2023年冬アニメのうち、2月8日深夜に録画して2月9日に視聴した作品は以下の4タイトルでした。
もういっぽん!
第5話を観ました。
今回も凄く良かったですね。心揺さぶられる良い場面が多いし、試合のシーンの作画も良かった。まぁ高校女子柔道の作画なので、呪術廻戦みたいにヌルヌル動いてもそれはそれでおかしいし、ああいう表情とか手の動きとか要所に絞った作画で良いんです。今回は特に未知の試合の時の一生懸命な感じが良い。
今期ここまでは話の内容がよく分かっていて特に毎回面白いといえば「虚構推理」とこの「もういっぽん」です。今週分なんかでは脚本のレベルは「虚構推理」の方が上だとは思うんですが、それでもこれだけ良い場面が多いと、現状はこの「もういっぽん」の方が上なのかなと思います。あと、やっぱり試合の場面が見せ方が巧いから燃えますし、「虚構推理」みたいな高等技術は使ってないけど、やっぱり脚本がいちいち丁寧で納得感が高い。余談にはなりますけど、実は今日発売の「週刊少年チャンピオン」の原作漫画の最新話が神回だったんですが、これがなんとこのアニメ最新話で描かれた未知の試合が伏線として回収される展開だったんですよね。今回のアニメのエピソードは連載開始当初のエピソードで、4年ぐらい前に掲載された分ですから、随分とロングパスを受けての伏線回収ですが、アニメ放送回と原作最新話の伏線回収を同じタイミングで合わせてくるのが凄いと思いました。しかも両方とも神回だし、やっぱり脚本が凄いなと思いますね。
一貫して描かれているのは未知たちの成長であり、原作漫画の最新話では3年生になった未知たちが1年生の時に比べて成長して強くなったことが描かれていますが、今回のアニメ第5話で描かれた話では、未知が中学時代の時よりも強くなっているということが描かれていて、青葉西に入って柔道を再開した意味はあったのだということが示されています。今回の未知の試合こそが序盤の集大成であり、永遠との出会い、早苗の誘い、夏目先生との約束などが全て今回報われた形となり、そして今回の後半から中盤に入り安奈の加入という新展開へと繋がっていくわけです。また今回は前回からの流れで永遠と天音のそれぞれの成長や変化も描かれ切っており、これも序盤の集大成となっていました。
まず冒頭は前回ラストの続きで、永遠と天音の試合が残り10秒となったところから始まるのだが、ここでまずは中学時代の2人の回想シーンを入れてきます。柔道部に入部して間もない頃の永遠に天音が、永遠が左組みだから相手の右襟を持った左手を引き手にしての右の一本背負いという変則技もあるというようなことを教えている場面です。これは割と高等技術みたいですが、永遠は柔道に夢中になっているようでどんどん新しい技を吸収していっていたようです。そんな永遠に親切丁寧に教えてくれていたのが天音で、永遠は天音のことを慕っていました。そうして覚えた新しい技で別の柔道部員に一本勝ちをして永遠が「柔道って気持ちいいですね」と嬉しそうに天音に言うと、天音は「本当に強い相手を投げたらもっと気持ちいいよ」と笑顔で教える。
この時点での永遠はその天音の言葉の意味が分かっていないようだった。柔道初心者の永遠から見れば周囲にいる人はみんな自分よりも強い相手ばかりだったからです。しかし、おそらく部内のレギュラー決定戦で天音に必死で挑んで、その天音に教えてもらった変則の右の一本背負いで天音を投げ飛ばして勝った時、初めて天音の言っていた言葉の意味が分かったのでしょう。本気で戦ってみて永遠は天音こそが他の対戦相手とは別格の「本当に強い相手」だったということが分かった。そしてその天音を投げ飛ばして勝った瞬間、これまで味わったことのない気持ち良さを感じた。これが天音先輩の言っていた「本当に強い相手を投げた時の気持ち良さ」だったのだと思い、永遠は湧き上がってくる嬉しさに素直に従い、笑顔を弾けさせた。これは天音先輩が教えてくれた気持ち良さなのだから、きっと先輩も今までみたいに一緒に笑顔で喜んでくれる。そう思って天音の方を振り向いた永遠だったが、天音はひきつった顔で永遠を睨み「あんたのその顔、忘れないから」と怒りの形相を向ける。
そして、部内では「天音が氷浦に見下されたと怒っていた」と言われるようになる。永遠はそれを聞いて傷ついた。見下した覚えなど全く無く、永遠は天音に教えられた通りに「強い相手を投げたら気持ちいい」柔道が正しい道だと信じてやっていただけでした。だが天音本人がその永遠の柔道を怒っているというのなら、自分はもしかしたら勘違いして間違った柔道をしていたのかもしれないと永遠は思った。当の天音も喋ってくれなくなり、ますます永遠は困惑し、そう思うとどんな柔道をしたらいいのか分からなくなり、迷いの入った柔道をした結果、永遠は大会で惨敗してしまい、レギュラーを奪いながら不甲斐無い柔道で負けてしまって、こんな弱い自分がマグレで勝った挙句に天音に対してバカにしていると誤解されるような態度をとってしまったのが良くなかったのだと思い、ますます天音に対して申し訳ない気持ちになってしまった。
