ブッフビンダーは今回の全集含めて3種類のベートーヴェンピアノ協奏曲全集を完成させている。ウィーンで録音されたベートーヴェン生誕250年を記念したピアノ協奏曲全集となっており、注目的なのは5人の指揮者とそれぞれのオーケストラと演奏を行っているということ。今回は国内盤で発売されたUHQCD × MQA-CDからなる高音質盤にて視聴している。
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番
録音:2019年10月(ライヴ)
録音されたのは比較的最近ながら往年の時代における音色、響きが聴こえる。充実した響きと奥行きを感じることのできるやや太めなサウンドは聴いていてどこか清々しさを感じなくもない。ダイナミック・レンジの幅広さが増しているということも効果的なアプローチに繋がっているポイントの一つで、テンポの緩急からなるダイナミクス変化は細部まで細かく変化していくため非常に聴きやすい。ゲヴァントハウス管のサウンドも芯のある美しさ溢れる音であることには変わりないので、最初から聴き手の心を掴む演奏であることは間違いない。
・ピアノ協奏曲第2番
録音:2019年10月(ライヴ)
ヤンソンス&バイエルン放送響による演奏のもと、ブッフビンダーがピアノを奏でる。ピアノ協奏曲第1番とはまた違うキラキラしたサウンドを聴くことができるようになっている。若干空間的にもスマートなサウンドを聴くことができるようになっており、テンポの緩急がその時に功を奏する形となっている。キャッチーなアプローチも垣間見ることができるようになり、聴いていて非常にテンションが上がる名演である。
・ピアノ協奏曲第3番
録音:2019年11月(ライヴ)
厳格さも感じられながらキレ味の良さを躍動感のある演奏から聴くことができるようになっているピアノ協奏曲第3番。独特なアプローチからなるテンポの緩急やダイナミクス変化が演奏から聴くことができるようになっているのは、ゲルギエフ指揮だからこそなのだろうか?真っ直ぐに演奏が突き進められていくかのようなストレートさも演奏から感じ取ることができるようになっている。ピアノとオーケストラによる演奏バランスも絶妙な良さとなっているので同曲録音とも聴き比べたい録音だ。
・ピアノ協奏曲第4番
録音:2020年10月(ライヴ)
ティーレマン率いるシュターツカペレ・ドレスデンをバックにブッフビンダーがピアノを演奏している。SKD(シュターツカペレ・ドレスデン)のサウンドがどちらかといえば骨太寄りになっていることもあるのだろうが、ブッフビンダーのピアノも同じような音色に聴こえなくはない。ダイナミック・レンジの幅広さが生かされた伸びやかな演奏と、キレ味のある躍動感を感じ取ることのできるような圧倒的なサウンドが功を奏する形となっている。今回の全集の中で割と気に入った演奏かもしれない。
・ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
録音:2019年12月(ライヴ)