2025年秋アニメのうち、12月22日深夜に録画して12月23日に視聴した作品は以下の3タイトルでした。
笑顔のたえない職場です。
第12話を観ました。
今回を含めて残り2話となりました。次回で最終話ですが、原作漫画は連載中でありますので次回で物語が完結するわけではありません。原作は単行本で既刊13巻まで出版されており、今期のアニメの内容はだいたい6巻ぐらいまでの内容で構成されているみたいですので2期をやるだけの原作ストックは十分にあると思われます。
まぁとりあえずこの作品は素晴らしくて、「既に続編制作が決まってる」とか「まぁ当然続編は作られるだろう」という類の作品を除けば、今期で最も続編を作ってほしいと思える作品なので、次回の最後に「2期制作決定」なんていう告知があることを願いたいと思います。ただ次回のサブタイトルが「笑顔のたえない職場です」なんていう、いかにも「終わり」って感じのサブタイトルなので、あんまり2期は期待しない方がいいのかもしれない。まぁ1クールで綺麗に終われる作風だし、1クールで終わるのもそれはそれで美しくて良いとも思います。
今回はまず「昴へ」の第2巻が発売となり、双見のところにもクローバー編集部から献本が届いた場面から始まります。そこに滝沢先生から電話があり、滝沢先生のところにも「昴へ」の献本が届いていたらしくて、双見は「おめでとう」と言われる。その上で滝沢先生は双見と梨田と、更に双見の元アシ仲間の早池峰和も一緒に滝沢の家でピザパーティーをやろうと持ち掛けられます。どうも双見の2巻発売と、和のエロ漫画の単行本発売と、梨田の新連載開始を一度にお祝いしたいみたいです。
その日の夜は仕事の予定も無かったので双見はその招きに応じて梨田と一緒に滝沢先生の家に行く。すると滝沢先生と和が待っていて、ピザを注文し、それを居間で4人で囲んで乾杯します。滝沢先生はちょうどピザを喰いたくなったので1人じゃ余ると思って3人を呼んだとか言ってますが、もともとジャンクフード嫌いの滝沢先生ですから、おそらく急に3人のお祝いをしたくなって準備の要らないピザパーティーにしたのでしょう。
双見たちにとっても滝沢先生の家の居間はアシスタント時代から馴染んだ場所だったので懐かしがりますが、梨田は双見と滝沢先生が親しそうにしている和のことを自分だけが知らないことに文句をつける。和は梨田がアシスタントを辞めた後で代わりに入ってきたので梨田とは入れ違いであり面識は無かったのです。基本的にクズ人間である梨田は和と打ち解けようとしなかったが、和が梨田の前作のファンだったとかSNSもフォローしてるとか言うと簡単に篭絡される。なんともチョロい。
結局、ピザは滝沢先生が多く注文しすぎたので余ってしまい、先生も「やっぱり、ちょっとはしゃいでたのかもな」と反省する。双見たちが単行本が出たり新連載が始まったりしたのが先生も嬉しくて、ちょっとテンションが上がりすぎていたということを認めたのです。どうして先生がそんなに嬉しかったのかというと、自分のアシスタントをしていた子たちが「漫画家になれたこと」が嬉しかったのだという。
アシスタントをやっている子というのはみんな漫画が好きで、もともと漫画家に憧れて、漫画家になりたくてやっている子ばかりです。でも皆が漫画家になれるわけではない。芽が出ずに諦めて田舎に帰ったり、失踪したりする子もいる。そんな子達を滝沢先生も多く見てきたのでしょう。そんな中で同時期にいたアシスタント3人が揃って漫画家になれたということが先生は嬉しいのです。この嬉しさというのは、例えばアシスタントの瑞希が漫画家になることを諦めてしまっており、そんな瑞希に何もしてやれていない双見にはまだ未経験のタイプの「嬉しさ」だといえます。
では滝沢先生はいったい何が嬉しいのかというと、「弟子3人が成功したのが嬉しい」「才能のある弟子を持てて嬉しい」「弟子が良い漫画を描いていて嬉しい」という想いはもちろん無いわけではないのでしょうけど、主に先生が嬉しいのはそういうことではないようです。「どんな業界でもそうだけど、プロって実力だけじゃやっていけないから」と先生は言う。それはつまり、弟子たちが「実力」以外の別の要素を掴んだというのが師匠として嬉しいということを意味している。