それで永遠はとにかく天音に謝って仲直りしてもらいたいと思ったが、こんな天音をガッカリさせてしまった自分が謝っても許してもらえないだろうと思い、天音と試合をしてマグレではなく普通に勝てるぐらい強くなって、ちゃんと勝ったら笑って謝って仲直りしようと思った。それで天音が部活動を引退し卒業していっても、永遠は黙々と柔道に取り組み、それなりに以前よりは強くなれたと思えた。黒帯も取れた。だが、どういう柔道をやったら天音に勝てるぐらい強くなれるのか永遠には分からなかった。結局、永遠は天音に教えてもらった柔道しか知らないのだが、それを天音自身に否定されたような形になってしまっており、永遠は自分の進むべき柔道の道を見失っていた。そうして中学最後の大会に臨み、そこで青葉中学と対戦し、未知と試合をすることとなり、未知が「一本勝ちしたら気持ちいい」と言って笑顔で柔道をしているのを見た。永遠はその未知の姿にかつて自分に柔道を教えてくれた天音の姿を重ね合わせて、やっぱり自分のやるべき柔道なこれなんだと思った。それで永遠は青葉西に進学し、未知と早苗と一緒に柔道部を復活させ、共に練習を重ねて強くなった。そしてこうしてインターハイ予選の団体戦の中堅戦で天音と対戦することになったのでした。
永遠の方は部内レギュラー戦で天音に勝った時に笑みが漏れたのは無意識であり、そもそも天音が永遠に笑われたことを怒っているということは永遠は知らないので、何か行き違いがあって自分が天音先輩を見下していると誤解されてしまっているのだと思っている。だから天音に勝ったら笑顔で謝って仲直りしようと思っている。一方で天音の方は自分が「本当に強い相手を投げたら気持ちいいよ」と永遠に教えていたにもかかわらず、いざ自分が永遠に負けた時に永遠の笑顔を見て悔しさのあまり、永遠に教えていたのと真逆の行動をとってしまい、永遠を突き放した挙句に永遠を追い込むような陰口まで叩いてしまった。その結果、永遠が調子をボロボロに崩して惨敗したのを見た時、自分の心の弱さが情けなくてたまらなくなった。それで永遠に謝って仲直りしたいと思ったが、こんな情けないままの自分が謝っても永遠とは元の先輩後輩の関係には戻れないと思った。それで天音は今度はちゃんと永遠に勝てるぐらいに自分の弱さを克服して、永遠に勝った時に笑顔で謝って仲直りしようと思い、霞ヶ丘高校に進んでも柔道を続けて、仲間と共に強くなってきた。そして、こんな自分と一緒に柔道をしてきてくれた仲間と共に永遠に勝ち、青葉西に勝ち、全国大会に行くことを目標としている。
この2人の試合も残り10秒となり、永遠は天音に教えてもらった変則の右の一本背負いで勝負をかける。だが中学の部内レギュラー決定戦でもこの技で永遠に投げられた天音はこのパターンは想定済みで、返し技で永遠を倒そうとする。だが永遠は天音が返し技をかけてくることは折り込み済みで、小内掛けに切り替えて天音の意表をつく。これに慌てた天音であったが、この勝負だけは何が何でも負けられないという執念でこらえきる。だが、それによって重心が思いっきり前にかかった天音の大きく開いた懐に、狙いすましたように永遠が潜り込み、再びの変則の右の一本背負いで遂に天音を投げ飛ばし、完璧な一本勝ちを決めたのでした。実は小内掛けもフェイントであり、永遠の狙いは最初から一貫して、天音から伝授された必殺の右の一本背負いだったのでしたが、手の内を見せすぎているこの技をあくまでフィニッシュに持ってくるとは天音にも予想外で、完全に意表をつくことが出来たのでした。両者の実力は全くの互角であったが、かつての天音との絆への永遠のこだわりがたまたま勝利を引き寄せたのだといえるでしょう。
そうして勝敗がついた後、しばらく両者は息も荒く、無言のまま動かない。勝って謝ろうと思っていた天音は負けてしまって謝る機会を逃してしまったのだが、永遠と互角の激闘を繰り広げたことで、かつての自分の弱さは克服出来たように思えた。今なら謝れるのではないだろうかと思い、思わず永遠に声をかけようとする。一方、永遠は勝って謝ろうと思っていたのだから、いよいよ謝れる場面なのですが、天音の教えてくれた技で、天音の教えてくれた柔道を青葉西でも実践してきて、その結果勝てたことで万感が胸に迫ってきて、天音の方に振り向くと「ありがとうございます」と感謝の言葉が口をついて出てしまい、涙が溢れてくる。笑顔で謝ろうと思っていたのに、涙の感謝になってしまった永遠であったが、自分が謝ろうと思っていたところに永遠の方から感謝されてしまって面食らった天音は、永遠が自分のことを恨んでなどおらず、昔のままの永遠なのだということが分かって安堵します。そして、それなら自分も永遠の良き先輩であった頃の自分に戻らなければいけないと思い、中学時代の後悔を清算するかのように「バカ!笑うとこでしょ」と永遠に笑いかけて、本当に強い相手を投げ飛ばした時は気持ち良くて笑えばいいんだと諭す。そのセリフがあの部内レギュラー決定戦の後で言えていれば、天音も永遠も回り道をしなくて済んだのかもしれない。しかし、その回り道のおかげで天音は霞ヶ丘の仲間と出会い、永遠は青葉西の仲間と出会うことが出来たのです。
そうして2人は仲直りし、仲直りのための謝罪はもはや不要となったが、それでも互いに謝る。お互いが何について謝っているのか詳しくは理解できていないし、理解する必要ももはや無いのだが、とにかくこれまで相手を苦しめていた何かがあったのは確かであり、それによって本人も苦しんでいた以上、謝罪を受け入れておくのが礼儀でした。そして、謝罪をするために勝とうと思っていた以上、もはや勝負も必要は無くなるのだが、2人は再戦の約束をする。天音も永遠もやはり本当に強い相手と試合をして、投げ飛ばして勝って気持ちよくなりたい。それが自分たちの目指す柔道なのだと再確認したのです。だから強い相手であるお互いと今後も戦い続けていきたいという想いを新たにしたのでした。
