ティルソン・トーマス&サンフランシスコ響によるサンフランシスコ響の自社レーベル「SFS Media」の第1弾録音としてマーラーの交響曲第6番「悲劇的」が演奏された。2001年9月といえばいわゆる「9.11」が起きた年で、その直後にライヴ録音された演奏が当盤に収録されている。両翼配置によって普段聴くマーラーとはまた違うスタイルで演奏が行われている。
・マーラー:交響曲第6番「悲劇的」
録音:2001年9月12〜15日(ライヴ)
第1楽章よりこれでもかというほどの溜めが繰り返されるため、若干しつこいようにも聴こえなくはないのと、演奏時間はいつもよりも長めに感じた。また、演奏される順番としては第2楽章スケルツォ、第3楽章アンダンテという流れになっている。SACDハイブリッド盤ということもあり、ダイナミック・レンジの幅広さに関しては申し分なく広々としたスケールを演奏から聴くことができるようになっている。各楽器ごとに誇張したり、個性が強いという演奏は行っておらずオーケストラ全体でまとまりの良いサウンドが統一されている。そのため楽章によっては物足りないようにも感じる方もいるかもしれないが、弦楽器群の楽章ごとに変化するテンポの緩急の中で伸びやかな音色と響きを奏でる瞬間が幾度も垣間見ることができるので、聴きごたえはそれなりにある演奏とも取れるだろう。第4楽章は第1楽章から第3楽章までの演奏を全て詰め込んだかのような壮絶なスケールからなる演奏となっており、やや重心の低い状態からなるテンポの緩急を生かし切った壮大なるスケールは聴いていて非常に爽快感を覚える。ハンマーの打撃に関しても深みのあるズシンとした重みが伝わってくるので、聴きごたえとしてもある演奏となっている。
ティルソン・トーマスのマーラー全集は全てのCDがSACDハイブリッド盤で発売されており、交響曲だけでなく歌曲もセットに組み込まれているまさにマーラーファン必見の代物となっている。その中には当盤が収録されているわけだが、一度聴いてみる価値のある演奏が多数存在しているのは間違いない。今後もこの全集に収録されている録音はまた取り上げたいと思う。

