2023冬アニメ 3月21日視聴分 | アニメ視聴日記

アニメ視聴日記

日々視聴しているアニメについてあれこれ

2023年冬アニメのうち、3月20日深夜に録画して3月21日に視聴した作品は以下の2タイトルでした。

 

 

虚構推理 Season2

第23話を観ました。

今回は最終話の1つ前のエピソードであり、ここまで4話続いてきた「スリーピング・マーダー編」の完結エピソードとなりました。つまり次回の最終話は独立した1つの短編エピソードということになるようです。まぁそれについてはさておき、今回でスリーピング・マーダー編は完結し、全ての謎が明かされました。何とも予想外の展開で、見事に騙されてしまいましたね。実は真犯人の正体については前回のレビューを終えた時点で消去法でほぼ推測はついており、それについては正解だったんですが、それ以外の展開は全く予想外で、しかもよくよく考えれば、その提示された真実の方が全ての辻褄が合っていました。そして琴子の思惑が終始一貫しており、人間ドラマとしても完璧な構成となっていました。お見事だったと思います。

このスリーピング・マーダー編、ここまでの話の流れを簡単にまとめます。ホテルグループの会長の音無剛一氏は23年前に妖狐と取引をして妻の澄の殺害を依頼した。それからほどなくして澄が刺殺体で発見され、妖狐が剛一氏の前に現れて依頼を果たしたという旨を伝えて去っていき、剛一氏は妖狐との約束の報酬を与えた。その後、社長だった澄の無謀な経営方針を社長を継いだ剛一氏が改めてグループは危機を乗り越え順調に発展し、澄の支配によって崩壊しかけていた家庭は澄の死によって子供たちが解放されてみんな幸福を掴んだ。

だが23年が経ち、自分が悪性腫瘍に冒されていると知った剛一氏はこれは妻を殺した自分への報いなのだと思い、罪を犯して成功した者は必ず報いを受けると実感した。そして、その教訓を自分同様に澄の死によって成功を得た自分の子供たちにも伝えて、人の死による成功体験を過ちだと認識させねばいけないと思った。そのために「自分は妻を殺した報いを受けて悪性腫瘍で死ぬのだ」と子供たちに伝えようと思ったが、妖狐が実行犯であるためにその犯罪を立証できず、剛一氏には完璧なアリバイがあり事件に関与した形跡も全く無く、事件も迷宮入りで片付いてしまっているため、妖狐の存在を介さずに自分が妻を殺したということをまずどうにか立証し、それを子供たちに信じさせなければいけなくなった。

そのために剛一氏は岩永琴子に協力を仰ぎ、妖狐が澄を殺したという真実とは異なる架空の「自分が妻を殺したストーリー」を作り上げて、それを子供たちに信じさせるために、子供たち自身に推理をさせて、その解答に辿り着くように誘導しようとした。そのために「最適解に辿り着いた者に遺産の優先相続権を与える」という条件を出して、23年前の真実を明らかにすると言って子供たちに召集をかけ、その立会人に琴子を置き、「23年前に自分が妻を殺した方法を言い当てよ」という課題をその場に集まった3人の子供たちのそれぞれの家の代表者に向けて出した。

私は前回まで、こうした剛一氏の手法があまりに回りくどいので何か他に思惑があるのではないかと勘繰り、遺産相続の件で何か思惑があるのではないかとか、23年前の事件のことを何か琴子に対しても隠していることがあるのではないかとか疑っていましたが、今回観終わってみて、実際はそういうことは何も無かったことが分かりました。また、遺産争いなども全く無かったことも分かりました。

剛一氏が自分の病気のことを最後に明かそうと決めていたのも、あくまで子供たちに自力で考えさせようとしていたのも、自分の用意した最適解を心から子供たちに納得させるために必須の手順と考えていたからなのであり、それは確かに実際にそういう効果を発揮していました。剛一氏はただ純粋に子供たちに良き教訓を与えるために「妖狐に妻を殺してもらった」という真実を隠したまま「自分が妻を殺した」という嘘の最適解を子供たちに信じ込ませるために行動していたに過ぎなかったのです。

そして私は前回までは、琴子も剛一氏のあまりに回りくどい手法に疑惑を抱いていたのではないかと推測していましたが、それも全く見当違いで、琴子は剛一氏の子供たちへの想いの純粋さに関しては全く疑ってはおらず、剛一氏の回りくどい手法も子供たちに嘘の最適解を真実と信じ込ませるために必要なものであるということも琴子はしっかり理解していました。私は随所で見せていた琴子の意味深な態度を「剛一氏への疑惑」と解釈していたわけですが、実際は琴子の意味深な態度の裏にあったものはそれとは全く違うものであったのですが、それは後述します。

ただ、こうした剛一氏の手法の回りくどさというものは作劇の上で大して意味が無いものだったというわけではなく、この場に集められた長男の娘の莉音、長女の夫の耕也、次男の晋には不自然さを感じさせ、剛一氏に何か別の思惑があるのではないかと邪推させるという効果は発揮した。そして、そうした疑心暗鬼の末に、まず晋が兄の亮馬と共に23年前に澄を殺害しようと計画していたことを告白する。晋と亮馬はてっきり父の剛一が23年前に自分達が母を殺そうとしていたことを知っていて、それを告白させるためにこの場に集めたのだと思って身構えていたのです。そして同様に長女の薫子の夫の耕也も琴子に問い詰められて、自分と薫子も23年前に澄の殺害を計画していたということを認めた。薫子も父に23年前の罪を暴かれるのを恐れて、だから自分は来ずに夫の耕也に代理で出席してもらったのだという。