なお、この謝罪はもともと2人とも笑顔でしたいと思っていた。だが永遠は既に泣いてしまっていたので笑顔の謝罪という予定は狂ってしまった。一方で天音は予定通りに笑顔で謝罪を終えた。勝った永遠が涙の謝罪となり、負けた天音が笑顔の謝罪となったわけであるが、実際は天音は初志貫徹のために永遠の前では必死で涙をこらえて笑顔を維持していただけでした。永遠との間の問題は負けてもスッキリ片付いたが、天音が勝ちたかったのは永遠に謝るためだけだったのではない。霞ヶ丘の仲間のために勝ちたかった。自分の手で青葉西との勝負を決めて、全国大会への弾みをつけたかった。それが出来なかったことが悔しくて、永遠に背を向けて霞ヶ丘の仲間の方に向き直った途端、天音の目には涙が溢れてくるのでした。
そんな天音に対して「後は任せて」と手をとる霞ヶ丘の白石と、永遠の勝ちを受けて1勝1敗となった試合を自分の手で一本勝ちで決してやろうと張り切って登場した未知との大将戦が始まる。観客席からは親友の安奈も応援してくれており、その声援を聞いて未知はますます張り切る。そうして未知と白石の激しい組手争いから攻防は始まり、未知は積極的に技をかけにいく。
ここで早苗は未知が中学時代やさっきの1回戦の時のように、技をかける時に技名を叫んでいないことに気付いた。いつもの未知とは違うのだ。何かがおかしいのではないかとも思えるところだが、夏目先生はむしろ冷静になっているのではないかと分析する。普段、思わず技名を叫んでしまっているのは気負い過ぎているからであり、冷静に考えたら技名なんて言わない方が良いに決まっている。それがこれまで出来ていなかったのは、気負い過ぎて冷静さを欠いていたからでしょう。それが今は冷静になれているから技名を言わないのだ。ではどうして冷静になれているのかというと、それは勝負のかかった大事な局面だから集中力が高まっているからではないだろうかと夏目先生は言う。よく考えたら、さっきの1回戦にしても、敗戦処理が多かった中学時代の試合にしても、未知は勝敗のかかった大事な局面での試合はあまり経験したことが無い。だからあまり集中することなく気負いばかりが空回りすることが多かったのではないだろうか。
この試合でも未知は「1勝1敗で自分に回ってきたら美味しいんじゃない?」なんて冗談めかして言っていたが、そういう状況を嫌がる様子は無かった。案外そういう状況でこそ集中力を高めるタイプだったのかもしれない。何せ今まで未知は3人で試合に臨んだことが無いから「1勝1敗」で畳の上に立った経験自体が初めてなのだ。その「未知」の状況に案外と未知はフィットしているのかもしれない。ただ、普通はそういう勝敗のかかった大事な局面はプレッシャーを感じて冷静ではいられないことが多い。未知にだってそういう側面はあるだろう。だが、それがこの試合においては悪い方向に出ていないのは別の要因もあるからではないかと夏目先生は分析する。それは安心感があるからだという。この場面での未知にとっての安心感とは、1回戦の時には無かった観客席からの親友の安奈の声援ではないかと夏目先生は言う。いつも傍にいる仲間が見てくれているという安心感が、ほどよくプレッシャーを緩和してくれて、チームの勝敗のかかったこの局面の緊張感がちょうどよく冷静さと集中力を発揮させるだけの作用に留めてくれているのではないか。
そういう夏目先生の分析を聞いて、早苗も永遠もこの試合の未知ならば勝ってくれるんじゃないかと希望を持ち声援を送る。未知もその声援を受けて勢いづくが、しかし相手の白石も霞ヶ丘のレギュラーを務める実力者であり、未知より身体もだいぶ大きく、組手争いは霞ヶ丘で一番だという。しかも白石は永遠に負けてしまった天音が目標として掲げていた残り2つ「青葉西に勝つ」「全国大会に行く」という夢をなんとか天音のために叶えてやりたい、特に「青葉西に勝つ」という目標だけは天音の代わりに自分が叶えるしかないと思っており、むしろこれまで天音が霞ヶ丘柔道部を引っ張ってくれた優しさに報いるために何かをしてあげたいと思っている白石にとっては、ここで自分が未知を降して青葉西に勝利することこそが自分のやるべきことだと心に期していました。そういうわけで次第に組手で優勢となった白石は未知を攻め立てるようになり、未知は劣勢となります。
そこで未知は劣勢をひっくり返そうとして強引に大外刈りにいくが、大外返しで逆に倒されそうになる。だが、その場面が中学時代の自分と未知の試合で自分の大外返しが未知に返された時に似ていると思い出した永遠が咄嗟にアドバイスして、未知はアクロバチックな返し技で白石を投げ飛ばす。これを白石はなんとか凌ごうとして背中から落ちないように身体を捻って落下する。この状況を見て観客席の安奈が「一本!一本!」と叫ぶのを聞いて、今度は早苗が同じ中学時代の永遠と未知の試合の時のことを想い出して焦ります。あの時、未知の技で永遠が投げられた際に早苗が「一本!」と叫んでしまったせいで未知が一本を取ったと勘違いして攻撃をやめてしまい、その結果、永遠に締め技を喰らって負けたのです。早苗があの失敗から成長していたので、それが未知にはご法度だということが分かっていた。だから安奈が勘違いして「一本!」と叫んでしまったのはマズいと思った。特に安奈の声は未知の耳によく届くだろうから、未知がそれに影響を受けて、あの時のように攻撃を止めてしまうのではないかと早苗には思えたのでした。
