたようですが、夏目先生が卒業してからは会っていなかったようです。少なくとも夏目先生が大学を出て教師になって以降は会っていなかったようですから長く会っていなかったのは間違いない。

この再会の場面で夏目先生は犬威先生に向かって「君も変わっていないな」とちょっと嬉しそうに言っている。回想シーンでも高校時代の犬威先生は可愛い後輩という感じで人懐っこい。つまり犬威先生の本質は、立川学園の選手たちの前で見せている厳しい鬼軍曹のような姿なのではなくて、本当はもっと優しい人みたいですね。夏目先生は長く犬威先生に会っておらず、母校の柔道部を指導する闘将のような噂しか聞いておらず、今回も会場で2回戦の時に見てみたら犬威が生徒たちに厳しい言葉を浴びせている姿を見て「犬威は昔と変わってしまったのかもしれない」と思っていたのでしょう。

ところが犬威先生に声をかけられて、夏目先生は犬威先生が高校時代と変わっていないことに気付いて嬉しくなった。ここで「君も変わってないな」と言っているということは、夏目先生自身も自分は高校時代と変わっていないと思っているということを意味します。確かに回想シーンの夏目先生は現在の夏目先生と同じようにクールでカッコよくて全く変わりありませんでした。ただまぁ、ここで夏目先生が嬉しそうなのは、単に自分も犬威も高校時代と性格が変わっていないということ自体が嬉しいのではなくて、自分と同じように後輩の犬威も高校時代の自分達の青春時代というものを大切に思ってくれているように思えて嬉しかったのだろうと思います。

夏目先生が生徒達の高校時代の3年間というものをとても大事に想ってくれているというのはここまで何度も描かれてきましたが、それはおそらく夏目先生自身の高校時代に対する思い入れが強いからなのでしょう。以前にバレー部の仲間の事故の話なども出てきましたが、そういった後悔も含めて、夏目先生は高校3年間というものをかけがえのないものと考えており、それは夏目先生自身が高校時代を大切な思い出としており、ずっと高校時代からそれは自分は一貫して変わっていないからだと自負しているからなのでしょう。だから後輩の犬威が高校時代から変わってしまっているのだとしたら少し寂しいと思っていたところ、犬威が高校時代のままだと気付いて嬉しくなり、きっと犬威も高校時代の青春をかけがえのないものとする気持ちを保ったまま、教え子たちの高校3年間を決して無駄にしないという想いで指導をしているのだろうと思って夏目先生は安心したのだと思います。夏目先生が犬威先生に会って嬉しそうにしたのはそういう意味なのでしょう。

だが、その一方で夏目先生は犬威先生にあんまり高校時代のノリで懐かれても困ってしまう。これから教え子同士が対戦するのだから、そのあたりはもう少しわきまえて緊張感を保とうと夏目先生は犬威先生に言います。夏目先生はこうして犬威先生と喋ってみて、犬威先生の本質が高校時代と何も変わっていないことが分かったからこそ、犬威先生が成長していることも理解した。だからこういうことを安心して言える。つまり、犬威先生の本質が昔のままの優しい女性だということが分かったからこそ、世間的に知られている犬威先生の厳しさが演技だということも夏目先生は理解出来たのであり、犬威先生が高校時代には出来なかったそういう演技や腹芸が出来るぐらいに成長したことも理解したのです。おそらく高校時代の犬威先生に「緊張感を保とう」などと言っても理解してもらえなかったでしょう。でも今の犬威先生になら、今はとりあえず緊張感を保とうと平気で言える。

これを聞いて犬威先生も即座に態度を改めて、キャピキャピした態度をやめて普段のクールな感じに戻ります。というより、むしろ犬威先生は安堵したようにさえ見えます。これはおそらく、犬威先生も夏目先生が昔と変わっていないか見極めようとしていたように思えます。おそらく犬威先生は青葉西については全くノーマークで、顧問が夏目先生だということも知らなかったが、2回戦勝利の後で次の相手の青葉西の一同の姿を見て夏目先生が顧問だと気付いて、少し動揺したのでしょう。