漫画業界においては「実力」というのは「才能」を指す。漫画というのは純粋に才能の世界だからです。だが滝沢先生は「漫画を描くのは才能だけでも出来るけど、漫画家になるには才能以外の要素が必要」と言っているのです。だから先生は「弟子に才能があって成功したのが嬉しい」と言いたいのではなく、「弟子に才能に加えて別の要素が備わっていて成功したのが嬉しい」と言っているのです。もちろん「才能」があるのは最低条件であり、それはスタート地点です。だがそこから「プロの漫画家」になるためにはまた「別の要素」が必要なのです。
滝沢先生は元アシスタントの3人が自分のもとを巣立っていってからの全てを見守ってきたわけではないので、その「別の要素」を実際に3人が備えるようになったのか正確に把握しているわけではない。ただ、こうして成功しているということは、必ず3人ともその「別の要素」を手に入れているに違いないと確信しているのです。そうでなければ漫画家としてやっていけるはずがないという確信が先生にはある。
そして、3人が成功したことそのものよりも、3人がその「別の要素」を手にしていることの方が先生は嬉しいのです。それはつまり、その「別の要素」は「成功」や「才能」なんかよりも人生にとって有意義なものだからです。それが何なのか?和は「運」なのではないかと先生に問いかけますが、先生は「運」ではなく「縁」だと言う。「人生は誰に出会うかで変わる」と先生は言います。実際、滝沢先生自身も18歳で漫画家デビューした後、連載が打ち切りになって完全に行き詰ってドン底に沈んでいた時期、現在のクローバー編集長の立浪さんがヒラの編集だった時に出会い、ペンネームを変えてイチからやり直すきっかけを与えてもらった。それで人生が変わったのだという。
そうした「自分を理解して応援してくれる人」との「縁」が自分をプロの漫画家にしてくれた。滝沢先生は「成功したこと」よりも「そういう人と出会い縁を持つことが出来た」ということが自分の人生を豊かにしてくれた、そのことの方が嬉しいのです。そして、自分の弟子たち3人も「成功した」ということはきっと誰かとそういう「縁」を築くことが出来たのであり、そのことが師匠として心から嬉しいのです。
そうした滝沢先生の話を聞き、双見は自分にとっての「縁」は佐藤さんとの「縁」だと言う。滝沢先生がドン底の時に立浪さんが救ってくれたように、双見が腐っていた時に引っ張り上げてくれたのが佐藤さんだったからです。すると梨田は自分にとってのそうした「縁」は連載打ち切りで落ち込んでいた時にスピンオフ連載の話を持ち掛けてくれた浅倉や、背中を押してくれた滝沢先生、そして連載打ち切りの後にファンレターをくれたゆきちゃんだと言う。また和は「私はその都度色んな人達に助けてもらってきました」と言い、双見や滝沢先生もその中に含まれるという。滝沢先生は「つまりは、しんどい時や落ち目の時に助けてくれた人との縁は今後も大事にするべき」「そして恩を返すべき」とまとめる。
つまり、どうやら特に「辛い時期」にこそ重要な「縁」というのは生じるようです。「縁」そのものは常に生じる機会はあるのでしょうけど、特に人生の転機となるような重要な「縁」は辛い時期にこそ生まれるようです。まぁよく考えれば「辛い時期」だからこそ人生を根本的に変革しようという気持ちになるものなので、そういう時期に生じた「縁」が人生の転機となる重要な「縁」になるのは当たり前なのかもしれませんが、そんな落ち目の時期の自分にあえて関わってくれた相手は、とてもかけがえのない相手に思えるものであり、その恩を返したいと思うのは当たり前といえます。
ここで、この場に双見と梨田だけでなく、早池峰和というキャラも居るというのがちょっとポイントです。この早池峰和というキャラは以前にも登場しましたが、エロ漫画家です。実はこの早池峰和はこの「笑顔のたえない職場です」の作者のくずしろ氏の別作品「少年少女18禁」の主人公でもあります。その作品においては和が16歳の頃にエロ漫画家を目指して奮闘する姿がコメディータッチで描かれているのですが、ここで和がエロ漫画家を志すきっかけとなった事件が描かれている。
和はもともと真面目な女子中学生だったのだが、第一志望の高校の受験で落ちてしまい、それで落ち込んでいたところ、幼馴染の男子の倫吾が慰めてくれて、気晴らしに読むように長編名作小説を渡してくれたのだが、それがカバーを付け替えただけの中身がエロ漫画であったのを倫吾が間違えて渡してしまったために、和は初めて読んだエロ漫画の魅力に目覚めてしまい、その後「エロ漫画家になりたい」と言い出し、エロい言動を繰り返すようになり倫吾を困惑させることになる。