だが、判定は一本ではなく「技あり」であったが、未知は攻撃の手を緩めておらず、すぐに寝技をかけようとしていた。これは白石に返されたのだが、それにしても未知が安奈の声に惑わされずに冷静に次の攻撃を仕掛けようとしていたことに早苗も永遠も驚いた。やはり未知は冷静であり、そして中学時代よりも成長していたのだ。
そして試合の方も「技あり」を取った未知が俄然優勢となった。このまま時間内を逃げきれば未知の勝ちであり、試合は青葉西の勝利となる。だが観客席の安奈からの「まだ時間ある!一本決めろ!」という声援に応えて、未知は積極的に攻め続ける。無理せず時間を使うという戦い方の方が勝利の確率は高いのだが、未知はあくまで一本勝ちを狙う柔道を選ぶ。てっきり未知が時間稼ぎをすると思って未知の攻勢を予想していなかった白石も焦り、未知は白石を追い込むと一本背負いを完璧に決めて、白石の背が畳に叩きつけられるが、これは惜しくも場外で無効となる。
ここで残り時間は10秒となり、時間を上手く使えば十分逃げきって勝てる。勝負に徹すればそれが冷静な判断なのかもしれない。だが、確かに今の未知は冷静ではあるが、それはあくまで未知の柔道スタイルを守った上で冷静であるというだけのことだ。未知の柔道はあくまで一本勝ちを狙って攻める柔道であり、それは冷静になっても変わることはない。それを理解して早苗も永遠も未知に一本勝ちを狙いにいくよう声援を送る。そして対戦相手の白石も未知が決してこの局面でも一本勝ちを狙ってくることを理解し、そんな相手から逆に一本を取るしか自分の勝つ道は無いのだと覚悟を決めて積極果敢に攻め返す。そうして最後は、白石の大外刈りをフェイントにした支え吊り込み足への変化技で未知は残り1秒で一本負けしてしまったのでした。
だが、試合が終わった直後、青葉西の3人は爽やかな笑顔が湧き上がってきた。そして、試合後少し経って、もう少し慎重に守れば良かったかもしれない、やっぱり自分は相変わらずダメだと反省する未知に対して早苗は「相変わらず」と笑い、永遠は「いつも通り、とても気持ち良かった」と言葉をかけ、いつも通りの未知の柔道、いつも通りの青葉西の柔道で負けて悔いは無いと伝えます。それは永遠にとってはもともと天音に教えてもらい、未知に出会ったことで再び歩み出した道であり、未知たち3人にとってこれから青葉西の皆が共に歩んでいく柔道の道なのでした。
そして早苗は未知が「一本」と見間違えるような「技あり」を取った後でもちゃんと寝技で攻め続けようとしたことを挙げ、未知はちゃんと中学時代よりも成長しているんだと指摘してくれる。中学時代は一本にこだわるあまり、何でも一本に見えてしまって冷静な判断が出来ていなかった。でも今の未知は確かに冷静に逃げ切るような器用さは相変わらず無いけれども、ちゃんと冷静に一本を確実に取るために攻めることが出来るようになっている。それは間違いなく成長なのであり、その成長は青葉西に入って永遠と出会い「永遠と一緒に練習すれば強くなれる」と言っていたのが実現しつつあることの証であり、夏目先生の指導を受けるようになり、先生が未知たちが強くなる手助けをしてくれると言ってくれていた約束が果たされつつあることの証でもある。だから、これから青葉西も未知も早苗も永遠も、みんなどんどん強くなっていくのだと希望を持てる。
そうして未知たちは自分達に勝った霞ヶ丘の強さを称えて、霞ヶ丘の次の試合の応援に行こうということになるが、未知はその前にさっき自分に声援を送ってくれた安奈の剣道の試合の応援にも行く。そして団体戦は終了し、霞ヶ丘は結局、団体戦は3位で終えて、未知は霞ヶ丘の3人に賛辞を贈ります。そうして再戦を誓い合ったりして両校のメンバーで打ち解け合うが、永遠はまだ何か天音に言いたそうにして天音の背を見つめる。すると天音は仲良さそうにしている両校のメンバーの様子を見て、永遠の方に顔を向けて、青葉西に行って良かったねと言う。永遠は自分が青葉西に行ったことを天音が不満に思っていた様子だったのが気になっていたようです。それで青葉西の柔道部の良さについて説明しようとして、どう言ったらいいのか分からず黙っていたのですが、天音は未知達の柔道を見て、永遠がしっかりとした道を見つけたことを理解し、それを認めてくれたのでした。天音の言葉でそれを感じ取った永遠は涙を浮かべて喜ぶのでした。
そして帰り道、電車で気持ちよさそうに爆睡する未知たちを見て寂しそうにする安奈の顔が映り、その後、インターハイ予選も終わり1学期の中間テスト期間となり、部活は禁止となる中、剣道部を全国大会に導いた1年生エースとして鼻高々のはずの安奈がやはり未知たち柔道部の3人を見て寂しそうです。やはり未知と幼馴染の安奈は未知に対して想うところがあるみたいです。そして武道場でテスト期間だというのに勝手にトレーニングをしている未知を見つけると、安奈も竹刀の素振りを始める。そして安奈は突然に未知に向かって「もし私が剣道部を辞めるって言ったらどう思う?」と問いかける。
ここで今回は終わり、次回に話は続きます。まぁ第1話冒頭のシーンとか、OPとかEDとか観てると分かることだからネタバレでも何でもなくて安奈は柔道部に入るという展開は分かり切ってるんですが、このあたり原作未読なのでどういう経緯や理由で入部するのかはよく分かりません。この安奈加入のドラマは本題は次回であり、今回はよく分からないので、次回を楽しみに待ちたいと思います。
トモちゃんは女の子!