犬威先生は立川学園が青葉西に負けるなどとは全く思っておらず、完勝すると思っている。それはつまり、昔の憧れの先輩であった夏目先生を完膚なきまでに負かせてしまうということであり、さすがに犬威先生も平常心ではいられなくなった。もし恨まれたりしたら嫌だとも思ったし、憧れの先輩のみっともない姿なども見たくない。だから犬威先生は夏目先生にこうして接触して、夏目先生が昔と変わっていないかどうか確かめようとしたのです。昔に自分が憧れた冷静でカッコいい夏目先輩のままであれば、立川学園に教え子たちが完敗したとしても取り乱すようなことはないはず。でも、もし長く会わないうちに夏目先輩が変な大人に変わってしまっていたらどうしようと思い、犬威先生はあえて昔と同じノリで、素の自分を曝け出して声をかけたのです。そうしてそんな自分を冷静にたしなめてくれる夏目先生を見て、犬威先生は夏目先生が高校時代と全く変わらず冷静でカッコいいままだと気付いて安心したのです。これで何の遠慮もなく正々堂々、全力で叩き潰すことが出来ると。

その頃、青葉西の方は二手に分かれていました。永遠と姫野は霞ヶ丘の2回戦の応援に行きます。永遠は天音の応援、姫野は白石の応援というわけです。一方、残った未知と早苗と南雲は練習場で休憩しながら立川学園の映像をスマホで観たり、自主練したりして過ごす。さっきは湊に励まされて元気を取り戻しましたが、それでもやっぱり立川学園の強さを知って再び緊張してきて、早苗などはかなりビビってます。そして一見すると平気そうにしている未知の身体も無意識に緊張で強張っているということをマッサージしてみて気付いた南雲は「立川学園の選手だって同じ高校生だ」と言って未知たちの緊張をほぐそうとする。普段はきっと、メイクしたりカラオケしたり、テスト勉強したりファミレスでパフェ食べたり、恋バナしたり生活指導の先生に怒られたり、そんなふうに自分達と同じような女子高生なんだと言い、南雲は「だから大丈夫」と未知たちに言う。

これは剣道で全国大会に行ったことがある南雲ならではのアドバイスで、実は原作ではこれは南雲が小学4年生の時に剣道で全国大会に行った時に他の選手にビビってしまった時に父親から受けたアドバイスの受け売りだったということが描写されています。その父親からのアドバイスを参考にして、南雲は未知たちのこれまでの日常生活を思い出させるような情景を並べ立て、それをきっと立川学園の鬼や重戦車やアナコンダだって同じようにやっているんだと想像させることで、未知たちが相手を化け物のように思って委縮していた気持ちが解消されて、相手を等身大の女子高生だと認識していく流れは見事でした。遂には未知は「立川学園の人達もイケスクやってるぞ」と言い出し、これはまさしく的中していたのでした。これで未知たちの緊張はほぐれて、立川学園との試合に向けて万全の態勢が整いました。また、永遠と姫野が応援した霞ヶ丘も沖縄の強豪校に競り勝ち、それを見て永遠と姫野も力を貰い、未知たちと合流して立川学園との3回戦に備えます。

そうして試合の時間が近づき、立川学園の方はオーダーを変更して、真島が引っ込んで代わりにエマを次鋒で投入することになったという。金鷲旗大会では最初の3試合のオーダーの順番入れ替えは出来ないが控え選手との交代は許されているのです。このエマ投入は無名の青葉西が強豪の錦山を破って勝ち上がってきたことと、その青葉西の顧問が高校の先輩の夏目先生であることを知った犬威先生が、青葉西は侮れないと思って出した指示のようです。つまり、犬威先生は青葉西に完勝することは疑ってはいないが、決して青葉西を舐めているわけではないということです。本来は無名の4人しか選手のいない青葉西相手に秘密兵器のエマを投入する必要など無いはずだが、犬威先生は青葉西は侮れないと見てちゃんと手は打っているのです。それも踏まえて完勝すると言っているのですから、これは青葉西を舐めて油断していた錦山とは違って、かなり青葉西にとっては手ごわい相手ということになります。もちろん犬威先生は高校時代にバレー部だった夏目先生が柔道に関して自分に比べれば素人に近いことは分かっているが、それでも錦山に勝ったという事実から、夏目先生には生徒の力を引き出す何かがあると見たのでしょう。高校時代の夏目先輩がそうしたカリスマ性のある人物だったので、犬威先生は決して油断しなかった。それで榊原は温存しつつエマを投入するという手を打って、それなら完封できると考えたのです。つまり、それだけエマという選手は強いということです。

