プレヴィンはリヒャルト・シュトラウス作品を比較的多く録音している。今回の「家庭交響曲」以外にも「アルプス交響曲」や「英雄の生涯」、「ドン・ファン」、「ツァラトゥストラ」などが該当するだろうか。レーベルが統一されていないものの、どの演奏に関しても非常に素晴らしい演奏であることは間違いない。
・リヒャルト・シュトラウス:家庭交響曲
録音:1995年11月
ウィーン・フィルによる「家庭交響曲」の演奏ということもあるためか、第1部冒頭よりエネルギッシュさもありつつたっぷりと音が奏でられている濃厚さも同時に体感できるようになっている。同時に「緩→急」へと音楽が変化した際のテンポの緩急における快活さも素晴らしく、それ以外のたっぷりと演奏している箇所に関しては伸びやかながら濃厚に演奏が行われているのが中々に聴きどころであると言える。また、特にトランペットを筆頭とする金管楽器群においては高い技術を要求するこの曲だが、意外とスムーズに演奏が行われていたようにも感じられなくはない。ウィーン・フィルによるバランスの整われた演奏が功を奏する形となっていたのは間違いないだろう。
・家庭交響曲余録
録音:1995年11月
リヒャルト・シュトラウスが作曲した左手のためのピアノ協奏曲。腸チフスにより重体となった息子フランツの体験がモチーフとなっており、「家庭交響曲」における「こどもの主題」が引用されている。決して重々しい内容というわけではないが、煌びやかで底抜けに明るさの目立つ作品というわけではない。今回はゲーリー・グラフマンがピアノ演奏を行なっており、曲全体として、やや固めな印象も受けなくはない。しかし、グラフマン、プレヴィン率いるウィーン・フィルに関しても演奏には迷いがなく、明確なアプローチからなるどこか希望に満ちた演奏を聴くことができるようになっている。「家庭交響曲」とセットで収録されているというのもよりこの曲を楽しむことができるというもの。