第1897回「ブルックナーアニバーサリー企画第6弾、ハイティンク&コンセルトヘボウ管の全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃今年生誕200年を迎えるブルックナー。当ブログでは毎月ブルックナーの交響曲全集を取り上げています。6月はベルナルド・ハイティンク&ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団によるブルックナー交響曲全集を取り上げていきます。ハイティンクは言わずと知れたブルックナー指揮者であり、複数のオーケストラと何種類もの録音を残しています。今回の全集は1963〜1972年にかけて録音されています。


「ベルナルド・ハイティンク指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」

ブルックナー作曲:
交響曲第0番 ニ短調(ヴェス版)

交響曲第1番 ハ短調(リンツ稿)

交響曲第2番 ハ短調(1877年稿、ハース版)

交響曲第3番 ニ短調(第2稿)

交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」(第2稿ハース版)

交響曲第5番 変ロ長調(1878年稿、ハース版)

交響曲第6番 イ長調(1881年稿、ハース版)

交響曲第7番 ホ長調(ハース版)

交響曲第8番 ハ短調(第2稿、ハース版)

交響曲第9番 ニ短調(1894年稿、ハース版)



 ハイティンクは数多くのオーケストラとブルックナーの交響曲録音を残しているが、その原点的な立ち位置にある録音はこの全集になるのではないか?と考えるところがある。コンセルトヘボウ管とはブルックナー以外にもベートーヴェンやマーラー、チャイコフスキーなど多くの作曲家たちによる交響曲全集を完成させたが、その中にブルックナーの交響曲全集もあった。この全集以降の演奏が度々取り上げられることが多いが、この機会に改めてハイティンク&コンセルトヘボウ管によるブルックナー交響曲全集をみていきたいと思う。


・ブルックナー:交響曲第0番

録音:1966年7月

 オーケストラ全体における音色がまとまっているため、一貫性を感じることのできる分厚いサウンドを聴くことができるようになっている。伸びやかで濃厚な弦楽器の音色と響きが功を奏する形となっており、それに加えて各楽章ごとにテンポの緩急が加わることによってコンセルトヘボウ管の豊かで奥行きのある演奏を楽しむことができると言えるだろう。ブルックナーの主要な交響曲と同等に楽しむことができた名演と言っても良い。


・交響曲第1番

録音:1972年5月

 濃厚なサウンドと分厚い弦楽器群の音色から奏でられる素晴らしいブルックナーの交響曲第1番を聴くことができる。第1番の演奏でここまで心を掴まれたのはヨッフムによる録音以来にも思える。奥行きや豊かな音色によって奏でられているため、充分に聴きごたえがある演奏となっていて非常に良い。金管楽器の演奏に関しても申し分ないスケール感があり、この後に聴くことのできる主要な交響曲に匹敵するほどの演奏を聴くことができると言って良いだろう。


・交響曲第2番

録音:1969年5月

 オーケストラ全体として、まとまりあるサウンドからなる濃厚な音色と響きを聴くことができるようになっている。しかし、意外にもそれはスマートに演奏されているため、しつこさが全くと言って良いくらいに感じられないというのが今回の交響曲第2番における特徴と言えるかもしれない。金管楽器の濃厚なサウンドと弦楽器の群としての音色に共通点があり、濃密で非常に聴きやすい演奏だった。


・交響曲第3番

録音:1963年10月
 やや引き締まったサウンドからなる厳格な交響曲演奏を聴くことができる交響曲第3番。楽章によってその音色が変化するような面白い演奏となっており、キャッチーな面も見え隠れする面白い演奏であると言えるだろうか。金管楽器のキレ味の良さも凄まじく、テンポの緩急からなるダイナミクス変化によってオーケストラ全体から一貫性のあるサウンドを楽しむことができるようになっているのは間違いない。