第6話を観ました。
今回はまずトモの16歳の誕生日ということで皆が誕生日プレゼントをくれますけど、淳一郎がサングラスというのがまず笑える。普通は女の子の誕生日プレゼントにグラサンは贈らない。やはり男友達扱いなんですね。そしてみすずが参考書で、キャロルは金の延べ棒というのも個性が出てます。
その後、みすずがトモを女の子らしくイメチェンさせることになり、ここはいちいちトモの反応が男子みたいで面白い。ウィッグを「ヅラ」と言ったり、自分で「女装」と言ってしまったりする。それで化粧もして女の子らしい服を着てウィッグも被ると普通に美女になり、普段のトモとは別人のようになるが、どうにも男子が凄く上手に女装してる感が抜けない。だがとりあえず丁寧語で喋ってみると違和感もだいぶ軽減される。さすがに本当に女子なだけはあります。トモもなんだか嬉しそうです。
だが、その格好のままコンビニに買い出しに行くという試練を課せられてしまい、そこでたまたま淳一郎に遭遇してしまう。トモは焦りまくるが淳一郎が気付かなかったので安心して買い物を済ませる。だが淳一郎は一瞬トモだと思うのだが、そんなはずはないと自分に言い聞かせていた。そしてトモがコンビニを出たところで転んでしまったので、相手がトモではなく一般女性だと思って接する淳一郎が普段と違って優しい対応なので困惑する。
それで一緒にちょっと散歩することになり、淳一郎に綺麗だとか好きなタイプだとか言われてトモは舞い上がる。だがふとしたことで淳一郎が女でありながら大事な友達でもある相手、つまりトモのことで昔みたいに接することが出来なくなってきて悩んでいるということを打ち明けてくる。そんな淳一郎に別人の女になりすましたトモはその子との将来をちゃんと考えてほしいと言うのですが、淳一郎は「とりあえずぶっ倒したい」とか言うのでトモは困ってしまう。結局そのまま別れることになったが、トモは後から考えてみると、綺麗だとか言われるよりも淳一郎にはもっと別の言葉を言ってもらう方が自分は嬉しいのではないかとか考えたりします。
この前半パートは超ボーイッシュ女子のトモが女装、いや女の子らしい格好をするという、この作品の強みが一番出たギャグパートであり、非常に面白かったです。一方後半パートは球技大会の話で、トモが男子チームに入ってドッジボールをするという、これはトモのボーイッシュぶりが限界突破した感じの話で、これはこれで面白かったが、これは普通にギャグアニメとしてハイテンションで面白かったという感じで、主人公がトモという男っぽい女子である必要は無い感じでした。柔道部の郷間先輩が異様に強キャラ感があってキャラが立ってて良かったです。
ただ、大会が終わった後、トモは久しぶりに淳一郎と思いっきりバカやって楽しかったと言い、このままずっと一緒にバカなことをやって楽しくやっていけたらいいのだけど無理なのだろうなと自嘲する。やはり男子と女子ではずっと男友達のままではいられないのです。一方、淳一郎は大会の後、郷間先輩に勝負を挑まれ、負けたもののかなり良い勝負をして、大会にも出ず部活にも入らない淳一郎がいったい何のためにそんなに強くなったのかと問われる。それで淳一郎は自分は自分を引っ張ってくれた男友達のようだったトモに憧れ、トモみたいになりたくて強くなったのに、トモが成長して女の子になってしまったのでどうしていいのか分からなくなってしまっているのだと思い、そんな自分はやはり昔みたいに弱いままなのではないかと思います。
このように今回はラストで遂に淳一郎の心中が明らかとなりました。これまで淳一郎がいくら何でもトモを男友達扱いしすぎるのがどうも変ではあったのですが、それがスッキリと説明がついたというわけではない。むしろスッキリと説明がつかないモヤモヤした気持ちを抱えているということが分かったのが良かった。トモを女として意識しすぎて照れ隠しで男として扱っていたという倒錯した心理ではなく、人生の目標や指針を見失って困惑している普通の若者であるということが分かって、淳一郎は変態ではなくて身近な男子だと思えて安心しました。
そしてトモも本当は淳一郎と昔のままの関係でいたいという想いは持ちながらも、それはもう無理なのだと思い未来に一歩踏み出そうとはしている。そういう意味では道を見つけられず立ち止まっている淳一郎よりもトモの方がやはり少し大人で、確かに少し強いのかもしれませんね。ここから後半戦は2人の成長、特に淳一郎の成長が描かれていくのだと思います。
転生王女と天才令嬢の魔法革命
第6話を観ました。
今回はまずアニスとユフィリアがアニスの魔学の共同研究者であるティルティのもとに行き、前回のドラゴン退治で手に入れたドラゴンの魔石をどうやってアニスの身体に取り込むのかという話をします。これがどうやら刺青のようにして背中に貼り付けるような感じみたいで、どうしてアニスがその方法が良いと思ったのか説明が無いのでよく分からないんですが、おそらく原作ではそこらへんの魔法理論的な話はあるんでしょうけど、アニメでは尺の関係で省かれているか、あるいは次回あたりに説明があるのかもしれません。アニスが前回ドラゴンから受けた呪いの話も、何だかよく分からないままで、今回アニスは「知識を授けられた」みたいなことも言ってましたが詳細は不明です。
