拡大されたオーケストラ編成、合唱、オルガン、ピアノといった交響曲というよりはピアノ協奏曲という印象が強い「プロメテウス」。初演ではスクリャービンのために開発された色彩と様々な色を組み合わせた照明を鍵盤によって操作する色光ピアノが使われる予定だったが、故障してしまい利用することはなかった。特に有名な演奏として、アバド&ベルリン・フィル、アルゲリッチによる演奏時にプロジェクターを用いて様々な色光を投影した。
・スクリャービン:交響曲第5番「プロメテウス」
録音:2017年7,8月
この曲を聴くに当たって、やはり高音質盤が良いと考えていろいろと音源を探していたが「法悦の詩」と比べても「プロメテウス」のSACDハイブリッド盤は決定的に少ない。直近発売されたものでいえば、2022年12月にタワーレコードから復刻されたスクリャービン交響曲、管弦楽曲全集の一部である。今回取り上げるスドビン、ラン・シュイ&シンガポール響は2022年8月に発売されたSACDハイブリッド盤だ。まず各音に色が指定されているのでそれを記載しておく。
・C=赤
・G=オレンジ
・D=黄色
・A=緑
・E=空色
・B=青色
・F♯=明るい青
・C♯=紫
・A♭=ライラック
・E♭=フラッシュ
・B♭=ローズ
・F=深い赤
とスコアに指定がされている。単一楽章の交響曲及びピアノ協奏曲とされている。ギリシャ神話で登場する人類に天界より「火」(叡智の象徴)を授けた英雄プロメテウスを崇める作品である。無調音楽であり、不協和な世界観となっているため聴きづらいと感じる方もいるかもしれないが、現代音楽として重要な作品であることは間違いない。
スドビン、ラン・シュイ&シンガポール響による演奏はダイナミック・レンジの幅広さが生かされた素晴らしい音響的空間を作り上げており、ピアノの動きもそうだが細部にわたって細かく演奏されるオーケストラ、神秘的かつ幻想的な合唱の歌声、荘厳的なオルガンの響きなど高音質盤だからこそ聴くことのできる素晴らしい「プロメテウス」であると言える。これをぜひ映像で見たいと思ってしまったが、やはり今回のような複雑な作品は高音質盤で聴くことこそより良い理解に繋がるというものだと考えた。
交響曲第5番「プロメテウス」で色を音に置き換えたスクリャービンはその後に「香り」を音にする作品を進めたが、亡くなってしまったことによって未完成に終わった。最近ではスクリャービンのピアノ曲にインスパイアされた香水も誕生した。現代音楽の可能性は未知数ではあるが、同時にネタ切れを起こしてしまうジャンルでもある。今後どのような作品が登場するか期待して待ちたいところである。

