第1891回「約100年前の歴史的録音、オスカー・フリートの芸術:Disc 1,2」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日から何回か分けて、「スクリベンダム」から復刻された「オスカー・フリートの芸術」を取り上げていきます。12枚のCDが収録されているこのBOXは、世界初録音を複数収録した歴史的録音の宝庫と言えるでしょう。まず本日は、Disc1に収録されているベルリン国立歌劇場管弦楽団とのリヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」、ベルリン・シャルロッテンブルク歌劇場管弦楽団(ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団)とのグリーグの「ペール・ギュント」組曲第1番、第2番とDisc 2に収録されたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とのリムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とのチャイコフスキーの「くるみ割り人形」組曲、ブリティッシュ交響楽団とのドリーブの「シルヴィア」組曲をみていきます。指揮はもちろんオスカー・フリートです。


[Disc 1]
「オスカー・フリート指揮/ベルリン国立歌劇場管弦楽団」

リヒャルト・シュトラウス作曲:
アルプス交響曲 作品64


「オスカー・フリート指揮/ベルリン・シャルロッテンブルク歌劇場管弦楽団(ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団)」

グリーグ作曲:
「ペール・ギュント」組曲第1番、第2番


[Disc 2]
「オスカー・フリート指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

リムスキー=コルサコフ作曲:
交響組曲「シェエラザード」作品35


「オスカー・フリート指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団」

チャイコフスキー作曲:
「くるみ割り人形」組曲 作品71a


「オスカー・フリート指揮/ブリティッシュ交響楽団」

ドリーブ作曲:
「シルヴィア」組曲



 マーラーの交響曲第2番「復活」の世界初録音やブルックナーの交響曲第7番の世界初録音などを残している重要な指揮者であるオスカー・フリート。特にマーラーとの関わりは深く、ベルリン初演では数多くのマーラー作品の指揮を行っている。レコード録音が誕生すると積極的に録音を進めている。今回の「スクリベンダム」からBOXで発売された「オスカー・フリートの芸術」は全部の録音ではないにしても、現在では手に入れづらい稀少な録音を多数収録している歴史的価値の高い代物であることは間違いない。


[Disc 1]

・リヒャルト・シュトラウス:アルプス交響曲

録音:1925年(世界初録音)

 以前オスカー・フリートによるマーラーの交響曲第2番「復活」やベルリオーズの「幻想交響曲」、ブルックナーの交響曲第7番を聴いているということもあって、ある程度の覚悟はしていたわけだが、演奏を聴き進めていくとその覚悟とは裏腹に1925年の世界初録音にしては音質の良い「アルプス交響曲」を聴くことができた。ノイズもあるため、ウインドマシーンに関しては聴こえなく、オーケストラ全体を細部まで細かく聴き込むことができるわけではないが、要所要所聴き取りやすい演奏となっている。若干弦楽器のピッチが安定しないが、弦楽器と木管楽器による自然的でみずみずしさを感じ取ることのできる透明度の高い音色と響きをこの時代の録音で聴くことができるとは思ってもみなかった。やや駆け足気味でいつもよりも速いテンポでの演奏となっていたかもしれないが、最初から最後まで安定した世界観を聴くことができたのは間違いない。


・グリーグ:「ペール・ギュント」組曲第1番、第2番

録音:1928年

 「アルプス交響曲」同様にノイズもあるとはいえ、各曲ごとにおけるテンポの緩急からなるダイナミクス変化も明確に聴き取ることのできる演奏となっている。やはりその際木管楽器と弦楽器の存在感は非常に素晴らしくい。また、オーケストラ全体で一貫性のあるサウンドを奏でている場面もあり、音に没入して聴いてみると想像していた以上に良い「ペール・ギュント」の世界観を楽しむことができると言えるだろう。


[Disc 2]

・リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」

録音:1928年

 現段階で一番音質が良い演奏となっている「シェエラザード」。冒頭の金管楽器を筆頭とする重厚的で分厚いスケールから展開される圧倒的な音圧は凄まじいインパクトを与えてくれる。ヴァイオリンの技巧に関しても魅了されるポイント高い。加えて、オーケストラ全体におけるダイナミクス変化を聴き分けることができるようになっているため、第2楽章「カランダール王子の物語」におけるサウンドはこの録音の中でも随一の聴きごたえのあるポイントであると言えるだろう。ダイナミック・レンジの幅広さがそこまでなかったとしても「シェエラザード」の美しい世界観を余すことなく味わえる歴史的録音として記憶しておきたい。オスカー・フリートの演奏の中でも個人的に好きな演奏となった。


・チャイコフスキー:「くるみ割り人形」組曲

録音:1929年2月5,6日

 録音時間も関係してくるのだろうか、1曲あたりの演奏時間は現代における演奏と比べても極端に短いように思える。短いというよりもテンポの速さが大分あるため、それによって短く感じると言えるだろうか。それとしても各楽器の音色は非常に美しく奏でられており、聴き取りづらさがある感覚は基本ない。テンポの緩急からなるダイナミクス変化を余すことなく味わうことができた演奏となっている。この時代における録音の中では十二分に魅力的な演奏と言える。各楽器ごとにキャラクターの特徴を押さえているのもポイントとなっている。


・ドリーブ:「シルヴィア」組曲

録音:1930年

 この時代におけるドリーブ作品の録音を聴くとより時代を感じると言おうか。古風な音色と響きに満ち満ちており、木管楽器と弦楽器の軽快さもそうだが透き通るような美しいサウンドが聴いていて非常に心地良い感覚を味わうことができる。厳格さはあるが、曇りのない音色からなる演奏を聴くことができるため、結果として音楽的な美しさを全面的に味わうことができるえんそうとなってるのは間違いない。

 「スクリベンダム」から復刻された指揮者たちの歴史的録音はどれも聴きごたえがある演奏ばかり。今回取り上げた「オスカー・フリートの芸術」に関してもこれから数回に分けて引き続き取り上げていきたいと思う。今回はやはり「シェエラザード」の凄みが大分伝わってきたのは言うまでもない。このBOXを取り上げる際はDisc 3,4になるが、Disc 3にも世界初録音が収録されている。