ティルティは今回から本格登場ですが、キャラの背景もそんなには詳細には説明はされておらず、アニスとの掛け合いの妙でキャラの魅力が表現されています。こういうのはイリアも同様であり、ユフィリアに関しても細かい状況の説明よりも、とにかくキャラの独白やセリフなどでキャラの魅力を描いていくのがこの作品は上手いです。
そのユフィリアは今回は出番は少なめでしたが、前回のラストで完全にアニスとの絆が出来上がった印象でしたので、今回ももう完全に心が通じ合っており、アニスを信じ切っている様子でした。その上で今回はアニスがティルティやレイニと浮気してるような感じになったので、ちょっとユフィリアが可哀想な気もしましたね。まぁユフィリアは物語の中で特別な存在でしょうから、このまま蔑ろになるなんてことは無いんでしょうけど。
ティルティとの打ち合わせの場面の後は、アニスが父である国王から呼び出しを受けて行ってみると、そこにはアニスの母である王妃もいて、アニスは王妃のことが苦手みたいで叱られるのを怖がりますが、今回は例のアルガルドのユフィリアに対する婚約破棄事件の調査において、どうもアルガルドと恋人関係にあると思われるレイニ嬢の様子がおかしいということで、アニスが国王夫妻に協力を求められる展開となります。それでどうやらレイニの心臓に魔石があって、レイニが無自覚に魅了の魔法を使って周囲の人々を惑わしていたということが分かる。
ただアルガルドがレイニに魅了されてユフィリアとの婚約を破棄したというわけでもなさそうで、レイニには何か企むという意思も無く、むしろレイニは誰かに利用されていたっぽい。そしてレイニを利用していたのがアルガルドと魔法省長官で保守派の筆頭のシャルトルーズ伯爵っぽいんですよね。このあたりの詳細な事情は今回は描かれなかったのでまだ不明です。そもそも魅了の魔法がどういうものか、どうしてレイニの体内に魔石があるのかもよく分からない。
そういうわけで、今回は実はあまりストーリー的には核心が描かれておらず、次回への繋ぎ回という感じでしたが、次回も詳細に描かれるのかどうか分かりません。基本的に今回はキャラの魅力で押し切っている感があり、とにかくキャラデザインが良くて作画も良いし、裸のシーンも多かったし、エロい描写も多く、言動含めてキャラの描き方もすごく上手なので、キャラの魅力だけで1話丸ごと押し切れてしまえるのがこの作品の強みです。それでいてストーリーもしっかり面白いので上位に食い込めているわけなのですが、ただ、ここに来てちょっとキャラ押しが強いのが気になってきました。
確かにキャラの魅力は強いのですが、やはり序盤ほどはキャラのインパクトで全て許せてしまえるというムードではなくなってきている。アニスの破天荒キャラも1話時点では肯定的印象しか無かったが、こうしてクールの折り返しで破天荒押しをされてもちょっと鼻につくようになってきた。ティルティの狂気じみた感じや、イリアの毒舌キャラも、インパクトが強ければ強いほど、何度も見ていくうちに、いかにもオタク向けの見え透いたキャラ売りに見えてきてしまう。そう思わせないためにはキャラを記号的に描くのではなく、ストーリーの中で意味ある描き方で見せていくしかない。しかし、この作品の場合は割とディテールとかストーリーを省略する傾向が強いので、キャラが記号的に表現されがちなんですよね。描写の積み重ねが無くて唐突に決めゼリフ的なものが出てくる印象です。まぁそういうものの最悪の事例が今期では「スパイ教室」なんですが、さすがにこの作品はあれよりもストーリー面でかなりマシなので、あそこまで低評価になることはないですが、それでもこういう傾向が続いていくと1クールもたせるのが厳しくなってくる。1クールというのは大変なんです。
もちろん現状は問題は無いです。キャラの魅力は十分だしストーリーも面白い。しかし、やはりどうしてもキャラ重視でストーリー軽視の傾向が見えており、このままクール後半が推移するのであれば、上位から落ちるとまではいかないでしょうけど。他の上位作品が終盤盛り上げてきた場合は取り残される可能性は結構ありそうですね。まぁ結局のところストーリーが盛り上がれば良いのであって、次回から盛り上がりそうですから期待はしています。ただ、ここまでのエピソードを見てきた印象として、キャラ押しでやれてきてしまえているだけに、このままキャラ押しで乗り切ろうとしてるのではないだろうかとちょっと疑念を持ってしまったのです。実際、ストーリーを盛り上げるといっても、どうせ物語の完結まで残り6話で描けるわけでもなく、果たして上手く盛り上がるのかは未知数です。だからこそ安易なキャラ押しに逃げる可能性も無いわけではないでしょう。出来れば上手く話を盛り上がる方を重視してほしいものだと思います。
ツルネ ーつながりの一射ー
第6話を観ました。