ここでそれぞれの教え子たちと合流する前の夏目先生と犬威先生の会話が描かれる。ここで、どうして犬威先生が本当は優しくて情に厚い性格なのに厳しい闘将を演じているのかの理由が描かれる。犬威先生は名門の立川学園柔道部を預かる顧問の立場として、全国から才能のある選手を集めて厳しい稽古で強くして「黄金世代」を作り上げた。才能もあって努力も惜しまない、凄い子たちだと思って犬威先生は黄金世代の教え子たちを誇りに思っている。だが同時に心優しい犬威先生は、名門校の実績作りのために彼女たちに柔道漬けの生活を送らせてしまい青春時代の高校3年間を台無しにしてしまっているのではないだろうかと申し訳なく思う気持ちもある。彼女たちも柔道家である前に普通の女子高生であるということは犬威先生も分かっているのです。「黄金世代」という言葉は世間では誇らしいことのように持ち上げる人が多いが、犬威先生自身にとっては彼女たちに向けた贖罪の意味も込められた苦い言葉でした。自分は名門である立川学園の「黄金世代」を作り上げるために彼女たちの青春を犠牲にしてしまったのではないかという後悔が常に犬威先生の脳裏にはつきまとう。ただ、だからこそ、彼女たちが青春全てを犠牲にして目指している勝利だけは決して逃すわけにはいかない。だから犬威先生は心を鬼にして、常に勝利を目指す厳しい態度を揺るがさない。青春を犠牲にして頑張っている教え子たちをどんなことをしても勝たせてやりたい。本当は優しい犬威先生が柔道部の顧問となってから闘将を演じるようになったのはそういう理由だったのです。

そうした犬威先生の決意を聞き、夏目先生は自分も同じだと言う。何としてでも教え子たちを勝たせてあげたいという気持ちは自分も犬威先生と同じなのだと夏目先生は言う。犬威先生はそれを聞いて意外に思います。青葉西は立川学園と違って柔道の名門校ではなく「黄金世代」などという縛りも無い。それがどうして自分と同じなのだろうかと犬威先生は不思議に思いますが、夏目先生が言いたいのはそういうことではないのです。夏目先生は自分が犬威先生と同じだと言っているのではなく、犬威先生も自分と同じなのだと言ってくれていたのです。

夏目先生は教え子である未知たちのことを「とても大切な才能に溢れていて、それを今目いっぱい輝かせて頑張っている、黄金時代だから」と言う。「黄金世代」ではなくて、夏目先生が重視しているのは未知たちの「黄金時代」なのです。かけがえのない才能に溢れていて、その才能をキラキラ輝かせて頑張ることが出来る時期が「黄金時代」、それはまさに「青春時代」と言い換えることが出来る高校3年間というかけがえのない時間です。その限られた時間で自分の柔道の才能を伸ばして一生懸命に頑張っている、それこそが未知たちの「青春」なのです。遊びに行ったり彼氏を作ったりだけが「青春」ではない。「青春」の本質は自分の才能を信じて輝かせるために頑張ることのはずです。教え子の未知たちが今そうやって頑張っている。その「青春」を無駄なものになんてさせたくない。だから自分は何としても彼女たちを勝たせてやりたいんだと夏目先生は言っているのです。

そして、それは犬威先生だって同じはずだとも夏目先生は言っているのです。自分と同じように、高校3年間の青春時代の重要さを今でも覚えて大切に思っている犬威先生なら、教え子たちが「黄金世代」の重荷を背負いながら、それでも自分の才能を輝かせようと頑張って「黄金時代」を生きていることが理解出来ているはず。だから犬威先生も何としてでも教え子たちを勝たせてやりたいと思っているはず。だから自分と犬威先生は同じなのだと夏目先生は言っているのです。