「少年少女18禁」はそうした16歳の頃の和と倫吾と周囲の人たちのドタバタを描いた作品だったのですが、この「笑顔のたえない職場です」では成長して大人になり、滝沢先生のアシスタント時代を経て晴れてエロ漫画家となった早池峰和が登場しているわけです。その和が「しんどい時や落ち目の時に助けてもらった縁によって人生が変わった」と言っている中には、間違いなく倫吾のことも含まれている。「少年少女18禁」では勘違いコメディーとして描かれていますけど、高校受験失敗でドン底だった自分を助けようとしてくれた倫吾のお蔭で「エロ漫画を描きたい」と思えたことは和にとって最重要な「縁」であったはずです。
ここで重要なことは、和はそれ以前は「エロ漫画を描きたい」なんて全く思っていなかったということです。もともと「エロ漫画を描きたい」なんて思ってもいなかった、いやそもそも「描きたいもの」なんて無かった和が高校受験という挫折の時に生じた「ちょっとした縁」によって「エロ漫画を描きたい」と思えるようになったのです。
この「笑顔のたえない職場です」という作品中では「描きたいものがある=漫画家の才能がある」とされてきた。厳密に言えば瑞希がそう主張し、誰もそれに対して強く否定していなかったので、なんとなくそれが「真理」であるかのような印象になっていた。だが和の例を見る限りでは「描きたいもの」は「才能」によって生じるのではなく「縁」によって生じるみたいなのです。つまり「描きたいものがある」というのが「才能」という考え方はやはりどうも間違っている。私はやはり「才能」というのは「描きたいものを形にできる能力」なのだと思う。「描きたいものがある」のが「才能がある」ということではなく、「描きたいものが無い」から「才能が無い」ということではないのです。「描きたいもの」は例えば和と倫吾のように、誰かとの「縁」を結ぶことによって生まれてくるのです。特に「人生の転機」となるような「ドン底」の時期に誰か手を差し伸べてくれる人と「縁」を結ぶことによって「描きたいもの」「やりたいこと」は生まれてくる。
だから滝沢先生は「プロって実力だけじゃやっていけない」「縁が無いとやっていけない」と言うのです。プロ漫画家として必須の「描きたいもの」は才能で生まれてくるものではなく、誰かとの「縁」から生まれてくるものだからです。その「描きたいもの」を形にする「才能」や「実力」はもちろん必須であり、それもまた「覚えれば誰でも出来ること」などではなく、特別な資質を持った人間にしか出来ないことではあるのですが、創作の大元となる「描きたいもの」自体は才能によって都合よく湧き出してくるものではない。誰かとの「縁」があってこそ生じてくるものなのです。例えば双見が言っていた「描きたいもの」としてのバレーボール部や手話などの話は、双見が過去に結んだ「縁」から生まれたものです。
一方、双見が滝沢先生宅に行ってしまった後、打ち合わせ日を変更したことを失念していた佐藤さんが塔子を連れて双見の家にやってきてしまい、仕方ないので瑞希と3人で双見の家で夕食を食べて双見の帰りを待つことになったが、その際に佐藤さんが瑞希が双見のアシスタントをやることになったきっかけを質問してきたので、瑞希は「たまたまです」と答える。
自分が「描きたいもの」が無くて「漫画家としてやっていく才能も覚悟も無い」と落ち込んでした時に「たまたま」双見から電話がかかってきて、それを「救い」のように感じてアシスタントを引き受けたのだ。そのタイミングでなければ、落ち込んでいなければ断っていたかもしれないと瑞希は言う。確かに「落ち込んでいた側」から見れば、そういう「たまたま」が「縁」というものなのでしょう。双見のとっての佐藤さんも「たまたま戸田さんが異動になって新しく担当になった佐藤さんが理解のある人だった」ということであり、それが「縁」というものだと感謝しているのでしょう。