・交響曲第4番「ロマンティック」
録音:1965年5月
 分厚いサウンドを奏でながら演奏が展開されていく「ロマンティック」。特にホルンを筆頭とした金管楽器群によって先導されている印象が強いかもしれない。弦楽器による重心の低いしっかりとした土台が確立された状態での安定感あるサポートもあり、管楽器群は安心感を持って演奏が行われているようにも聴こえなくはない。ダイナミック・レンジの幅広さが生かされている演奏であるということもあってダイナミクス変化に関しても細部まで細かく聴き込むことができると言えるだろう。

・交響曲第5番
録音:1971年12月
 オーケストラ全体まとまりがあり、金管楽器を筆頭として各楽器が奏でる音色に関しても美しさと生き生きとしたエネルギッシュな感覚を味わえるようになっている。分厚い弦楽器群と完成された土台によって安定感が生まれ、濃厚ではあるが後味としてもあっさりとした交響曲第5番の演奏を聴くことができるようになっている。テンポの緩急が激しく変化しているわけではないが、楽章ごとに明確に演奏されていることもあってコンパクトさも重なって聴きやすい演奏となっている。

・交響曲第6番
録音:1970年12月
 ブルックナーの交響曲演奏にしては分厚い濃厚な演奏ではあるがしつこさがなく、後味はすっきりとしている。それもあって楽章における演奏は非常にスムーズに進められていく。コンセルトヘボウ管の特徴的な金管楽器のサウンドが功を奏する形となっており、バランスの良いテンポの緩急からなる細かく変化されるダイナミクス変化が聴きやすい演奏となっている。透き通るように美しい音色と響きにも注目して聴いていただけるとより楽しめると言えるだろう。

・交響曲第7番
録音:1966年11月
 軽快かつスムーズな進み具合によって演奏が展開されている交響曲第7番。重々しさが取っ払われた推進力を感じ取ることのできるエネルギッシュな演奏となっており、濃厚な金管楽器による美しい音色と響きを余すことなく味わうことができるようになっている。ハイティンクとコンセルトヘボウ管によるブルックナー演奏には迷いがなく、くもりすら感じさせない明瞭さが功を奏する形となっていると言えるだろうか。特に第2楽章に関しては、息を呑むような美しさを体感できる。

・交響曲第8番
録音:1969年9月
 ハイティンクと別のオーケストラによるブルックナーの交響曲第8番を以前聴いていたこともあって、それよりも前に録音されたコンセルトヘボウ管との第8番も同様のアプローチからなる演奏かと思っていたが意外とそうではないようで、溜めはあまりなくたんたんと演奏が進められていく印象が強い。それによって分厚いスケール感に加えて推進力からなるエネルギッシュなパワーを細部にわたって聴くことができるようになっているのは間違いない。濃厚かつ骨太な弦楽器、金管楽器によって構成されるブルックナーを楽しむには充分とも言える演奏であった。

・交響曲第9番
録音:1965年12月
 重心の低い演奏となっており、それによって展開される骨太かつ濃厚で分厚いスケール感を味わうことのできる演奏はいつ聴いても凄まじいインパクトを与えてくれる。推進力かつ重い音を聴くことができる第2楽章も魅力的ではあるが、やはり第1楽章と第3楽章におけるサウンドは絶妙な美しさとなっており、聴くもの全てを虜にしてしまう凄みがある。

 ハイティンクによるブルックナー演奏は久しぶりであり、特にコンセルトヘボウ管とのブルックナーは何年振りに聴いたか覚えていないくらいである。これを受けて他のオーケストラとのブルックナーの交響曲演奏を聴いてみたいと思える感覚がまた取り戻せた。来るブルックナーの誕生日も残り2ヶ月あまりになりつつあるが、今後も様々な指揮者によるブルックナー交響曲全集は取り上げ続けていきたいところである。

https://tower.jp/item/1689307/COLLECTORS:BRUCKNER:COMPLETE-SYMPHONIES:NO-1-9:BERNARD-HAITINK(cond)-ACO