これを聞いて、犬家先生は忘れかけていた自分の本心を想い出す。自分は「黄金世代」という重荷を背負わせて教え子たちの青春を犠牲にしてしまったと後悔して、だからせめて勝たせてやりたいと思っていた。しかし、そうではなかった。彼女たちはしっかり青春を謳歌していたのだ。遊んだり彼氏を作ることだけが青春ではない。彼女たちは自分の才能を伸ばして輝こうとして精一杯の努力をしてきた。それは決して強いられた苦行なのではなく、それが彼女たちの選んだ「青春」だったのです。等身大の女子高生なのだから遊んだり彼氏を作ることを「青春」だと考えるのが当たり前というわけではないのです。柔道に青春を賭けるなんて普通の女子高生には犠牲でしかないという考え方の方が間違っていたのです。むしろ等身大の女子高生だからこそ、遊んだり彼氏を作ることよりも、自分の大切な才能を輝かせようと限られた高校3年間を頑張るのが当たり前の「青春」だったのです。そして、自分は本当はそんな彼女たちの青春を無駄にさせたくなくて、何としても勝たせてやりたいと思っていたのだということに犬威先生は気付いたのでした。

そして、そう気付くことで犬威先生は少し気持ちが軽くなった。これまで「黄金世代」の重圧で犠牲にした彼女たちの青春に報いようと思って少し肩に力が入りすぎていたように思えた。それで「完全優勝」だとか言っていたが、教え子たちは何も犠牲になどしていないことが分かった。まさに素直にシンプルに青春を謳歌していたのだ。ならば自分ももっとシンプルに、今この瞬間の彼女たちの求める勝利を応援したいと思えた。それで夏目先生と別れて、青葉西の選手と歓談する夏目先生の姿をお手本を見るように見つめた後、犬威先生は柔らかな笑顔で立川学園の選手たちの方に振り向くと「勝とうか!3回戦!」と檄を飛ばす。それに立川学園の選手たちも勢いよく応える。

そして同時に、犬威先生はこのような純粋な想いで教え子に向き合い、その青春を無駄にさせたくないと思って勝ちにこだわってきた夏目先生はやはり侮れない強敵だとも再確認した。高校時代の記憶にあったバレー部主将としての圧倒的カリスマ性や、錦山に勝利したという実績から鑑みて、夏目先生の率いる青葉西を警戒すべき相手と考えてエマを投入することにしておいて正解だったとは思ったが、こうして夏目先生の言葉によって自分自身の目から鱗が落ちたような経験を経て、そして夏目先生の勝利に賭ける執念が想像以上であったことから、犬威先生は予想している以上に夏目先生の教えを受けた青葉西の選手は強いのかもしれないし、実力以上の力を発揮してくるのかもしれないと思い、場合によっては大番狂わせの可能性もあると見て、ますます気を引き締めていくのでした。

そうして青葉西も立川学園も試合会場に入り、ウォーミングアップを始めると、観客席から博多南の3人が青葉西に声援を送る。すると未知は梅原に向かって立川学園の情報を教えてくれたことへの礼を言います。さっき親切心で言ったことが未知たちを怖がらせてしまったと思ってちょっと気にしていた梅原は、未知の素直な感謝の言葉に救われた気持ちになり「どういたしまして」と口ごもりながら言う。すると、そこに未知が畳みかけるように「ついでにもう1個お願い!」と呼びかける。そして未知は「私にもカッコいい異名をつけて!」と梅原に頼むのでした。

未知は梅原がつけたという立川学園の選手たちの異名を聞いたら何かものすごく相手が強く感じて緊張したので、自分にもそんな異名があったら相手にもプレッシャーを与えられるし自分でも自信が湧いてくるような気がしたのです。それなら、その異名はやはり梅原に付けてもらいたいと思いつき、試合開始前に間に合うように梅原に異名をつけてくれるよういきなり無茶振りしたのでした。だが梅原もいきなりそんなことを言われても立川学園の有名選手とは違って未知のことはよく知らないので困ってしまう。そもそも「園田」という姓は知っていても下の名前すらよく知らない。湊が「みっちゃん」と言ってるから何となくそう覚えていたという程度です。