ただ、この2つの殺人計画は両方とも未遂で終わっている。殺害計画を実行に移す前に澄が何者かに殺害されてしまったからです。だから晋も亮馬も薫子も未遂に終わった殺害計画のことはずっと秘密にしていたのだが、父の剛一から「23年前の真実を明らかにする」と言われて怯えてしまい、結局こうして過去の過ちを告白することになったのです。だが、これは剛一氏が本来意図していたことではない。剛一氏はあくまで「自分が妻を殺した」という嘘の最適解を子供たちに信じさせるために皆をこの場に集めたのであり、子供たちに罪を告白させるつもりなど無かった。そもそも剛一氏は子供たちが澄の殺害を計画していたなんていうこと自体全く知らなかったのです。

そうしたこの会合の目的意識はしっかり剛一氏と共有している琴子は、晋たちに過去の罪を告白させたのはあくまでお題に集中させるためであると言い、改めてお題への解答を皆に求めます。この会合の目的は「自分達に罪の告白をさせるため」であったと結論を出しかけていた晋たちは戸惑いますが、それでも、伯父たちの罪の告白を聞き、澄が皆に殺意を持たれるほど当時追い詰められた状態であったことも知った莉音が琴子の誘導に乗せられる形で遂に「剛一氏が澄を殺した」という条件を満たす用意された最適解に辿り着きます。

ここで私は前回、莉音に対して琴子が何やら含みのある物言いをたびたびしていたので、莉音は何か秘めた思惑があり、琴子がそれを知っているのではないかと邪推しましたが、これも考えすぎだったようです。とにかく琴子が何を言う時でも妙に思慮深く見えるのでついつい全ての発言に深い意味を読み取ってしまいがちなのですが、この琴子の莉音に対する態度は、単に一番若くてカッとなりやすい莉音を挑発して自分への敵意を向けるよう誘導して、お題の最適解に早く辿り着かせようとする思惑があっただけみたいです。莉音自身には特に何の思惑も無く、ただ真面目にお題に取り組んでいただけだったようです。実際、遺産を巡る競争意識なども無いこの場にいる3人は真摯にお題に取り組む姿勢もほとんど無かったので、そのように挑発でもしなければお題の解答には辿り着けなかったことでしょう。

そうして莉音が導き出した解答は「澄は剛一氏に精神的に追い込まれて、他殺に偽装して自殺した」というものでした。澄はもともと精神的に行き詰っていて自殺してもおかしくない状態だった。そこの剛一氏が子供が澄を殺害しようとしているなどという情報を伝えて最後のトドメを刺し、澄はグループへのダメージを恐れて自殺したことを隠そうとして、それで他殺に偽装して自殺したのだと莉音は仮説を述べる。

もちろん、これは「妖狐が妻を殺した」という剛一氏の知る真実とは全く異なる虚構なのだが、それは剛一氏が用意していた虚構の最適解とほぼ同じ内容だった。それもそのはずで、莉音をその最適解に誘導したのは剛一氏と共にその最適解を作った琴子だったからです。それで遂に剛一氏は自分の狙い通りに事が運んだと思い、その莉音の解答が正解だと認定し「23年前に自分が妻を精神的に追い詰めて自殺するよう誘導したのだ」と告白する。その上で剛一氏は自分が悪性腫瘍に冒されて死ぬことを打ち明けて、これは妻を殺した報いなのだと言う。そうして「人を殺して成功を得ても必ず報いを受ける」と自分を実例として教訓を垂れ、人を殺すことで得られる成功体験は誤りだと断じます。一同もそれを聞いて納得し、これで剛一氏の目的は完全に達成されたと思われました。

ところが琴子がこれに何故かイチャモンをつける。まず剛一氏が非正規な手段で澄を殺しておいて、その結果こうして満足感を得ていること自体が悪しき成功体験なのであり否定されるべきものだと琴子は指摘する。この「非正規な手段」というのは剛一氏には「妖狐に殺人を依頼したこと」ということを意味することは伝わるのだが、この場にいる他の者には「相手が自殺するよう誘導した」ということを意味するのだろうと思われているのでしょう。ただ、どちらにしても、これだけでは琴子が何に対して不満で文句をつけているのかイマイチ意味は分からない。

しかし次の琴子の指摘は、少なくとも何を意図しているのかは明確です。琴子は莉音の推理の穴をついて、自殺を隠すためならば澄は他殺に偽装するのではなく事故死に偽装するはずだと指摘し、事故死に偽装していない以上、澄は自殺ではなく本当に他殺だったのであり、澄を殺した真犯人は存在するのだと指摘する。つまり琴子は剛一氏と示し合わせて用意していた虚構の最適解「澄は自殺した」というものを破棄して、「澄は殺された」という真実をぶちまけようとしているのです。