しかし、そこから話題はそれぞれの「縁」についてになり、塔子が双見の監修をやるようになったのも、佐藤さんが塔子を知ったのも全て「たまたま」だったという話題で盛り上がる。そして佐藤さんも「私も双見の担当になれたのはたまたまだったから」と言い、意外な事実を打ち明ける。実は最初は佐藤さんは双見と「縁」が無かったのだという。漫画家志望の若手の担当を決める際に編集部内でジャンケンをして決めるらしいが、双見の担当を狙っていた佐藤さんは戸田さんにジャンケンで負けて双見の担当になれなかったのです。だがその後、「たまたま」戸田さんが別の編集部に異動になって、そこですかさず佐藤さんは戸田さんに直談判して双見の担当を引き継いだのです。
佐藤さん視点では「たまたま戸田さんが異動になったから」だということになるのでしょうけど、こういうのは「たまたま生じた縁」とは言わないですね。佐藤さんは双見との「縁」を強引に結びにいっている。「運」や「縁」はやってくるのを待つものだと考える人も多い。特に落ち込んでいたりドン底に居る人はそう考えがちです。でも「運は掴みにいくもの」「縁は結びにいくもの」という側面も確かにある。自分に巡ってきた「縁」は相手側にとっては「強い意志で結びにいった縁」なのかもしれない。それはきっとその相手のことを「好き」だからです。相手が頑張っていることを知っているから、何とかしてあげたいと思って「縁」を結びにいく。立浪さんは滝沢先生の頑張りを見ていたのだろうし、倫吾も和の頑張りを見ていたのだろうし、佐藤さんも双見の頑張りを見ていたのだろう。
双見だって最初に瑞希に電話をかけた時は本当に「たまたま」だったかもしれないけど、その後の瑞希の頑張りを見ている。そうしてドン底に居た瑞希と双見の「縁」は強固なものとなっていった。そういう「縁」から瑞希の「描きたいもの」は生まれてくるはずです。「描きたいものが無いから自分には才能が無い」などと思う必要は無い。まだ瑞希にはそうした「縁」が足りていなかっただけであり、ずっと「描きたいもの」が無いなどということはないのです。才能など関係なく「縁」によって「描きたいもの」はきっと生まれてくるはずだからです。
そうして瑞希と佐藤さんと塔子が夕食を食べていると、双見と梨田が酔っぱらって帰ってきて、佐藤さんは双見と打ち合わせを始める。そこで佐藤さんは双見にサイン会の話をする。「昴へ」の第2巻の発売を記念して書店で双見のサイン会をやるのだという。しかも場所は双見の故郷の盛岡だとのこと。しかし双見には全てが初耳でした。おそらく佐藤さんが小心者の双見がプレッシャーを感じて原稿作業に支障が生じることを危惧して黙っていたのでしょうね。
そういうわけで双見は数日後、心の準備も出来ないまま佐藤さんと2人で新幹線に乗って盛岡に向かうことになった。双見は「サイン会に誰も来なかったらどうしよう」とマイナス思考に陥ってひたすら怯えていましたが、佐藤さんは事前応募制で定員は埋まってるのでそんなことになるわけがないと言い、書店さんも応援してくれるとか、読者も嬉しいはずだから濃いファンになってくれるとか、サイン会は各方面にメリットがあることなのだと双見に説明する。
そして「普段、孤独に描いている漫画家にとって、ちゃんと原稿の先に読者がいると実感できるのは一番のモチベーションになる」とも言う。そういえば梨田もゆきちゃんからのファンレターを貰った時も同じようなことを言っていました。漫画家はただ自分の「才能」と向き合って孤独に漫画を描くだけの人生ではないはずです。漫画家であるということは他人と「縁」を結ぶことだと滝沢先生も言っていた。読者との「縁」を結ぶにいくのも漫画家のとって大事なことであるはずなのです。そう思った双見は「自分の漫画を楽しんでくれている読者に会ってみない?」という佐藤さんの言葉を聞いて覚悟を決めた。
だが盛岡に到着すると雨が降っていて、また双見は弱気になってしまう。事前に来ると言っていても、やっぱり雨だから面倒臭くなって来ないんじゃないか。自分の漫画なんかのために雨の中わざわざやって来るわけがない。そんなふうにまたマイナス思考に陥り「もうダメだ」「おしまいだ」と喚き出す。しかし書店に着き、サイン会会場に行くと100人もの人たちが行列を作って待ってくれていた。応募があまりに多かったので当初の倍の人数に増やしたのだそうです。