それで梅原が考え込んでいると、試合開始が迫ってきて早苗が未知を呼びに来て「未知」「未知」としきりに呼ぶのを聞き、梅原は園田の名前が「未知」だと初めて知る。そうして「みち」という名前を反芻しながら、未知の柔道について知っていることを想い出してみると、自分たち博多南との試合で未知が3人連続で一本勝ちしたことが思い出された。そして、その「気持ちいい一本」を取る柔道に徹底した姿勢に自分も強く魅了されたことが思い出された。その柔道こそ自分の目指す道なのだと思ったことも想いだした梅原は「一本を目指す道こそが未知の柔道なのだ」と思った。そうすると自然に「いっぽんみち」という言葉が思い浮かんできた。「一本」を目指す「道」を「一本道」に貫くということと「未知」という名前をかけたわけです。そうして思わず梅原は「いっぽんみち!!」と叫び、それに呼応するように博多南の3人で「がんばって!!」と叫び、未知たち青葉西の出陣にエールを贈る。未知は新たな自分の異名「いっぽんみち」に喜び、高々と上げた手の指を一本立てて、梅原に感謝の気持ちを伝えて畳の上に上がっていったのでした。そうして「ネオ園田改め、いっぽんみち!出陣!!」と気合を入れて相手の立川学園の選手たちに向けて指を立てる。この「いっぽんみち」という異名はこのアニメのEDテーマ曲のタイトル回収であり、また、この後の物語の中で未知がずっと試合前に叫び続ける自分の異名となる。

そうして先鋒の未知の試合開始となり、相手は立川学園の先鋒の小田桐です。2回戦で5人抜きを決めた実力者の小田桐との対戦に未知は燃えに燃えて武者震いをする。相手が強いほど、それを投げ飛ばして一本を決めた時が気持ちいい。それを知っている未知は強敵との対戦ほどワクワクして闘志が湧き上がってくる。これまでで最強といえる立川学園の選手たちとの戦いを前に、その気持ちが限界を突破して遂に未知は武者振いまでするようになってしまったのですが、対戦相手の小田桐は未知が怖くて震えていると勘違いして油断する。一方で立川学園サイドではエマだけが未知が日本人が言うところも「武者振い」というものをしているのだと気付き、初めてその実例を見てワクワクする。

ただ、武者振いしたからといって、闘志いっぱいだからといって、それだけで未知が勝てるほど甘い相手でないことは夏目先生も分かっていた。そして「何としても勝たせてやりたい」と言っていた夏目先生の言葉は決して気持ちだけで言ったものではなく、しっかりと具体性のある言葉であった。夏目先生は未知にたった1回しか通用しない策を授けていた。その策を使う以外に未知が小田桐に勝てる可能性は無いと思えた奇襲の一手だった。それは、無名の未知がどんな選手なのか立川学園が知らないという可能性に賭けた手で、本来は右組みの未知が開始早々に左組みを装って左手で小田桐の右襟を掴みに行くという派手なフェイントを仕掛けるというもの。そうすると左組みなので左手で自分の左襟をガードする態勢で試合開始した小田桐が左手を右襟の方に移動させてガードしようとして左襟のガードが外れる。そうしたら未知は本来の右組みに戻して右手で小田桐の左襟を掴み、そのまま一気に背負い投げに入るという作戦です。この作戦を未知が実行し、見事に作戦に引っかかった小田桐の左襟を掴んだ未知が背負い投げに入るところで今回は終わり、次回に続きます。さて、これであとは残り2話で、立川学園との試合が次回ますますヒートアップしていくのでしょう。

 

 

トモちゃんは女の子!