澄は自殺ではなくて殺されたとして、しかし琴子が「真犯人は妖狐だ」などと打ち明けるはずもなく、ならば琴子が言う「真犯人」というのは妖狐ではない別の誰かだと推測できる。そこで私は前回、澄の死体にナイフの刺し傷が2か所あったことに着目して、最初に妖狐が澄を刺した後に澄の死をしっかり確認せずに逃走してしまい、その後で澄に近づいてトドメの一刺しをした別の人物が存在しており、その人物こそが琴子の言う「真犯人」だと推測した。そして、話の流れ上、その「真犯人」はこの場にいる人物たちの関係者に限られると考え、その中で唯一アリバイが成立していない薫子が「真犯人」なのだろうという推測は、前回のレビューの時点で頭の中では浮かんでいました。

耕也が琴子に打ち明けた23年前の澄の殺害計画とその失敗の顛末によれば、薫子は朝にわざと階段で転んで足を怪我をしたフリをして、夜にコッソリ家を抜け出して澄を殺害して、家に戻ってから自分で足の骨を折って、まるで朝に転んだ時に足が折れていたかのように偽装してアリバイ工作をしようとしていたのだが、ところが朝に階段で転んだ時に本当に骨を折ってしまい澄を殺害しに行くことが出来ず未遂に終わってしまったのだとのことでした。だが、これは薫子がそのように耕也に自己申告しているだけであり、実際は朝の時点で骨が折れていたことを証明できる第三者は存在しない。実際は薫子は計画通りに澄を殺しに行った後で家に戻って自分の足を折ったのかもしれない。というか、そもそも殺害計画の共犯である耕也の証言だけでは全く客観的な証言とはいえないのであり、アリバイの証明にはならないのです。犯行時刻にオフィスで喧嘩をしているのを第三者に目撃されていた晋と亮馬や、取引先で商談をしていた耕也などとは違い、薫子だけがちゃんとしたアリバイが無いのです。

だから私は妖狐が逃げた後にナイフが刺さって倒れている澄に近づいて薫子が澄を刺して、それがトドメの一刺しとなって澄が絶命したのであり、だから薫子が琴子の指摘する「真犯人」なのだと考えた。ただ問題はどうやって琴子がその真実を知ったのかでした。これに関しては琴子がいつもの怪異たちを使った独自の調査で23年前の現場を目撃していた地縛霊か何かの証言を得たのだろうと考えました。雪女編の時もそんな感じで真犯人を突き止めていましたから、今回もそんな感じなのだろうと思ったのです。また、今回の事件の場合は澄が刺された後に「逃げた犯人を追うように」と大声を出していることや、刺し傷が2か所あることから琴子も容易に「2人目の犯人」が存在することに気付き、それはおそらくアリバイの無い薫子なのだろうと推測したとしても全く不自然ではないとも思えました。

だが、琴子の突き止めた「真実」は、薫子が真犯人であるという点以外は、私が想像していたものとは全く違ったものであり、また琴子が真実を突き止めた経緯も私が想像していたような漠然としたものではなく、かなり明確な経緯でした。ここからが今回のエピソードの内容となるのですが、まずここで時は遡って、琴子が妖狐を拘束した場面に戻ります。ここで琴子は妖狐に疑問をぶつける。それは「どうして病死や事故死に見せかけなかったのか?」という疑問でした。

妖狐は怪異ですから妖力を持っており、人知を超えた力で人間を殺すことも可能なのです。その力を上手く使えば他殺に見えない方法で澄の命を奪うことは可能だったはず。そうなれば警察も力を入れて捜査をしないから誰も疑われることがない。剛一氏の望みは「澄がいなくなってほしい」ということであり、明らかに他殺と分かるような方法で殺す必要は無かったはずです。妖力を使って病死や事故死に見せかけて澄に死んでもらうことで剛一氏からの依頼は果たしたことになります。逆に他殺だと警察に思われてしまうと捜査の手が剛一氏自身や家族に及ぶ危険があり、もしアリバイが不完全であったりすれば疑惑が深まり、下手したら冤罪で逮捕される可能性もある。もしそうなったら剛一氏の機嫌を損ねてしまい妖狐は剛一氏から受けるはずだった報酬も貰えなくなる危険もある。だから、妖狐が妖術を全く使わずに普通の人間のようにナイフで澄の胸を刺して殺したという事実に、剛一氏から「妖狐に澄の殺害を依頼した」という話を聞いた時から琴子はずっと違和感を抱いていたのです。

それで琴子が本当は妖狐は澄を殺しておらず、何者かに澄が殺されたのを見て、それを自分がやったのだと剛一氏に嘘の報告をして剛一氏からの報酬をせしめたのだろうと考えた。剛一氏は殺害現場を見ていないわけですから、妖狐にそう報告されたら、自分がそもそも妖狐に殺害を依頼したのだし、実際に犯人が不明のままである以上、妖狐が上手くやったのだと思うしかなく、容易く妖狐の嘘に騙されてしまい、妖狐に報酬を渡し、澄を殺したのは妖狐であり、それは自分が依頼した殺害なのだから自分が澄を殺したのだとずっと信じ込んでいたのです。私たち視聴者も、剛一氏が「妖狐に殺害を依頼した」と言い、妖狐が「私が殺した」と言っており、実際に澄が死んでいることから、「妖狐が澄を殺した」という事実に全く疑いを差しはさむことはなく、それが真実であるという大前提で私も「一刺し目は妖狐で、二刺し目は別の誰か」などと間抜けな推理をしてしまっていましたが、実際は妖狐は澄を一刺しも刺してなどいなかったのです。