人見知りの双見は最初はビビってしまったが、サイン会の来た人たちはみんな目を輝かせて「昴へ」への愛を語ってくれた。きっとこの人たちにとっては「昴へ」との出会いはかけがえのない「縁」なのです。その「縁」から「やりたいこと」が生まれてくる大切なものなのです。双見はこれまで発行部数などの「数字」では「昴へ」の評判は把握していましたが、こんなふうに生身の読者が自分の作品を大切に想ってくれているということを初めて実感し、感動した。そうして最初は硬かった双見の表情も次第に柔らかくなり笑顔になっていく。そんな双見の様子を見て佐藤さんも嬉しそうにするのでした。
サイン会には青森からねこのてもやって来てくれたりして、ようやく全員にサインを終えたが、100人の来場予定者のうち1人だけ来なかったという。雨だから仕方ない、むしろ雨の中99人来たのだから凄いと書店員さんは言ってくれるが、双見はもしかしたら何か事情があって遅れているのかもしれないと言い、もし書店の都合が良いのならこのままもう少し待ちたいと申し出る。時刻はもう20時を回っていたので、あまり遅れると帰りの新幹線が無くなってしまう可能性があったが、それでも双見は100人目の来場者を時間の許す限り待ちたいと思った。
そうして双見が書店で待っていると、閉店ギリギリに100人目の来場者が遅れて来店してくる。そして店員にサイン会に来たことを伝えようとするのだが店員と上手くコミュニケーションが取れない。だが、その様子を見た双見はその店員と話している少女の耳に補聴器が装着されているのを見て彼女が聴覚障碍者であり、店員がマスクをしているので読唇で相手の言葉を理解することが出来ずコミュニケーションに難儀しているということに気付く。
双見は以前に佐藤さんに「描きたいこと」を列挙した際に「手話」を題材とした漫画も描いてみたいという話をしていたが、それは自分の家族にも聴覚障碍者がいて、自分も手話が出来るからだと言っていた。そういう家庭環境で育った双見だからこそ、一瞬でその少女が何を困っているのか察知することが出来たのでした。それで双見はその少女に駆け寄ったが、手話は使わなかった。その少女はちゃんと発語が出来ていたので後天的な難聴だと思われ、その場合は覚えるのが面倒な手話を使わず読唇や筆談で済ますことが多いからです。難聴の人と直に接してきた双見ですから、そのあたりの見極めも素早く、双見は大きく口を開いて発声しジェスチャーもまじえて「オーケー!オーケー!サイン会!セーフ!」と簡易な言葉を笑顔で伝えたのでした。
そうして双見はその少女にサインし「昴へ」の2巻を渡すことが出来た。サインの宛名は「及川奏音」という。彼女はこの「笑顔のたえない職場です」の作者くずしろ氏の別作品「雨夜の月」の主人公の高校1年生の女子高生です。ちなみに「雨夜の月」はアニメ化が決定しているそうです。その主人公の及川奏音は聴覚障碍者です。子供の頃ピアノを習っていたが小学5年生の時に難聴になってしまいピアノを辞めたというキャラ設定になっている。双見が察したとおりの経歴でした。なお「雨夜の月」でも奏音は盛岡在住という設定になっています。
双見は帰り際、奏音が傘を持っていないのに気付いて自分の傘を渡してやった。それで双見は奏音が昼間からずっと雨が降り続いていたはずの盛岡市内を移動してこの書店に来るまでに何処かで傘を無くしたのだとを察した。それだけ慌てていたのだろう。聴覚障碍者の奏音が1人でここまで来るのは大変であり何かアクシデントもあったのだろう。遅れても電話で連絡することも出来ない状況で焦ってやってきたのは大変なことだっただろうと察した双見は、それだけ奏音が「昴へ」を大切に想ってくれているのだと実感した。
おそらく奏音は「昴へ」の主人公の三月が女流棋士を目指すという夢に挫折した後、昴との出会いをきっかけに形を変えて昔の夢を再び追いかけようとしている姿を、難聴のためにピアノの夢を挫折した自分と重ねて見ているのだろうと思われるが、そんな奏音の個人的事情はもちろん双見は知らない。だが、きっと普段の生活の中でも辛いこともあるのだろうということは想像はついた。そんな中で「昴へ」の物語が奏音にとって何か前を向くきっかけとなる「縁」を生んでいるのだとすれば作者としてこんなに嬉しいことはないと双見は思った。そう思えたことが嬉しくて、双見は佐藤さんに向き直り「佐藤さん!私、サイン会やって本当に良かったです!」と感謝の言葉を伝えるのでした。そういうところで今回のお話は終わり、次回の最終話に続きます。
デブとラブと過ちと!
