マゼールとウィーン・フィルによる組み合わせで聴くことができるラヴェル管弦楽曲集。「ダフニスとクロエ」や「ラ・ヴァルス」、「ボレロ」など主要な作品が多数収録されている。賛否両論分かれるアプローチが度々見受けられるマゼールの演奏だが、当盤に関していえば最終的には凄まじいテンションの演奏を聴くことができる名盤となっているので、期待を裏切ることのない代物と言っても過言ではない。
・ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」第1組曲、第2組曲
録音:1996年6月7,10,11日
研ぎ澄まされた感覚から奏でられるウィーン・フィルのサウンドは凄まじく、弦楽器と木管楽器の音色には尖っているようにも聴こえるが、いらないものを削ぎ落としたかのようなエネルギッシュさを演奏から聴くことができるようになっている。マゼールの演奏にしてはテンポの緩急において激しく演奏される場面はそれほどみられることがなく、意外に厳格さのある演奏が奏でられているようにも思えなくもない。金管楽器における決め所を逃すことのないハッキリとした明確なサウンドも聴きどころのポイントと言えるだろう。
・スペイン狂詩曲
録音:1996年6月7,10,11日
ウィーン・フィルによって奏でられる透明度の高い美しさ溢れる音色と響きの中から各曲ごとに楽器ごとの特徴を全面的に押し出した個性的な演奏であるようにも聴こえる。「ダフニスとクロエ」の時には鬼才マゼールを印象付けるようなアプローチからなる演奏は見受けられなかったかもしれないが、この「スペイン狂詩曲」では随所より確認することができると言えるだろう。明瞭かつ迷いのない演奏を楽しむことができたのは間違いない。
・ラ・ヴァルス
録音:1996年6月7,10,11日
テンポの緩急からなる勢いの良さ、推進力からなるエネルギッシュなパワーは聴いていて非常に素晴らしい「ラ・ヴァルス」と言えるだろう。いつもの幻想的で美しい音色と響きによって演奏されるこの曲が新しい姿へと生まれ変わり、高いテンションを維持された状態で豪快な金管楽器と木管楽器のサウンドを奏でながら演奏は進められていく。
・ボレロ
録音:1996年6月7,10,11日
最後の最後に本命が来たと言っても良い素晴らしい「ボレロ」となっており、音響からオーケストラ全体の音の鳴りからしてクラシックの枠を超えたサウンドを聴くことができる。音が生き生きと跳ねているように聴こえ、豪快に鳴らされるダイナミクス変化も功を奏する形となっているのは言うまでもないだろう。マゼールの個性的なアプローチを余すことなく味わうことができるようになっているため、まさに白熱の演奏となっている。途中テンポを落としている瞬間に関しては誰もが必ず驚かされるはず。
マゼールによるラヴェル作品は今回初めて聴いたが、独創的なアプローチからなる演奏ということもあってひかれる要素は充分にあったと言える。特に「ボレロ」に関しては終盤衝撃的な演奏だった。また当盤は聴きたいと思えたし、他のオーケストラとの演奏も探してみたいところである。