琴子にそのことを指摘されると、妖狐はあっさりと自分は澄を殺していないということを認めた。ただ殺意はあり、剛一氏との取引を成し遂げるために澄を尾行して殺すチャンスを伺っていた。そして澄が1人で人通りの無い道を歩き始めて妖狐がチャンスと思った時、別の人間が現れて澄を刺し殺して逃げてしまった。このままでは剛一氏からの報酬を貰えないと焦った妖狐は、自分の犯行に見せかけるために妖術を使って澄の声を出して大声で「黒い服を着た男を追いなさい!」と叫び、まるで「黒い服を着た男」が犯人であるかのように偽装したのです。そのまま妖狐は姿を消し、その声を聞いて駆け付けた近所の住民は、澄が「黒い服を着た男」に殺されたと思い込む。

そういう偽装をしておけば自分の犯行だと剛一氏は信じてくれると妖狐は思ったのです。しかし剛一氏の頭の中では「妖狐=黒い服を着た男」という認識ではない。だから、これは積極的な意味での偽装工作ではなく、むしろ別の誰かがたまたまあの逃げていった真犯人の姿を目撃していて妖狐にとって都合の悪い証言をした時に、その信憑性を落とすためにという消極的な意味の偽装工作といえます。つまり真犯人の姿を見た者がするであろう証言は「黒い服を着た男」とは真逆な内容だということです。それは要するに真犯人は「女性」だということを意味する。

また、妖狐が犯人は「黒い服を着た男」だと思わせるような偽装工作をした理由は、自分の犯行だと見せかけたかったからという意味もあったが、同時にその真犯人の女に容疑の目が向けられないように庇うという意味合いもあった。どうして妖狐が真犯人を庇ったのかというと、自分の依頼人の不利益になるような結果になって自分が報酬を貰えなくなることを恐れたからでした。つまり真犯人は依頼人である剛一氏の身内であり、長女である薫子だった。妖狐も剛一氏との取引の後、剛一氏の家族のことなども調べていたので薫子の顔も把握していた。だから薫子が真犯人だと分かったのです。

薫子は上記のアリバイ工作をして秘かに家を出て、マッサージ店から帰る澄を待ち伏せた。そして、妖狐が薫子の顔を確認出来たということは覆面などはしておらず、素顔を晒してごく普通に話をしに来た風に装って澄を油断させて近づいたのでしょう。そうしていきなり澄の胸を一刺しして、驚いた澄の口を塞いで押し倒して、更にもう一刺し、今度は胸に深々と刺して澄を殺害して、その後は強盗の仕業に見せかける偽装工作をしてから急いで逃げていったのでした。そうして薫子は自分の家に戻り足の骨を自分で折ってアリバイ工作の仕上げをしたのです。

これは後で明示されますが、実はこれは薫子の単独犯行で、薫子は澄の支配によって自分と耕也の未来が潰されることに我慢がならなくなり思い詰めて耕也にも内緒で1人で計画を立てて澄の殺害を実行したのでした。だから耕也は仕事を終えて帰ってきたら薫子が家で足の骨が折れて苦しんでいるのを見て慌てて病院に連れていったら、病院で「澄が殺された」という連絡を受けてビックリしたものの、薫子のアリバイ工作を疑うこともなく、足が折れていた薫子が澄を殺せたはずがないと簡単に信じたのでしょう。そもそも澄が死に際に「黒い服の男を追いなさい」と叫んでいたという証言もあることも分かり、耕也は澄は強盗に殺されたのだと信じ、薫子を疑うことはなかったようです。

一方で薫子は自分の犯行がバレないかと戦々恐々としていたところ、自分が刺して死んだはずの澄がその後で「黒い服の男を追いなさい」と叫んでいたという証言があると聞き、驚きました。死んだはずの澄が叫べるはずもないし、娘に刺されたと知っているはずの母が「黒い服の男を追いなさい」などと言うはずもない。おかげで自分の犯行だという疑いを持つ者もいなくなり薫子は助かったわけですが、あまりに自分に都合が良すぎる状況に気味が悪くなり、もしかしたら父の剛一が自分の犯行だと気付いていて、自分が逮捕されないようにそんな偽装工作をしたのかもしれないと疑うようになった。

そのまま薫子は剛一氏に対して疑心暗鬼のまま年月を過ごすことになったようです。薫子が兄弟の中で自分だけ父親に認められていないという屈折した感情を抱いていたというのも、そうした疑心暗鬼の年月を積み重ねた結果なのでしょう。そうして23年が経ち、剛一氏から突然に「23年前の真実を明らかにする」「罪を犯した者は相応の報いを受ける」という旨で呼び出しがかかり、薫子は間違いなく自分の罪が暴露されて父から制裁を与えられるのだと恐怖した。実際は剛一氏は妖狐が澄を殺したと信じ込んでいたので薫子が澄を殺したなど想像したこともなく、自分の罪を子供たちに知ってもらおうとしていただけなのだが、自分が澄を殺したという真実を知っている薫子には自分への糾弾としか見えなかったのでした。