最終話、第12話を観ました。
今回はまず夢子と出川が梨香子のマンションに行くと聞いた前園課長は、今は梨香子は不安定だから止めた方が良いと言う。出川は前園が無責任だと詰りますが、夢子は前園課長を信じると言う。そして今は前園の助言を受け入れて梨香子に会うのは止めておくことにして、夢子は前園に「傷は必ず癒える」「愛を信じて」と励ます。出川も前園に「一度ちゃんと梨香子と話した方が良い」と助言します。
しかし前園は「心の傷はそうもいかんだろう」と言う。それがどうも夢子は引っかかる。一方、梨香子のマンションでは結城が梨香子にどうしていきなりバーベキュー会場に来たのかと問い質していたが、梨香子は結城が夢子と接触していたことを責め「彼女の記憶が戻ったら困るのは君なんだぞ」などと言う。まるで結城が梨香子側に立って夢子を監視しているかのような印象だが、梨香子は結城の本心がそうではないことを疑っているようです。結城の本心は梨香子から夢子を守ることだと梨香子は思っており「圭介もあの子の味方なのね」と結城を詰る。
どうも梨香子は夢子に嫉妬している様子であり、結城も前園も夢子の味方だと言って怒っている。自分がこんなふうになったのも夢子のせいだと恨んでいる様子で、それなのに結城も前園も夢子の味方なので激怒し、ベランダから飛び降りて死のうとしたりする。だが息子のユウが悲しむと結城に言われると死ぬのを思いとどまる。どうも梨香子はかなり情緒不安定な様子ですが、前園はさっきの夢子や出川の言葉が胸に残って思い切って梨香子に会おうとマンションにやってくる。だが梨香子は寝ており、結城は行き違いで部屋におらず、呼び出しても返事が無いので前園は帰ってしまう。
その後は夢子がこれまでの物語内容を振り返ったり、皆に感謝の印にスイーツを作ったりする。そして最後に企画部にイケメンの新入社員hが入ってきて夢子に弟子入りしたいと言ってきたところで最終話は終わります。最後に「To be continued?」というように続編制作の可能性を示唆するようなテロップは出ましたが、ハッキリと続編告知はありませんでした。
機械じかけのマリー
最終話、第12話を観ました。
今回はアーサーの記憶喪失を治すための解毒剤を手に入れるためにマリーがメイナードの屋敷に変装して忍び込んだ場面から始まります。アーサーはメイナードが雇った殺し屋の吹き矢の毒の後遺症でマリーに関する記憶だけを失ってしまったが、そのせいでマリーと出会ったことで取り戻していた人間への信頼感も失っていない以前の人間不信な状態に戻ってしまっていた。マリーに対してだけは優しいアーサーであったが、それはアーサーにとって不幸な状態だと考えたマリーはアーサーの記憶を取り戻さねばならないと考える。記憶喪失になる直前、アーサーが「マリーはロボットではなく人間である」という事実に気付いていたという事実を知ってしまったマリーは、もしアーサーの記憶が戻れば自分は「ずっとアーサーを騙していた」という罪で罰を受けてメイドをクビになる、いやもし優しいアーサーがそれを赦したとしても、嘘つきの自分はアーサーの傍に居る資格は無いのだとマリーは思い、屋敷を出ていくことを決意していた。
だから解毒剤を手に入れるということはアーサーとの別れを意味する。さっそくノアに変装を見破られて「何をしに来たの?」と問われたマリーは「解毒剤を手に入れてアーサー様とお別れするためです」と答える。ノアは面白がって嘘の解毒剤の隠し場所ばかり教えてマリーをからかいます。その上でノアはマリーに「別れるってことはもうアーサーのことを諦めるってこと?」と尋ねる。もしマリーがアーサーを諦めるというのなら自分に振り向いてくれるかもしれないとノアは思う。
だがマリーは「諦めるなんて出来ません」「好きだからもう嘘をつきたくない」「好きだから本当のことを伝えてサヨナラするんです」と答える。それを聞いてノアは結局マリーは自分に振り向いてくれないのだと思いガッカリする。だが、それでもノアは「マリーには解毒剤を手に入れてほしくない」とも思った。どうしてなのだろうかと自問自答すると、それは「マリーが解毒剤を手に入れてアーサーのもとを去ると、自分もマリーに会えなくなるから」だとノアは気付く。「マリーは自分に振り向いてくれないのに、それでも会いたいなんて、僕はそこまでマリーのことが好きだったのか?」とノアは驚く。