今回は「いきあい」についてのお話でした。「息合い」というのは弓道で「会」つまり弓を弾き絞った状態で静止している状態から「離れ」つまり矢を発射する瞬間までの間にする呼吸法のことです。ここでちゃんと呼吸せず息が止まってしまったりすると身体が固くなり、良い射が出来ないといわれています。これが「息合い」の一般的な定義ですが、前々回、地方大会の敗因が自分の射形の乱れにあると気付いた湊に対して滝川は、自分の射形を見つけるのは至難の業であり、だからこそ5人で引く意義があり、1人だけで頑張るのではなく他の4人を助ける、それを「いきあい」と言うのだと諭しました。この滝川の言う「いきあい」は、いわゆる弓道の「息合い」を指すのかというと、もっと広い意味だとのことです。もちろん一般的にそのような意味合いの言葉はありませんから滝川の独自の解釈なのでしょう。ただ同じ音の言葉ですから本来の「息合い」の持つ意味合いもその「いきあい」には含まれているのでありましょう。このあたりは弓道の極意になるのでしょうから、一言で表現できるものではない。実際、滝川も明確な定義を出来ているわけではない。この物語の作者でもそれはハッキリとは言葉に出来ないのであろうし、私にもよく分からない。だからここでそれを明確に定義出来るとは思っていません。
ただ、呼吸法としての「息合い」の目的は「身体が固くならないように力をほどよく抜くこと」であると考えると、「息合い」の本質は呼吸法そのものではなくて、そうした適度な脱力であると考えるならば、自分1人が勝つこと、自分が良い射をしたいと必死になるよりも、自分は仲間を助けるために弓を引くのだと思う「いきあい」の考え方もまた、変な気負いを取り除いて適度な脱力による良い射を生むという意味で「息合い」の一種とも考えられます。
ただ、それは仲間との関係性や、その場の状況次第ともいえます。仲間との関係が悪ければ、逆に「仲間のために弓を引く」というのは自分1人だけで弓を引く時よりも身体が固くなってしまうかもしれません。また「仲間のために絶対に負けられない」という状況、例えば負ければ全てが終わりみたいなマイナス思考しか出てこないような状況に追い込まれれば、仲間と一緒に弓を引くことで余計にプレッシャーを感じてしまうでしょう。逆に「ただ大切な仲間に良い射をしてもらいたい」と純粋に思えるならば、身体の力も適度に抜けてしっかり深く呼吸をして良い射が出来るでしょう。そうなると、普段からの仲間との関係の作り方や弓道と自分の人生の関係まで含めての「いきあい」ということになります。
結局、こういうことは明確に言語化して定義など出来ないものです。そして、そういうものを表現するためにこそアニメーションのような映像芸術は存在します。今回はそういう「いきあい」を映像で表現しようとしたエピソードであり、それが上手く表現出来たのかどうかは明確には分かりません。ただ、観て心が動いたのであれば、それはその人には伝わったのであり成功しているのではないかと思います。私は今回の映像を見て心が動きましたので、私には伝わったのだと思います。
今回、その「いきあい」とは何なのかについて1つのお手本を示す役割を演じてくれたのは、風舞高校弓道部の女子部員3人組の妹尾、花沢、白菊でした。この「ツルネ」という作品は基本的に男子部員5人を描く物語であり、女子部員3人はサブキャラなのですが、実はかなり3人とも魅力的なキャラであり、この3人の活躍エピソードが見たいと思っていたので、今回のエピソードはそういう意味でだけでも純粋に嬉しかったです。
といっても、あくまで今回もメインは男子部員たちの話なのであり、特に今回は湊が基礎練習を我慢して続けた結果、遂に滝川に成長を認められて的前に立って弓を引くことを許可してもらえるようになるまでの経過が描かれました。それは湊が滝川の言っていた「いきあい」の極意をちょっと会得したということなのですが、それは湊自身が何か明確に言語化出来るほど深く会得したわけではない。だから、どうして湊が滝川に認められたのかは明確には描かれていない。
自分のためではなく仲間のためになると信じての基礎練習の繰り返しによって射形の乱れが直ったというのもあり、滝川に隠れて弓を引くようなことも無かったことから「自分が上手くなりたい」という利己的な焦りも無くなったと判断されたというのもある。だが、それらは滝川が湊を認めた理由なのであって、湊が成長した要因そのものではない。湊自身は滝川が言った「いきあい」という言葉の表面上の意味合いは理解はしていた。自分のためではなく仲間のために弓を引くべきだという理屈も理解はしていた。だがそれが感覚として実感は出来ていなかった。そういう状態であった湊が今回、女子部員3人が出場した市民大会の弓道の団体戦の試合を見た後、思うところがあり、1人で射形を作っているのを滝川が見ていて「ぎゃふん」と言って湊に的前に立つことを許可した。つまり、女子部員たちの姿に湊は「いきあい」のお手本を感じたのだといえます。それが具体的にどういうものかは表現出来ないのでしょうし、完全に自分のものに出来たとまでは言えないのでしょうけど、それでも湊にとって大きな転機にはなったのでしょう。