そこで薫子は追い詰められて、初めて夫の耕也に23年前に自分が澄を殺したという真実を告白したのでした。それで錯乱して呼び出しに応じることの出来ない薫子に代わって耕也が剛一氏の呼び出しに応じてやって来て、様子を窺うことにしたようです。薫子は完全に自分の犯罪が父にバレていると決めつけて錯乱していたが、耕也は妻の予期せぬ殺人の告白に慌てて動揺はしていたものの、23年前に自分達の将来のために罪を犯してしまった妻をなんとしても守り抜きたいという強い想いもあり、あくまで慎重でした。もしかしたら薫子の早とちりで、剛一氏の意図は全く違うのかもしれないとも思い、まずは剛一氏の意図を見極めようと思い、まずは慎重に様子を窺っていると、意外なことに晋と亮馬による澄の殺害未遂が暴露される流れとなり、耕也はますます事態が掴めなくなり困惑する。

そうしていると、その流れで今度は剛一氏の代理人のような立場の琴子が薫子のアリバイが不完全だと言って自分達に疑惑を向けてきたので、耕也はやはり剛一氏は薫子の犯罪を知っているのかもしれないと警戒し、いっそ晋と亮馬の殺害未遂暴露の話の流れにこちらから乗っかって、自分達も実は澄の殺害計画を立てていたのだが、薫子のアリバイ工作が失敗したので未遂に終わったのだと嘘の告白をして、もし剛一氏が薫子の殺害計画に気付いていたとしても「私たちも未遂だった」という逃げ口上にしようと布石を打った。もちろん薫子が澄を殺した決定的証拠を剛一氏が握っていれば万事休すだが、もし殺害計画に感づいていただけだったならば逃げきろうと耕也は考えたのでしょう。

ところが、その後、莉音が「澄は自殺したのであり、その自殺に剛一氏が関与した」という仮説を出してきて、それを琴子が受け入れて剛一氏に提示しようという話の流れになり、耕也はまた混乱する。先ほどまでの話の流れで、剛一氏が薫子の罪を糾弾しようという流れが濃厚だと思っていたのだが、どうもそうではないようだと思えてきたのです。もしかしたら剛一氏は本当に莉音の言うように23年目に澄を自殺に追い込む工作をしていたのであり、今回はその自分の罪を告白したいだけなのかもしれない。そう耕也は考えた。もちろん実際に澄を殺したのは薫子だということは耕也は知っている。だが剛一氏はそのことは知らず、自分の工作のせいで澄が自殺したのだと考えていて自分の行いを後悔しているのかもしれない。仮に澄が自殺でなかったとしても、剛一氏は澄は自殺するような精神状態の時にたまたま強盗に襲われて殺されたのであり、自分が澄を騙して追い込んでいたという事実は消えず、そのことを後悔しているのかもしれない。何にしても、どうやら剛一氏は薫子の犯罪は疑っていないようだという感触を耕也は得て、夜にはそのことを薫子にも連絡して、2人とも少し落ち着きを取り戻した。

そして翌日になって剛一氏に莉音の仮説を提示して、剛一氏がそれが正解だと認めた。そして、剛一氏が自分の罪を告白し、自分が悪性腫瘍に冒されていることも告白し「罪を犯した者には相応の報いがある」と教訓を垂れるのを見て、耕也は剛一氏が薫子の犯罪については何も知らず、自分の自殺教唆のせいで澄が自殺したのだと信じており、その自分の罪を告白することがこの会合の目的だったのだと確信した。実際はこの自殺説は剛一氏と琴子が作り上げた虚構なのであり、剛一氏が信じている真実は「妖狐が澄を殺した」ということの方なのだが、いずれにせよ剛一氏が薫子が真犯人だという真実を知らないという耕也の見立ては当たっており、耕也はこのまま剛一氏の話に乗っかって、23年前の澄の死の責任は剛一氏に負ってもらうという形で、薫子の犯罪は隠蔽しようと考えた。それで剛一氏も満足しているようだから何ら問題は無いと耕也は考えた。

ところが、そこに琴子が横槍を入れてきたのです。琴子は自殺説が虚構だということは知っており、更に「妖狐が澄を殺した」という剛一氏が信じる真実も実は虚構であるということを妖狐を取り調べて知っている。そして「薫子が真犯人である」という剛一氏が知らない真実も妖狐から聞いて既に知っている。だが、その真実を明らかにするのはこの場で琴子のすべきことなのかは疑問です。琴子が剛一氏から依頼されたのは「23年前に私が妻を殺した」と子供たちに信じさせてほしいというものであり、その依頼を真摯にこなすのならば剛一氏の話がたとえ虚構でも最後まで話を合わせるべきなのであり、「薫子が真犯人」などという真実をここで暴露する必要性は無いはずです。