その後、マリーはメイナードのアーサーへの歪んだ愛情の詰まった部屋を発見し、そこでメイナード達に見つかって追い詰められる。そして解毒剤を求めると、メイナードは「そもそも解毒剤など入手していない」と衝撃の事実を明かす。それでマリーがアーサーを救うことが出来ないことに絶望して涙を流すのを見て、ノアは「僕が見たかったマリーちゃんはこんな姿ではない」と思う。そこで初めてノアは自分が本当に好きだったのは「アーサーへの愛を一途に貫くマリー」だったのだと気付き、独自に作っていた解毒剤をマリーに渡す。
マリーは解毒剤を持ってアーサーのもとに帰ろうとするがメイナードはそれを邪魔しようとする。だがマリーが屋敷の案内役として段ボール箱の中に隠して一緒に来てもらっていたメイナードの婚約者のイザベルが飛び出してきてメイナードに「もう悪いことは止めて!」と説く。そしてアーサーと仲良くしていたのはメイナードに振り向いてもらうためだったと打ち明け、ずっとメイナードを好きだったと明かす。
それでもメイナードの護衛達はマリーを邪魔してくるのでノアが護衛達を引き受けてマリーを逃がしてくれる。マリーはノアに「助かりました」と感謝し、別れを告げる。そうしてメイナードの屋敷から脱出したマリーを更に巨大ロボ試作機26号が追撃してくるが、マリーを追いかけてきたマリー2が割って入り、試作機26号を引き受けてくれて、マリーはアーサーの屋敷に戻り、まずはロイに解毒剤を手に入れたことを告げる。
ロイはアーサーに解毒剤を飲ませてマリーの記憶を戻すことには反対であった。そんなことをしたらマリーが屋敷から出ていくことになるのは明白であったからでした。ロイはマリーがアーサーの傍に居て、それを自分やマリー2が見守る、そんな日々が永遠に続いてほしいと思うようになっていたのだ。
だがロイは「マリーに任せる」と言ってくれる。ロイだけがアーサーの傍に仕えていた頃はアーサーを幸せに出来なかった。だがマリーが来てからはアーサーは幸せそうに見えた。自分よりもマリーの方がアーサーの真の幸せとは何なのか分かっているのだと思ったロイは、アーサーの幸福のためにマリーの判断を信じようと決意したのだ。
そうしてマリーはアーサーのもとへ行き「これを呑めば記憶が戻ります」と言って解毒剤を差し出す。だがアーサーはここ数日のマリーの不自然な態度から察して「記憶が戻ると君が居なくなってしまう気がする」と言って呑むのを拒む。そして「俺はこのままでいい」「前の記憶は無くてもロボットメイドの君さえいれば他に何も要らない」と言う。それに対してマリーは「あなたは辛い過去を乗り越えて少しずつ他人と向き合おうとしていた」「アーサー様が頑張ってきたことが無くなってしまうことはダメです!」と必死にアーサーを説得しようとするが、アーサーは頑なに拒む。
そこでマリーは解毒剤を口に含んでアーサーにキスをして口移しに解毒剤を飲ませてしまう。そして、まだ解毒剤の効果が現れておらず呆然としているアーサーに向かって「ロボットメイドというのは嘘」「私は人間です」「最初はお金のためにロボットのフリをしていました」「でも貴方を知っていくたびに守ってあげたい気持ちが大きくなって、貴方に辛いことや悲しいことが起きないように、ずっと傍で見守りたいと思ってしまった」「嘘をつき続ける私が一番あなたを傷つける存在だったのに」と想いの全てを打ち明ける。記憶が戻ってしまうとアーサーは既にマリーが人間だと知ってしまっている。だからマリーが「本当にアーサーに対してやりたかった罪の告白」が出来るチャンスは、この記憶が戻る前のほんの一瞬しか無かったのだ。