第12話を観ました。

今回は最終話の1つ前のお話でしたが、なんだか今回が最終話でもおかしくないような内容でしたね。むしろ次回は一体何をやるのだろうかと思ってしまうぐらい、今回は見事なハッピーエンドであったように思えました。

まずは前回からの続きで文化祭のクラスの出し物である演劇「シンデレラ」の上演場面から始まりました。前回は稽古シーンで終わり、今回は文化祭当日の本番シーンとなったわけですが、しかし、よくよく考えたら今時、高校の文化祭で「シンデレラ」の上演は無いよなぁとは思います。幼稚園じゃあるまいし「シンデレラ」は定番すぎるでしょうに。

この「シンデレラ」の上演シーンはもっとハチャメチャになってしまうのかと思ってたんですが、意外にマトモでした。最後に何故かシンデレラと王子が結ばれるシーンで継母たちまで祝福して、更には出演者全員が2人を祝福して終わるという謎エンドでしたが、まぁ大筋は普通の「シンデレラ」だったようです。

この演劇シーンの演出としては、王子役のトモを見てシンデレラ役のみすずが「トモはやはり王子様が似合う」「お姫様にならないといけないという考えは自分が植え付けてしまった間違った考え」と考えていて、みすずはあくまでトモの本来の男みたいな性格で自然に生きる方が幸福なのだと考えている一方、木の役で王子役のトモを見つめる淳一郎は「王子役も良いけどお姫様役をやりたくなるトモの想いも本物」と認めており、それもひっくるめてトモを受け入れようと考えていることです。以前は女っぽいトモを受け入れようとしていなかった淳一郎ですから、このあたりはだいぶ変わったものです。一方でみすずはあまり変われていないわけですが、これはやはりトモに対する特別な想いがあるからなのでしょうか。それはつまり「トモには男らしいままでいてほしい」という想いがみすずにあり、それは男っぽいトモに対するみすずからの恋愛感情に近いものなのかもしれません。

その後、トモは淳一郎と一緒に文化祭を回り、淳一郎と一緒に競い合ったりして遊んでいるとやはり楽しいと実感する。そうして、もし自分が淳一郎の彼女になってしまうと、この親友としての心地良い関係が終わってしまうのではないかと思い怖くなってくる。それで後夜祭のキャンプファイヤーの時に淳一郎に告白されそうになって思わずトモは逃げ出してしまう。もともとはトモが淳一郎に告白しても女扱いしてもらえず無視されたので怒り狂っていたのだが、その後、淳一郎がトモとこれからも一緒にいるためにはトモが女だという現実から逃げていてはいけないという考えに至り、トモを女として見て、トモの想いに向き合おうとするようになったというのに、そうなると今度はトモの方が淳一郎との関係が変わってしまうのが怖くなってしまったのですから皮肉なものです。

この後、トモは淳一郎と一緒にいてもその告白の話題になると逃げるようになり、まるでそのことは無かったかのように男同士の親友っぽい付き合いに終始するようになり、淳一郎は自分はトモに愛想を尽かされて振られたのだと思い込む。ただ、御崎先輩のアドバイスなども受けて、それでも自分の想いはトモにちゃんと伝えようと決める。そうしてトモを果たし状で騙して屋上に呼び出して、そこで淳一郎は高校入学時にトモに告白された時に実はトモの気持ちに気付いていながら気付いていないフリをして無視したことを告白し謝る。そしてそんな自分はトモに愛想を尽かされてしまったかもしれないが、それでも自分はトモを好きだと告白する。

だがトモは思わず淳一郎が自分を騙していたことを知ってカッとなって殴ってしまったものの、淳一郎がその時に自分から逃げたくなった気持ちはよく分かった。淳一郎が自分との関係が変わってしまうことが怖かったのだということは、今こうして自分が淳一郎との関係が変わることを怖がって逃げ続けているのと同じ気持ちだったのだとトモには理解出来るのです。そして淳一郎がその怖さを乗り越えて「好きだ」と告白してきたというのに、自分は怖さを乗り越えることが出来ずに逃げ回っている。それがなんとも情けなくて、またトモは淳一郎の前から逃げ出してしまう。