だが琴子は「真犯人は薫子さんです」と簡単に真実を暴露してしまい、23年前の事件から現時点に至るまでの薫子と耕也の思考や行動をかなり正確に言い当てて説明してみせる。そして、もし剛一氏が澄を殺した責任を負うと言った時に真実を知る耕也が話を遮って薫子が真犯人だという真実を告白してくれたならば、自分はこんな暴露をする必要は無かったと言う。つまり、耕也があくまで真実を隠そうとするから琴子も真実を暴露するしかなくなったというのです。そして、その理由は、そうして真犯人である薫子の罪を隠蔽するということは「罪を犯した者は相応の報いを受けるべき」という剛一氏のこの会合を催した趣旨に反することだから、その立会人である自分はそれを見過ごすことは出来ないからだと琴子は述べる。

なるほど確かに筋は通っているが、剛一氏はあまりの予想外の展開に愕然としている。晋も莉音も啞然としている。だが耕也は内心の動揺を抑えつつ、まだ冷静を装って琴子に反論を試みる。琴子の仮説には重大な欠陥があるからです。それは澄が死ぬ間際に「黒い服の男を追いなさい」と叫んでいることの矛盾です。もし薫子が真犯人ならば澄がそんなことを言うわけがない。だから、やはり真犯人は黒い服を着た男の強盗なのだというのが耕也の主張です。確かに薫子のアリバイは不確かかもしれないが、それだけでは薫子が澄を殺した真犯人だとする根拠にはならない。琴子の言っていることは妖狐から聞いた事実をもとに組み立てたストーリーに過ぎず、何の証拠も無いし、そもそも妖狐の証言など何の証拠能力も無い。現状ではこれは薫子のアリバイの不完全さをもとに琴子が妄想したストーリーに過ぎない。しかもれっきとした捜査資料に載った証言である「澄が黒い服の男を追うように叫んでいた」という事実と薫子犯人説は矛盾する。これなら簡単に逃げ切れると耕也は思った。

琴子はこの「黒い服の男を追いなさい」という澄の言葉と薫子犯人説が矛盾する理由はちゃんと分かっている。何故ならその澄の言葉はそもそも薫子が犯人だと思わせないように妖狐が偽装工作した言葉だからです。だが妖狐がいくらそう認めたところで、妖狐の言葉では何の証拠的価値も無い。だから、妖狐の存在を抜きにしてこの矛盾を解消する虚構のストーリーを琴子は考え出さなければならない。だがそういうのは琴子の得意分野です。ここで琴子が思いついたのは、妖狐が薫子に疑惑が向かないようにこの言葉を発したという動機の部分をそのまま拝借して、主語を妖狐から澄に入れ替えたものでした。つまり、薫子に刺された澄が、それでも実の娘を守りたいという親心で、薫子に疑惑が向かないようにわざと男の強盗の仕業に見せかけようとして、最期の力を振り絞って「黒い服の男を追いなさい」と叫んだのだろうと琴子は主張したのです。

ただ、これも確かに澄の言葉と薫子犯人説の矛盾を解消したというだけであり、何の証拠も無く、琴子の妄想の域は出ていない。だが、この琴子の「澄が親心で薫子を庇った」という主張は耕也の逆鱗に触れてしまった。実際の澄と薫子のどうしようもない親子関係を知っており、その中でどれだけ薫子が苦しんでいたか知っていた耕也は、その挙句に殺人にまで至ってしまった薫子の告白を聞いたばかりで、薫子に深く感情移入して深く心を痛めていた。だから、薫子と澄の関係を知ったふうな感じで決めつける琴子の態度に激しい怒りを覚えたのだが、これはまんまと琴子の挑発に乗せられてしまっているのです。

耕也は声を荒げながら、それでもまだ最初は理路整然と、強盗ではなく計画的殺人であるなら澄が声を上げることなく殺そうとするであろうし、澄が死んだことも確認するはずであり、澄は声を上げることなく死んだはずで、しかし実際に澄が声を上げているのならばやはり犯人は突発的犯罪の強盗だったはずだと主張する。しかし、それに対して琴子は「薫子さんは初めての殺人で不慣れだったから澄さんの死を確認するのを怠って立ち去った」とか「一方で澄さんは娘を想う母の偉大な愛で最期の力を振り絞った」とか言って、あくまで薫子や耕也を愚弄するようなことを言って耕也の神経を逆撫でして挑発していく。そうして遂に耕也は琴子を言い負かそうとして「薫子は息が止まっているのをちゃんと確認したと言った!」と思わず口にしてしまう。

これで薫子が澄を殺した真犯人であったということはこの場にいる全員に周知の事実となってしまった。耕也は慌てふためき、晋と莉音は呆気にとられ、そして剛一氏はガックリと椅子に沈む。自分が罪を告白するために皆を集めた結果、なんと娘が妻を殺していたという剛一氏も想像だにしなかった真実が暴露されてしまったのだ。驚愕と共に激しい後悔が剛一氏を襲っていました。自分が楽になるために企図した催しのせいで、娘を追い詰めてしまったのですから。

だが琴子はこのような真実を暴露しながら、これ以上この件に関わるつもりは無いと言う。ここで起こったことは誰にも口外しない。当然警察に告発するつもりもない。ここで見たり聞いたりしたことは全て忘れると言う。では琴子は一体何をしたくてこんな真実を暴露したのかというと、それは剛一氏に「頼るべきでない力に頼って秩序に反した結果、このような真実に向かい合う因果が生まれたのだということを知ってもらいたかったから」だと琴子は剛一氏に説明する。