そして「こんな私の顔なんて二度と見たくないでしょう」「裏切り者は貴方の前から消えます」「さようなら」と言い残すとマリーは立ち去っていく。その瞬間、解毒剤の効果が現れてアーサーの記憶が復活し、風呂場でマリーに愛の告白をしようとしていた途中の記憶が戻ってきて、アーサーは「さようなら」と言って去っていくマリーを見て慌てる。そして「人間だったとしても関係ない」「傍に居てくれ!」とマリーを呼び止める。
マリーはアーサーの記憶が戻ったのだと気付き喜ぶが、記憶が戻った心優しいアーサーが自分を赦そうとすることも予想の範囲内であり、その優しさに甘えることは許されないと最初から心に決めている。「私は貴方を陥れてきた悪人です」「アーサー様の傍に居ることは許されません」「私を嫌いになってください」と言って走り去る。だがアーサーは「そんなこと出来るか!」「君を愛しているのに!」とマリーを追いかける。
そして屋敷の玄関でマリーに追いつくと「君のついてくれた嘘は最初からずっと優しくて俺を幸せにしてくれた」とマリーに告げる。アーサーの言っているのは最初にマリーがアーサーを助けた時の話でした。あの時、マリーは「ロボットだから大丈夫」だという「嘘」をついて自分の身を危険に晒してアーサーの命を救った。あの時、アーサーは確かにマリーの「嘘」に騙された。だが回収したマリーは衰弱しており、マリーに騙されていたアーサーは「ロボットにとっても火の中で放置されるのは危険なことだったのだ」と思い、アーサーは「大丈夫」だと言っていたのはマリーの「嘘」だったのだと認識した。
最初からアーサーはマリーを「嘘をつくロボット」だと認識していたのです。いや、その時からアーサーは本当の意味でマリーというメイドロボットを心から信頼するようになったのだといえる。「嘘」を何よりも嫌うアーサーがどうして「嘘をつくロボット」を信頼したのか。それは「優しくて自分を幸せにしてくれる嘘」だったからです。つまり、最初からアーサーはマリーの「嘘」は赦していたのです。そして、そんなマリーと時間を共にしていくうちに、他の人間たちにも心を許せるようになっていき、アーサーは幸せになっていった。
そんな中でアーサーはマリーが実は人間だったと知ってしまい、「ロボットだと偽っていた」という嘘のことよりも、まず真っ先にあの火事の中で自分についた「嘘」の重大性のことを想った。あの時、マリーは自分が死ぬかもしれないのに「大丈夫」と嘘をついて自分を助けようとしてくれた。そう思うとアーサーはマリーを大切に想う気持ちがこみ上げてきて、一番大切な気持ちに気が付いた。それは「自分が最初にマリーを好きになったのはロボットだったからではない」「あの時、マリー・エバンズという人間が示してくれた優しい嘘を好きになったのだ」ということであった。だからアーサーにとってはマリーが自分に嘘をついていたことなどどうでもいい。嫌いになることも離れることも出来ない。その気持ちを伝えると、マリーは涙を流し「アーサー様を好きでいてもいいんですか?」「ずっとずっと傍に居たいと思ってもいいんですか?」とアーサーの腕の中に飛び込む。
そうして最後は時が流れてアーサーとマリーの結婚式の場面となる。結婚式場である屋敷の中庭に今まで登場したキャラたちが招待される中、イザベルと共に招待されたメイナードに対してアーサーはずっと親指に嵌めていたゼペス家の後継者の証の指輪を渡して後継者の座を譲ろうとする。これまで自分がその指輪に拘っていたのは後継者の座が欲しかったからではなく、父親に愛されている証が欲しかったからだと告白したアーサーは、今はもうそれは要らないのだと言う。マリーという愛し合う相手を得たからです。そして最初から自分が他人の愛を信じることが出来てメイナードに素直な気持ちを接することが出来ていれば、あんなに関係が拗れることは無かったと反省し謝罪する。だがメイナードは「後継者の座は実力で奪い取ってみせる」と言い、指輪の受け取りは拒否します。そんなメイナードとイザベルの前にはあの事件以来ずっと行方知れずだったノアもひょっこり現れて、マリーの門出を見届ける。そしてウェディングドレスを着たマリーがアーサーを抱えてバルコニーから中庭に飛び降りてきて、2人が幸せなキスをして物語は終幕となります。











