スクロヴァチェフスキは数多くのオーケストラと演奏を行ってきたが、日本では読響(読売日本交響楽団)、NHK交響楽団などと演奏してきた。その中で貴重な録音を残しているのだが、ブルックナーやベートーヴェンを除くと意外とマニアックな作品を取り上げている印象が強いかもしれない。以前取り上げたバーバーのバレエ「メディアの復讐の踊り」が良い例である。個人的に今回の録音に関しても「1905年」が演奏されているのは意外な感覚とも言えるだろう。
・ショスタコーヴィチ:交響曲第10番
録音:2007年9月25日(ライヴ)
第1楽章冒頭よりやや重心の低い重々しいテンポからなる演奏だったが、それが常に続くというわけでもなく、有名な第2楽章や第4楽章では躍動感溢れるエネルギッシュな演奏を聴くことができるようになっている。まさにパワフルそのものであり、弦楽器群のゴリゴリとしたサウンドは特に低弦の存在感が非常にに大きい。木管楽器の音に関しても飛び抜けて聴こえるような凄みを演奏から通して聴くことができる。「DSCH音型」も明確に演奏されているが、露骨なアプローチによって過度な演奏となっているわけでないのが大きなポイントとも言えるだろう。ダイナミック・レンジの幅広さが功を奏する形となっており、オーケストラ全体のテンションが高まった瞬間のインパクトある音圧には圧倒されてしまう。
・ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」
録音:2007年9月30日(ライヴ)
全楽章に聴きどころがある今回の演奏、第2楽章の銃撃が始まる瞬間ではややテンポが速いため低弦に若干荒さがみられるかもしれないが、圧倒的な音圧とこれまでに聴いたことがないようなダイナミクス変化によるアプローチによってテンポの緩急。軸として大迫力の演奏を楽しむことができるようになっている。第4楽章に到達するとトランペットを筆頭とした金管楽器群の音色もどこかロシアのオーケストラに近いような特徴を聴くことができる。オーケストラ全体が苦痛を感じて常に叫び続けているような名演。スネアの歯切れ良さやティンパニの強打など打楽器の存在感が大きく出ている演奏となっている。
圧倒的な音響による力の勝利とも言うべきか。この2曲がセットだったからこそ最高潮のテンションを聴き終える頃には感じ取ることができたと言っても過言ではないだろう。ここ最近聴いていなかった作品ということもあり、今聴いたことによって再びショスタコーヴィチ作品をもっと聴きたくなった。そういえば、タワーレコードからバルシャイのショスタコーヴィチ交響曲全集がSACDハイブリッド仕様の高音質盤で復刻されたがどのような仕上がりとなっているのだろうか?年末の爆買いに合わせて購入しようと思う。