つまり、もし剛一氏が妖狐になど頼らずに自分の手で澄を殺そうとしていたならば、自分が殺すよりも先に薫子が澄を殺した時に、薫子の偽装工作は夫の耕也でも23年間見破れなかったのだから、おそらく剛一氏も見破ることは出来ず「妻は自分が殺すよりも先に強盗に殺されたのだろう」と信じたまま、何の罪悪感も抱かないまま天寿を全うしたことでしょう。その場合は剛一氏は自分の罪を告白しようなどと思うこともなく、このような会合を催すことも無かったであろうから、このように薫子の犯罪が露見することもなく、剛一氏が娘の人生を台無しにしてしまう結果にもならずに済んだはず。剛一氏が妖狐に頼った結果、妖狐に騙されて罪悪感を抱き続ける羽目になり、その罪悪感の解消のために催した会合の結果、妖狐が隠していた「薫子が澄を殺していた」という不幸な真実を知る結果となってしまい、剛一氏は娘の人生を台無しにしたという後悔を背負って死んでいく羽目となったのです。これは論理的に繋がった結果ではなく、あくまで「誤った行動の結果、生じてしまった因果」といえるものでしょう。怪異に頼るという過ち、罪を犯した結果、その報いを剛一氏は受ける結果となってしまったのです。まさしく「罪を犯した者は相応の報いを受ける」という真理を剛一氏は体現したのであり、琴子はその真理を知らしめるために真実の暴露をしたのだという。

逆に言えば、琴子はそうした報いを剛一氏が受けてくれるのであれば、それで満足なのであって、それ以外は特に何も望まないのだといえます。だから警察沙汰にする気も無いし、薫子や耕也を責める気も無い。俗世的な正義の実現などには何の興味の無いのです。琴子が求めるのはあくまで怪異と人間の関りにおける秩序の意地だけなのです。ただ、こうした琴子の信条は、自分が怪異に関わるタブーを犯してしまったという自覚をもっている剛一氏にしか理解は出来ない。この場にいる他の者、莉音や晋や耕也には意味が分からない。琴子が剛一氏に「頼るべきでない力に頼って秩序に反した」などと指摘しても何の話なのかサッパリ分からない。彼らの認識では剛一氏は「澄が自殺するよう精神的に追い込んだ」ということになっており、それが「不正規な手段」だとか「秩序に反した」などと言われるようなことなのかというと、どうもピンとこない。その結果、剛一氏が不幸な真実と向き合うという報いを受けたら琴子が満足してこのまま立ち去ると言われても、それが琴子の本心だとはどうにも信じられない。耕也もそのように思ったようで、このまま琴子と九郎を帰すわけにはいかないと言って、懐に忍ばせてきていた拳銃を取り出して2人に突きつけます。

耕也は琴子が信用できないと言う。その理由は、琴子が真実を暴露する必要は無かったのに暴露したからです。琴子は警察に訴えるつもりもないと言う。ならば何のために真実を暴露したのか。それは何か別の目的があるのかもしれないと耕也は言う。例えば恐喝などが考えられますね。そういうことを警戒して耕也はこのまま琴子と九郎をここから帰すのは危険だと言って銃を突きつけて拘束しようとする。もし抵抗するなら殺してしまってもいいと思っている。それぐらい耕也は精神的に追い込まれている。

ただ、ここで一見すると錯乱しているような耕也だが、意外に真実を点いたことを言っている。耕也は「最初からこの2人はおかしい」と言っているが、確かに琴子は少しおかしいのです。確かに琴子が真実を暴露した理由は耕也が邪推しているような恐喝目的などではなく、あくまで怪異の秩序に反した報いを受けたのだという事実を剛一氏に理解させるためでした。だが、そもそも剛一氏がこのような報いを受けているのは、琴子が真実を暴露したせいなのです。琴子が真実を暴露せずに剛一氏のシナリオ通りに協力してくれていれば、剛一氏も薫子も耕也も誰も傷つかずに済んだのです。結局、琴子が剛一氏に報いを与えて周囲の人々も不幸にしたのです。その目的は「怪異と人間の秩序を守るため」です。つまり、琴子は怪異と人間の間の秩序を守るためならば、人間など不幸になっても構わないという考え方の持ち主なのです。そこは確かに耕也の言うように「おかしい」のです。耕也が思わずそう叫んだのは、そうした琴子の異常性に無意識に気付いたからかもしれません。