そもそも女子部員たちが市民大会の団体戦に出ることになったのは、花沢が市民大会のパンフレットを持ってきて他の2人に見せて、一緒に出ようと誘ったからでした。そして3人での団体戦出場となり、一番最初に弓を引く「大前」は花沢、二番目に弓を引く「中」は白菊、最後に弓を引く「落」は妹尾というチーム構成となります。ここで試合のシーンに合わせて、この大会に至るまでの3人のドラマがフラッシュバックで挿入されていきます。
実は花沢が市民大会に出ようと考えたのは白菊を元気づけるためでした。高校に入って弓道を始めた白菊は県大会で生まれて初めての弓道の公式戦に臨んだ際、体調不良もあって団体戦で1回も的中させることが出来ず、試合後は泣き崩れていました。その後も元気の無い様子だった白菊を見て、花沢はトミー先生から市民大会のことを教えてもらい、これに出ることにすれば白菊も新たな目標に向けて頑張ることで元気が出るのではないかと考えて、それで市民大会に出ようと言い出したのです。
この回想シーンの後、大前の花沢が最初の射で的中させる試合の場面となり、市民大会に向けて最初に動き出したのが花沢だったという回想シーンとシンクロする描写となります。そして回想シーンで花沢から市民大会のパンフレットを受け取った白菊の場面にシンクロさせるように、中の白菊が花沢に続いて弓を引き、初めて試合で的中させる。花沢から貰ったバトンをしっかり白菊が受け取り努力の成果を見せたのです。そして白菊は射を終えると背を向けて立つ花沢の方向に向き、後ろに並んで同じように妹尾に背を向ける。そこに回想シーンが挿入され、妹尾視点で花沢と白菊が背を向けて前を歩く姿を見る場面にシンクロする。それは2人が市民大会に向けて明るく語り合う姿でした。それを背後から嬉しそうに黙って見つめる妹尾も、元気のなかった白菊のことを心配しており、そんな白菊のために骨を折ってくれた花沢を素敵だと思い、2人が仲良くしているのが嬉しかった。だからそんな2人がせっかく出る市民大会で良い射が出来るように自分も頑張ろうと思った。そんな妹尾が落として見事な的中を決める試合の場面にそこで切り替わる。
そうして3人が二射目、三射目と更に重ねていく場面に、市民大会に向けての練習などの回想シーンで彼女らが語り合っている場面が挿入されていくのだが、これが花沢と白菊が妹尾の良いところを語り合う場面、白菊と妹尾が花沢のよいところを語り合う場面、花沢と妹尾が白菊の良いところを語り合う場面となっており、彼女たちが自分の仲間の良い面を認めているだけでなく、自分の仲間の良い面が他の人に認められていることが自分が認められるよりも嬉しいと思っていること、また、自分の仲間同士が認め合っていることが何よりも嬉しいのだということが分かる。これはどうしても「仲間であると同時にライバル」という関係になりがちな男子とは違う女子特有の距離感だが、「仲間のために弓を引く」ということが重視される弓道の場合は、変にギスギスしたりバチバチするような男子同士の距離感よりも、こういう女子っぽい距離感の方が本来良いのかもしれない。弓道というスポーツが女子に人気なのも、こういうところにも関係があるのかもしれませんね。
ただ女子同士でもギスギスしたりギクシャクすることもよくありますから、こうした3人の親密さというのも市民大会に向けた練習を通して培われたものなのでしょう。花沢は大前として中の白菊に良い射をさせてあげたいと思って市民大会に臨み、そんな2人に良い射をさせてあげたいと思い落の妹尾はしっかり繋ごうとする。そんな妹尾の想いは射を通じて花沢にも白菊にも伝わり、2人は妹尾に感謝し、妹尾にも良い射をしてもらいたいと思う。お互いがお互いのために弓を引き、自分の射だけ良ければいいなんてことは考えていない。その想いは射に表れ、この仲間の射だから弓が引きやすいと全員が思っていたのでした。そうして普段の練習の時よりも多くの的中を重ねる3人の姿を見て、滝川も「いきあい」の1つの理想形だと褒める。
そうして女子3人は市民大会を3位という快挙で終え、来賓で来ていた西園寺先生も褒めてくれる。湊は「いきあい」について西園寺先生に問うが、西園寺先生は県大会の決勝では湊たち5人も今日の女子3人と同じような「いきあい」が出来ていたと言ってくれる。但し、それをたまたま出来るのではなく、常に出来るようになるのが真の「いきあい」なのだとも西園寺先生は言う。そして、それは師から学び自ら考え会得することによって出来るようになるのだそうだ。
その師である滝川だが、最後に今回の市民大会の打ち上げの席で義兄の蓮に「良い感じに力が抜けて指導者らしくなった」と褒められる。それに対して滝川は「昔は自分が上手くなることしか考えなかったが、今は自分の上達よりあいつらが上手くなるのが嬉しい」と言う。つまり滝川も自分の射よりも、教え子たちに良い射をさせることが大事だと思えるようになったのであり、「いきあい」が出来ているのだといえます。そして、だからこそ「良い感じに力が抜けて」おり、良い「息合い」が出来る状態となり、滝川自身の射も良くなっているのだといえます。