その後、落ち込むトモをみすずとキャロルが慰めますが、ここでトモが怖がっているのは全てを失うことだということが分かります。淳一郎の想いを受け入れればトモはもう淳一郎とは親友ではなくなり彼女になる。だが彼女になった後で淳一郎に愛想を尽かされて振られてしまったらトモは完全に淳一郎を失ってしまう。トモは「女らしくなければ付き合っても上手くいかない」とみすずに言われて信じ込んでいるので、女らしくない自分はどうせ淳一郎と付き合っても上手くいかないと思ってしまっている。だったら親友のままでいた方が淳一郎を失う恐れは無いからマシだというのがトモの考えなのです。これまで淳一郎に女らしさをアピールしようとしていたのは、女として認められなかったことが悔しくて単に淳一郎に張り合う習慣の一環としての行動だっただけであり、いざ淳一郎と付き合うとなると、その結果、淳一郎との関係を失うかもしれないと考えて怖くなってしまっていたのでした。ただ、それも結局はみすずがトモに与えた呪縛が原因だったわけです。

それでみすずはトモに向き合い、涙を流して「トモは変わる必要なんて無かった」と告げて、今までトモを苦しめてきたことを謝る。そして淳一郎と決着をつけてくるようにと言う。つまり、みすずはトモが自然な自分を曲げて女らしくなることなど出来ないと分かっていながら「女らしくならないと淳一郎と付き合えない」と言うことによって、トモと淳一郎が付き合うようになることを邪魔していたのだということになります。それはおそらくみすずがトモのことを友人としてでなく好きだったからなのだが、みすずはその想いを告げる気も無いようで、ずっと秘めておくつもりだったようです。だからみすずは実は今まで一度もトモに対して本心で向き合ったことがなかった。そしてひたすらトモと淳一郎の間の邪魔をしていたわけだが、それは自分がトモと結ばれることがないことへの腹いせのような行動だったのだろう。だが、それがここまでトモを呪縛して苦しめてしまっていたことを知り、みすずは初めてトモに本心から向き合う。だからといって自分の想いを告げるわけではなく、トモは今のままで淳一郎と幸せになることが出来るという事実を伝えることで、トモへの自分の想いに諦めをつけたのです。そして、そんなみすずをキャロルが包み込むように慰めるのがとても良かった。

そしてトモはみすずの言葉に勇気づけられて淳一郎の想いに向き合う覚悟を決めて、淳一郎の想いを受け入れます。だが、それでもこれで自分と淳一郎が彼氏彼女の関係になることによって長年育んだ親友としての関係が終わってしまうことについて、それで本当に良いのか迷いが生じる。淳一郎もそのことの重大さを本当に理解しているのだろうかと思い確かめると、淳一郎はトモと付き合っても親友を止めるともりもないと言う。何故なら、淳一郎はこれまでトモと過ごした今までの全部を大切にしたいからなのだと言う。だから、淳一郎にとってトモは幼馴染で親友でライバルで、そして「好きな女」なのだという。ずいぶんワガママな話だが、それを貫きたいという淳一郎の言葉を聞き、トモも淳一郎に「好きだ」と応え、ハッピーエンドとなる。

ここで今回は終わりで、次回は遂に最終話ということになりますが、今回のラストで話が終わってもいいぐらい綺麗なハッピーエンドでした。まぁおそらく、そうはいってもそう上手くはいかないわけで、もうひと騒動あるのでしょう。また、みすずの救済もあるのかもしれません。とにかく次回で綺麗に完結するのでしょうから、第2期とかはないのでしょうね。

 

 

転生王女と天才令嬢の魔法革命

最終話、第12話を観ました。

今回はアニスとユフィリアの決闘の場面から始まります。アニスは自分のためにユフィリアに犠牲になってほしくない。ユフィラはアニスが国のために犠牲になるのは許せない。それは互いが相手をこの世界にとって、そして自分にとって他には代えられない大切な人間だと思っているからです。お互いに譲れないその想いで2人は決闘で雌雄を決しようとしますが、戦いの中で精霊契約を果たしたユフィリアがドラゴンの力を振うアニスを打ち破り勝利を収める。