結局、耕也は九郎の頭を撃ち抜いたが、九郎は生き返り耕也の拳銃を取り上げ、信じがたい現象を目の前にして耕也たちも「私たちは現世の法や秩序には干渉しません」という琴子の言葉を信じて、2人が去っていくのを見送るしか出来なかった。その翌日、真実を知られてしまったショックで薫子は自殺未遂を起こして入院生活となり、晋も莉音も23年前の過ぎた出来事を今さら警察沙汰にする気も無く、耕也は入院生活の薫子に寄り添っているという。そして剛一氏は自分が秩序に反する行いをした結果、娘を不幸にしてしまったという現実に打ちのめされて倒れてしまい、そのまま入院生活となり腫瘍も悪化して寿命も縮めてしまった。結局、剛一氏の犯した過ちとは、実は23年前に妖狐に頼ったことなのではなく、今回の件で琴子を頼ったことの方にあると言えます。何故なら、剛一氏が報いを受けたのは妖狐に頼った結果生じた因果のせいもあるのでしょうけど、その報いを直接剛一氏に与えたのは琴子だからです。最終的に真実を暴露する判断を下したのは琴子であり、琴子はそれを秩序を守るためには必要な犠牲だという強い信念を持っていますが、剛一氏が関わったのが琴子でなければ、このような苛烈な結果にはなっていなかったのではないかとも思う。そうなると、やはり琴子に関わったのが剛一氏の失敗だったとも思えてくる。

ただ、剛一氏本人はたとえ未遂であったとはいえ妻の澄を殺そうと考えて、関わってはいけない存在である妖狐に妻の殺害を依頼したこと自体は紛れもない事実であり、その罪は報いを受けるべきものだという信念は変わっていない。いや、むしろ今回の一件でその信念はより強固なものとなったといえる。だから現在自分がこうして苛烈な報いを受けたまま死んでいくことには納得しており、その報いを自分に与えた琴子のことも恨んではいない。ただ、そんな剛一氏が再び琴子と九郎を病床に呼び出して語ったことがある。それは、今回の一件に実は九郎の従姉の桜川六花が関わっていたという意外な事実でした。

実は剛一氏はもともと六花と面識があり、彼女が不死と運命決定の不思議な能力を持っていることも知っていた。そして2ヶ月前にたまたま六花と再会した剛一氏は怪異と取引した結果の過去の罪を償いたいという今回の一件の悩みを六花に相談してみたところ、六花から琴子と九郎に相談したらいいと助言されたのだという。つまり剛一氏が琴子に今回の件を依頼してきたのは六花の差し金だったということになる。だが剛一氏はもしかしたら自分は六花によってそうする未来に導かれたのかもしれないとも言う。そして九郎は、もしかしたら六花は今回の一件に自分と琴子を関わらせることによって、琴子がいかに秩序維持のためには苛烈に人間を無情に扱うのかということを知らしめたかったのではないかと推測する。つまり、六花は琴子が恐ろしい存在であると言うことを九郎に気付かせて、九郎が琴子から距離を置くようになることを狙っているというのだ。そして、そのために剛一氏を利用したのかもしれない。それはあくまで九郎の推測だが、これまでの六花の言動から考えて、おそらくそれが正解なのだろう。

さて、これで次回はいよいよこの第2期の最終話ということになりますが、どうやら1話だけの単発エピソードで締めるようです。おそらく最後は今回のラストシーンを承けての六花絡みの話になりそうですね。琴子と六花の対決で2期を締めて、まだまだ面白い原作エピソードもありますから3期も是非やってほしいものです。出来れば次回のラストで3期の告知があると嬉しいんですが、さて、どうなりますでしょうか。

 

 

ヴィンランド・サガ SEASON2

第11話を観ました。

今回はトルフィンの出番は無くて、前回に続いてクヌートがメインの話でしたが、そこにケティルやオルマルやレイフも絡んでくるお話でした。兄が死んでデンマーク王も継ぐことになったクヌートが、自分の本領であるイングランドの統治にも金が必要ということで、デンマークでの収入を上げねばいけなくなり、豪農から農地を接収していこうという方針を打ち出す。

そんなことは知らずに王の見舞いにやってきたケティルは王が亡くなったと聞いて農場の後ろ盾を失ったと思い愕然とするが、なんとか新たにデンマークの王になるというクヌートに謁見して新たな後ろ盾になってもらおうと頑張ります。その途中で町で騒動を起こしたバカ息子のオルマルの喧嘩相手に詫びを入れるのだが、そこでケティルが出会ったのがなんとレイフで、ケティルはレイフが「トルフィン」という名の奴隷を探しているということを知り、自分の農場にも「トルフィン」という奴隷がいるということを伝えて、レイフも興味を持ちケティルの農場に一緒に行くと言い出し、トルフィンがレイフと再会することになるのかもしれないと、観ていて期待が高まります。

だが、その前にケティルがクヌートへの謁見が許され、この意外なほど早く許された謁見はどうやらクヌートには何らかの思惑があってのことみたいだが、この謁見の席でオルマルがクヌートの従士になりたいなどと身の程をわきまえないことを言い出して周囲を呆れさせる。クヌートも呆れていたようではあるが、その一方でそうしたバカなオルマルを利用してケティルの農場を接収しようと画策するつもりみたいです。どうするつもりなのかは謎ですが、ケティルを何らかの罠に嵌めようとしている様子です。

せっかくケティルのおかげでトルフィン達が奴隷から解放されそうなところなのに余計な邪魔はしないでほしいところですし、レイフがトルフィンに会いに来れそうなのにそれも邪魔しないでほしいところです。クヌートもクヌートで大変なんでしょうけど自重してほしいものです。まぁ今回も色々と笑える場面も多かったし、みんな登場人物が生き生きしてて良いですよね。怪しい雲行きではありますが物語も色々と繋がってきてそろそろ大きく動き出しそうで楽しみです。