その晩、アニスはユフィリアにだけ、これまでずっと誰にも言わず秘密にしていたことを打ち明けます。それはアニスが別の世界からの転生者であり、もともとこの世界にいたアニスの身体を奪ってしまったかもしれないということ。そうした想いがあったので、ずっとアニスは本来のアニスの人生を奪ってしまったことをアニス本人やその家族に対して申し訳なく思っていた。もしかしたら自分が魔法を使えないのもそれが原因なのではないかとも思えた。それで出来るだけもともとのアニスが歩むであったであろうちゃんとした王女として生きようと努めたのだが、魔法も使えないのでなかなか上手くいかなかった。魔学に励んだのだってそうした努力の一環であったのでしょう。だから、実はアニスは「王女や王族の責務を果たすこと」には強い思い入れがあり、だから自分が犠牲になっても王になることに拘ったのです。そして、その負い目はユフィリアに認められることで解消されたのだが、最後にやはりそんな自分にとってのかけがえのない存在となったユフィリアを犠牲にする選択だけは受け入れることが出来ず、それで決闘ということになったのだが、それもユフィリアの自分への想いの方が勝ったという結果で敗北したことで、もうアニスはユフィリアの愛を受け入れて身を委ねる覚悟を決めることにしたのでした。そして2人の濃厚な百合描写となります。

そしてユフィリアが国王の養女となり王位を継ぎ、アニスはユフィリアを義姉として支えるということになった。そしてユフィリアがこれまでの古い魔法の時代を終わらせ、アニスが貴族の特権でなくて誰もが魔法を手にするような新しい自由な時代の担い手になることになります。そうして新しい時代を民たちに理解してもらうための式典が開かれ、そこでアニスとユフィリアが一緒に空を飛ぶという場面でこの話は完結となります。

まぁ実際は空を飛んだからといって自由になるわけじゃないし古い魔法の時代が終わったわけでもなく、アニスとユフィリアの魔法革命はこれから始まるという意味で「俺たちの戦いはこれからだ」エンドです。実際、原作もここからまだまだお話は続くみたいです。でも、とにかくこのアニメとしては中途半端に続編を匂わせるわけでもなく綺麗に物語をまとめて締めたというのは好感が持てます。確かに未解決の問題は山積みなんですが、物語としては綺麗にまとめて終わったのは良かったと思います。

 

 

ツルネ ーつながりの一射ー

第12話を観ました。

今回は最終話の1つ前の話で、風舞と桐先の試合が描かれました。てっきり今回と次回で桐先との試合を描くのかと思っていたのですが、今回で桐先との試合は終わり、全国大会も終わりましたね。最後は神事の奉納弓をやるのだろうと思いますが、それ以外にも何か描くことがあるのかもしれないですね。

今回の桐先との試合に関しては、サドンデスまでいく熱戦で、最終的には桐先の勝利となり風舞は敗退しました。そして桐先が優勝しました。相変わらず弓道の描写は素晴らしかったですね。湊たちも敗れはしたものも、良い射が出来たようで、そして同時にまだまだ未熟だということも感じて、まだまだこれからも頑張ろうと思ったようです。二階堂たち辻峰の面々も観戦し、二階堂も弓道は辞めず、湊たちとの再戦を約束して去っていきました。愁の両親も観に来てくれていたようで、愁も弓道の上達を褒めてもらえました。その他、湊の母親が亡くなった後の弓道を始めた後の回想シーンなども随所に挿入されていました。

全体的には漠然とした描写が多く、弓道の道は一生かけて追い求めていくものであり、そうして新しい射を生み出していくという感じでした。まぁ次回の最終話で何かバシッと決めるものがあるのかもしれませんが、あまりそういうのは無くて、結局のところ基本的には「目で見て堪能するアニメ」なんだろうなという印象ですね。ただ別に悪く言っているつもりはありません。話の意味は多少分からないところがあっても、これだけ映像で圧倒されるならば、これもこれでしっかり満足出来る作品だったと言っていいでしょう。単にその素晴らしさを私が上手く言語化出来ないだけの話です。話も薄いだけであって、別に破綻してもいないしつまらないわけでもない。十分満足しました。次回の最終話は綺麗に締めてくれることを期待したいと思います。